黄金闘技場強襲

    作者:うえむら

    ●黄金闘技場強襲
    『右九兵衛暗殺計画』は成功に終わり、灼滅者達は六六六人衆&アンブレイカブルと、爵位級ヴァンパイアとの間の連携を乱すことに成功しました。
     ですが、エクスブレインの予知により、アンブレイカブルの首魁の一人『ジークフリート大老』とミスター宍戸が、『黄金武闘大会』を行おうとしていることが判明しました。

    『黄金武闘大会』は、これまで発生して来た『黄金円盤リング事件』と同様の『勝者が敗者の力を奪って大幅に強化される』一対一の対戦を、ジークフリート大老の本拠地『黄金闘技場』内で連続して行う大会です。
     大会を勝ち抜いた者には、それまでに得た力の全てを使って『ジークフリート大老』と一対一の死闘に挑む権利が与えられます。
     つまり大会が実行されれば、ジークフリート大老がさらに強化されるか、あるいはジークフリート大老を上回る強大なダークネスが誕生してしまうのです!
    (黄金円盤リング事件は、大会参加者に相応しい者を選出する狙いもあったようです)

     大会を阻止しなくてはなりませんが、既に『黄金闘技場』には多数のアンブレイカブルや六六六人衆が集結しており、少人数による潜入では勝機はありません。
     また一対一のルールや、灼滅者がリング内で勝利すれば即座に闇堕ちしてしまう性質からも、大会に参加しての勝利は不可能です。

     そこで『多数の灼滅者による強襲攻撃』を仕掛け、さらに精鋭部隊による敵首脳への直接攻撃を行います。
     作戦の最終目的は、今回の黄金闘技場内にいる敵首脳、『ジークフリート大老』『ミスター宍戸』『ランキングマン』を撃破することです。
     この作戦が成功すれば、六六六人衆&アンブレイカブルに大きな打撃を与え、決戦における勝機は増すでしょう。

    ●決戦シナリオについて
     本シナリオと同時に、『ジークフリート大老』『ミスター宍戸』『ランキングマン』の撃破を狙う『決戦、黄金闘技場』のオープニング3本が公開されています。
     本シナリオの成功条件は、『決戦、黄金闘技場』のいずれか(最低1つ)の成功です。
    『決戦、黄金闘技場』の各シナリオは、本シナリオでそれぞれ指定された条件を満たさなかった場合、運営が中止されます。
     なお、『決戦、黄金闘技場』の各シナリオと本シナリオには、同時に参加することが可能です。

    ●行動選択肢
     以下の【1】~【7】が、このシナリオで取れる行動となります。
     プレイングの1行目冒頭に、必ず【1】~【7】のいずれかの番号を記入して下さい。
     記入が無いか、記入があっても冒頭部に無い場合は、【7】を選んだものとして扱われます。

    【1】由井・京夜の軍勢と戦う
     ミスター宍戸を護る「由井・京夜(d01650)(闇堕ち灼滅者・シャドウ)」の率いる軍勢と戦います。この軍勢は、放置するとミスター宍戸の決戦シナリオに増援として現れます。
    「80人」の灼滅者が参加すれば、増援を阻止することができ、参加人数が多ければ多いほど、この戦場における重傷死亡率は低下します。
    「300人」参加できれば、重傷死亡率が0%になるだけでなく、非常に高い確率で由井・京夜を説得、あるいは灼滅する事ができるでしょう。

    【2】エンドレス・ノットの軍勢と戦う
     ランキングマンを護る「エンドレス・ノット(六六六人衆)」の率いる軍勢と戦います。この軍勢は、放置するとランキングマンの決戦シナリオに増援として現れます。
    「80人」の灼滅者が参加すれば、増援を阻止することができ、参加人数が多ければ多いほど、この戦場における重傷死亡率は低下します。
    「400人」参加できれば、重傷死亡率が0%になるだけでなく、非常に高い確率でエンドレス・ノットを討ち取る事ができるでしょう。

    【3】ケツァールマスクの軍勢と戦う
     ジークフリート大老を護る「ケツァールマスク(アンブレイカブル)」の率いる軍勢と戦います。この軍勢は、放置するとジークフリート大老の決戦シナリオに増援として現れます。
    「80人」の灼滅者が参加すれば、増援を阻止することができ、参加人数が多ければ多いほど、この戦場における重傷死亡率は低下します。
    「400人」参加できれば、重傷死亡率が0%になるだけでなく、非常に高い確率でケツァールマスクを討ち取る事ができるでしょう。

    【4】ミスター宍戸を逃がさない!
     ミスター宍戸は、どのダークネスよりも遥かに早く灼滅者の襲撃に気付き、即座に撤退を始めます。ミスター宍戸はいざという時の為に、「他ダークネス勢力に姿を晒さず」「多くの配下を配置でき」「逃走路に一番近い場所」に最初から居ます。黄金闘技場は未知の場所ですが、これらの条件を満たす場所がどのような場所かを推理し、ミスター宍戸の撤退を阻止してください。
     推理が上手く的中すれば「100人」、推理が外れていても「200人」の参加があれば、ミスター宍戸の撤退を必ず阻止できます。また「300人」参加すれば、ミスター宍戸の護衛を務める六六六人衆の多くを宍戸から切り離し、決戦を有利に進めることができます。
    (撤退を阻止できなければ、ミスター宍戸の決戦シナリオは返金処理となります)

    【5】ランキングマンへの接敵
     黄金闘技場の地下機械室に潜む、謎めいた六六六人衆「ランキングマン」への接敵を試みます。ランキングマンは地下で新たなる六六六人衆の選定を行っていましたが、灼滅者が襲撃すると同時に、その能力である「十の戒め」を放ち、時空を歪めて間合いを取ります。
     十の戒めは、襲撃者とランキングマンの間に10個の『密室』を作り出す能力です。いずれの密室にも「亡者の群れ」が巣食っており、全ての密室の全ての亡者を撃破しない限り、ランキングマンの元に辿り着けません(辿り着けない場合、ランキングマンの決戦シナリオは返金処理となります)。

    【十の戒め】
    ・密室1『隣家貪らず』……ヒールを使わず、亡者の群れ(クラッシャー)を滅ぼせ。
    ・密室2『偽証せず』……エンチャントを使わず、亡者の群れ(ジャマー)を滅ぼせ。
    ・密室3『盗まず』……バッドステータスを与えず、亡者の群れ(キャスター)を滅ぼせ。
    ・密室4『姦淫せず』……「恥ずかしい」を受けるまで攻撃してはならない。
    ・密室5『殺さず』……手加減攻撃だけで亡者の群れを滅ぼせ。
    ・密室6『父母を敬え』……18歳未満が使うサイキックのダメージは半減される。
    ・密室7『安息せよ』……ダメージとヒールを毎ターン交互に使え。
    ・密室8『神の名唱えず』……ルーツ・ポテンシャルのサイキックは使用禁止。
    ・密室9『偶像を持たず』……武器のサイキックは使用禁止。
    ・密室10『他に神は無し』……殺人鬼のサイキックしか使えない。

     戦闘中に上記の条件に違反すると、黄金闘技場から追放されます。
     この選択肢を選んだ人は、いずれか1つの密室に「適切に配分される」ので、参加時点で人数を分配する必要はありません。ただしプレイングで密室を指定した人は、そこで戦える可能性が上がります。
     密室の突破には最低12人づつ、つまり「120人」必要です。参加者が多ければ、突破と同時にランキングマンにダメージを与える事も可能です。もし「600人」参加すれば、最大のダメージを与えた状態で決戦シナリオに移行します。

    【6】竜種「ファフニール」の撃破
     ジークフリート大老に肉薄すると、彼の肉体を覆う血液が、大量の竜種「ファフニール」に変わり、灼滅者に襲いかかってきます。灼滅者達がかつて遭遇したファフニールと同等以上の力を持っており、1体撃破するには「10人」の灼滅者が必要です。
     戦場には「60体」のファフニールがいます。撃破数が0~12体だった場合は、多数のファフニールがジークフリート大老を護衛するため、決戦に挑むことができません。(決戦シナリオは返金となります)
     13~60体のファフニールを撃破できた場合は、混戦状態となってファフニールが適切な護衛を行えなくなります。また、血の力を多く奪われる事により、撃破数に応じてジークフリート大老の戦闘力が低下します。

    【7】脱出路確保
     黄金闘技場への突入路である「正門」付近を制圧し、全員の脱出路を確保します。
     作戦の開始後、襲撃に気付いた混成ダークネス軍が増援に現れ、退路を断とうとします。
     この混成ダークネス軍と戦う「最低200人」の灼滅者が必要です。
     最低人数を満たせなかった場合、全参加者が脱出時に疲弊した状態で混成ダークネス軍の攻撃を受け、多数の戦死者を出す凄惨な撤退戦を強いられるでしょう。
     灼滅者が多くこの選択肢を選ぶほど「脱出時の重傷・死亡率」が下がり、「400人以上」が参加すると0%になります(もちろん脱出以前の戦闘で重傷・死亡を受けている可能性はあります)。
     敵は六六六人衆とアンブレイカブルの混成軍です。また、黄金闘技場に居るかもしれない敵を予想すると、その敵と戦える可能性があります。


    ■リプレイ

    ●由井・京夜の軍勢
     アンブレイカブルの一方の雄、ジークフリート大老の誇る黄金闘技場の戦場の一つ、由井・京夜の軍勢に相対するのは170名余の灼滅者。
     戦略的には大きな価値の無い戦場であったが、集まった灼滅者達は、ミスター宍戸を攻略する作戦を側面支援しつつ、ミスター宍戸に合流していた闇堕ち灼滅者、由井・京夜の救出或いは灼滅を図るという目的をもって戦いに挑んでいた。
    「宍戸が生存しているとこの後に立て直されるかもしれません。
    必ず倒すために増援は阻止します!」
     戦場に侵攻する灼滅者の先陣を切って切り込んだ狩野・翡翠(翠の一撃・d03021)がこの作戦の意義を声高に叫ぶと、多くの灼滅者が鬨の声をあげて、由井・京夜の軍勢へと突入を開始した。
     最初の激突を制したのは、青と白のエプロンドレスの少女。彼女は、巨大な十字架を縦横に振るって敵陣を切り裂いていく。
    「切り込み隊長ではないが、まあ目に付いたので突撃するとしようぞ!」
     有栖川・ドロシー(マッドネスアリス・d37334)と彼女のクロスグレイブがまるで竜巻のように戦場を席巻し、
    「これ以上ミスター宍戸をのさばらせない為にも、増援にはいかせないよ」
     と、榊・那岐(斬妖士・d00578)が愛刀、禍断刀【蒼風】で、木っ端六六六人衆を切り捨てる。
     彼の【蒼風】が振るわれるたびに、蒼き燐光があたりを微かに照らしていく。
     この那岐の蒼く静謐な刀術の閃きに対抗するかのように、真紅の爆発が戦場にとどろいた。
    「どっかーん」
     日輪・銀朱(汝は人狼なりや・d27546)のご当地ビームが、火を噴いたのだ。
     それは、蒼と赤の競演に続くように、【うたかた】隊の6名も、戦場に躍り出た。
    「行くぞ、みんな!」
    「あぁ、俺たちの力見せてやるぜ」
    「料理してやる、どこからでもかかってきな」
    「殺人鬼としては、この字懸念は見過ごせないのよね」
    「よくわかないけど、やっつけるよ!」
    「さぁ、戦場に、睡蓮をさかせるよ」
     6人の息の合った攻撃。だが、この攻撃は、前線に駆け付けた一体のキツネ面のダークネスによって跳ね返される。
     灼滅者の襲撃にかけつけたダークネスの指揮官、暗殺武闘大会で闇堕ちした後、姿を眩ませていた由井・京夜であった。
    「この雑魚風情が、調子に乗りすぎだよ」
     左右に手下のダークネスを引き連れ、うたかたの6人を戦闘不能に追い込んだ京夜は、手にした魔導書からハガキを一枚取り出して、ヒラヒラと見せつけながら、翡翠ら精鋭の灼滅者に親しげに声をかける。
    「お前さん達、気が早いんじゃないかねぇ。そんなに慌てなくとも、決勝戦が始まる頃には招待状を送るつもりだったのだよ。ほら、これが、その手紙だ」
     そして、ピンとはじいたハガキが灼滅者の側に落ちると、きちんと切手を貼ったハガキには、武蔵坂の灼滅者を決勝戦に招待する旨の連絡が書かれている。
    「私たちをバカにしてるのですか?」
     そのハガキを拾った鈴森・斬火(炎刃狂姫・d00697)は、京夜に問いかける。
    「バカにはしていないよ。でも、ちょっと面白くないかな」
     せっかくの面白い舞台を台無しにしようとしているんだからねと、うすら笑いで答える京夜。
    「ふふふ、なら、もっと面白くなくしてあげましょう」
     斬火の掌から炎の激流が京夜へと飛び、それを合図に、京夜の手下達と灼滅者の戦いが始まった。
     京夜は、手下を防御的に配置しつつ、いつでも後方に弾いてミスター宍戸の本隊に合流できる堅実な布陣。
     灼滅者は逆に、短兵急に突破を図り、中央突破背面展開で合流を阻止しようと攻勢を取る。
     相反する2つの戦術が戦場でぶつかりあい、その優劣を競おうとしていた。

    ●中央突破背面展開
    「招かれざる客は、お引き取り願うよ。
     キリングリヴァイヴァー、使ってないんだろう?
     ならば、ここで足止めさえしておけば、お前たちは手詰まりになるのさ。
     無理に戦う必要は無い。
     時間を稼げば、こちらの勝ちだからな」
     戦場の灼滅者を挑発するように、或いは、嘲るように手下達に指示を出す。
     個々の戦闘力で勝るダークネスに守りに入られると、さしもの灼滅者も苦戦は免れなかった。
     ここは無理にでも突破口を開かねばと、崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)は、大脇差 九嶺友成を掲げて無理攻めに攻め続ける。
    「義兄さん、前に出すぎだよ」
     その來鯉のグランドファイアに連携して、崇田・悠里(旧日本海軍系ご当地ヒーロー・d18094)が、來鯉の隙を埋めるように、怪談蝋燭を灯すと、
    「悠里さん、人の事言えないです。でも、崇田家の力を示すとき、いまです」
     ヴァーリ・マニャーキン(本人は崇田愛莉と自称・d27995)の妖の槍が戦場を貫くように進むと、悠里の横に並ぶ。
    「ありがと、愛莉。じゃ、一緒に行きますよ」
     悠里とヴァーリが、背中合わせにくるくる踊るように戦場を駆ける、
    「2人とも十分です。あとは、我輩が! スターゲイザー!」
     2人がかき回した戦場を、ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)が、更に切り裂いて傷口を広げ。
     そして、『崇田家は僕が守る!』と裂ぱくの気合を込めて、來鯉の、ご当地ダイナミックの爆発が突破口を開いたのだった。
    「時間稼ぎ? それはこちらのセリフだ。僕たちの狙いは、ミスター宍戸を殺すまで、キミ達を足止めする事なのだから」
     來鯉は、ミスター宍戸らを狙う灼滅者達の健闘を祈りつつ、崇田家の仲間達と共に京夜の軍勢の背面を抑えるように立ちふさがった。
    「お前たちの狙いは黄金武闘大会を阻止ではなく、ミスター宍戸の暗殺? 一般人のミスター宍戸を殺す為に灼滅者を動員したというのか?」
     崇田家の活躍で後方を遮断された京夜は、慌てたように後退をあ始める。
    「ミスター宍戸を殺すなんて、とんでもない!」
     だが、後退しようとする京夜の前にヴィンツェンツ・アルファー(機能不全・d21004)、伴・創(子不語怪力乱神・d33253)、アガーテ・ゼット(光合成・d26080)の3人が立ちふさがった。
     まずは、ヴィンツェンツが、京夜の側にいた手負いの六六六人衆をチェーンソー剣で両断してみせる。
     そのヴィンツェンツの攻撃に、チッと舌打ちする京夜を、今度は、アガーテが黙示録砲で狙い撃つ。
     最後に、京夜に邪魔だと薙ぎ払われたヴィンツェンツを、創が回復させる事で、見事に京夜の足を止めたのだ。
    「しょうがない、俺に構うな。お前達はミスター宍戸の所に行くんだ!」
     足の止まった京夜は、やむを得ないと増援可能な位置にいる手下たちに命令を発する。
     それを聞いて躊躇いなく京夜を見捨てて動き出そうとする六六六人衆だが、その動きは、
    「それは、読んでいたのです」
     あまあまティーをコクリと飲んだ李白・御理(白鬼・d02346)が、動き出した六六六人衆に狙い澄ましたダイダロスベルトで華麗に貫き通す。
    「私もフォローするのですよ」
     御理に続けて放たれた、エリス・メルセデス(泡沫人魚・d22996)の魔力の竜巻が敵六六六人衆の着衣を引き裂くと、それに呼応するように多くの灼滅者達がミスター宍戸への援軍を阻止すべく、六六六人衆の陣容に切り込んでいく。
     灼滅者の本隊が突破を果たした今、戦場の戦力は灼滅者に不利に傾いていたが、状況は完全に逆転していた。
    「時間を稼げば、こちら(ダークネス)の勝ちだったでゴザったか? でも、ここからは……時間を稼げば、オレたち(灼滅者)の勝ちでゴザルよ!」
     友として京夜を救いに来た、天鈴・ウルスラ(ファイター・d00165)が、京夜をスカイハイ・フィンガーで牽制しながら、フムンと勝ち誇って宣言する。
     由井・京夜の軍勢との戦いは、攻守所を変えて最終段階に突入しようとしていた。

    ●救出、由井・京夜
     ダークネスの軍勢は、京夜の命令でミスター宍戸の増援へと向かおうとして、それを阻止せんとする灼滅者と激しい戦闘を繰り広げる。
     一方、後退を阻止された、由井・京夜のまわりには、京夜を狙う灼滅者が集まり激しく攻め立てていた。
    「…どうして宍戸に協力するんだ? ……何というか、意外」
     クルセイドソード『徒姫』を振るい京夜と相対した桃野・実(すとくさん・d03786)は、自分よりもミスター宍戸を優先して救援しようとした京夜の行動に疑問を感じて問いかける。
     問いかけれた京夜は、無知蒙昧な灼滅者に講釈するように、その理由を語りだした。
    「ミスター宍戸は面白いのだよ。彼のプロデュースがあれば、世界はもっと面白くなるだろう。ダークネスによる分割支配の復権? それの何が問題か? 結果的に、みんなが楽しくなる世界が一番なのさ」
     と。
     面白いから……京夜がミスター宍戸の陣営に加わった理由は、その程度のものであったらしい。
    「楽しいねぇ。楽しゅういこうは、うちのポリシーでもあるんやけど。……でも、他人を犠牲にした楽しいは許されないんや!」
     この京夜の戯言を聞いた、花衆・七音(デモンズソード・d23621)は、白衣を閃かせて京夜に肉薄すると、その誤りを正すべく槍を振るう。
     だが、その槍の一撃は、今日夜の頬を薄く斬ったのみでかわされてしまった。
    「犠牲の無い世界なんて存在しないよ。それとも、君たち灼滅者は『犠牲なくして世界を支配する方法』を考え付いたとでも言うのかい?」
     京夜が、七音に、そして集まった灼滅者に逆に問いかける。
     この問いは、武蔵坂学園がダークネス組織を滅ぼす力を得てから何度も問われてきた問いであったが……勿論、そんな都合の良い方法などある筈は無い。
     答えの無い問いに灼滅者が気圧されそうになった時、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)は、答えの無い事を理解したうえで、決然とした眼差しで口を開いた。
    「少なくとも、ダークネスによる不条理からは救われます。あとは、人間の努力次第でしょう」
     と。
     武蔵坂は政治結社では無いのだ、世界の支配など領分では無い。
     武蔵坂の本懐はダークネスによって虐げられる一般人を救う事のみ。
     それ以外の事は、それ以外の者が考える事なのだから。
    「ずいぶんと無責任な事だねぇ」
     この紅緋の言葉に、半ば呆れたような京夜。
     だが、紅緋の言葉は、周囲の灼滅者にとって、ストンと胸のうちに落ちてくるような説得力をもっていた。
    「無責任? それは、違うっすよ。理想の世界は与えられるものではないっす。試行錯誤を繰り返し、千里の道を一歩づつ歩き、少しづつ近づいていくものっすから」
     体育会系の高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)は、つまりは、日々の鍛錬と同じことなのだと胸を張る。
     武蔵坂は『灼滅者の互助組織』でしかない。
     その武蔵坂が、犠牲なくして世界を支配を確立する事などできる筈が無いではないか。
     世界は、一人一人の人間が手を取り合い一歩づつ歩むことでのみ未来へとつながっていくのだから。
     水燈・紗夜(月蝕回帰・d36910)も、麦の言葉に同意して思いを口にする。
     ダークネスによる分割支配こそが人類を繁栄に導いた?
     それは、確かに過去の結果であろう。
     だが、結果を導く『式』を書き換える事ができるならば、結末もまた変わってくる……。
    「麦君の言うとおりだね。僕たちの生きているうちには達成できないかもしれない。でも、その努力の先にこそ、理想の未来がある……ダークネスに分割支配された世界では、その努力を行う事が許されなかったのだから」
     紗夜の言葉は、ダークネスに分割支配された結果、人類は『最良の世界に』到達できなかったという可能性を示唆するもの。
     ダークネスによって支配されていなければ、今よりも人類は繁栄していたという可能性は、何人たりとも否定できないのだから。
     勿論、その可能性が少ない事はわかっている。
     普通の人間がそれほど上等なもので無い事は、テレビのニュースやワイドショーを見るだけで理解できるだろう。
     だが、それでも……。
    「重要なのは、理想を実現できるかどうかではないんだよ!」
     クリス・レクター(夜咲睡蓮・d14308)が、紗夜の言葉を妄言だと決めつける京夜を怒鳴りつけるように叫ぶ。
     理想を実現できるから戦うというのは、つまり、必ず勝てる戦いから戦うという事。
     だが、必ず勝てる保証が無ければ戦ってはいけないのか?
     いや、違う。
     京夜とは闘技場で戦ったこともあるが、あの戦いは『必ず勝てるから戦った』わけでは決してないのだ。
     上手く言葉にならないクリスの意思を理解して、渡来・桃夜(いつでも通常運行・d17562)が言葉を引き継ぐ。
    「つまりクリスが何を言いたいかというとだね……。オレたちが求めるのは、理想を実現させるために努力することが許される世界なんだ!」
     軽い口調で話し始めた桃夜であったが、滅多にない真面目な口調でその意思を京夜に叩きつけた。
    「未来の可能性? そんな不確かなもので、世界を壊してよい筈がないのだよ!」
     京夜は、桃夜の言葉に反論するも、その強い意思に少しだけたじろいだようにジリっと後ろに下がる。
     これを好機と見たのか、迅・正流(斬影輝神・d02428)と獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)、呉羽・律希(凱歌継承者・d03629)の3人が、周囲の敵を無視して京夜のもとへと走った。
     当然、相対していた敵からの攻撃でダメージを被るが、それでも、今は、京夜の元にどうしても行くべきだと思ったのだ。
    「聞こえますか由衣君! 嘗て貴方は相棒を助けてくれましたね…
    その時の借りを返しに来ました! 未来は確かに不確かなものかもしれません。ですが、ここに集まった皆は、由衣君との未来を信じて集まったのです。その思いは、信じる心は、決して屈しない。だから、由衣君も未来を信じてほしい!」
     正流の正面からの言葉に、京夜は怯えるように鋼糸を振るい、正流を傷つける。
     だが、その攻撃も正流達を怯ませる事はできず、京夜に大きな隙を作ってしまう。
     その隙を見逃さずに振るわれるたのは、天摩の建速守剣。
    「隙ありっす、京夜センパイ。闇堕ちしてダークネスになれば、すぐに強い力が得られるし、場合によっては指揮官として軍勢を指揮できるっすよね。でも、それが本当の強さなんすか?」
     建速守剣の一撃は京夜の体を素通りし、肉体を傷つけずにその霊魂を切り刻む。
    「ダークネスじゃない、『由井京夜』の強さはそこで行き止まりじゃないっしょ! 『由井京夜』として今のダークネスの力を超えて見せてくれっす!」
     天摩の言葉に霊魂を切り刻まれる痛み以上の痛みを感じたのか、京夜は表情を歪ませる。
     ミスター宍戸に面白さを感じたのは何故だったのか?
     ダークネスを滅ぼした後の未来に希望を持てなかったからだろうか? 武蔵坂がダークネスを滅ぼした結果、世界にダークネスの分割支配時代以上の苦しみと犠牲を強いるかもしれないと恐れたからだろうか?
     その疑問が揺らぎとなったのか、ダークネスである京夜から、本当の由井・京夜の姿を見て取った律希が、燎原烈華を駆って裁きの光と共に京夜の胸に飛び込んだ。
    「京夜さん、見つけましたよ! あなたは、私が堕ちた時、最前線で声を聴かせてくれた京夜さんです。あなたはダークネスなんかに負けはしない! だって、どんなに煽られても貴方は決して揺らがなかったのだから。だから、帰りましょう!」
     善なる光に包まれ、京夜に縋りつくように涙声で訴える律希の髪を、京夜の手が優しく触れ……。
     そして、
    「今から、帰るとテストの補修が大変そうだよねぇ」
     と、おどけるように言って、律希の胸の中で意識を失なった。
     この数分後、指揮官である由井・京夜が灼滅者に戻り戦線を離脱したことで、ダークネスの軍勢はミスター宍戸への増援を諦めて敗走し、この戦場の戦いは最良の結果をもって終結する事となる。

    ●計りえぬ凶刃
    「できる限り一人にはならないで、誰かと一緒に戦って」
     柿崎・法子(それはよくあること・d17465)やリースリング・ヴァイングート(樽守の翠猫・d33079)、ミネット・シャノワ(白き森の旅猫・d02757)、それに風隼・樹里(ティミッドウルフ・d28501)達【Aile】 のメンバーが、そう灼滅者達に呼びかける。可能なら近くの他チームの状況にも目を配れればと言い添えて、海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)と盾河・寂蓮(泥濘より咲く・d28865)、そして水無瀬・旭(両儀鍛鉄の玉鋼・d12324)が班の前衛となるべく進み出た。
     ガル・フェンリル(ダブル尻尾の狼わんこ・d24565)の遠吠えや【武蔵坂調査隊】 の名乗り(決めポーズ付き)、メディック・メイ(ソウルフルアーティスト・d36771)や西場・無常(特級殲術実験音楽再生資格者・d05602)達がサイキックを乗せる音楽が戦場に響き渡り、強襲戦の始まりを告げる。
    「へへっ、ヒーロー推参っ! てな」
     ダイナマイトモードに変身した七嵐・北斗(憧れヒーロー志望の暴れ鬼・d19920)の蹴り放つリングスラッシャーが、光の尾を引いて敵の首元に襲い掛かる。斎賀・なを(オブセッション・d00890)が叩き落とすように降臨させた十字架もまた、敵群を焼き払うように光を放った。
     その煌きに身を隠すようにして、八葉・文(夜の闇に潜む一撃・d12377)が、城・漣香(焔心リプルス・d03598)が、そして莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)もまた、弱った敵を密やかに的確に屠っていく。その支えのひとつとなるのは、バベルブレイカーを掲げる浦原・嫉美(リア充爆破魔法使い・d17149)や白藤・幽香(リトルサイエンティスト・d29498)、鋼糸を操る敷原・舞(糸紡ぎのエトワール・d35853)らジャマー陣による積極的な足止めだ。
    「なぁーにがエンドレス・ノットだ! 散々人のクラブをノットノットしてくれやがって忌々しい!」
     そんな(個人的な)怒りを叫ぶ深水・嘉元(土曜日の関係者・d03615)に続いて駆ける八尋・虚(幻蜂乙女・d03063)の背中で、学生自治寮【EndLess】の旗が閃く。寮の名と共に 【エンドレスノットノット】 のチーム名を背負う灼滅者達は、意気込みもそれぞれに六六六人衆の軍勢と対峙する。
    「悪いな、助かった」
     果敢に単騎での遊撃を繰り返そうとする月村・アヅマ(風刃・d13869)の背中を咄嗟に庇った体勢のまま、華村・雛菊(あした・d10803)は強く頷く。絶対に、誰も死なせない。自分の中にも、六六六人衆はいるけれど……否、だからこそ、だ。
     あの時、違う選択をしていれば、もしかしたら。そんな思いは今も宮儀・陽坐(餃子を愛する宮っ子・d30203)の中にある。だからこそここで決着をつけようという決意も、また。
     そして、今その決意のためにすべきことは、敵将と同胞達の戦いに眼前の六六六人衆をなだれ込ませないことと、ともに立つ仲間達を守り抜くこと。陽坐の指先に集まった癒しの霊力が、誓いを映すように強く輝いた。
     白石・翌檜(持たざる者・d18573)の目が戦場を冷静に睨み、敵陣の乱れた箇所にサイキックを打ち込んでいく。いつになく真剣な目をした藤原・漣(とシエロ・d28511)、いつも通りのお祭り騒ぎだとほほ笑むフローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153)。彼ら 【饅頭図書館】 の流麗なまでの連携に狂いはない。露払いこそ我々の見せ場と叫んで、椎葉・花色(夜の花嫁・d03099)もまた殲術道具を唸らせた。
    「援護は僕たちが」
    「――せめて、誰か一人を救うぐらいは」
     綾河・朔真(星屑の夢・d03722)、角前・雀(贖罪の山羊・d38357)らが頷き合い、分担して前衛の癒しに当たる。頼もしい癒し手達に支えられて、前線の灼滅者達が再び勇ましく声を上げた。
    「皆遊ぼう、死ぬまでずっと!」
    「はっはっは、ボク様が来たからには万事問題なくいける!」
     来栖・律紀(ナーサリーライム・d01356)と蝶番・鍵弥(パッシフローラクルフ・d16795)の笑い声に、 鷹科・疫(セレンディピティ・d10321)と来栖・恭司(微睡む衝動・d01761)もまたそれぞれに笑みを浮かべた。自らが傷付くことも厭わず敵にぶつかっていく彼ら【未完成なasyl】 に続いて、廿楽・燈(花謡の旋律・d08173)も果敢に敵陣の只中へ飛び込んだ。
    「もぉー、数が多い!」
     だが、負ける気などさらさらない。深海・水花(鮮血の使徒・d20595)や詩夜・沙月(紅華護る蒼月花・d03124)、葛城・百花(デンドロビウム・d02633)達もしかと狙いを合わせあい、確実に敵の数を減らしていく。
    「無茶しないでね」
     回復と同時にかけられた夕月・澄音(紅血の薔薇・d17335)の言葉が、何より心強い。ひとつ頷いて、アイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384)は妖の槍を捻るように繰り出した。心臓を穿たれた六六六人衆の肉体が、そのまま塵のように消え果てる。
    「……向こう側、ちょっと敵に押され気味でしょうか」
    「よっし、オレ助けてくる!」
     戦場を見渡していた上里・桃(スサノオアルマ・d30693)の言葉に、いち早く白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)が身を翻す。素早い救援にゆるりと礼を言って、ナオ・ココノエ(高校生人狼・d37819)は六六六人衆に向き直った。
    「ランキングマンのとこに行かせるわけにはいかないのです」
     微かに聞こえてきた呟きに、【自転車部】の奇白・烏芥(ガラクタ・d01148)が頷く。それに、名古屋でのような真似は繰り返させない。敵の一撃を彼が受け止めるのとほぼ同時、科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353)が紅蓮を纏う刃で同じ相手の生命力を奪い取る。更に一歩深く踏み込んだ長沼・兼弘(キャプテンジンギス・d04811)が、ほぼ零距離からのご当地ビームでその腹部を貫いた。
     彼らの連携に負けじと、【花宿】 や【腕時計】 の灼滅者達もまた、後に控える仲間達の道を切り開くべく声を掛け合いサイキックを放つ。――あと少し、この先に、エンドレス・ノットがいる。
    「ここは拙者らが」
     灼滅者達を押し返さんといよいよ猛る六六六人衆の攻撃をクロスグレイブで受け止め、阿久沢・木菟(彼女募集中・d12081)が呟くようにそう言った。
    「俺の屍を越えて……いや、死なないけど!」
     つまりはそのくらいの勢いで行ってほしいと、アルヴァン・ルティック(青い月を求めて・d21573)が片目を瞑ってみせた。
    「まあアレよ。盾が踏ん張ってるうちに倒せるだけ倒しちゃえって話」
    「ここは俺達に任せな。その代わり、しっかりカタをつけて来いよ?」
     ハノン・ミラー(蒼炎・d17118)と椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)も並び立ちながらそう言って、仲間達を促した。
     往け、と。
     誰からともなく視線を交わし、そして彼らディフェンダーが敵を押さえ込むことで開けた道へと、まず最初に飛び込んだのは【TG研】の灼滅者達だった。
     彼らに続き、エンドレス・ノットの喉元に届けと、灼滅者達は各々の得物を手に駆け抜ける。そして。
    「……流石は、ハンドレッド・コルドロンのもう一人の仕掛け人、といったところかな……?」
     その殺気と『業』の匂いに、ジェック・ジエンド(カルマハンター・d22823)は思わずそんな感想を漏らしていた。
     彼が見つめるのと同じ方向へシェリー・ゲーンズボロ(白銀悠彩・d02452)の構えたバスターライフルの、微かな、本当に微かな震えは、赤と銀の刃を鎧う敵の力量を正確に推し量れているからこそのもの。それをじっと見返して、エンドレス・ノットは口を開いた。
    「エンドレス、エンドレス、エンドレス……ノット!」
    「君は自分の最期を否定できるかな?」
    「強き灼滅者よ、現時点でその質問の答は是である」
     言葉と同時に、銀が舞った。エンドレス・ノットの周囲一帯を無数の薄刃が飛び回り、灼滅者達の肉体を容赦なく切り刻んでいく。多くの相手を巻き込んでなお重く体に刻まれるダメージの大きさに、二重・牡丹(セーブルサイズ・d25269)や契葉・刹那(響震者・d15537)達ディフェンダーは一瞬顔を見合わせ、すぐにエンドレス・ノットへと向き直る。
    「だったら、そのノットちゃんの答えを今から変えさせちゃうんだよ~☆」
     膝をつきかけ、踵で床を擦りながらもそう笑ってみせた殺雨・音音(Love Beat!・d02611)の放ったレイザースラストを、エンドレス・ノットは身に纏う刃で受け流す。
    「本来ならば、殺人階位の序列所持者となるべき強者達よ。その魂が灼滅者に留まらず、ダークネスとして襲い来るならば、或いは」
    「闇堕ち? する訳ないでしょ。死んだ方がマシだわ」
     言い放つついでとばかりにチェーンソー剣を横薙ぎに振るい抜く喚島・銘子(砕星軌・d00652)に、糸木乃・仙(蜃景・d22759)が続く。半ば強引にねじ込むような形でぶつけられた尖烈のドグマスパイクが、装甲の継ぎ目をギリギリで突いた。
    「それに、援軍さえ抑えられれば私達の勝ちよね」
     近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)の言葉に、その通りだと吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)が頷く。
    「……みんなを、守るためにも……誰一人だって、倒れさせないためにも、ここで……止めるんだから」
     刃に裂かれ、血を流しながら、なおも皆の盾となるのだと立ち続ける彼女達に向けて、雨咲・ひより(フラワリー・d00252)が交通標識を振り、癒しと異常への耐性を贈る。
    「我こそは蜂家十八代当主、蜂敬厳! 御首級、頂戴仕る!」
     名乗りの声も高らかに蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)がエンドレス・ノットへと肉薄し、渾身の紅蓮斬を叩きつけた。続いて躍り出た久条・統弥(影狐抜刀斎・d20758)が、「一度手合わせしたかったんだ」とDMWセイバーを振り上げるのに合わせて、斥谷・巧太(ロミオの父・d25390)もデモノイド寄生体を纏わせた右手をごきりと鳴らした。
    「散々暴れまわりやがって。容赦しねーぞ、エンドレス・ノット!!」
     振り下ろされた二つの蒼を毛髪一本ほどの距離でかわしたエンドレス・ノットが、全身の装甲を展開する。数えるのも馬鹿らしくなる程の刃の群れが狙う先は――桜田・紋次郎(懶・d04712)。避け切れぬなら耐え抜いてみせようと覚悟を決めて深く構えた彼を、けれど無数の斬撃が襲うことはなかった。
    「私は、少しでも皆さんを守れているんでしょうか。あの人が信じてくれた、私で居られているんでしょうか……」
     仲間とエンドレス・ノットの間に割って入った湊元・ひかる(コワレモノ・d22533)
    が、確かめるように呟いて倒れ込む。勿論だと言わんばかりに一度頷いて、紋次郎はその血に宿る炎を揺らめかせた。
     その揺らめきを追いかけるように、【銀庭】 の灼滅者達がエンドレス・ノットへと攻めかかる。舞い飛ぶ刃をティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)や夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)達ディフェンダーがその身で食い止める間に、媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074)がカミの刃を放ち、九条・茨(白銀の棘・d00435)がゼロまで距離を詰めて打ちかかり、北沢・梨鈴(星の輝きを手に・d12681)や唯空・ミユ(藍玉・d18796)達が後方から狙い撃つ。
    「背中は預けたぜ、悠花」
    「全力でお守りしますよ!」
     文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)と香祭・悠花(ファルセット・d01386)も頷き合い、見事な連携を取りながらエンドレス・ノットと対峙する。咲哉の切り込んだ日本刀の刃が、敵の刃のひとつを跳ね飛ばした。
    「!」
     再び刃の群れを現出させ、その身に纏おうとするエンドレス・ノットに、ハレルヤ・シオン(ハルジオン・d23517)が相対したままニタリと嗤う。
    「キミをちょうだい。ボクに、もっともっと感じさせて」
     高速で振り回されたウロボロスブレイドが、宙に浮く刃を叩き落としながら敵本体へと噛みつくように迫る。短く、金属の軋むような音が戦場に響いた。
    「キミにも、人だった頃があったんだよね。だから何ってわけじゃないけどさ」
     その後に続ける言葉は胸の内にしまって、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)が深く息を吸い込む。集気法によって傷を塞ぎ、まだまだ仲間達の盾になろうと、彼女は得物を構え直した。
    「その首、貰い受けよう」
     これなら届く。この敵を討てる可能性は確かにある。そう判じて、江田島・龍一郎(修羅を目指し者・d02437)が握った刃を閃かせる。合瀬・鏡花(鏡に映る虚構・d31209)の一撃をいなした直後のエンドレス・ノットを、彼の一閃はしかと捉えていた。
    「エンドレス――、」
    「殺人階位最期の更新は、お前ら揃って灼滅して終いだ!」
     呻き、それでも灼滅者達に無数の刃を向けようとするエンドレス・ノットの真正面に、川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)が飛び込んで叫ぶ。ロケット噴射を伴う、強烈なハンマーの打撃が、刃の装甲を打ち砕く。否、砕かれたのは装甲の表面だけではない。吹き飛ばされ、闘技場の壁に叩きつけられたエンドレス・ノットの全身に、瞬間ひびが走った。
    「エンドレス、エンドレス、……エンドレス」
     声が、最後まで吐き出されることはなかった。鋭い音と共に、エンドレス・ノットの体が砕け散り、消えていく。
    「これで、おしまいですね」
     荒い息のままそう言って、祀乃咲・緋月(夜闇を斬り咲く緋の月・d25835)が仲間を振り返る。後顧の憂いのひとつは断った、と。
     蛇原・銀嶺(ブロークンエコー・d14175)達が殿を守る中、そうして灼滅者達は続く仲間に後を託す。即ち、ランキングマンとの決戦を。

    ●密林の幻鳥
     黄金闘技場にひしめいているダークネスが、六六六人衆だけではないことは言うまでもない。ケツァールマスク率いるアンブレイカブル達もまた、灼滅者達を薙ぎ倒し、ジークフリート大老の許へ馳せ参じんと鬨の声を響かせていた。
     だが、相手を先へ進ませるわけにはいかないのは灼滅者達とて同じだ。
    「ここから先には、いかせマセンヨっ」
     シャルロッテ・モルゲンシュテルン(夜明けに響く鎮魂歌・d05090)が力強く拳を上げ、同時にダイダロスベルトを解き放つ。それを合図に、灼滅者達は一斉に駆け出した。
    「敵拠点に大勢で強襲とか結構燃えるな!」
    「あたしも微力ながら一緒に戦うよ」
    「僕もそろそろカッコイイとこ見せとかないとだし?」
     東郷・勇人(高校生デモノイドヒューマン・d23553)、小森・奈穂(焔の穂・d02324)、ロナ・ウェスト(喧嘩もする日和見主義・d24496)らもここぞとばかりに気合を込め、敵の軍勢に立ち向かっていく。
     ケツァールマスクと直接まみえたことはないが、出来る限り皆の力になりたいと、覡・由斗(狂愛の輪舞曲・d27172)もまた向かい来るアンブレイカブルに狙いを定める。彼に寄り添うように立つカティア・リーネン(無垢な狂人・d24643)も、また。
     個人の力量では敵将に敵う筈もない。だが道中の露払いにはなれる筈だと、柊・葉(不知の若葉・d16025)が狙い定めて攻撃を放つ。雪佐里・鈴奈(高校生殺人鬼・d21057)、藤原・広樹(過ぎる窮月来たる麗月・d05445)達もそれに続き、とにかく敵の足を止めようと全力で攻め立てる。仲間達の助けとなるべく、ノーチェ・フェリリーゼ(ドリームリヴァイバー・d19095)もまた戦場に手裏剣を撒き、敵軍に毒を与えていく。
    「Gueltige Klinge――舞いて貫け!」
     エリザベート・ベルンシュタイン(勇気の魔女ヘクセヘルド・d30945)の魔法を帯びた一撃に続けて、同じ【閑古鳥鳴く襤褸屋敷】 の灼滅者達が敵陣へと果敢に切り込んでいく。切羽・村正(唯一つ残った刀・d29963)が攻めかけ、旭日・色才(虚飾・d29929)が守り、フェイ・ユン(侠華・d29900)が癒す。その連携が乱れる様子は、ない。
     必ず活路を開くと誓って、 【雪隠れ邸】 の鶫之澤・火夜(花よりほかに知る人もなし・d02832)も霜月・薙乃(ウォータークラウンの憂鬱・d04674)、雨月・葵(木漏れ日と寄り添う新緑・d03245)と共に戦場を走る。
    「ここは僕らが」
     椎宮・樹(大学生神薙使い・d21851)やネモ・フィニステール(世界の果て・d11632)、清水・樹(小学生神薙使い・d24725)達、弾除け役を買って出た灼滅者が、屈強なアンブレイカブルに身体ごとぶつかるようにしてその進路を阻む。
    「戦闘不能者は任せてください」
     負傷し、動けなくなった灼滅者の保護と搬送を引き受ける、多和々・日和(ソレイユ・d05559)を始めとした灼滅者達もまた、仲間達の懸念を振り払うような頼もしい表情を浮かべてみせた。
     天羽・むい(ライフイズハッピー・d01612)やトワ・トキアナライズ(アイアムレジェンド・d37796)が着実に敵を弱らせ、乱れた敵陣に四方祇・暁(ダークサイドリッパー・d31739)とユリアーネ・ツァールマン(ゴーストロード・d23999)のコンビが切り込んで更に掻き回す。敵陣の一際薄くなった場所へ踏み込み、更に前進を続けながら、クラウリー・ホール(大学生ファイアブラッド・d17758)とナイト・リッター(伊達ワルザムービー・d00899)が雄叫びを上げる。
    「うぉっしゃー! ボイン、キュ、バインバインの美人ナイスバディ女子プロレスラーに突撃だぜー!」
    「女性が相手ならば俺はある意味全力を出さざるを得ないようだな、ふはははは!」
     高らかな笑い声に、動機はどうあれ、と【羽】の先頭を走る稲垣・晴香(伝説の後継者・d00450)は心中で頷く。
    「本当はもっとドラマチックな形が良かったけど……とにかく、ケツァールマスクはもうすぐそこよ!」
     仲間達の援護を受け、取り巻きのアンブレイカブルを撥ね退けながら、総勢40名をも超える【羽】の戦い手達は一丸となって突き進む。ご当地ヒーローとしての姿を取った神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)や、幸・桃琴(桃色退魔拳士・d09437)達のバトルコスチューム姿、何より蒼月・碧(碧星の残光・d01734)の一撃を皮切りに放たれる、格闘技主体の連携攻撃。彼らとアンブレイカブル軍のぶつかり合いは、この激戦の中にあっていっそ華やかなほどだ。
     怒号と剣戟の中、ほう、と楽しむような女の声がした。その声音を知る灼滅者達が、弾かれたようにそちらへ視線を走らせる。果たしてその先に、幻の鳥を象るマスクとコスチュームに身を包んだ女傑が立っていた。彼女の行く道を塞がせまいと立ちはだかるアンブレイカブルを殴り飛ばしながら、館・美咲(四神纏身・d01118)が叫ぶ。
    「ケツァールマスク、お主との戦い、楽しみにしておったぞ!」
    「そうか、灼滅者!」
     短く怒鳴り返して笑うケツァールマスクの体表で、その闘気が禍々しく揺らめく。ああ、彼女もやはり楽しんでいるのだ。そう確信して、クリミネル・イェーガー(肉体言語で語るオンナ・d14977)も構えを取る。戦いは楽しいが、それはそれとしてケツァールマスク達をジークフリート大老の増援に行かせる訳にはいかないのだ。
    「蒼の王の身体を砕いた一撃だ……お前もたっぷり味わえ!」
     不知火・隼人(蒼屍王殺し・d02291)が全力で繰り出した一撃を、ケツァールマスクの肉体が正面から受ける。突き抜けるような衝撃にもニヤリと笑みを見せて、そのまま彼女は返礼とばかりにラリアットを放った。
     その予想以上の威力に瞠目したのは、夕崎・ソラ(灰色狼・d27397)だけではないだろう。かつて彼らが直接まみえたその時よりも、ケツァールマスクは明らかに強さを増している。それは何も、灼滅者達が強くなる間に彼女もまた強くなったのだと言い切って済ませられるような強化ではなく。
    「ハンドレッドナンバー化しているの……!?」
     飯島・芽射子(食べるの大好き・d32613)の零した呟きに、恐らくそうだろうと御前・心也(大学生ファイアブラッド・d29350)が頷いた。それならば、今の灼滅者達に一撃でこれほどのダメージを叩き込まれることにも説明がつく。
     背中から壁に叩きつけられた者達と入れ替わりに――或いは彼ら負傷者を庇うように、 【編み物研究部】 の面々が躍り出る。奥村・都璃(焉曄・d02290)や久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)を始めとするディフェンダー陣が、降り注ぐ拳や肘、蹴り、ボディプレス、あらゆる攻撃を引き付けんと闘技場の床を踏みしめた。彼らと共に立つことを頼もしく思いながら、グラジュ・メユパール(暗闇照らす花・d23798)が妖の槍を閃かせる。その穂先を握り止めたケツァールマスクが、周囲のアンブレイカブル達を目で促すのを、海堂・詠一郎(ラヴェイジ・d00518)は見逃していなかった。一人たりとも大老の許へは行かせないと、すかさず彼は武器を突き出す。同じく配下の動きを見て取った安曇野・乃亜(ノアールネージュ・d02186)が、詠一郎と背中を合わせるようにしてレイピアを構えた。
    「邪魔するなって言ってるじゃない。退いてくれる?」
     ジークフリートとの戦いに友を送り出した 【漣波峠】 の一員として、風峰・静(サイトハウンド・d28020)も全力で敵を押し返そうと戦う。椿森・郁(カメリア・d00466)と月夜野・詠(星空サイコロ・d27418)も強く頷き、互いを庇い合って継戦の構えを見せていく。
     一度は意識を手放しかけるほどボロボロに傷つきながら、それでも青山・莉瀬(青い超新星・d05761)は魂の力で立ち上がる。
    「サファイア……インパクト!」
     それでも真正面からぶつかって来る彼女の攻撃を、ケツァールマスクはやはり正面からまともに受けてみせた。鳥型のマスクが脳天から床に落とされ、なおも楽しげにゆらりと起き上がる。その足が向かおうとする先に、何度でも灼滅者達は割り込んでいく。ある者が強烈な打撃に倒れ、またある者が天井近くまで吹き飛ばされた後に床にその背を打ち付けようとも、灼滅者達は怯まない。怯んでいる暇など、初めからない。
    「やはり強敵ですわね。……そうでなくては!」
     口の中に溜まる血液を吐き捨てながらでさえ、百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)の浮かべる笑みは優雅だ。かつて武人の町に潜入した頃からの成長を見せつけるように繰り出した一撃が、敵の脇腹に深く刺さる。ダメージがない筈もないだろうが、それでもケツァールマスクは表情を変えず、代わりに構えだけを変えたのだった。
    「しぶといな……だが、別の場所には、行かせねぇぞ?」
     横目でそれをちらと見て、すぐに功刀・慧悟(鮫歯の蒼き風・d16781)は眼前のアンブレイカブルにシールドを叩きつけた。倒せば確かにこちらの勝ちだ。だが、こと今回においては、抑え切ってもまたこちらの『勝ち』なのだ。
     とは言え、簡単に抑え切らせてくれる敵でないこともまた確か。ケツァールマスクはじめ、アンブレイカブル達の猛攻を受け続ける仲間を少しでも長く立たせる為、ニャオ・プラキティア(ごーいんぐまいうぇい・d30401)が、重音・愛(いとしのオフェリア・d31841)が、他にも多くのメディック達が必死に回復サイキックを使う。
     回復されるなら、それ以上のダメージで撥ね飛ばせばいい。そう言わんばかりに膝を屈め、技の構えを取ったケツァールマスクから仲間を庇おうと、アリアーン・ジュナ(壊れ咲くは狂いたがりの紫水晶・d12111)が咄嗟に動こうとした、その時。
     ふと、戦場の奥の方がざわめいた。それはすぐさま大きな波となって、この場に立つ者全てにその報を伝える。俄かに大きく乱れた敵陣の動きもまた、ざわめきの意味を端的にこの場の灼滅者達に教えていた。
    「足止め成功……かな」
     呟いて、しぶとく敵を抑え続けていた冬城・雪歩(大学生ストリートファイター・d27623)が笑みを浮かべる。拳や足捌きを隠す長いドレスが、上がった呼吸に合わせて揺れていた。
    「よもや……よもや我が師ジークフリートを打ち倒すとはな」
     ケツァールマスクが構えたままの両手が、微かに震えている。戦いの疲労からではない。師と仰ぐ男を討たれた憤怒からでも、まして悲嘆からでもない。それを証立てるように、彼女の双眸は一層強く煌きながら灼滅者達を見据えていた。
    「……続きはいつか」
     もしもできるならば、武蔵坂で。そう言い残して、リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)がケツァールマスクに背を向ける。作戦目標であるジークフリートの撃破が叶った今、灼滅者達がこの場に留まる意味はない。負傷者を守りながら撤退を始める彼らに、ケツァールマスクが拳を向けることはなかった。
    「いいだろう、武蔵坂学園。我が師をも上回ったその力、次はこのケツァールマスクに全て向けてくるがいい! お前達の技、必ずや受け切ってみせよう!」
    「望むところだ。次こそは倒させてもらうぞ」
     惜しむように一度振り返った果乃・奈落(その刃の先に果ては無く・d26423)が、そう言って殿部隊に混ざる。
     彼女との決着は、いずれまた。それが、どのような終わりになるかは分からないが――今は役目を果たしたという事実を胸に、ケツァールマスクの軍勢を抑え抜いた灼滅者達は急ぎ戦場を離脱するのだった。

    ●ミスター宍戸を逃がさない!
    「さて、そろそろ逃げるとしようか」
     そこは黄金闘技場の隠された玄室。貴賓室のような造りをしたその部屋は、しかし窓もなく密閉されている。ただの人間であるミスター宍戸を、居並ぶ他勢力のダークネスから守るための配慮であった。
     そして、 配下の六六六人衆がミスター宍戸に報告する。
    「宍戸様、逃走経路は幾重にも枝道を作り、どこにでも逃げられるようになっています。おそらく、武蔵坂に見つける事は不可能でしょう」
    「すべての道はローマに通ず、という訳か。それはイカンなぁ」
    「……は?」
    「まあいい。まずはキミ達が軍勢単位で先行したまえ。ワタシはキミ達の後ろから着いていく。灼滅者に遭遇したら、すぐルート変更の伝達をするように」

     闘技場に突入したレオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)は、まず「六六六人衆の多い場所」を探す。一般人のミスター宍戸が、この緊急時に、いつ裏切るかわからない他種族と行動を共にする可能性は「ありえない」と判断した為だ。
     まずは由井・京夜、もしくはエンドレス・ノットの付近。ランキングマンの付近は十戒が展開されており、亡者が湧くため不適格。ケツァールマスクとファフニールの戦場は除外して構わないだろう。「ダークネスのいなさそうな所も探そうよ」
     と、野乃・鈴親(ハニードロップ・d27057)はそれに加えて提案する。確かにそれは、先の方針を補強するに足る捜索基準であった。「私達が奥まで進んだ後にこっそり逃げる、という可能性もあるよね?」
     フィオル・ファミオール(蒼空に響く双曲を奏でる・d27116)はそう慎重に予想する。そして、鈴親ほか数人を呼び集め、外周の警備を開始するのだった。 いっぽう、空飛ぶ箒による空からの偵察を試みた空木・天音(不知始・d04258)、成身院・光姫(小穿風・d15337)、チェーロ・リベルタ(忘れた唄は星になり・d18812)の3名は、早々に偵察を断念する事となってしまった。
     この黄金闘技場には、六六六人衆やアンブレイカブルなど多数のダークネスが入り乱れている。彼らにとって「飛行中の灼滅者」は、隙を見せた絶好の標的であるため、集中攻撃を浴びてしまうのだ。急ぎ方針を転換し、神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)、水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)、八蘇上・乃麻(木俣の宿りし者・d34109)、大和・命(は遊んで欲しい・d05640)たち【刹那の幻想曲】チームが確保た「全体が見渡せる高所」へと移動し、偵察を継続する事となった。

    「破壊完了。もうここからは逃げられないよ」
     大神・朋(君が言葉に触れた日々は・d37902)の幻狼銀爪撃が、ヘリコプターを破壊する。
     ヘリポートを探していた彼らは、いち早く先行してそれを発見し、停めてあるヘリを全て破壊したのだ。錚々たるメンバーのダークネス達に、これが必要とは思えない。明らかに、宍戸の為に用意されたものであろう。
     と同時に、ヘリポートの下部が突然めくり上がり、六六六人衆の集団が現れる。ミスター宍戸の指示を受けた先行部隊のひとつである。しかし彼らは、既に破壊しつくされたヘリコプターの残骸を見て、一瞬立ち尽くしてしまう。
     
     その隙を、穂照・海(狂人飛翔・d03981)、狂舞・刑(その背に背負うは六六零・d18053)、物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)、アリエス・オデュッセイア(アルゴノーツ・d29761)は逃さなかった。朋と同様の理由でヘリポートに集合していた彼らは、縛霊撃で、ティアーズリッパーで、トラウナックルで、レガリアスサイクロン で、次々と敵を仕留めていく。
     彼ら以外にも、その場には葛木・一(適応概念・d01791)とリュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)の【小鬼】チームなど、多数の灼滅者達が集結していた。ヘリポート制圧の報をリュシールは他の灼滅者達に告げる。
    「こっちは……ちょっと一筋縄でいかなそうな……」
     ヘリポート同様、船を係留する桟橋があるかもしれないと予想した者達は、桟橋に係留されていた「船」に対し、攻めあぐねていた。
    「密室、客船……!」
     赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)は、かつて戦ったスマイルイーターの事を思い出す。
    「やっぱり、これが逃走の大本命だったのかな?」
     そう呟く東雲・蔓(求める兎・d07465)の視線の先にある、一隻の豪華客船。それこそが密室客船。船に仕掛けられた「移動する密室」なのである。
    「私達だけ……だと、少し危険を感じますね。この船に近づくものを寄せ付けないようにしつつ、やってくる六六六人衆だけを排除しましょう!」
     朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)はそう言い、他の灼滅者達にその旨を伝達していく。
    「まさか、本当にあるなんて!」
    「ほらみろ! やはり……宍戸は灼滅者が確保した脱出路から逃げるつもりだったのだ!!(バァーン!!!)」
    「まさか、部長と瑞葉さんの予想が正解とは……」
     照崎・瑞葉(死損ないのディベルティメント・d29367)が破壊した正門の柱の奥に「隠し通路」を見つけた一恋・知恵(喜劇の語り部・d25080)を見て、井上・あるは(意の上のアルファ・d25216)は素直に感嘆する。

     それと時を同じくして、
    「いや、灼滅者から最も遠い場所に、脱出を設けるのでは?」
     そう考えた桐谷・要(観測者・d04199)は、正門からもっとも遠い出口の傍らに、巧妙に隠された隠し通路を発見する。
     それらの報告を同時に受けて、灼滅者達は宍戸の目論見を危惧する。
     今までの逃げ足の早さから考えても、おそらくミスター宍戸は「ひとつでも逃走路が残っていれば、そこから何らかの方法で逃げ出してしまう」に違いない。
     逃走路はひとつではなかった。その事実に驚愕する者もいたが、多くの人間にとって為すべき行動は変わらなかった。それぞれ、自らが予想した場所に赴き、逃走路を満遍なく発見すれば良いのだから。
    ●脱出路を巡る戦い
    「随分こそこそと……ネズミにも劣る、可哀想な行動ですこと」
     有栖川・真珠(人形少女の最高傑作・d09769)、駒沢・佳奈子(レディロリータ・d20602)、舞風・光莉(光の桜と祈りの睡蓮・d24945)のチーム【果ての薔薇】は、まず観客席の調査に乗り出す。
     エンドレスノット等の他戦場には近づかぬようにして(もし他の戦場に宍戸が現れたのなら、そこで戦う仲間達が援軍要請を出してくるだろう)、御神楽・フローレンス(大学生エクソシスト・d16484)やカルステン・フランベルク(緋の十字を背負う者・d19534)も加わって、襲いかかるダークネスをなんとか駆逐しつつ、観客席を隅々まで探す。
     平坦な地形で多数のダークネスを相手取りながら探索することは、大変な負担を伴った。やむを得ず深手を負ってしまった山梨・和也(ジュリエットの父・d26826)や一条・京(爽涼雅遊・d27844)など、被害状況は積み重なってゆく。

     だが苦戦の末、観客席には合計で3つもの脱出路を発見する事ができた。
    「探せ系の絵本は昔けっこーやってたかんね!」
     雨宮・音(サフィレット・d25283)は先輩の山田・霞(オッサン系マッチョファイター・d25173)に向かってうそぶく。
     しかし尚も戦闘は続く。童子・祢々(影法師・d01673)の奮闘を軸として、観客席の灼滅者達は、脱出路から現れた宍戸配下と切り結んでゆく。
    「この建物がローマのコロッセオに近いと想定すると……」
    「あれだな、嵩兄!?」
     宍戸の居場所について考察していた五十鈴・嵩哉(天下無敵の器用貧乏・d01158)は、五十鈴・美命(神誓守の舞巫女・d34215)の指摘で目的の場所を発見する。
     やはりこの闘技場にも、貴賓席……いわゆるVIPルームが設置されていた。そして幾重にも襲いかかる六六六人衆の軍勢を、即席で合流した羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)と共に、少しづつ蹴散らしていく。だが……。
    「……いませんね?」
     苦闘を経て辿り着いた貴賓席には、一切の人影も存在していなかった。
    「いや、ここで間違いない」
     最前線で戦っていた櫻井・聖(白狼の聖騎士・d33003)は、最後の力を振り絞り、貴賓席の奥のコンクリート壁を切り裂く。
     聖の予想では、そこにはVIP専用の逃走経路があると想定していた。だがそこにあったものは……。
    「モニタリングルーム、ですか?」
     そこは、無数のテレビモニタが所狭しと並ぶ、広大な映像受信室であった。
     アウグスト・カティサーク(大学生ダンピール・d20666)、エイリル・シーズナー(エニシダの小枝・d25847)、壬生・誉(大学生人狼・d27518)達【Tirnan'Og】の面々が、次々と部屋に乗り込む。
     部屋の内部には、突然の破壊に驚愕の表情を隠せない、数名の六六六人衆達がいた。
    「数が少なくないでござるか?」
     狐仙・朧(黒狐・d26685)は手近な六六六人衆に戦いを挑みながら、疑問を呈す。
    「それはおそらく、ここが『スタート地点』だったからでしょう」
     月之瀬・華月(天謡・d00586)は、先程までここに今よりも多くの人の気配があった事を感じ取っていた。
    「つまりミスター宍戸達は最初ここにいて、それから色んな逃走経路にバラバラに逃げた。だからここは逆に手薄なんですね」
     華井・鼓(小春日和・d27536)もその推理に納得の表情を浮かべる。
     癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)が微かに笑みを浮かべる。
    「これは、使えるかもしれませんね……!」

     一方その頃……。
     奇亜求・智明(インフィニティキュービック・d01668)や奇亜元・智明(インフィニティキュービック・d02485)達数多くの灼滅者は、闘技場の地下に存在した駐車場を探索していた。
     まるで襲撃を警戒していたかのように、車の護衛を命じられていた数多くの眷属が、わらわらと押し寄せてくる。
    「あはは…これは、楽しいね」
     緋桜・美影(ポールダンサー系魔法少女・d01825)は戦場にフリージングデスをばらまきながら、愉快に笑う。そして日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)がジリジリと包囲によって眷属を追い詰め、世界・勇士(大学生ご当地ヒーロー・d04138)やナイアル・ブラックマン(大学生ダンピール・d07913)が、一匹づつ叩き潰してゆく。
    「だいたい片付きましたYO~!」
     回復役として戦場全体を俯瞰していた蛇護・アニー(タイガーでバニーなダンピール・d24492)の言う通り、地下駐車場の眷属の駆逐は見事完了した。脱出路もひとつ見つけたので、この後はこの脱出路を監視する任務につく必要があるだろう。
     だが。
    「まだ、油断はするなよ……」
     万事・錠(オーディン・d01615)達【武蔵坂軽音部】は、地下駐車場に停められた一台の中継車に、ゆっくりと近づいてゆく。
     城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)は、錠が慎重な理由に気付く。その中継車は、先程連絡にあった客船と同様に、「密室」が施されていたのだ。
    「陸海空の逃走手段を全部用意するなんて、宍戸はちょっと流石だね」
     と感想を述べながら、千波耶を戦闘態勢のまま近づいていく。
     その時、中継車から不気味な笑い声がが響く。
    「この大きさならば、中に乗っている六六六人衆六人衆は、僕らだけで倒せるかも」
     青和・イチ(藍色夜灯・d08927)の言葉と同時に、漆黒の影をまとったふたりの六六六人衆六人衆が中継車より現れる。いずれも明らかな手練だ。だが、
    「俺らのセッションをたっぷり味わいな!」
    「ふぉろーはうちに任せとき!」
     北条・葉月(独鮫将を屠りし者・d19495)と羽二重・まり花(恋待ち夜雀・d33326)がいち早く参戦し、全員揃った【武蔵坂軽音部】の怒濤の攻撃によって、中継車もろとも、手練の六六六人衆達は破壊されたのであった。

    ●全ての道は……
     黄金闘技場の選手控室は、多くの灼滅者が脱出経路として予想した場所だった。なぜならば、ひと目から隠れている上に、強いダークネスが揃っている筈だからである。
     そんな予想の通り、一目で強敵と分かる六六六人衆がそこに詰めているのを確認して、文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)は鈴木・レミ(データマイナー・d12371)と一度だけ視線を合わせる。
     同じく控室やそこからリングへ続く選手入場口を疑っていた穂積・歩夢(夢に抱かれ眠るもの・d01824)や瀬宮・めいこ(微笑む白蝶・d01110)、寺見・嘉月(星渡る清風・d01013)もそこへ合流し、中にいた六六六人衆へと強襲を仕掛けていった。
    「やっぱり、装飾品の裏にありましたわ! 隠し通路!」
     戦いのさなか、セラフ・ジェヴィーチ(ヴァローナ・d10048)が見つけ出した脱出路からも、六六六人衆が溢れ出してくる。彼らを一掃すべく、黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)が、霧島・夕霧(雲合霧集のデストロイヤー・d19270)が、泉野・栖輝羅(蒼き泉に映る星・d22929)が、それぞれの殲術道具を鋭く振るった。
    「こーいう時って、お前の血は何色だーって言えばいいんだよねー? くひっ」
     愉快そうに笑う紅咲・灯火(血華繚乱・d25092)の攻撃に合わせて、加々見・亜梨子(グランギニョルの詠み手・d28107)もサイキックを放ちながら呟く。
    「そろそろ閉幕といきたいね」
     宍戸との因縁も、そろそろ終わりにしなくては。そのためにもまずは目の前の敵を倒すべく、神鳴・洋(アニソンラバー・d30069)も羽刈・サナ(アアルの天秤・d32059)も全力で攻撃を続けていた。
    「ふむ、こんなものですか」
     灼滅者達の猛攻によって室内の敵があらかた片付いたのを見て、潮崎・耀士(大学生七不思議使い・d33296)は隠されていた脱出口を塞ぐように立つ。
     色々と考えはしたが、皆で敵の逃走経路を確実に一つずつ塞ぐのがまずは大切だ。
     こうして、黄金闘技場の選手控室は灼滅者達に制圧されたのだった。
    「地下にシェルター兼VIPルームのような施設があってもおかしくないのではないか? それこそ、他のダークネスにも秘密にしてあるような……」
     そう指摘するラド・カヴィーロ(オンディーナの記憶・d14935)の言葉に、黒谷・才葉(ナイトグロウ・d15742)も頷く。
    「人が少なくて、目立たなくて、他勢力のダークネスが少ないのが、宍戸にとって安全な場所ってことになるよね」
    「とすると……ん、この空間は?」
     奇妙に何もない廊下の一角に違和感を覚えた有明・海(中学生ご当地ヒーロー・d22275)が、壁に向かってサイキックによる攻撃を放つ。すると、砕けた壁の向こうに地下へと続く長い階段がその向こうに現れたではないか。
     互いを守り合うように列を組んで、灼滅者達は慎重にその階段を下りていく。
    「地下通路だとかベタかも知れねえと思っていたが、宍戸あたりじゃあそのベタをやりそうでもあるしな」
     階段を下り切ると、そこには天王寺・司(龍装闘士ドラグレイカー・d08234)や雲珠・大龍(ショートストップ・d26493)が予想した通りの地下通路が広がっていた。
    「空洞状の空間になっている……のかな」
     周囲を警戒しながら、赤石・なつき(そして心をひとつまみ・d29406)が呟く。慎重かつ迅速に、灼滅者達は地下空間の探索を開始するのだった。
    「この区画は駐車場みてぇだな」
     整然と並ぶ車両を見るなり、花崗・怜(一人十色・d20507)、木津・実季(狩狼・d31826)、瑞月・浩志(思い出・d32546)達【伽藍堂】のメンバーはその前輪のタイヤをパンクさせにかかる。本当に使われる可能性がどの程度かは分からないが、相手に逃走手段を残してやる理由などない。
    「自分、こういうのあんま思い付かないっすから、思い付く人ってスゲーっすよ……」
     そんな感想を漏らす蜂谷・香澄(針と薫り・d37577)だが、もちろん宍戸のことは褒めていない。
    「改心も絶対しなさそうだよね……」
     楢原・ユウ(ちっぽけな勇気・d34706)もそう頷いて、タイヤに武器を突き立てていく。と、最後の車両がパンクさせられたその時、駐車場の床の一部が持ち上がり、六六六人衆達が飛び出してきた!
     だが、壁や床に隠し通路があると疑っていた人守・鏤骨(綺麗なあんよはどこですか・d35844)がいち早くそれに反応し、交戦を開始する。

     ヴェルグ・エクダル(埋み火・d02760)と赤秀・空(虚・d09729)のコンビも素早くそこへ参戦し、襲い来る六六六人衆を返り討ちにしていく。
     ほどなくして、地下駐車場の逃走経路は彼ら灼滅者によって完全に塞がれるのだった。
    「闘技場の建築様式はギリシャか、それに近いもののはず。なら……」
     地下から地上へ通じる通路があるはず。そう予想して、八守・美星(メルティブルー・d17372)は地下空間を探索していく。
    「まだ奥があるようですね」
     壁や天井を崩して目に付く枝道を塞ぎながら、アルクレイン・ゼノサキス(黄昏の天使長・d15939)も空間のさらに奥の方へと目を向けた。
     正面の入り口から、そろそろ一番離れた側に辿り着くころだろうか。進むほどに迷宮の様相を呈してくる地下空間を歩きながら、立風・翔(風吹き烏・d03511)はそう予想する。
    「しかし、本当に迷宮だな。これなら配下も配置しやす……」
     言いかけた久遠・翔(悲しい運命に抗う者・d00621)が、反射的にマジックミサイルを撃ち放った。
    「く、ここにも現れたか灼滅者!」
    「やっぱりここにも出てきたね!」
     近くの灼滅者達にも聞こえるよう、しっかりと声を上げて、冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)もすぐさま現れた六六六人衆の応戦に入る。その声を聞いたのか、鹿島・紗瑠呂亭(金髪レトロゲーマー娘・d26335)が、アラクネ・ナチア(接触不可・d37414)が、素早く彼女らに合流してその技を存分に振るった。
     そして、前を行く配下たちを合わせて八割以上灼滅され、あらゆる脱出手段とことごとくの逃走経路を断たれ、遂に最後の緊急籠城部屋へ逃げ込んだ宍戸。彼との決戦に向かう仲間達へと連絡を入れ終えた識守・理央(オズ・d04029)が、微かな笑みを浮かべて呟く。
    「すべての道はローマに通ず……だ」
     それは友の行く道を切り開いたことに対する誇りと、彼らへの最大級の信頼を含んだ笑みだった。

    ●ランキングマンの「十の戒め」
    「いいでしょう。ルールは把握しました」
     夏渚・旱(無花果・d17596)はそう言って、黄金闘技場の地下機械室へと視線を向ける。
     この先は、六六六人衆「ランキングマン」が時空を歪めて作り出したという、10個の「密室」が存在する。
     だが、散逸する戦場の中で、武蔵坂はここに232名の精鋭を揃える事に成功した。
     準備は整った。後は戦い、10の密室を打ち破り、決戦に向かう仲間を送り届けるだけだ。

    ●密室1『隣家貪らず』―――。
     どこに明確な境界線があるという訳では無い。これまでに幾度か遭遇したそれらと同じく、灼滅者達は唐突に、自分達が密室に閉じ込められた事を知った。
    「ヒールを使わず……全く、非合理的な戦い方ですね」
     吸ヶ峰・血早(高校生ダンピール・d35925)はそう呟き、同時に推理する。これはあくまで「違反すると追放する」というルールであり、サイキックの使用を封じる程の力はない。ならば……。
    「ドレインは、大丈夫なようですね」
     血早は手近な亡者にライフブリンガーを突き刺し、ニヤリと笑う。
     他方では、カタリナ・クライス(ご当地デモローもどき・d22206)がDCPキャノンで亡者達を着実に退けながら、ひとり考察していた。
     ランキングマンとは、一体何者なのか……?

    「回復なしの、ガチンコ勝負や!」
     東当・悟(の身長はプラス三センチ・d00662)を先頭に突撃した【Chaser】の面々は、破壊力には破壊力とばかりに、亡者を次々と駆逐していく。
     静かに眼鏡を外した若宮・想希(希望を想う・d01722)の腕が鬼と化し、死角より襲いかかる亡者に対しては、悟の背負った着ぐるみ、もといミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)が、状態異常をばらまき動きを鈍らせていく。

    「ここを突発していかないと、クレンドさん達が進めませんからね。」
    蒼珈・瑠璃(光と闇のカウンセラー・d28631)の後ろから、彼女のサーヴァントと、そしてリーシャ・クォルシム(逆巻く光・d17631)とゴルゴス・バーヴェスタ(島根を愛するもの・d18851)が続き、血路を切り開く。リーシャとゴルゴスが提唱した現場での即席チームは、百戦錬磨の灼滅者達にすぐ受け入れられ、続く密室でも取り入れられていくのだった。

    「回復使うな? 望むトコロ! あたしのタフさ舐めんじゃないヨ!」
     高い攻撃力を持つ亡者に対し、即席の連携には非常に大きな意味があった。攻撃担当の彼らと、堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)を代表とするディフェンダー達が、それによって整然と戦列を組むことができたからである。
     それには、ディフェンダーとして常に戦場に目を配り、位置取りを意識し続ける淡白・紗雪(六華の護り手・d04167)の働きも非常に大きいものであった。

     戦いは続き、そして……。
    「ま、一花咲かせるにはちょうどいい舞台だったね」
    「我は盾!理不尽なる矛を止める者!」
     深束・葵(ミスメイデン・d11424)と鴨川・拓也(修練拳士・d30391)の言葉と共に最後の亡者が灼滅され、灼滅者達は次なる密室へと導かれる。

    ●密室2『偽証せず』―――。
    「さあ、来るが良い亡者ども! 我が剣の錆としてくれよう!」
     高らかに告げながら、テトラ・グロウリ(ラインスタッド・d22780)が先陣を切る。無論、無策の突撃ではない。それは仲間を決戦に送る為の時間稼ぎ……貴重な1分1秒を得る為の戦い方なのだ。

    「クレくんには日頃世話になってるし、ここで少しでも手伝ってあげなきゃねー」
    「晶たちの道、切り開きにいこうか」
     それは、近しい者達が決戦に向かうサイレン・エイティーン(嘘月トリックスター・d33414)と刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)も同じ気持ちであった。
     しかし、エンチャントが使えないという制限は想像以上の枷だった。ヒールの大半は勿論として、主要な攻撃サイキックの一部も使用を封じられてしまう。そんな中、渡里は冷静に「亡者が何回の攻撃で死ぬか」を計り、皆に情報共有していく。
     だが、この制限を逆に活用する者もいた。
    「足手纏いになるのはごめんよ。じゃあね」
     前線で孤軍奮闘し、深い傷を負ってしまった刑ヶ原・殺姫(ラジカルキラー・d10451)は、とどめを刺しに来た亡者達が止めを刺しに来る前に、自分にブラックフォームを掛け、わざと密室から追放された。それは、ヒールによって仲間達の戦線を停滞させない為の、即応ながら優れた判断だった。

    「闇堕ちはダメだぜ! 誰か一人でも、いなくなるなよ!」
     殺姫の判断を正しいと見て取ったレイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)は、得意技であるブレイドサイクロンを封じられた状況に苦慮しながらも、そう仲間達に呼びかける。

    「後ろは大丈夫。だから、安心して前を見て」
     清水・式(愛を止めないで・d13169)は、清めの風を主体として、亡者の群れが繰り出す状態異常を次々と解除していく。後詰めの灼滅者達の、キュアを中心とした後方支援が、結局の所この密室では「正解」であった様だ。だが、如何せん火力の不足は否めない。回復しつつ仲間達の盾となっていた式も、深手を負い撤退する事となってしまった。
     だが、いくばくかの重傷者を出しながらも、灼滅者達は徐々に徐々に歩を詰めていき、やがて……。
    「嘘つきに偽証せずを求めるとは、何事でございましょう!」
     可罰・恣欠(リシャッフル・d25421)のとどめの一撃と共に、第二の密室はあわや敗北の瀬戸際で、破壊されたのであった。

    ●密室3『盗まず』―――。
     この密室は、明らかに「死闘」の体を形成していた。
     熟練であるが故の過ちなのか、戦いの非常に早い段階で、バッドステータスを使うサイキックを扱った者が数人追放されてしまったのだ。最初の数人を見て使用を中断できる者達もいたが、制限に違反するサイキックしか持たない者が非常に多く、亡者の群れを前にして何もできない灼滅者達は、結局、ぎりぎりまで攻撃を引き付けた後、ただ撤退するより方法を持たなかった。

     圧倒的な戦力不足の中、暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)は群れの中心で獅子奮迅の活躍をしていた。回復を行わず、蹂躙のバベルインパクトによる確実な打撃を軸に、少しづつ亡者を灼滅し、戦線を押し上げてゆく。だが多勢に無勢、亡者に押し切られて、深手を負ってしまう。
     ここで闇堕ちをする訳にはいかない。サズヤは共に戦う者達を信じ、決死の撤退をするのであった。
    「頑張って! 密室さえ壊してしまえば、あとは決戦に向かう皆様が、必ずやりとげてくれます!」
     逆境の中、蓬野・榛名(陽映り小町・d33560)は皆を励まし、清めの風で癒やし続ける。同時に榛名は、深手を負い撤退するまでの間に数体の亡者を灼滅する事にも成功した。

    「ああ、確かに面倒な戦いっすねぇ。
     ですがぁね? オイラは壊されたくねえんだよ。
     大切な、日常ってやつを……!」
     決死の覚悟と共に、日輪・我楽(汝は人狼なりや・d30707)のマジックミサイルが解き放たれる。
    「殺人鬼の密室に、良い思い出は無いけれど……」
    「亡者ごときに、遅れをとるわけには参りませんもの!」
     どの密室にも対応できるよう待機していた秋良・文歌(死中の徒花・d03873)と凍島・極北(絶対零度・d08712)も戦線に加わる。彼らもまた皆重傷を負ったが、その貢献により、膠着した戦場が徐々に灼滅者有利へと傾いてゆく。

     そして、勝利の時が来た。
     高遠・慎一郎(完全なる第三者・d09701)が最後の一体を零距離格闘で絡め取る。素早く攻撃をいなして亡者の腕を掴み、そのまま地面に叩きつけ、ガンナイフの追い打ちで頭蓋を叩き割る。
    「十戒と言いましたか。姿を現しさえせずに、これだけの数の灼滅者を足止めするとは……」
     第三の密室は音もなく崩れ去った。
     だが、その戦場跡の有様は燦々たる様相であった。
     十戒はあと7つ。果たして、突破できるだろうか……。

    ●密室4『姦淫せず』―――。
    「やぁん…恥ずかしいよぉ…」
    「恥ずかしいデス…ケド…がんばるデス!」
     黒ビキニの極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)と、海賊ビキニのエイミー・ガーネット(きゃぷてんエイミー・d31006)。これは彼女達の普段着だが、亡者達のいやらしい視線(サイキックの名前)を受けなければ戦えないこの密室では、今にもこぼれ落ちそうな露出に恥じらいを覚えなければ、戦い続ける事ができないのだ。

    「うぅ…こっちを見ないでほしいです…見ないでって言ってるです!!!」
    「は、恥ずかしくなんて…恥ずかしいですー!?」
     特殊な嗜好の持ち主(亡者の名前)を、天羽・瑠理香(幻想パッサカリア・d00607)は地獄投げでどったんばったん投げ飛ばし、マイア・トーグ(マジカルストライカー・d16515)は慎ましい胸元を必死に隠しながら、ソーサルガーダーで味方を支援する。この密室では、全員一度は敵の攻撃を受けてから出ないと戦う事ができない。必然的に亡者が先手を取る事となり、戦いは乱戦にもつれこんでゆく。

    「うわあぁーーん、ばかああぁぁーー」
     乱戦の中心で、見境の無いセクシャルハラスメント(サイキックの名前)を受けたシャオ・フィルナート(猫系おとこのこ・d36107)は、ヒールへの専念を取りやめ、周囲の両刀使い(亡者の名前)をぼこぼこと打ち倒してゆく。多数の亡者を道連れにする事に成功したが、無謀な突撃は代償として深い傷となり、シャオは撤退を余儀なくされた。

     支援に徹していた北山・菜緒(犬巫女・d24877)とシャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984)も、敵に応戦すべく、やむを得ず、荒々しい男達の下卑た歓声(亡者とサイキックの名前)に晒さる事となった。困った密室ですね。
    「はぁんっ…これくらいっ…」
    「うぅ、恥ずかしい……ですが、これで、私も攻めますっ!」
     菜緒は念のためハガネへの攻撃命令を取り消しつつ、シャルリーナの進軍に合わせてグラインドファイアで亡者を焼き払ってゆく。

     そして、そもそも全然平気な人達もいました。大宮・百華(肉体機械化少女・d06723)さんとウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)です。
    「もっと、恥ずかしい百華をみてぇぇぇぇ……!!」
    「ああ…恥ずかしくて気持ちいい、ですわ……!」
     とはいえ、彼女達の戦略は的確だった。ふたりは深手を負いながらも、亡者達の中核を撃破する事に成功し……

    「やりすぎですよ、そろそろ年貢を納めて下さいな……」
     九条・御調(宝石のように煌く奇跡・d20996)の素晴らしい締めの言葉とスターゲイザーによって、密室は無事破壊されたのだった。

    ●密室5『殺さず』―――。
    「みんなと一緒なら怖くありません。どんな相手でも掛かってきなさい」
     竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645)は、大人数のチーム 【万華境】にて、手加減以外の攻撃を許されぬこの密室を戦い抜いてゆく。まずは藍蘭と古海・真琴(占術魔少女・d00740)が、チーム内外にこだわらず負傷した灼滅者を回復し続ける事で足場を築く。
    「さぁ、僕たちの力を見せつけてあげましょうね!」
    「安心して、峰打ちだよ!」
     次に花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)の指示のもと、赤暮・心愛(赤の剣士・d25898)、神津・唯牙(ほんわか狼・d27954)、メロディ・フォルティシモ(太陽のバイオリニスト・d28472)ら攻撃陣が、一丸となって同じ敵を集中攻撃する。
    「殺さないように注意するのは、なかなか難しいですね……」
     華神・瑠璃(紺碧の雫・d24365)、マリナ・ガーラント(兵器少女・d11401)、高階・桃子(追憶の桃・d26690)、烏丸・碧莉(黒と緑の・d28644)、鏡峰・勇葵(影二つ・d28806)、ミラージュ・ミスト(虚光・d28157)はつかず離れずの一で敵を攻撃しつつ、徐々にエンチャントを積み重ねてゆく。
     向けられる攻撃は日向・焔(未来へ輝く・d25913)が全力で弾く。結果として彼は深手を追う事となったが、【万華境】の面々は戦いの趨勢を有利に進め、少しづつ戦線を崩していった。

     そうして崩された戦線に、佐月・理央(大学生殺人鬼・d13107)が飛び込んでゆく。
    「殺さない、殺さない……でも、確実に!」
     地味に堅実に、理央が亡者達に手傷を追わせてゆく。殺人鬼であるとって、それは神経を使う作業だったが……。
    「普段から、強化一般人相手には手加減攻撃をしていますので……」
     物凄い適任がここにいた。その名は枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)である。
    「ちょっと痛いけど我慢してね……」
     といいつつ、魔導書でごつごつと亡者を殴りつけていく。その手際のよさは、もはや新種のサイキックと言って差し支えの無い程だ。
     見事な連携と人選によって、第四の密室も突破された。だが、この密室に参加した灼滅者達は皆、戦いが終了すると同時に力尽き、その場に座り込んだ。
     火力不足により、戦線はかなりの長期に及んだ。それにより、積み重なった傷が限界に達した為である。
     ここまでで、約半数の灼滅者が力尽き、戦線を離脱した。だが、まだここからが後半戦なのだ。

    ●密室6『父母を敬え』―――。
    「私達には意味のない戒めね。年下の子達のため、ここで役に立ちましょう。ね、クー君?」
     密室内に五星結界符を展開しつつ、アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)は傍らのクロノ・ランフォード(白兎・d01888)に声を掛ける。
    「ああ、そうだな。もっとも俺は、両親の事は覚えてないんだけど」
     アリスの殲滅を生き延びた亡者達に、クロノは次々ととどめを刺してゆく。

    「こう見えても私は大学4年生、武蔵坂学園の最年長グループよ!」
     、あるで、サイキックが十全な効果を発揮した事に首を傾げたかのような仕草をした亡者に、葛葉・有栖(紅き焔を秘めし者・d00843)はきっぱりと言い放つ。
     
    「それなりに傾向が判れば…対策の使用はあるってねっ」
     有栖に続き、パニーニャ・バルテッサ(せめて心に花の輪を・d11070)も着々と亡者を撃破してゆく。年齢制限を除けば、この密室には何の制約も無い。
    「大学に在籍してるです故、仕事くらいしないとです」
    「あたし、がんばらなきゃ!」
     前線で壁役として敵の攻撃を受け止める天乃・柯白(貧乏人の薬売り・d25821)を、後ろから真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)が援護する。こうした即席の協力プレイもそこかしこで見られたのも、この密室における戦闘の特徴だった。

    「行くぜ餃子武者! 活躍したら餃子焼き油でパーツを磨いてやるからな!」
    「霊犬の年齢制限は大丈夫なのか……? まあ追放される気配は無いし、頼りにしてるよ、山陽」
     本人が年齢制限を満たしていれば、サーヴァント達が追放される事は無かったようだ。田中・良信(宇都宮餃子の伝道師・d32002)と稲荷坂・里月(迷子の殺人鬼・d13837)はそれぞれ、自分のサーヴァントとの息のあったコンビネーションで、亡者の群れを押しのけてゆく。

     戦闘時の制限が無い事、灼滅者の練度が比較的高かったこともあり、密室6での戦いは完全なる圧勝に終わった。
     戦場の中で思うままに亡者を刺し、抉り続けていた久墨・染示(ネオン・d31777)は、とうとう最後の1人が倒れ密室が消滅したのを見て、満足気につぶやく。
    「ふふ。たまには、密室殺人の犯人も悪くないね」

    ●密室7『安息せよ』―――。
    「魂の安息は……私達の手で、掴みます……!」
     その言葉は、ユーリ・エールウィング(見習いシスター・d14753)の決意を表すものであり、同時に彼女の戦法を表明するものでもあった。
     この密室では、攻撃と回復を織り交ぜなければ追放されてしまう。多くの者はまず初手に攻撃を行ったが、彼女はあえて攻撃のタイミングを一巡ずらす事により、回復支援に穴を作らないように動いたのだ。
     結果として、殆どの灼滅者は事前に考案した戦法通りに動く事が可能となった。
    「初のガチ戦闘が、こんなに上手くいくなんて……!」
    「僕はまだ強くなんてないけれど……皆さんと一緒なら、ここまで強くなれるんですね!」
     ストー・バレルア(迷い子サイレンス・d37818)と神崎・紗耶香(ポインセチアの娘・d38228)は、当初の予定通りのサイクル通りに戦う事に成功する。

    「朱実、一緒に行こう」
    「はい、摩耶おねえさん」
    「流石に、そろそろ決着つけませんとね?」
    「何処でもいいのでさ、っさと始めましょう」
     神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)、神崎・朱実(秘密の花園・d37377)、仙道・司(オウルバロン・d00813)、ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)の4人チームは、亡者の群れに飛び込んでいった。それは、
    「亡者の群れなら、質より量を重視だろう」
     という摩耶の読みもあった為である。だが、亡者達は想像よりも高い実力を備えていた。一体どうやって、ランキングマンはこの強者達を亡者とせしめたのであろうか。地力の強さによって彼らは周囲の亡者達を灼滅し尽くす事に成功したが、盾役を買って出た摩耶と司は、無残な深手を追う事となってしまった。

    「戦術が正しいにも関わらず、ここまで強いとはネ」
    「ええ、まさかこれが、ひとりのダークネスの能力とは……」
     深手を追う前に撤退を始めていたトレイシー・サンダース(シャイニングナックル・d21398)と霧島・風華(風雷の魔術師・d33687)のふたりは、最後の一体にとどめを刺したジンザを見つつ、第七の密室の崩壊を見届けるのであった。

    ●密室8『神の名唱えず』―――。
    「密室、亡者、十の戒め……。私、こういうミステリーサスペンス風味ホラー添え、大っ好物です!」
     攻撃陣の守護を引き受けながら、古寺・車(本で積み木をする人・d34605)のテンションは高い。
    「そんな古寺さんから見て、この亡者達の正体って何だと思いますか? ここまでの強さ、もしかして……」
     柳・真夜(自覚なき逸般刃・d00798)は、最後まで言葉を発することができなかった。圧倒的な亡者の群れに対し、防戦を強いられる事となってしまったからだ。
    「元より、神の名は唱えません。道は、自分達の力で切り開きます」
     色射・緋頼(色即是緋・d01617)は、そんな戦場の中で自らの心をしっかりと持ち、仲間たちを励ましてゆく。

     チーム【天神の月道】の3名は、互いにしっかりと殲術道具を揃え、緻密な連携で亡者の群れに穴を穿っていく。
     煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509)と霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152)の、共に「尖烈のドグマスパイク」から始まる正確無比な連携攻撃が敵軍を蹴散らし、攻撃は逢瀬・奏夢(あかはちるらむ・d05485)とサーヴァントが受け止める。だが亡者の群れは精強で数も多い。
    「……まだ、やる事が残っています。ここで負ける訳には行きません!」
     朔眞はそう言って肉体を凌駕し立ち上がるが、他のふたりは既に限界を超えていた。やむをえず、朔眞はふたりを抱え、密室から撤退するのだった。

    「こんなにいるとか聞いて無いんだけど!!」
    「こんだけいるなら殺し放題じゃねぇか!!」
     士気も高く、如月・麗月(外道復讐鬼・d37915)と梯・槐(歪曲マーダー・d37878)は、日本刀、鋼糸、影業によって次々と亡者を駆逐してゆく。ここまで灼滅者達が決死の覚悟で亡者達と戦ってきた事もあり、数の優勢が、わずかながら灼滅者達に傾いてゆく。
     そして、
    「ここが、年貢の納め時って奴だよ」
     十束・唯織(獅子の末那識・d37107)が最後の雲耀剣を放ち終えた時、そこにはおびただしい量の灼滅者と亡者の血で彩られた、次なる密室への通路が開通していたのであった。

    ●密室9『偶像を持たず』―――。
    「ありゃ、まぁ……お怪我してる人いっぱい……」
     クッキー・コリコパット(アホの子・d24202)はのんびりとした声を出すが、その台詞通り、彼らのチーム【LAZE】と、そして全体の戦況は逼迫し、早くも死闘の様相を呈していた。
     クッキーとセリカ・ソナテウ(癒しの殺戮者・d01841)は必死で支援を行うが、仲間達は次々と倒れてゆく。
     天音・洸耶(月櫻獣・d02036)、大守・花弥(月華夢想・d02189)、大守・焔(闇燈火・d02242)、花杜・莉季(守唄・d02326)……【LAZE】の面々はいずれも手練だったが、戦術の甘い箇所から順番に隙を突かれ、洸耶と莉季は重傷に追い込まれてしまった。

    「これはまずい。りね、危なくなったら……」
    「はいポンちゃん、準備はしてきました!」
     ポンパドール・ガレット(火翼の王・d00268)と真咲・りね(花簪・d14861)は、自らの負傷が限界に達したら、制限されているサイキックを使用する事であえて追放される作戦を立てていたのだ。
     そのために彼らは、攻撃と回復を織り交ぜた攻撃を着実に続ける事ができた。だが、(敵の戦力を読みきれなかったため当然ではあるのだが)追放される事を決断するラインが、相手の数と力に対してあまりにもぎりぎりであった。
     その結果、危険に陥ったらりねにラビリンスアーマーを使って離脱する予定だったポンパドールは、亡者のとどめを受けて昏倒してしまったのだ。
     こうなってしまっては、りねが一人で撤退する訳にはいかない。ぎりぎりまで戦い深手を負ったふたりは、仲間達に担がれて撤退する事となった。
     だが、この2人が「結果として」最後まで戦い続けてことにより、戦いの天秤は灼滅者達に傾き始めたのである。

    「炎よ、従え!」
    「花笠……ダイナミーック!」
     ふたりが開けた戦線に、来須・桐人(十字架の焔・d04616)と舞笠・紅華(花笠剣士ヴェニヴァーナ・d19839)が止めを刺す。戦場にいる灼滅者は皆満身創痍ながら、この攻撃が決定だとなり、第九の密室も崩れ落ちた。
     荒い息を履きながら、晶石・音色(水晶細工の姫君・d30770)はひとり疑問点を考察する。
    「十の戒め……これってモーゼの十戒だよね?」
    「それに、六六六は獣の数字だし……」
    「……何か関係が?」

    ●密室10『他に神は無し』―――。

     殺人鬼のサイキック。俺の、最も忌々しい力――
     妹を殺し、家族を殺したその力を、俺はこれまで殆ど使わずに来た。
     だが、それが必要であるというのならば……!

     狼川・貢(ボーンズデッド・d23454)は、決意のように祈りのように、黒死斬を振り下ろす。
     ここが最後の密室。そして、六六六人衆と殺人鬼、すなわち人殺しと人殺しの、最終決戦場なのだ。
    「殺人鬼の本領を見せてやる……!」
    「てめぇらは、全員潰す……!」
     月影・薫(小学生殺人鬼・d05232)とアッシュ・シンデレラ(大学生殺人鬼・d26218)のコンビも、そのおぞましき本性を全て解き放っていた。周囲に居るのは殺人鬼と亡者だけ。何を気兼ねする事があろうか。
     ふたりの鏖殺領域が、亡者達の血しぶきを巻き上げてゆく。乱戦の中で彼らがどのような顔をしていたのか、知る者は居ない。

    「まだ、しにたくはないので……!
     学園に来てから、しねない理由ができたので……!」
     戦うエルカ・エーネ(うっかり迷子・d17366)の全身を、亡者のそれとは思えぬ鮮血が染めてゆく。
    「結局の所、俺はどうしようもなく殺人鬼なんだろう。なら……」
     殺人鬼らしく、ヒトを殺す様に、やるしかないよなぁ?
     同じく血みどろの中で、入間・眞一(平凡たる逸般人・d07772)は殺戮を続ける。まるでそれが、生まれながらの本能であるかのように。

    「行けっ、廓!」
    「ここは、私達が……!」
     戦闘の想像以上の困難を見て、九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)とユイナ・サカザキ(たゆたう殺人鬼・d17742)は、決戦に向かう哘・廓(d04160)の盾となる。紅は姿勢を下げ、亡者の懐に潜り込む一撃離脱戦法。ユイナは戦法を変更し、前に出てティアーズリッパーと黒死斬を放ち有利な状況を確保する。
     死の間際まで戦う。送り出す友の為に……!

     そうした殺人鬼達の執着が、ようやく実を結び始める。
    「このままじゃ、目的地にはいけないんでしょ?」
    「亡者如き…と侮る心算はないけれど」
    「亡者に興味はないんだ。だから……」
     神威・天狼(十六夜の道化師・d02510)、橘・彩希(殲鈴・d01890)、宮瀬・冬人(イノセントキラー・d01830)の殺気が、戦場を圧倒する程に膨れ上がる。
    「やられる前に」「さくさく殺し」「通してもらう!」
     彼ら3人の戦術は、極めて基本的で、かつ容赦の無いものであった。
     ここまでの殺人鬼達の奮闘によって、多くの亡者達もまた、全身に何かしらの負傷を負っていた。彼らはそれを的確に見抜き、その首を落とし、まっ二つに叩き切る。確実に、亡者の頭数を減らしていった。

     そして……、
    「他に神は無し。ただ、弔いの刃鳴を――」
     密室の最後の一体を倒した花檻・伊織(蒼瞑・d01455)は、疲労と負傷で立つのもままならないまま、決戦に向かう者達を見送った。
     密室に挑んだ者達に、もはや彼らを手助けする力は残っていない。それでも全ての密室を破壊した事により、ランキングマンの元へ彼らを送り届けたのみならず、密室の全破壊によって、敵に相応の痛手を与えた筈だ。
     そしてもし、続く決戦で仮にランキングマンを撃ち漏らしたとしても、今回の痛手を完全に回復する事など、いかなダークネスといえども不可能だろう。
     あとは、生きて帰るだけだ。

    ●『竜種』ファフニール出現
     黄金闘技場のメインリング。
     金色に輝くリングの中央には、筋骨隆々とした肉体を晒した、金髪の大男がいた。
     彼こそはアンブレイカブル最強の一人、ジークフリート大老であった。
     迫る闘いの気配を、既に彼は感じ取っている。
     その内心の高揚を物語るかのように、その身を覆う赤き『竜の血』が、音もなく脈動を始めていた。
    「業大老を葬った時のように、『殲術再生弾』とやらを使って来るかとも思ったが……灼滅者も決死ということか。ならば、俺も全力をもって応じよう」
     ジークフリート大老の全身から闘気が迸ると同時に、その全身を覆う血が盛り上がり、次々と巨大な姿を形成していく。

     闘技場のメインリング、ジークフリート大老の元へと至らんとする灼滅者達は、急激に周囲の気温が上昇したのを感じ取っていた。
     それは鶴見岳以来、感じることも少なくなった炎の気配だ。
    「来るぞ……」
     誰ともなく呟く中、先頭付近にいた灼滅者達が目にするのは、赤き鱗を持つ『竜種イフリート』の姿だ。
    「学園襲撃の時に戦ったが、また現れたかファフニール!」
     淳・周(赤き暴風・d05550)は叫びと共に、バイオレンスギターをかき鳴らす。
    「理性は感じられないっすね……せいッ!!」
     押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)の強烈な一撃が、周の放つ音の波が、直進して来た巨大なファフニールの鼻先へと叩き付けられた。
     だが、足を止めたファフニールの巨体を飛び越えるようにして、また次なる『ファフニール』が翼を翻して現れ、灼滅者達へとその尾を振り下ろして来る。
     床が割け、尾の一撃を受けたサーヴァントがたちまち消滅する。

     接近するファフニール達の威容、そしてそれを繰り出して来るジークフリート大老の力に、月雲・悠一(紅焔・d02499)は驚嘆すら覚えつつオーラキャノンを撃ち放つ。
    「これだけの力のある奴を、この数用意するとは、ジークフリート大老の実力が窺い知れるな……しかし、ファフニールって固有名じゃなかったのか……」
    「随分便利な血液を纏っているものだな……血を操るのはヴァンパイアの専売特許かと思っていたが、認識を改めざるをえないようだ。しかし、その血を得るためにどれだけの戦いを重ねたものか……」
    「あれ、倒したファフニールを、血の形で捕らえて自分の力にして出している……のでいいのかなぁ」
     矢薙・一真(大学生神薙使い・d04825)と饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)はジークフリート大老の能力について考えていた。
     クリスタル・ミラビリスの元老を超える戦闘能力と不死身(自称)。
     体に纏う血からファフニールを創り出す。
     黄金の空飛ぶ円盤を飛ばし、リングを形成する。
     リング内での決闘に勝った者に、敗者の力を吸収させる。
     彼の能力はこうして並べてみてもバラバラで、アンブレイカブルとしてはかなり異質なものがある。
    「確かにジークフリート大老の黄金円盤リングは『倒した相手の力で、勝者をパワーアップさせる』ものだったな。あれには色々な意味で世話になった……」
     一度はそのために闇堕ちさせられた氷室・侑紀(ファシキュリン・d23485)は、手にした槍を振り回して竜の炎を凌ぎつつ、借りを返さねば、と呟く。
    「自身が戦う時にも、『敗者の力を奪う』能力を使っているなら……それこそ血の扱いを得意とするヴァンパイアの能力を、己のものとして応用させている可能性もあるのか」
     一真は得心がいったように頷いた。
     事実はジークフリート大老本人に問い質さねば分からないが、その本来の能力が『勝者が敗者の力を奪う』ことに基礎を置いているならば、常識的なアンブレイカブルと毛色の違う数々の能力にも、一定の説明がつけられるのかもしれない。
     と、そこまで考えて、樹斉と侑紀は顔をしかめた。
    「もしかして、ファフニール出す必要がない状況だったら……」
    「ファフニール60体分の生命力が、ジークフリート大老1人に上乗せされていたと?」
     それは、事実上『不死身』と豪語しても過言でないものだろう。
     今の状況からすると、ファフニールとして実体を与える際には全ての血の力を使う必要があり、一部だけ残しておくような器用な真似は出来ないようだが。
    「何にせよ、放出している今がチャンスってことだろ!」
     【鷹狼星】の指揮を執る柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)は考え込んでいた樹斉らに闘いを促し、ライドキャリバーを前進させた。
    「まずはここを押し通る!」
     それと並走する形で、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)も飛び出していく。
    「全員シッカリ守りきる! んで、てめーはキッチリぶっ飛ばす!」
    「さて、竜狩りと行くか!」
     槌屋・透流(ミョルニール・d06177)の放った制約の弾丸が、炎を吹き出そうとしたファフニールの喉へと飛び込み、その動きを拘束していく。

     勇戦する灼滅者達。
     だが、戦い始めて数分のうちに、灼滅者達の劣勢は明らかとなっていた。
    「生きてますか~?」
    「な、なんとか……」
     久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)の呼びかけに、仲村渠・華(琉鳴戦姫クールドメール・d25510)が返事を返す。
    「こっちもなんとか。でも、連戦は……」
     アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子・d25833)も、荒い息を吐いている。
     華達の『チーム:パレードランナー』やアルマニア達の【空想】といったチームは全員が力を振り絞り、他の灼滅者達とも協力してファフニールと渡り合っていたものの、1体倒すまでの間に複数の戦闘不能者が出るのは確実だった。
     敵は容赦なく、こちらの数を削り取りにかかっている。

    「やー、こりゃ殴りがいがあるね」
     桜川・るりか(虹追い・d02990)の呼び声にこたえて現れた強襲揚陸マグロ戦車が、なんかヌルヌルした跡を残しながらファフニールの群れへと突っ込んでいく。
     マグロのあとを追うようにして跳んだニコ・ベルクシュタイン(花冠の幻・d03078)は、ファフニールの額に着地。
    「悪いが、戦友(とも)が待っているのでな。――其の邪魔はさせぬよ!」
     振り下ろす拳の連打がファフニールの額を陥没させた。
     砕けた鱗の下からあふれる竜血が拳を濡らし、燃やそうとするのを、ニコは即座に振り払う。
    「早いところ決戦部隊を通さないと!」
     久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)の声に、旅団「糸括」の者達は同意を返す。いまだ、決戦部隊をジークフリート大老の元に通すことは出来ていないのだ。
     奇襲作戦の目的を果たすためにも、ここで足止めされているわけにはいかない。
     それに、このままファフニールの群れと戦い続ければ、敗北するのは灼滅者達の側であろうことも、戦っている者達は既に感じ取っていた。
     その前に、いや可能な限り早く、決戦部隊をジークフリート大老の元へ辿り着かせなくてはならなかった。

    「こちらに敵の目を引き付けましょう」
     咲宮・響(薄暮の残響・d12621)はそう決断した。
     既に戦闘は始まっており、決戦部隊はここを突破しなければならない。だが、僅かでも受ける被害を減らさねばならないこともまた、確かだった。
     響の言葉を受け、【戦律】の灼滅者達が動き出す。
    「道こじ開ける手助けくらいはやらねぇとな」
    「それじゃ、もう一狩り行こうか!」
     槍を携えて飛び出していく冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)をカバーするように、エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)が追随する。
    「りぼん、みんなを、守ってあげて」
     藤花・アリス(淡花の守護・d33962)の言葉を受け、ウイングキャットも2人の後を追った。

    「よし、こっちもやるか! 教団チーム、行けるな!!」
    「いけますよ~」
     戦場の喧騒を割いて飛んで来たファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)の割り込みボイスに、船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)は同じく割り込みボイスで返す。
     【戦律】が前進したことで、複数のファフニールが彼らを狙って動き出していた。
     星空芸能館とシス・テマ教団の2クラブの灼滅者達は、その動きによって生じた敵陣の穴をさらに広げるようにして、攻撃を叩き込んでいく。
    「往け! 我らの信仰の力を見せる時!!」
     ワルゼー・マシュヴァンテ(はお布施で食べていきたい・d11167)の命令の元、前進し道を切り開かんとする両チームへと、ファフニールが炎を吹きかけんとする。
     だが、そうした動きは、他の灼滅者達の目にも映っていた。
    「相手が竜でも、元が血液なら、それはダンピールのエモノなの。バラッバラにして、竜の血浴びて、啜って、カラッカラにしてあげるの!」
     【天剣絶刀】のルビードール・ノアテレイン(さまようルビー・d11011)が、チェーンソー剣を振り回し、道を塞ごうとするファフニールを牽制する。
     灼滅者達の奮戦に、ファフニールの群れの間に幾筋かの細い道が生まれた。そこを縫うようにして、決戦部隊の灼滅者達はジークフリート大老の元へと急ぐ。
    「来るがいい、トカゲども!!」
     平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)達ディフェンダーが、吹き付けられる炎から、決戦部隊の30人を守り切り、決戦部隊は大老との闘いへ挑むべく走り去っていく。
    「頑張って! 大老の顔面、思いっきりぶん殴っちゃって!」
    「ここから先は任せたよ。思い切り暴れて来てよ!」
     南谷・春陽(インシグニスブルー・d17714)や【フィニクス竜】の居木・久良(ロケットハート・d18214)は、応援の声を彼らにかけると再び振り返った。
    「絶対に、チームのみんな全員で帰る……」
     その決意を果たすべく、灼滅者達は再び、何十という数の竜達に立ち向かっていく。

    ●勝利を待ちながら
     黄金闘技場の輝く床は、竜の群れと灼滅者達の血によって、赤く染まっていた。
     それもすぐに、竜の群れが吐き出す炎によって渇き散っていく。

     黄金闘技場のメインリングの方から激しい闘気が迸り、灼滅者達の肌を粟立たせる。
     ジークフリート大老と、決戦部隊の灼滅者達との闘いが開始されたのだ。
     最初の目的を果たした灼滅者達だが、それはファフニールと戦う灼滅者達にとって、さらに続く死闘の時間の幕開けをも意味していた。
     先ほどまでは突破を試みていた灼滅者達だが、今度は逆に、決戦の場へ乱入しようとするファフニールを防ぐ立場となっている。

     包帯を焦がされつつも、卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)が数珠を手にファフニール達を見る。
    「此度の戦、我らが動きにて本隊の趨勢が決まろう。即ち責任重大、確実に事を成すが最大の支援也」
    「こちらが多く倒した分、向こうも楽になるから、頑張らないとね!!」
     桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)は、なおも数を残すファフニール達が決戦の場へ雪崩れ込まないよう、ファフニールへ挑みかかっていく。
     一体でも多くのファフニールを倒すことで、ジークフリート大老の力を削ぐことが出来る。それは決戦に挑んでいる仲間達にとって、何よりの助けとなるはずだ。
    「このままガンガン倒して血を枯らさせてやるぜ! まだ行けるなぁ、闇沙耶!!」
    「当然……!!」
     神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)は聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654)の呼びかけにこたえると、呼吸を整え、身を焼くファフニールの炎を振り払う。

    「……ったく……親玉目の前にしておきながら殴りに行けねえストレス、少しは解消させやがれ!」
    「不満をぶちまけるのは構わんが、己の立ち位置を見失うなよ」
     ダグラス・マクギャレイ(獣・d19431)に、三峰・玄旺(夜陰・d02999)が呆れたように言う。
     ダグラスの居た位置に倒れこんできたファフニールが、火の粉を散らして消滅した。
    「ガイオウガの化身も一度は眠らせたあたしの歌さ。まあ、ゆっくり聞いていけよ!」
     敵に催眠を与えることに注力していたのは巽・真紀(竜巻ダンサー・d15592)だ。
     ファフニールは灼滅者よりも強いので、長期戦ともなれば催眠にかかった相手の数はそれだけ物を言う。
     既に多くのチームから戦闘不能者は続出しており、また決戦への参加者を抱えたチームはそうした者達が抜けていることもあり、開戦当初の陣容を維持できているチームは【ふろこん】ぐらいだ。
    「気合で保たせるで……!」
    「ああ、まだまだ俺のレーヴェは鈍っちゃいない!」
     ディフェンダーとして共に狼幻・隼人(紅超特急・d11438)のセイクリッドウィンドを受け、仲間達を守り抜いている住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)は炎の剣を手にファフニールへ切り込んだ。
     満身創痍になりながらの一撃がファフニールの眼球に突き刺さり、そして破裂。
     自身もその反動で飛んだ慧樹の目の前で、ファフニールが消えていく。
    「よし、うちらだけで2体……!!」
     彼らの活躍に刺激されるように、まだ戦える灼滅者達はその場で再編成し、ファフニールに立ち向かっていた。
     撃破できた数は、作戦時点で予想された数を上回り、40体に近付きつつある。
    「退屈はしませんが、こちらももう1体ぐらいは持って行きましょうか!」
     三和・透歌(自己世界・d30585)のダイダロスベルトが、ファフニールの足を貫くと、透歌達『地下研究所』と並んで戦っていたロスト・エンド(青碧のディスペア・d32868)が竜種の炎を皮一枚の距離でかわし、走っていく。
    「この程度は、地獄と呼ぶにしては生温いよ……」
    「さあ……断罪の時間ですの!」
     伸ばしたダイダロスベルトが、ファフニールの下顎から脳天までを貫通、なお暴れる竜へと黒嬢・白雛(天翔黒凰シロビナ・d26809)が振り下ろす十字架が、ファフニールの翼を叩き折る。
    「……竜種の誇りは今どこにある、ファフニール」
     鹿野・小太郎(雪冤・d00795)は叫ぶ。ジークフリート大老の力の一部と化したファフニールの姿には、かつて武蔵坂学園で交戦した時の面影はない。
     仮に、かつてのファフニールだったならば、自分達を無視してジークフリート大老の元へ戻ることもできただろう。
     違う個体と言えばそれまでだが、それでも小太郎の心の中には、怒りとも苛立ちともつかないものが過っていた。
    「安心して戦ってな。傷ひとつ付けさせへんよ」
     篠村・希沙(暁降・d03465)が、吶喊する彼をカバーする。

    「逃がさないように、けれどもやられぬように気をつけてください!」
     力量に秀でていないメンバーを多く抱える『七星』を率いる鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)の手にしたバスターライフルから放たれたビームが、メインリングへ向かおうとするファフニール達を直撃する。
     怪我人をどうにか撤退させられないかと考えていた長門・睦月(正義執行者・d03928)はなお荒れ狂うファフニール達の様子にそれを諦めていた。
    「……できる状況じゃないな」
     ファフニールを負傷者を抱えて突破する間に、新たな負傷者が出て重傷者は死人となるだろうし、そのための人手も足りない。
     自力で動けない程の重傷を負っている者達を、被害を受けないような位置に移動させるのが精一杯だ。
     刻一刻と怪我人が増え、こちらの攻撃の勢いが衰えることは敵の攻撃の激化を招く。
     倒れたファフニールの数が40に達する頃には、灼滅者達の側のディフェンダー達も全滅しかけていた。
     だが、その死闘は不意に終わりを迎えた。
     灼滅者達へ炎を吹き付けようとしていたファフニールが消滅していく。
     ジークフリート大老の元へ向かった者達が勝利を収めたことを理解し、灼滅者達はメインリングへ向かった決戦部隊の帰還を出迎える。

     吉津屋・顕人(春宵雪華・d33440)は、戦闘中に採取していたファフニールの血を入れた瓶が、ふと軽くなったのを感じ取る。ジークフリートの死によるものだろう。
    「竜の血を浴びた英雄の伝承も、幻と消えるか……」
     そして、竜と戦い続けた灼滅者達は、勝者達を迎えると帰還の途につく。

    ●正門前の戦い
    「一人でも多く、いや全員脱出させるぞ!!」
    「みんな、生きて帰ろう! 死ぬ気で死んでも生きて帰れ!」
     最前線に立つ【武蔵野学炎祭】のイヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488)、富士川・見桜(響き渡る声・d31550)らの声が、黄金闘技場の正門前に響く。
     突入直後から、正門付近では退路を守る灼滅者達と、内部へ入った奇襲部隊を追おうとする六六六人衆・アンブレイカブルの間で、戦闘が開始されていた。

    「来た来た……ガトリングにバースト……えぇっと、とりあえず全部まとめて持ってけーー!!」
    「貴方たちの相手は私です。レインボービーム!」
     ライドキャリバーに搭乗した土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)の砲撃と、霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)のご当地ビームが、向かって来る敵の前を横切るようにして放たれる。
    「この攻撃を、避けられますか!?」
     攻撃につられて足並みを乱した敵へ向け、磯貝・あさり(海の守り手・d20026)は縛霊手を向ける。
     展開される結界に囚われた敵へと、エリオ・マニングス(おひさますまいる・d03094)の援護を受けた犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)は瞬く間に接近。
    「炎一閃!」
     炎を帯びた槍に貫かれた、アンブレイカブルが崩れ落ちる。すぐさま距離を取り、蹴りかかって来たアンブレイカブルを槍で弾き返した。
    「まだ、新手が来てる!」
    「ああ、どうやら本格的においでなすったようだね」
     正門付近だけでなく、黄金闘技場の周辺警備に当たっていた六六六人衆やアンブレイカブルが襲撃に気付き、集結して来ようとしていた。
     ダークネスの混成部隊の目には、灼滅者を殺したい、あるいは強敵と闘いたいという渇望が渦巻いている。
     リディア・キャメロット(贖罪の刃・d12851)は眉をしかめつつ縛霊手を向けた。
    「あなたたちの思い通りにはさせないわ」
    「実力的に、闘技大会への出場資格もない人たちのようですね……何にせよ、あのような企みは、ここで終わらせます」
     ダイダロスベルトで鎧を形成、防御を固めた高峰・紫姫(辰砂の瞳・d09272)は、迫るアンブレイカブルが繰り出す拳を受け止めた。
     返す刀で伸びる布刃が、敵の胸板へ吸い込まれる。
    「この様子なら、細かいことは考えなくても良さそうね?」
     【新堂魔法堂】の仲間と共に戦っていた新堂・アンジェラ(業火の魔法つかい・d35803)の魔術が、群がる敵を爆破する。

     戦いは、灼滅者達の優勢のままに進んでいた。
     脱出路の確保に回った灼滅者の人数は、600名を超えている。
     その数もあって、統制も取れないまま、我先にと襲い掛かって来るアンブレイカブルや番外の六六六人衆達を、灼滅者達は数の優位もあって容易く撃破していた。
    「あまり集団行動には向かない種族ですね」
     傾向的に六六六人衆もアンブレイカブルも、個人行動を取る者が多い種族ではある。
     アンブレイカブルは強大な師の元に(師は手駒や戦うにふさわしい相手を育てあげ、弟子は技を盗むために)集うケースもあるようだが、六六六人衆は本来、同種族同士での殺し合いを旨とする種族だ。
     それらを新たな大組織として纏め上げられたのは、ミスター宍戸という存在があったにしても奇跡的なことだろう。
     ミスター宍戸には将来的に組織をより強固なものとして固めていくことも考えていたのだろうが、組織が出来て間もない今の段階で、組織の重要人物達を討てば、組織が瓦解に近付くであろうことは灼滅者達も承知している。

    「それを為して戻って来る者達を、出迎えてやらねばならないからな」
     守りの偏りがあれば、そこを敵に突かれる可能性もある。
     蔵座・国臣(殲術病院出身純灼滅者・d31009)はライドキャリバーに乗り、味方の隙を突こうとする六六六人衆から仲間を守る。
     中にはこちらを分断にかかろうとする『密室殺人鬼』もいたが、そうした者は強力であるが故に、逆に悪目立ちしていた。
    「ごきげんよう、狂人ども」
     『密室』能力を警戒していたカフェ・フィニクスの脱出路確保部隊は、七夕・紅音(狐華を抱く心壊と追憶の少女・d34540)の放った制約の弾丸を目印として、それを受けた『密室殺人鬼』へと集中攻撃を加えていく。
     庇おうとする殊勝な者もいたが、それらを灼滅者達が切り崩し、神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)のリングスラッシャーが密室殺人鬼に止めを刺した。
    「っし!!」
     緊張を解かぬまま、勇弥は息を吐く。

    「煉獄の刃よ! その妄執を……灼き砕けッ!!」
     凄まじい気迫と共に、篁・凜(紅き煉獄の刃・d00970)の刃が突出してきたアンブレイカブルを肩口から断ち割った。
    「混成といっても、相手は寄せ集め! このまま頑張ろうっ!!」
     墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)は、黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)を背に仲間達を鼓舞する。

     敵の攻勢は、開戦当初と比べて散発的なものになりつつあった。
     だが、それは敵の数が減ったのではなく、多数の灼滅者達を一度に突き崩すよう、態勢を整え始めたことを意味していた。
    「幾つかの部隊に分かれて集結しておるようじゃな……痛たた」
     空飛ぶ箒で、上方から敵の姿を確認したバルスト・ヘルリオース(中学生魔法使い・d29046)は即座に撃ち落されていたが、敵の動きは察知できた。
     六六六人衆やアンブレイカブル達が従う……つまりは相応の力を持った存在が現れたことを、灼滅者達は理解する。
     一斉攻撃に移ろうとしている敵の機先を制する形で、灼滅者達は正門付近から打って出た。

    ●ハンドレッドナンバー鹿島・悠
     タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)は、敵の小集団の一つを率いるダークネスの前に回り込んでいた。六六六人衆やアンブレイカブルの中でも目立つ炎は、そのダークネスが『イフリート』であることを示している。
    「見つけた……悠!!」
    「私の存在を感じ取っていたか。この、悠久の戦を望む者の存在を」
     鹿島・悠(常笑の紅白・d21071)が転じたダークネスは、黒い瞳をタシュラフェルに向ける。暗殺武闘大会にも出場していたらしいとの情報があった彼が、この黄金武闘大会の会場にいても不思議はなかっただろう。
    「確か、ええっと第3次新宿防衛戦の時に来てたような……?」
     同じ方面に来ていた、【エコライフ】を率いる空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・d00766)の言葉に、タシュラフェルは頷く。ガイオウガとの決戦前に闇堕ちした悠が、宍戸の傘下に収まっていたことは確認されていた。
    「炎の遺志は潰えた。既に私に囁くものはない。炎の意志は途絶えた。魂の居場所にて、我が闇の魂魄を庇護した者へ私は従う……。故に、今の私はハンドレッドナンバーだ。さぁ、武器を獲れ、灼滅者。ダークネスとして全力でお相手しよう」
     青い炎が、悠の体から吹き上がる。
     それに煽られるように、周囲の六六六人衆もまた、灼滅者達への殺意を剥き出しに襲い掛かって来た。
    「ジークフリート大老もまた示す通り、勝者こそが全て、それが闘争の理……。貴様らが勝利したのならば、私の首でもなんでも、執るが良い」
    「だったら、あなたを倒して、悠を取り戻させてもらうわ」
    「説得は頼んだからね!」
     神保町・晴海(萌えに燃える魂・d20688)は、間髪入れずに刃を向けて来た六六六人衆から、タシュラフェルを庇いながら言う。
     サイキックソードを振るい、神條・エルザ(イノセントブラック・d01676)もまた、それに加勢した。
     灼滅者達と共に、タシュラフェルは悠を追い詰めていく。
     自ら悠久の戦いを求めると自称するだけのことはあり、向こうが退く様子はない。
     ここで確実に決着をつけると決意し、タシュラフェルは前へ出た。
    「貴方には帰るべき場所も、待っている人もいる。戦うだけが全ての存在ではないわ」
    「さて、それは本当かな?」
     悠の手から飛来する炎が、灼滅者達を燃やし尽くさんとする。
     マジックミサイルを放ちつつ、それを掻い潜ったタシュラフェルの手が、抱きしめるように悠の体に回された。
    「私も帰ってきて欲しいし、何より生きて欲しい。生きてもっともっと多くの時間を一緒に過ごしたい……だから!」
    「くっ……!?」
     抱擁したタシュラフェルの足元から、影が悠を呑み込んだ。
     影がその牙を引き抜くと共に、悠の体からダークネスとしての力が薄れ、彼は次第に人間の姿へと戻っていく。
     見守っていた灼滅者達は、ほっとしたように大きく息を吐いた。

    ●北征入道
     祟部・彦麻呂(快刀乱麻・d14003)が望遠鏡で見たという姿を追って、【祟部村】の灼滅者達はダークネスの一団との交戦を開始していた。
    「あ、ほらほら! アレ! なんかどっかで見たことある気がする!」
    「いたいた、北征入道さん!」
     同じくファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)が、もう望遠鏡で目視できる距離にまで近付いた巨体を指さして声をあげる。

     ハンドレッド・コルドロンで蘇り、再灼滅していない強力なダークネスのうち『うずめ様』は朱雀門高校の元生徒会長ルイス・フロイスと共にいたのが判明しており、残るはノーライフキング『北征入道』と、ソロモンの大悪魔『ザガン』となっている。
     このうち組織が壊滅状態に追い込まれた北征入道は、ミスター宍戸の元にいるのではないか。そう考えていた【7DC】や【祟部村】の灼滅者達は、この戦場において、彼を早期に発見することが出来ていた。
    「まさか何もせずに使われているだけとは思いませんでしたよ」
    「蘇生したとて、御子は死したままだ。もはや我が願いが果たされぬ今、己の意志で何事かを為そうとも我は思わぬ」
    「まあ、そういう性質の方が、復活させた側としては扱いやすいですかね」
     一度は自分を殺したリーファ・エア(夢追い人・d07755)と言葉を交わし、ノーライフキングの巨漢はそう答えると長刀を構えた。
     その巨体から発される力は、生前と変わらない……だが、水晶の体を持つ巨体の胸の中にいたはずの『御子』に生気は感じられない。
    「ハンドレッド・コルドロンで生き返ったのは本人だけか……」
     ザ・グレート定礎も、本能的にデスギガスとの闘いの場に現れていたが、生前のような目的意識は感じられなかった。ハンドレッド・コルドロンの儀式自体に、そうした性質があるのかも知れない。
    「されど、この黄金闘技場を築いたのには我も助力している。迷宮の守護者たる役目は果たそう」
     それが『灼滅者の排除』を意味することを、膨れ上がる殺気が物語る。
     振り下ろされる長刀を、灼滅者達の盾となったアンリ・シャノワーヌ(ヴゼットトレジョリー・d25247)が受け止める。その巨体でありながらの俊敏さ、総身に溢れる力は、生前と変わらないどころか、むしろ生前よりも増しているかのようだ。
    「生前より強いというのは、反則的ですね……!」
     アンリは苦痛をこらえて言う。
     なお追撃に移ろうとする北征入道だが、そこへ新たな灼滅者達が走り込んで来る。
    「強敵だな。皆、作戦は【いのちだいじに】だぞ!!」
     【まんぷく食堂】は、日向・和志(ファイデス・d01496)の指示の元、北征入道の周囲にいた敵軍との戦いに突入した。【花園】の灼滅者達も、それに続いた。
     北征入道発見の報を受け、灼滅者達が撃破のために動き出していた。
     百名程度正門前から動いたところで、今の状況ならば余裕がある。

    「逃がさない。今度こそ、確実に仕留める……」
     北征入道の死角から、四月一日・いろは(百魔絢爛・d03805)が滑り込むようにして振るった刃が、巨躯の足首を断つ。
     バランスを崩しながらも振るった長刀が、いろはを貫く。だが、その間に、紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)は北征入道の膝を踏みつけるようにして飛び乗っていた。そのまま刃の切っ先を突き刺し、水晶の巨躯を駆け上る。
    「仮初の命を得ても、先へ進めないとは……難儀なものだね」
    「何事も思いのままにならぬのが、生というものだ」
     謡が飛びのいた瞬間、傷口を引き裂くように、灼滅者達の攻撃が集中する。
     一瞬の後に、蘇生されたノーライフキングの存在は、跡形もなく消え去っていた。

    ●アタワルパ
     サイラス・バートレット(ブルータル・d22214)は、戦場と少し離れた場所にいた、褐色の肌のアンブレイカブルをその目に捉えていた。
    「あんたがアタワルパって奴か!!」
    「気は殺していたつもりだが、俺の元に辿り着くとはな。貴様も戦運に恵まれているようだ」
     アンブレイカブル『アタワルパ』。
     サイレーンの海底都市ニライカナイの闘技場を支配していたというアンブレイカブルだ。以前はサイキックエナジーの枯渇によって動けなくなっていたという彼は、その実力の面で言えば高位のハンドレッドナンバーに匹敵するだろう。
     その動きで戦いの趨勢すら変わりかねないはずだ。
     にも関わらず、アンブレイカブル達を率いることも無く戦況を見守る彼を怪訝に思いながら、サイラスは武器を構える。
    「ジークフリート大老達が危ないってのに、呑気なもんだな」
    「殲術再生弾(キリング・リヴァイヴァー)の力は直に目にした。あれが使われていれば慌てもしよう。我が師を殺す機を逸することになりかねんからな」
     ジークフリート大老が、敗北するとは思っていないということかとサイラスは悟る。
    「だったら、ちょいと慌てさせてやるぜ!」
     そう言うサイラスだが、たとえ剣を振るったところで、この場にいる少人数ではアタワルパに容易く倒されるのは目に見えていた。
    「けど、やらなきゃなんねぇよな!」
    「いまだ修行の途中の身だ。不調法は許せよ」
     そう言って攻撃を開始するサイラスらに、アタワルパは無造作に剣を振るっていく。
     僅かな時間の打ち合いで、サイラス達の体には深々と傷が刻み付けられていた。
     その実力がハンドレッドナンバー上位の者とも、互角に渡り合えるものであることを、灼滅者達はすぐに理解する。
     魂を奮い起こし、ギリギリのところで耐えたサイラスの傷が、不意に飛んで来た気の塊によって癒される。
    「もう少し気張れ、もうちょいで救援が来る……!」
     アタワルパの存在に気付き、サイラスに続いて彼の元に駆け付けたのは日輪・月鉱(汝は人狼なりや・d27460)だった。飛び蹴りを入れる月鉱を腕で受け止めると、アタワルパはさして顔色も変えずに言う。
    「二対一か。面白い」
     振るわれる剣が、さらなる加速を見せた。
     粘ったものの、サイラスの剣が砕かれ、月鉱のオーラが切り裂かれ──相次いで2人が倒れる。師と同じくとどめを刺す気も無いらしく、アタワルパは背を向けた。
    「待ち……やがれ……!」
    「前言は撤回しよう。我が師ジークフリートが敗北した。お前達の勝ちだ」
     正門から、灼滅者達が外へと走り出て来ている。
     彼らは口々に、ジークフリート大老に対する勝利を、声高に告げていた。六六六人衆やアンブレイカブル達は動揺し、もはや武蔵坂学園の後退を防げるはずもない。
     だが、師の敗北を悟りながらも、アタワルパの顔色は変わらなかった。
    「黄金闘技大会で俺が殺すつもりだったが、先を越されたようだな。故に次は、『師の敵討ち』として挑ませてもらおう。建御雷大老にも、それを譲るつもりはない──」
     アタワルパの声には『強敵と戦う』ことへの昂ぶりが滲んでいた。

     正門前では、黄金闘技場内から脱出して来た灼滅者達と、正門にいた灼滅者達が合流を果たしていた。ランキングマンこそ逃したものの、ジークフリート大老、そしてミスター宍戸を倒したことは、大きな成果と言える。
     あとは脱出するのみとなり、眼前のアンブレイカブルをその拳で打ち倒した夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)は仲間達の姿に息をつく。
    「ふぅ……疲れましたね。これで役目も終わりでしょうか?」
     東・啓太郎(夕焼けの帰り道・d25104)や御舘田・のどか(禁書目録の一歩先・d26277)は即座に理解する。
    「最後の大老、『建御雷大老』は姿を見せなかったな」
    「どこにいるんでしょうか……?」
     ヴァンパイアとの同盟を揺るがされた六六六人衆とアンブレイカブルの組織は、ジークフリート大老とミスター宍戸という主柱を欠いて、さらに大きく揺らごうとしている。
     だが、ハンドレッドナンバーをはじめ、姿を見せていない強力な存在がいまだ複数残っていることもまた、啓太郎らの不安材料だった。
     やがて、その所在地が判明するとき、次の戦いが始まる──。

    作者:うえむら 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    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年9月15日
    難度:やや難
    参加:2006人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 55/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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