DIY、まずは自分で殺せ

    作者:のらむ


     黒崎・章は、仕事は出来るが特に何の趣味もない男だった。
     一般的な趣味、娯楽と呼べる物は色々試してみたが、特に何も感じなかった。楽しいと思える物は何も無かった。
     両親を既に亡くし、結婚もしていない黒崎。適当に仕事をこなしつつ、1人でつまらない休日を消化する日々が続いていた。
     そんなある日、黒崎はキッチンの蛇口から水漏れが起きている事に気が付いた。
    「工具は無いし、業者でも呼ぶか……いや、特に用も無いしホームセンターに行くか……」
     そういう訳で、ホームセンターにやってきた黒崎。
    「こんなに種類があるのか……そういえば、DIYはまだ試してなかったっけ……」
     水漏れの事はさておいて、色々な工具を見て回る黒崎。当然色々な工具があったが、その中でも黒崎の目を惹く物があった。
    「ああ、ホームセンターにもチェーンソーって置いてあるんだ……」
     特に何の意味もなくチェーンソーを手に取ってみる。
    「思ったよりも軽いな…………ん?」
     その時。黒崎の心の奥底から、どす黒い感情が沸き起こってきた。
     頭に思い浮かんだのは、仕事はちゃんとこなしているのに、つまらなく理不尽な罵倒を毎日の如く浴びせてくる禿頭の上司。
    「あぁ、そうか、そうだな……ドゥイットユアセルフ。誰かが、じゃない。これは、自分でやらないといけない事だったんだ」
     沸き起こってくる黒い感情は、黒い煙という実態を伴って黒崎を包み込む。
     煙が晴れるとそこには、片腕が巨大なチェーンソーと融合したスーツ姿の男、六六六人衆黒崎が居た。
    「ク……クククク……ああ、悪くない気分だ……!! これが、これが俺が本当にやりたかった事なんだ!!」
     チェーンソーのエンジンを高らかに吹かし、満面の笑みを浮かべる黒崎。
    「ククク……まずはこのチェーンソーで、あの気に食わないハゲを解体してやる!!」
     そして黒崎は駆け出した。最初の標的を殺す為に。


    「どうも皆さんこんにちは。早速本題に入りますが、現在『一般人が闇堕ちして六六六人衆になる』事件が発生しているようです」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開き、事件の説明を始める。
    「この闇堕ち事件は、グラン・ギニョールで撤退したおっさん、第四位『ジョン・スミス』の影響がある様です。闇堕ちした六六六人衆は、闇堕ち前に憎んでいた人間を殺すため、活動を開始します」
     闇堕ちした六六六人衆から狙われた一般人を守り、六六六人衆を灼滅する事が、今回の作戦の目的となる。
    「皆さんが今回相手するのは、六六六人衆黒崎。片腕を巨大なチェーンソーと融合させた六六六人衆で、片腕のチェーンソーを駆使した攻撃は勿論の事、チェーンソーみたいな形の殺気を飛ばしてきたり、空から大量のチェーンソーを降り注がせたり、チェーンソーみたいなオーラで自身を癒したりするみたいです。とりあえず全部チェーンソーです」
     黒崎は、闇堕ち前に心良く思っていなかった会社の上司を殺害する為、とある一軒家に真正面から襲撃する。
    「灼滅者の介入が無ければ、上司とその家族は纏めて惨殺。バラバラに解体されます。皆さんは一軒家の前で黒崎の出現を待ち、黒崎を足止めしつつ戦闘を行う事となります」
     黒崎は基本的に灼滅者との戦闘よりも上司の殺害を優先する。だが、場合によっては灼滅者との戦闘を優先する可能性もあるという。
    「黒崎は闇堕ちしたばかりではありますが、武器であるチェーンソーにかなりの拘りがある様です。そこを交えた上手い感じの挑発が行えれば、皆さんとの戦いに乗ってくるかもしれません」
     そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。闇堕ちしたばかりとはいえ、黒崎の戦闘能力はそれなりのものです。油断せず対処し、黒崎を灼滅。出来れば狙われた一般人の命も守り通して下さい……お気をつけて」


    参加者
    月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)
    ヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)
    神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)
    ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)
    紅羽・流希(挑戦者・d10975)
    榎本・彗樹(のーみん・d32627)
    ロスト・エンド(青碧のディスペア・d32868)
    神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654)

    ■リプレイ


    「ククク、もう少しだ……! もう少しで、あの禿頭を解体出来る……!!」
     夕暮れの住宅街を、片腕がチェーンソーと化した不気味な男が疾走していた。六六六人衆黒崎だ。
    「……来た。だけど思ったより早い。少し時間を稼がないと」
     猫に変身し、木の上から索敵していた月翅・朔耶(天狼の黒魔女・d00470)。いち早く黒崎の接近に気付いた朔耶は、木から飛び降り潜伏していた仲間たちに伝達する。
     灼滅者達が身構えた数十秒後、黒崎はその姿を表した。
    「やっと着いた……! クク、さあ、楽しい楽しい解体の時間……ッ!?」
     嬉々として上司宅に突入しようとした黒崎の側方から、突然黒い何かが迫りくる。
     咄嗟に黒崎がチェーンソーを振るうと、何故か跳んできた黒い原付バイクが両断され、地面を転がった。
    「うーん、これじゃやっぱり足止めにはならないようで」
     原付きバイクを投げ飛ばした張本人ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)が、軽く手を払いながら姿を現す。
    「なんだお前……俺の邪魔をするつもりなら……」
    「言うまでもなくそのつもりだ」
     殺気の篭った視線をジンザに向けた直後、背後から放たれたヴォルフ・ヴァルト(花守の狼・d01952)の魔力の弾丸が直撃する。
    「……一般人に、害をなすのであれば、放置してはおけない……」
     更に神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654)が白銅色の斬撃を放ち、黒崎の全身を斬りつける。
     そして2人に続き周囲に潜伏していた灼滅者達が続々と姿を表し、黒崎の前に立ち塞がった。
    「チッ……誰だか知らないが、俺の楽しみを邪魔するな!!」
     黒崎がチェーンソーを高く掲げると、無数のチェーンソーが周囲に降り注いだ。
    「おっと危ない……それにしても、チェーンソーを殺しの武器に? 六六六人衆にも随分と耄碌したやつがいたものだね」
     降り注ぐチェーンソーを避けながらロスト・エンド(青碧のディスペア・d32868)が挑発を投げかける。
    「……DIYに、興味が、あるとか、おっしゃって、ました、が、ちゃんと、チェーンソーも、使えないのに、よく、やろうと、思い、ました、ね」
     ロストに続き神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)もまた挑発を投げかけると、黒崎は顔をひきつらせまくし立て始める。
    「何だと? 馬鹿かお前ら。俺とチェーンソーはソウルフレンドな以上使い方など完璧な事は明白だし、そもそもチェーンソーの素晴らしさが分からないとか正直ありえ――」
     この一連の流れで灼滅者達が時間を稼いでいる一方、上司宅内では。
    「……お食事中のとこ申し訳ないが、しばらく大人しくしていてくれ」
     闇纏いを用い密かに上司宅内に侵入した榎本・彗樹(のーみん・d32627)が、食事中の上司一家を眠らせていた。
    「これで、外で多少の騒ぎがあったとしても、不意に出てくるという事もないでしょうねぇ……あ、火は消しておきましょう……」
     そしてそれを確認した紅羽・流希(挑戦者・d10975)が、周囲に殺気を放ちつつガスコンロの火を止める。
     2人はその後すぐに身を翻し、戦闘音が響き始めた外へ一気に飛び出した。
    「要するに貴様らに生きる価値などないと――チッ、まだいたのか……」
     上司宅内から姿を表した彗樹と流希に目をやり、黒崎はチェーンソーを構え直す。
    「……よく考えれば俺はお前たちに構っている暇はない。あの禿頭を早く解体したいんだ!」
     住宅街にチェーンソーのエンジン音が高らかに響き渡り、黒崎と灼滅者達の闘いが始まった。


    「邪魔だ!!」
     黒崎は回転を加えた滅茶苦茶な斬撃を撒き散らし、灼滅者達の包囲を突破しようと試みる。
    「ここを通りたいなら、俺達を殺して勝手に通ればいいさ。出来ればの話だがな」
     その身に浅い斬撃を受けた流希が、返す刀で黒崎の身体を斬りつける。
    「チッ……とにかく俺の目的はあの禿頭だ。あいつを解体したらいくらでも相手してやるから、そこを退け!!」
    「……それを使い、憎い奴を、解体すると、本気で思っているのか……?」
    「……どういう意味だ貴様?」
     声を荒げる黒崎に隅也は淡々と投げかけ、白磁色のエアシューズに力を込め、地を蹴った。
    「……六六六人衆と、あろう者が、殺しの武器さえ、満足に、吟味できないとは……」
     次の瞬間、隅也は凄まじい速さで駆け出し一気に黒崎に肉薄すると、低い体勢から跳躍し放たれた鋭い飛び蹴りが、黒崎の胸に突き刺さった。
     蹴りの衝撃で黒崎の身体は浮き上がったが、空中で体勢を立て直す。
    「つまり貴様はこう言いたい訳か。チェーンソーは、人体を解体するのには不向きだと。クク……やはり馬鹿だな。俺のチェーンソーはただのチェーンソーでは無い。超スペシャルチェーンソーだ!!」
     そして放たれたチェーンソーめいたオーラが隅也の身体を直撃し、壁に激突するが、隅也はすぐさま壁を蹴り、再び黒崎に接近する。
    「……何だ、今のは……まさか、その無駄に大きいチェーンソーの名前か……? それは、流石に無いだろう……」
     隅也は鈍色の衝撃を黒崎に叩き込み、その身体を地面へ叩きつけた。
    「まあ名前の有無はさておき、まずはお宅の水漏れを直してから出直すというのはいかがかなー、とは……ああ、でもその手じゃ水漏れは直せませんか……意外と使えない?」
     倒れ込んだ黒崎にジンザは炎の蹴りを叩き込み、追撃した。
    「クソ生意気なガキ共が……あの禿頭もろとも、お前たちも解体してやろうか!!」
     度重なる挑発に、黒崎の目的は既に大きく揺らいでいた。
     そして黒崎は再びチェーンソーを振るい、広範囲に斬撃を放つ。
    「台詞だけは威勢が良いけどね。君はまだ誰も解体できていないよ」
     そんな斬撃から仲間を庇うロスト。少なくない量の血を既に流しているロストだが、その表情はとても涼しいものだった。
    「黙れ! 真っ先に俺に解体されたくなければな!」
    「だったら黙る必要は無いね……ほら、どうした? 俺を解体しないのかい?」
     エンジンを吹かしその言葉に応える黒崎。全力で駆動させたチェーンソーを、迷いなくロストに振り下ろす。
     刃を受け止めたロストの片腕が容赦なく削られ、大量の返り血が黒崎に降り注いだ。
    「……ほら、思ったほど深く斬れないだろう? 所詮はそんなものさ」
     その一撃はそれ相応の激痛を伴ったが、ロストにとってそれは大した問題では無かった。
    「いい加減、その不愉快な金属音を止めてあげるよ」
     そして至近距離から放った盾の殴打が黒崎の顔面を捉え、その身体を大きく吹き飛ばした。
    「イカれた野郎だ……」
    「お前がそれを言うか」
     どうにか体勢を保ち唾棄する黒崎だったが、そこに彗樹がすかさず赤い標識を頭に振り下ろした。
    「クソ……なんて目障りな連中だ……!」
     そう吐き捨て、黒崎はチェーンソーを大きく振り上げ突撃する。標的はヴォルフだ。
    「火力はそれなりだけど、動きは全然洗練されていないね。人を殺した事がない六六六人衆なんて、所詮はこんなものかな」
     振り下ろされたチェーンソーの刃を、ヴォルフは白銀の大爪で受け止める。黒崎は押し返そうと力を込めるが、大量に火花が飛び散るのみで、ヴォルフは微動だにしなかった。
    「動かないなら、こっちから行くよ」
     その体勢のままヴォルフは黒崎の腹を蹴りつけると、黒崎は思わずよろめき後ろへ数歩退がった。
    「この……ッ!」
    「遅いよ」
     直後、ヴォルフは前方に跳躍。すれ違いざまに振り抜いた大爪で黒崎の脇腹を引き裂いた。
    「ああクソ、纏めて死ね!」
     黒崎は灼滅者達と一定の距離を取りつつ、再びチェーンソーの雨を降り注がせる。
     しかしその雨の隙間を縫い、朔耶が放った影の触手が忍び寄る。そして黒崎の不意を付いてその両脚を締め上げた、
    「隙は作った。確実に当てて」
    「分かった」
     朔耶に促され、間髪入れずにヴォルフは黒崎に接近。拳に炎を纏わせる。
    「確かに隙だらけだ」
     そして至近距離から無数の炎の拳を放つと、黒崎の全身を打ち、そして焼いた。
    「なんなんだお前ら! どうして俺の邪魔をするんだ! ようやく……ようやく俺が見つけた楽しみだ! 何故それを邪魔するんだ!!」
     苛立ちを隠そうともせず、黒崎は吼える。効果的な挑発に加え、想像以上のダメージを負った事により、黒崎の意識は最早完全に灼滅者達に向いていた。
    「……こうなって、しまった、のは、六六六人衆の、影響、なんです、ね」
     蒼は片腕を鬼の如く変化させ、黒崎と相対する。最早挑発の必要は無いと判断した蒼は、目の前の六六六人衆を倒すことに集中する。
    「……せめて、手をかける、前に、倒して、しまいましょう」
     小さく、しかし力強く呟くと、蒼は黒崎に接近し、拳を突き出した。
    「クソ、そうそう喰らってばかりいられるか!!」
     拳を避けるように身を逸らした黒崎。しかし蒼はその動きを瞬時に見切り、軌道を修正。鬼の拳は黒崎の鳩尾を強く打ち付けた。
    「グッ!!」
     拳を受けた黒崎はチェーンソー型の闘気を撃ち返し、蒼の身体を切り裂く。
    「全員だ、全員解体してやる……!!」
    「……あなたに、人を、殺させない、為にも、殺される、訳には、いかない……です」
     闘気を受けた蒼が、暴風を纏わせた掌を黒崎に向けると、渦巻く風の刃が黒崎の全身を包み込み、避ける間もなく切り刻んだ。
    「ク……!! クク……!! 俺は、俺はようやく見つけたんだ……死んでたまるか……!!」
     多くの傷を受けながらも、黒崎の殺意は衰える様子は無かった。


    「DIY……そう、DIYだ……誰にもやらせない。俺が俺の手で、お前らを殺し、あの禿頭も殺す……!!」
    「DIYが殺しの意味のものになるとはな……ドゥイットユアセルフ」
     彗樹は日本刀『風来迅刃』を構え、黒崎の前に進み出る。
    「まあ、何にしてもやらせるわけにはいかないな……行くぞ」
     彗樹は黒崎に接近。と同時に足元から影を放ち、黒崎の身体を縛り付ける。
    「解体だ……1人も解体出来ずに死にたくはない!!」
     黒崎は全身を締め付ける影を引き剥がし、接近してくる彗樹に向けチェーンソーを突き出した。
    「ここだ」
     彗樹は黒崎の斬撃に合わせ刀で斬り上げ、チェーンソーをを無理矢理弾き返す。
     そうして作り上げた隙を逃さず、彗樹は追撃に出る。
    「気まぐれでチェーンソーを手に取っていなければ、こうはなっていなかった、か……嫌な巡り合わせだ」
     一気に刀を振り下ろす。片腕と融合したチェーンソーに大きな傷が入り、その激痛に黒崎は顔を歪めた。
    「……そのチェーンソーには神経も通っているのか……? 随分と不便な身体になったものだな……」
     チェーンソーの傷に目掛け隅也が飛び蹴りを放ち、更に傷を深くした。
    「黙れ……!! お前ら馬鹿には、チェーンソーの素晴らしさが理解できないんだよ……!」
    「腕をチェーンソーにしたお前に言われたくはないな。大体その腕で切った後、どうするんだい? ステーキを切り分けるのにも苦労しそうな腕だ」
     この段階から黒崎が灼滅者を無視し上司の殺害に向かう可能性は低かったが、流希は万が一の為に挑発を重ね、大鎌『蝙蝠の嘆き』を構える。
    「さぞかし、立派なDIYが出来るな。『D(どこでも)I(今一)Y(役立たたず)』ってな」
    「どこまで愚弄する気だ、このクソガキがぁああ!!」
     黒崎は目を剥き流希に突撃する。そして繰り出されたチェーンソーは流希の身体を深々と斬りつけた。
    「さあ。少なくとも、お前が死ねば二度とお前の話はしないだろう」
     その一撃を受けきった流希は、構えていた大鎌の刃を黒崎の胸に貫通させ、そして一気に引き抜いた。
    「グ……!! それよりも先に、お前の口を永遠に閉ざしてやるよ!!」
     流希の挑発に相当激怒したのか、黒崎は再び流希に向けて斬撃を放つ。
    「……おっと。悪いけど、君に誰ひとりとして解体させはしないよ」
     そこに割り込んだロストが斬撃を受け止めると、至近距離から氷の刃を足元に突き刺した。
    「グ……どいつもこいつも、忌々しい……!!」
    「その点に関しては、この場でお前に勝てるやつはいないと思うけどな」
     ロストが攻撃を受けている隙に、背後に回り込んだ流希。流れるように放った一太刀が、黒崎の背を斬りつけた。
    「死ね、死ね、死んでくれよ……!! どうして誰も死んでくれない、どうして誰も解体させてくれないんだ!!」
    「そりゃあ誰だってバラバラにされたくははないでしょう……ああいや、あなたにこんな事を説いても意味はないですね」
     片手に消音拳銃を構えたジンザは、軽い足取りで黒崎に接近する。
    「ところでそのチェーンソー、レジ通してませんよね」
     ジンザ軽く足元に蹴りを入れ、黒崎の体勢を崩す。そのまま畳み掛けるように鳩尾、顎先、鼻先に拳を叩きつけると、黒崎はよろよろと後ろへ退がる。
    「…………クソッ!! 誰でもいいから死ねよ!!」
     ヤケクソ気味に放った闘気がジンザの首元を通り過ぎたが、紙一重の誤差で当たる事は無かった。
    「おっと、危ない危ない……結構皆でよってたかって貶してきましたけど……まぁ、電ノコも他に用途があるだけマシですか」
     ジンザは涼しい顔で拳銃を構えた。その照準は、黒崎の額に向けられていた。
    「拳銃(コレ)なんて、殺すための道具でしかない」
     そして引き金が引かれた。無音で放たれた弾丸は、吸い込まれるように黒崎の脳天に突き刺さり、住宅街に再び血飛沫が舞った。
    「グ……アア……!! 痛い……!! なんだよ、こんなの、全然楽しくない……!!」
    「……あと少し、です。早く、終わらせて、あげましょう」
     苦痛に呻く黒崎に、蒼は帯の斬撃を放つ。傷だらけの身体に更なる傷が刻まれた。
    「そうだな、早く終わらせよう……喧しいエンジン音にも聞き飽きてきた頃だし」
    「誰が、終わるか……! 俺はまだ、誰も殺していない……!!」
     朔耶は断斬鋏を構える。対する黒崎もチェーンソーを構え、激しく無差別な斬撃を撒き散らしていく。
    「勢いは凄いけど、狙いは滅茶苦茶。当たる気がしないね」
     朔耶は霊犬『リキ』と共にその斬撃をくぐり抜け、一気に黒崎に迫る。
    「……ここ」
     斬魔刀と鋏の連撃が交差し、黒崎の胸に十字の傷が刻まれた。
    「グ、クソ……!! クソ!! 嫌だ! 俺はまだ殺されたくない! 俺はまだ、誰も殺していない! 何も楽しんで……!!」
     片膝を付き血を吐く黒崎の身体に、側方からヴォルフが放った魔力の弾丸が直撃。その動きを強制停止させる。
    「さっきの逆で。次で確実に仕留めて」
    「分かった」
     ヴォルフが作った隙を逃さず、朔耶は再び鋏を突き出した。
     パチン。と軽い音が響き渡った直後、黒崎の首が路地に転がった。
    「……水漏れにチェーンソーは使わないよ?」
     朔耶がそう呟いた頃には、黒崎の身体はチェーンソー諸共灰と化していた。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年11月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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