怒砲の鳴りし闇間

    作者:幾夜緋琉

    ●怒砲の鳴りし闇間
    『ピィィ……ピィ!!』
     闇の山奥に響く、甲高い鳴き声。
     その鳴き声の主は……見知った姿の動物、豚。
     とは言っても、豚の両肩の位置には物騒なライフルが二門くくりつけられており、普通の愛玩動物ではないというのは言わずもがな。
     ……そしてその豚は、人も居ない闇の中をピィピィと鳴き声を上げながら走り回るるのである。
     
    「お、みんな来たな? 良し、早速だが俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)から導き出した生存経路を説明させて貰うぜ!」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0003)は、集まった灼滅者達をぐるり眺めると、早速説明を始める。
    「今回皆への依頼は、はぐれ眷属が一つ『バスターピッグ』の群れを倒してきて欲しい。奴らは人里離れた山奥にて徘徊している様だ。幸いまだ被害は生じてないものの、いつ被害が起こるとも限らないし、今のうちに倒してきて欲しい、という事になる」
    「奴らは10体の群れを組み、山中を徘徊してる。ただピィピィ泣き喚いているのは止められない様で、この声を手がかりにすれば奴らを発見するのは難しく無いハズだ!」
    「とは言えバスターピッグの特徴である武器は、大きなバスターライフル。二門のこの武器は強力な攻撃力を持っているから、特に注意して欲しい……10匹に集中砲火されれば、それはそれで大惨事にもなりかねないしな」
     そして、ヤマトは最後に。
    「森の中での闇討ち戦だ。あちらから位置を知らしめてくれているとは言え、決して油断は出来ない相手だ。みんなの力を貸してくれれ、宜しく頼む!」
     と言って送り出すのであった。


    参加者
    冥賀・アキ乃(ヴィルト・d00258)
    風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)
    リリー・スノウドロップ(小学生エクソシスト・d00661)
    九条・已鶴(忘却エトランゼ・d00677)
    九条・龍也(梟雄・d01065)
    緋神・討真(黒翼咆哮・d03253)
    月見里・月海(元気あふれる太陽娘・d07093)
    神爪・九狼(不滅の灼光・d08763)

    ■リプレイ

    ●森の咆哮
     ヤマトの事件解決の依頼を受けた8人の灼滅者達。
     とある山中に現われしはぐれ眷属。
     背中に大きな二門のバスタードライフルを抱え、泣き喚く豚、バスターピッグを倒す為に、宵闇手前の森へと向かっていた。
    「しかしバスターライフルを背負った豚とはねぇ……」
    「うんうん。なんだろう、かわいさと不気味さが半々っていった感じかなぁ?」
    「そうだね。バスターピッグ、かぁ……全く、凶暴な豚も居るもんだね」
     九条・龍也(梟雄・d01065)、月見里・月海(元気あふれる太陽娘・d07093)、九条・已鶴(忘却エトランゼ・d00677)の三人が次々呟く言葉。
     はぐれ眷属という事で、知性も無いタダの獣……その心のままにこの森の中を走り回っているのだろう。
     ……とは言えその姿形は豚。討伐するという心に対し、ちょっとだけ違う考えを抱いているのはリリー・スノウドロップ(小学生エクソシスト・d00661)。
    「豚さん……保護じゃないんですよね? ピィピィ言ってるだけならかわいいと思うんですけどねぇ。砲撃してこなければ、もっといいんですがー……保護じゃなく灼滅しないといけないだなんて、気持ち的にちょっと残念ー」
     どうやら豚さんという所で、ちょっと保護欲が沸いたらしい……でも、そんなリリーの言葉に、彼女の霊犬、ストレルカは。
    『ウゥゥ』
     なんだかちょっと悲しげな鳴き声を上げながら、彼女に身体をぎゅぅぎゅぅと押しつけてくる。
     そして更に冥賀・アキ乃(ヴィルト・d00258)、神爪・九狼(不滅の灼光・d08763)、風嶺・龍夜(闇守の影・d00517)らも。
    「ったくよ、山ン中にひづめの丸いヤツっつったら猪かと思いきや……まったく、物騒な話だぜ!」
    「ん? ああ、バスターピッグは白豚の様だが、要するに美味しくなっただけで猪なワケだから、そりゃあんなんに突撃されたら最悪死んじゃいますけども。だけどそもそも眷属って事は、誰かが意図して作ったワケだろ? でもはぐれって事はダークネスの制御を離れているって事なんじゃねぇのか? 作ったヤツはいったい何をやってるんだ。死んだのか?」
    「わからん。とはいえ最近は、やたらとはぐれ眷属の姿を多く見かけるよな。何かの予兆で無ければ良いのだが……」
     瞑目しつつ、不安を覚える。
     が……とは言え、このまま放置しておくワケにはいかないのだから。
    「まぁ何であれ、被害者が出る前にちゃっちゃと潰すとするか。それが俺達の仕事だしな」
    「ああ、別に眷属であろうと何であろうとだ。胸糞悪ィあの連中をぶちのめせるんだ、ありがたい機会だな、ヘッ!!」
    「そうですね。今は眼前の敵を打ち倒すのみ……任務、開始だ」
    「うん。山火事にはならないように気をつけないとね!」
     龍也と、龍夜、そして已鶴の声に、緋神・討真(黒翼咆哮・d03253)は頷きつつ。
    「しかし闇落ち救出依頼から帰ってきたかと思えば、今度は豚対峙と……通りすがりの神父は休む間もなく、戦い続けろという事ですね。まぁ参りましょう。異形の魂を主の元へと送る為に」
     と息を吐くのであった。

    ●鳴き声止まず
     そして森の入口に到着した灼滅者達。
     各自、蛍光灯ランタンやらLEDランプ等の準備は整えておきつつ。
    「……これで良し、と」
     暗視鏡を龍也は装着。
     灯と暗視鏡の二重装備で以て、いざ……森の中へと侵入する。
     周りは暗闇に包まれており、ライトを消すと全くといって良い程に、一切の灯も無い。
    「……足場は何とかなりますが、やはり光量が不足気味ですね」
    「そうだね。余りみんな、離れないようにしてね?」
    「ええ」
     討真は已鶴の言葉に頷く。
     そしてかなり深い所まで行き着いたところで。
    「さて……と。それじゃそろそろここらへんで」
     と龍也がそう良いながら立ち止まり、灯を消す。
     そして耳を澄ませて……。
    「……近くには居ないみたいだな」
    「その様だな。もっと奥か……月海、頼む」
    「ん、はーい♪」
     龍也に頷き、龍夜が月海に頼むと、月海は隠された森の小路を使用し、森の奥へのルートを切り拓く。
     そして切り拓かれた道の先を暫く進み、また……鳴き声が無いかの確認を繰り返していく。
     ……しかし中々バスターピッグの鳴き声は聞こえてこず、山中を歩き続けた疲弊に足が重く感じ始める。
    「……むぅ……中々見つかりませんわね……」
    「全くだぜ……って、これでも食べるか?」
     とリリーの言葉にアキ乃が差し出したのは黒糖飴。
     ひょいっと一粒を口に入れると、甘さが疲れを癒してくれる。
     それをみて、他の仲間らも黒糖飴をなめながら疲労回復……そして再度山中を分け入り探索、を繰り返していく。
     ……そして、大体一時間が経過した頃。
    『……ピィ……』
     そんな獣の鳴き声が、ほんの僅かではあるが聞こえてくる。
     鳴き声の方へと進むと、次第にその鳴き声は近づきつつあって。
    「だんだん鳴き声が近づいてきたね」
    「ああ……そろそろだな」
     月海に頷く九狼。
     ……灯も出来る限り落としながら進み……バスターピッグに気づかれる事なく、彼らの根城の間近まで到達。
    「あ、いたいた♪」
    「ええ……それでは皆さん、準備はいいですか?」
    「ああ、OKだぜ!!」
     月海、討真、アキ乃が次々と言葉を紡ぐと……討真がバスターピッグをじっと見据えながら。
    「目標を補足……殲滅する」
     討真の一言と共に、一斉に灼滅者達はバスターピッグの元へ。
     前線、クラッシャーの位置の配置につくのはアキ乃、龍也、討真、月海、九狼。
    「さぁ、お前等全員、豚汁にしてやるぜぇ!!」
     ニヤリとアキ乃が叫ぶと、先手で討真がパッショネイトダンスで仲間等を強化。
     そしてすぐさま月海、九狼が。
    「まずは……一発ーっ!!」
    「喰らえ!」
     月海がロケットスマッシュをフルスイングでぶっ放し、九狼もバニシングフレアによる列攻撃。
     更に龍也、アキ乃も。
    「どんな相手だろうと、ただ斬って捨てるのみだ!」
    「ぶちのめすぜっ!!」
     龍也は雲櫂剣で斬りかかり、更にアキ乃が黒死斬で攻撃。
     ……そんな前線の能力者達に続き、中衛には龍夜と已鶴、後衛にはリリーと、リリーの霊犬ストレルカ。
    「死の領域、展開するよ」
     已鶴が鏖殺領域をその場に展開させると、龍夜は続けて。
    「奥義裏の弐、闇刃!」
     と、黒死斬で攻撃。
     前衛、中衛の攻撃を経て、対するはぐれ眷属の攻撃。
     その背中の砲門をガチャンと構え、灼滅者達へ向ける。
     そして……砲門を開き、一斉掃射。
    『ピィィィ!!』
     甲高い鳴き声は、まるで灼滅者達を威嚇するかの如く。
     ……闇夜の中に何発もの光が発光する。
    「ち、この攻撃うざってぇぜ」
    「ああ……同意だ」
     龍夜に頷く九狼。
     ……だからこそ倒さねば鳴るまい……そんな意識を改めて持ち直す。
     そしてその攻撃を受けた仲間達に。
    「ストレルカ。一緒に回復するよ」
    「ゥゥ」
     リリーに頷くストレルカ。そして二人は連携して、ヒーリングライトと浄霊眼による回復を施す。
    「ありがとうございます。感謝します」
    「ううん、頑張って下さい」
     討真の言葉にニコリと微笑むリリー。
     そして次のターン……前線に構える五人は、継続してはぐれ眷属達を纏めて攻撃し、その体力を確実に減らす。
     無論、バスターピッグは砲門を開き、どうにか後衛に攻撃を通そうと動き回るのだが。
    「っ……後ろへ届かせるわけにはいかねぇんだよ!」
    「ええ。貴方たちの攻撃は、確実に私達が受け止めます」
     龍也、討真の宣言。
     その宣言通りに、攻撃は絶対に通さない。
     そして前線がしっかりと攻撃を受け止めている間に反撃。
    「ったく、あーあぁ、こんなに壊しちゃって。山が崩れでもしたら、どうしてくれるのかなぁ?」
    「……全くだ。その冗談の様な姿で火力はあるとか、度し難い輩だ」
     と、已鶴と龍夜が言葉を吐き捨てていく。
     そして……。
    「まぁ何にせよさっさと倒すにこしたことは無いよね。さぁ……これはかわせないでしょっ!!」
    「あああ。伊達や酔狂で、こんな物を持っている訳じゃねぇぞ!!」
     月海の閃光百烈拳や、紅蓮撃が同じターゲットを狙い澄まして……バスターピッグ一匹目をぶっつぶす。
     そして、すぐに。
    「次は……これを狙って下さい」
     討真が宣言すると共に、ターゲットを絞り指示。
     指示を受け、確実に攻撃を集中させてダメージを叩き込んでいく。
     バスターピッグ達はそんな灼滅者達の動きに……僅かに怯んできたようで。
    『ピィィ……』
     そんな鳴き声を挙げるバスターピッグに、已鶴は。
    「そんな声で鳴いて、今更命乞い? ……ふふ、残念。もうタイムアウトだよ」
     已鶴が宣告すると共に、居合い斬りの一発で二匹目のバスターピッグを討伐。
     ……残るは8匹のバスターピッグ。
    「残り8匹……と。皆さん、決して油断しない様に、しっかりと進めていきますよ」
     討真の言葉に皆も頷いて……そして灼滅者達は確実、且つ慎重にバスターピッグの砲門を見極めながら、一匹、また一匹と倒して行った。

     そしてかれこれ、20ターン近くが経過。
     既に9匹のバスターピッグを倒した灼滅者達……かなりの疲弊には及んでいるものの、数が減る度に気合いを入れ直し……どうにか士気を維持し続けていた。
     そして……後はたった一匹。
     バスターピッグの周囲へ、完全なる包囲網を築くと共に。
    「……後一匹。さぁ……覚悟は出来たか?」
     九狼が宣告すると、ピィ……と悲しげに泣くバスターピッグ。
    「……ごめんね?」
     と僅かにリリーが呟き、彼女がバスタービーム、ストレルカが六文銭射撃で攻撃。
     ……煙幕の中に包まれると、それを切り咲く様に龍也が。
    「こいつで抜けぬ装甲は無いぞ!!」
     放つ抗雷撃の雷鳴にその身体が撃ち抜かれ、ピィィィ、と悲鳴の鳴き声を上げるバスターピッグ。
    「さぁ、これでトドメだぜっ!!」
    「ブタさんたちもやる様だけど、でもあたし達の方が一枚上手だって事だよ♪」
     アキ乃の黒死斬、月海の閃光百烈拳が叩き込まれると……最後のはぐれ眷属の身体は切りの如く崩壊するのであった。

    ●怒砲の跡
    「……任務、完了だな」
    「うん、は~……終わったおわった~」
     龍夜に頷きながら、ばたんとその場でごろんと寝転ぶ月海。
     そして目の前で消えたはぐれ眷属の跡を見つめながら、リリーが。
    「うーん……連れて帰りたかったですねぇー。でも、慣れてくれないんでしょうねぇ……慣らすには、どうすればいいんでしょうかねぇ……」
     とぽつり呟く。
     とは言えはぐれ眷属を手名付ける方法なんて、まだ確立されている訳も無く……その答えは誰もが分からない。
    「うーん……解りませんかぁ……」
    「そうですね……まぁ灼滅者として、確り倒すという仕事はこなしたわけですし……胸を張って帰ることにしましょう」
    「うん、そうだね、早く帰ろうかー♪」
     討真に笑う月海……だが、龍夜は。
    「俺はちょっと調べていきたいところがあるんでな……この眷属達が北方向を調べれば、何か手がかりがあるかもしれないしな」
    「そうだな。んじゃそこは任せるな。でも、無理すんなよ?」
    「ああ、大丈夫だ」
     アキ乃の言葉にも頷きつつ……灼滅者達は少しその場を片付けてから、その場を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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