世界救済タワー決戦～前線突破大作戦！

■リプレイ

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「狩ったり狩られたりしようか」
　解除コードを口にし、峰・清香（大学生ファイアブラッド・d01705）が構えたバベルブレイカーはダークネスへと向けられた。
　が、ん！
　憤怒の穿ちは薔薇の貴婦人が手にする得物が弾くと、そこへエアシューズを駆る無常・拓馬（カンパニュラ・d10401）の足撃が放たれ、霊犬・ティンと共に桜井・夕月（もふもふ信者の暴走黒獣・d13800）も地を駆ける。
「ティン、行くよ！」
「くっ……！」
　クロスグレイブからの攻撃をサウザンドブレイドは刃で打ち払うが、狙い定める天宮・黒斗（黒の残滓・d10986）の攻撃を防ぐ事はできなかった。とはいえ、大したダメージではなく余裕の表情である。
　戦いの音が響きはじめる中、ふと竹尾・登（ムートアントグンター・d13258）がちらりと見るのはブレイズゲート・世界救済タワー。
　世界救済タワーは現在、六六六人衆序列２位、マンチェスター・ハンマーの制圧下に置かれている。ブレイズゲートである世界救済タワーの制圧を手土産に、ナミダ姫と合流しようとしているのだ。
「よくもまあ、色々やってくれるよ」
「人から吹き込まれた考えを自分の考えだと思い込んでいるんですね……。ただ力が強いだけに、ナミダ姫の駒になられると厄介です」
　ライドキャリバー・ダルマ仮面へ攻撃を指示しつつの呟きに富山・良太（復興型ご当地ヒーロー・d18057）は頷くと、親友――ビハインド・中君へと視線を向ける。
「ここで倒せればいいんですが」
「その為にもここで頑張らなければだな」
　中君と共に攻撃を繰り出すのを目に、すとルフィア・エリアル（廻り廻る・d23671）は手を向け、弾丸と化した羽を放つと、ダークネスのドレスを彩る薔薇がばしんと弾け散る。
「アタシの薔薇が……」
　無残にも散っていく薔薇を目に眉をひそめ悔しがる薔薇の貴婦人だが、対峙する灼滅者の動きに瞳を戻せば、僧服に身を包む灼滅者――月影・木乃葉（レッドフード・d34599）が白炎蜃気楼を展開させているではないか。
　灼滅者達を纏う白炎は厄介だが、ダークネスにとってはそれだけだ。
「アタシ達に勝てると思っているのかえ？」
「ここは何人たりとも通しません」
　くすくすと笑う薔薇の貴婦人と並び、サウザンドブレイドは静かに刃を見せつける。
　一人でも十分強敵であるダークネスが２体、８名の灼滅者達で戦うのは容易ではない。しかもこの戦いの中で仲間達をマンチェスター・ハンマーの元へ送り出さねばならぬのだ。
　この２体のダークネスと戦い、仲間を送り出し、戦い抜かねば。
「所詮生き延びた666、恐れるに値しません……ここで2つ首を落とさせてもらいましょうか！」
　構える錫杖を向け言う木乃葉の言葉にダークネス達は顔を見合わせ、灼滅者達へ向き直ると、にいと不気味な笑みを向けると地を蹴り襲い掛かって来た。

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「落ちる首は私達の首ですか、面白いジョークですね」
「アタシがその舌を首ごと剪定しようかえ？」
　恐ろしい勢いで得物を向け襲い掛かるダークネス達の攻撃に灼滅者達は身構えた。
「させないよ！」
　少しでも送り出す仲間達にダメージがいかないよう、登とダルマ仮面が攻撃を防ぎ、良太も中君と共にその身で仲間を守り切る。
「大丈夫ですか？」
「ありがとう」
　礼を言い、夕月が視線を前へと向ければ清香と拓馬がダークネス達へと攻撃を向けていた。
　今のところは作戦通りだ。夕月も続き、黒斗も死角に回り得物を構え、登もダルマ仮面と共にサウザンドブレイドへと再び攻撃する。
「あなた達は数の上では優ってますが、まさか私達相手に本気で勝てるとでも？」
　取り出す無数の得物が飛び、攻撃を打ち払う。
「いつだって本気だよ」
　攻撃を払われても登は気にせず仲間達へとちらりと視線を向ける。良太とルフィアの攻撃は翻る剪定ばさみに遮られ、
「ここで灼滅させてもらいますよ！」
　除霊結界を展開させつつ木乃葉は言い放つ。
「ふふ、面白い」
　くすくすと再び薔薇の貴婦人は笑い、ダークネス達の攻撃が向けられそして。
「作戦通りいこうか」
「オッケー」
　ルフィアに登は応え、チェーンソー剣を構えた黒斗はこくりと頷いた。
　３ターン目。ここで敵を真ん中に押し込み一気に仲間を送り出す――が、
「行かせませんよ！」
　刃を手にサウザンドブレイドは拓馬をけん制し、その一瞬を察した薔薇の貴婦人も右へと駆けようとする夕月へと鋭利な剪定ばさみをちらつかせ、
「何でも思い通りになるとは限らんえ？」
　にこりと見せる冷酷な笑みに清香はごくりと息をのむ。だがそれも数瞬。清香は身構え拓馬は攻撃を再開。もちろん隙を伺う事は忘れない。
　今は突破ができずとも、必ずチャンスは訪れるはずだ。ならば残る仲間が楽になるよう少しでも頑張ろう。
「もう少し頑張ろうね、ティン」
　わんと鳴く霊犬を視界に夕月はナイフを構え、黒斗はサウザンドブレイドへとチェーンソー剣を振り上げる。
「別に頑張らなくともいいのですよ？」
「そういう訳にはいかないんでね」
　ぎゃぎ、と嫌な音が響き眉をひそめる黒斗は得物をばっと払い、
「ここでオレ達が頑張らないと！」
「そうですよね」
　登と良太も言葉を交わす。
　二人の攻撃を受けめるダークネスは少し押されかけ、ルフィアの弾丸を弾かせ薔薇の貴婦人もさらに動く。
　手にする五行符を放ち五星結界符を展開させ、木乃葉は仲間達へと目くばせした。ダークネス達の攻撃をディフェンダー達が防ぎ――今だ！
「行け！」
「……っ！　通しません！」
「行かせるかよ」
　一瞬の隙を突き全力で拓馬と夕月、清香が駆ける。サウザンドブレイドが振り向き追おうとするが、それを妨げるのは黒斗の攻撃だ。
　不意の攻撃に肩口をえぐられよろめくとこにダルマ仮面を駆る登も攻撃を叩きつけるが、追おうとする薔薇の貴婦人の動きに気が付いた。
「まずい！」
「任せてください」
　中君との攻撃に薔薇の貴婦人は遮られ、そこに最も軽いというルフィアのエアシューズが襲い掛かった。ばっと払い振り返れば、既に３人の姿は小さくなっている。今から追うのは難しいだろう。
「さて、ここは任せて……というやつか」
「先輩達を必ず前線に届けます……足止めもしっかりこなしますよ」
　スターゲイザーの一撃を喰らわせ、ルフィアは見もせず救済タワーへと向かった仲間達を見送り、木乃葉もまた傷を癒す仲間達へと視線を向けたまま３人を見送った。
　当初の目的をまず達成できたと言ってもいいだろう。だが、ここからだ。
「パインサラダを作って待っていよう。それからこの戦いが終わったら私は」
「フラグなど立てるものではありませんよ」
　突破した３人を追う事ができず、サウザンドブレイドの声は苛立ちをあらわにしていた。薄い笑みを浮かべる薔薇の貴婦人もまた、隙を見て追うつもりだろう。
　だが、させる訳にはいかない。
「アナタ達をさっさと倒して追えば間に合うかえ？」
「此処を任されたんだ、そう簡単にやられてたまるかよ」
　黒斗は言い放つと、目前に迫るダークネスの攻撃に身構える。

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　むせかえるようなバラの香りと共に数え切れぬ刃が鈍く光り放たれる。
　ダルマ仮面と宙を舞い避ける登の視界に良太が親友と共に刃を弾く姿が飛び込み、クロスグレイブを構える黒斗が見えた。ぐっと狙いを定めて地を蹴り、一直線。
「そんな攻撃、痛くもない」
「じゃあこれはどうかな！」
　剪定ばさみはそれをいともたやすくいなすと登の拳をばしんと払い、ダルマ仮面の攻撃をもひらりとかわす。立て続けの攻撃で乱れた髪を直そうと薔薇の貴婦人はすと手を動かすが、その隙さえも灼滅者達は与えなかった。
　ぎいん！　がつ、ん！
　薔薇の貴婦人の剪定ばさみは良太のクルセイドソードを受けると羽を変形させ放たれるルフィアの一撃をも受け止めた。
「手強い相手だな」
「同感です」
　視線を敵から離さず黒斗は呟き、木乃葉は同意する。
　しゃんと錫杖を鳴らし仲間達を守る為のサイキックを展開させ、じっと見据え。
「来ます！」
「皆はオレ達が守るよ！」
　鋭い声に登と良太は応え、襲い掛かるダークネス達に備え、動く。
　戦いが続く中、ダークネスを背に見える世界救済タワーでは今頃、仲間達は戦いをはじめているだろうか。
　仲間を送り出してから数分経ち、視界に入るタワーを目にルフィアはふと、そんな事を考える。
　今回の作戦に参加したチームは数多く、その各チームからも自分達と同じように仲間を送り出している筈だ。どれほどの仲間達がマンチェスター・ハンマーの元へたどり着いたのかは分からない。難なく送り出せたチームもいれば、そうでないチームもいるだろう。
　送り出された仲間達が無事合流し――、
「おっといけない」
　刃と刃が交差する音が響き渡り、時折ふわりと癒しが降り注ぐ今は戦いのさなか。戦いに集中せねばとルフィアは軽く頭を振り思考を切り替える。
「私にはこれからパインサラダを作って待つ予定があってだな」
「そんなに死にたいのなら真っ先に殺してあげましょう」
「薔薇よりも紅い血を流して死ぬが良いえ」
「避けろ！」
　ディフェンダー勢をかいくぐり襲い掛かる攻撃。黒斗の声でひらりとかわそうとするが防ぎきれない。つと頬に紅線が走る。
「戦闘中に考えごとは良くないな」
　攻撃に向かう仲間達と共に羽を翻し、更に戦いは続く。

「皆頑張って下さい！」
　傷を癒すためのサイキックを展開させ、木乃葉は声を上げた。ちらりと時計を見れば、既に作戦開始から１０分以上が経過している。
　仲間達と共に対峙する２体のダークネスは強敵で十分な強さがある。２体を倒すのは難しいだろう。
　だが――。
「例えどれだけ傷付いたとしても、魂を奮い立たせて出せる力を尽くすのみだ」
「きゃあっ！」
　その一撃は薔薇の貴婦人の腕をざくりとえぐった。大きくよろめき生じた隙を黒斗は見逃さなかった。間髪入れずに一撃を再度叩き込み、そこへ登と良太が続く。
「アタシが……こ、これしきの事で倒れるとでも……？」
　言い薔薇の貴婦人はかろうじて良太とルフィアを捌くが攻撃に転じる事は出来なかった。
　攻撃を集中して受けていた薔薇の貴婦人だが、ここで受けたダメージは深刻なようだ。剪定ばさみを持つ手は己が流す血に濡れ、ドレスを埋め尽くす薔薇も血に濡れる。回復を図るも、さらに畳みかけるダメージがそれを上回った。
　仲間達の癒しを中心に行ってきた木乃葉だが、ダークネスの限界が近い事を悟り五行符を放ち声を上げる。
「ここで決着をつけましょう！」
「させません！」
　つと口の端から血を流す薔薇の貴婦人を目にサウザンドブレイドは数多の刃を閃かせるが、灼滅者達は全力を叩きつけた。
　黒斗のチェーンソー剣が胴を裂き、
「これで最後だ！」
「いきますよ！」
　息を合わせた登と良太の攻撃は真正面から直撃し、煌めく蹴撃がルフィアによって放たれる。
「これで終わりだな」
「あ、ぁっ……っ！」
　血濡れの薔薇は地に散り、ついに体はどさりと崩れ落ちた。

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「アタシ……は、こ、ここまで……の……、……」
　深紅の薔薇も血に染まり、ぽたりぽたりと鮮血が落ちる。
「しっかり！」
　崩れ落ちる薔薇の貴婦人を抱きかかえるサウザンドブレイドだが、既に命のともしびは消えようとしている。だらりと力が抜け、そしてその姿は灰となり、消えた。
　まずは１体。
「……よくも！」
「っく！」
「大丈夫？！」
　怒りをあらわに向けられる刃は良太を捉え、牙をむく。
　仲間を守り戦い続けていたが、さすがに限界が近い。登は声を上げるが、血を流す良太はかすかな反応を示すだけで。
「しっかりしろ、大丈夫か」
　額を流れる血が頬を伝い、ぽたりと落ちる。黒斗も声をかけ、目前のダークネスを前に得物を構え灼滅者達は思案する。
　強敵のダークネス、しかも２体を５人で戦い抜いた。送った仲間達を追わせない為の時間も十分稼げた。マンチェスター灼滅時かスサノオ到着まで踏みとどまるつもりだが、これ以上の戦いは――。
　荒い息をつく木乃葉の錫杖がしゃりと鳴り、無数の刃を構えるダークネスを前に灼滅者達は判断を下さねばならない。

　退き時だ。

　５対１と数の上では優位ではあるが、無傷な者はなく、良太と登のサーヴァントも力を出し切り倒された。
　対してサウザンドブレイドもダメージはあるものの、薔薇の貴婦人を集中して攻撃していた事もあり灼滅者達と比べれば十分な余裕が伺える。このまま戦い続けても良い結果は出ないだろう。
　前線の六六六人衆と戦い、決戦に向かう仲間を送り出し、残る戦力で六六六人衆と戦い続けた。当初の目標は十二分に達成している。これ以上、戦い続けても甚大な被害を得るだけだろう。
　ルフィアもそれを察したのか、微かにため息まじりの息を吐く。
　流れる汗をぬぐう事もせず、仲間達は視線を交わし、言葉なく後退する。ダークネスは追ってはこなかった。

　世界救済タワーを制圧したマンチェスター・ハンマーの元へ向かった仲間達はどうなったのだろう。無事に灼滅できたであろうか、それとも――。
　それを知るのはもう少し後の事になる。

作者：カンナミユ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2017年10月20日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
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