●真夜中のラジオ
「みんなは知ってるかな? 10月31日はケルト人にとって1年の終りでね、この夜は死者の霊が家族を訪ねてくると信じられていたんだ。そんな夜にハロウィンのハの字もない、雰囲気ゼロの場所にお化けたちがやって来たらどうなると思う? 小さなお化けたちは不安がって泣いたりするかもしれないよね。大人のお化け達なんかは『けしからん、お菓子をよこせ!』って暴れ出すかもしれないよ……」
暑かった夏はとうに過ぎ、陽が落ちるのも随分と早くなった。朱に染まり出す空へちらりと視線を向け、三国・マコト(正義のファイター・dn0160)は聞いたラジオ放送を口にする。
結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)にマコトが話すのは、ラジオウエーブのラジオ放送。
「赤槻・布都乃の調査によって、ラジオウェーブのものと思われるラジオ電波の影響で都市伝説が発生する前にこの情報を得る事ができた。このままではラジオ放送されたように、お化け達があらわれるだろう」
「ハロウィンの夜にですか?」
相馬は頷いた。
「せっかくのハロウィンだっていうのにお菓子もなければ、パーティーの気配もない。そりゃお化けも暴れるわな」
そう言いながら相馬は資料を開くと説明をはじめた。
現れるのはふわふわと浮き、シーツをかぶった小さなオバケ10体、カボチャ頭に黒パンツのガチムチマッチョ、小さなオバケ達同様に白いシーツをかぶった大人オバケ2体。
「お化けの大家族さんですね」
「きっとパーティーを毎年楽しみにしている家族かもしれないな」
説明を続けようとする相馬だが、このオバケ達に名前がない事に気が付いた。せめて大人オバケくらいは名前があってもいいだろう。
「カボ田とオバ美でいいか」
随分と適当すぎる名前ではあるが、マッチョはカボ田、シーツをオバ美と相馬は命名した。
「公園に現れるのは小さなオバケの姉弟だ。ハロウィンの雰囲気ゼロの公園内で家族とはぐれてしまったらしい」
小さなオバケ姉弟にとって殺風景な公園はとても寂しく不安な思いから泣いているという。両親やきょうだい達も必死に探しているに違いない。
小さなお化け達は声を使って攻撃をするようで、父親は巨大なカボチャハンマーとカボチャ爆弾、母親は鞭を使うそうだ。
「なお、この情報はラジオ放送の情報から類推される能力である為、可能性は低いが、予測を上回る能力を持つ可能性がある。まあ、低い可能性だが、その点は気をつけてほしい」
そう言い、相馬は灼滅者へと視線を巡らせる中、
「お菓子もなければ、パーティーの気配もないからお化けが暴れちゃうんですよね。だとしたら、パーティーを開いてお菓子をあげたら暴れないのかも?」
マコトの疑問に相馬は資料をじっと見つめ、そうかもなと口にした。
「子供たちはともかく、大人オバケはなかなか手強い相手だ。倒すのもいいし、一家が望むお菓子やパーティーを開くのもいいだろう。それはお前達次第だが……」
そう言い、相馬はカボチャを模した籠からお菓子を取り出すと、灼滅者達へと言葉を向けた。
「まあ、せっかくのハロウィンだし、皆で楽しい一夜を過ごせたらいいんじゃないかな。頑張ってくれ」
参加者 | |
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室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135) |
神西・煌希(戴天の煌・d16768) |
三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115) |
糸木乃・仙(蜃景・d22759) |
蒼羽・シアン(ハニートラッパー・d23346) |
銀城・七星(銀月輝継・d23348) |
琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803) |
風峰・静(サイトハウンド・d28020) |
●
雲一つない夜空にぽっかり月が浮かんでいる。
「あーちょっと待ってそこ揺らさないで!?」
ぐらりと街灯が揺れ、カボチャを抱えよじ登るフランケンシュタイン――いや、風峰・静(サイトハウンド・d28020)は思わず声を上げた。見下ろせば、支える神西・煌希(戴天の煌・d16768)が揺らしているように見えなくもないが……。
「揺れてる揺れてる! ちょっと?!」
「仙神父どんなもんかと思ったが、案外似合ってんなあ」
抗議する静に目もくれず、サウンドシャッターを展開させた煌希は神父に扮する糸木乃・仙(蜃景・d22759)がビハインド・ニュイの仮装のチェックをする様子を見守っていた。
ニュイのシスター衣装は仙が見立てたもので、とても似合っている。チェックが終わった後はハロウィンパーティーの準備に取り掛かる。
そう、今日はハロウィンだ。
「仮装にお菓子と南瓜の山、キラキラした雰囲気がハロウィンの魅力だよね。オバケも仮装の中に紛れ込みたくなるのも分かるな」
設営を手伝う三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)はお菓子と沢山のカボチャが並ぶ光景を前に持参したデジカメを向け、パチリ。
オバケも生者も関係なしに皆でお祭り騒ぎな一夜だというのに、ビルに囲まれ雰囲気ゼロのこの公園にオバケ一家がやって来るというのだ。
迷子のオバケ達と楽しい一夜を過ごそうという事で、ビハインド・カルラも今日ばかりは鳥面から狐面に変えている。頭に葉っぱを乗せた二人は狐と狸だ。
「美味しそうだね、輝乃ちゃん」
尻尾を揺らしてカメラのファインダー越しから声をかけると、仮面で顔の右側を隠す魔法少女――琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)はテーブルに用意してきたお菓子を並べている。
そろそろ寒い季節。ふわりと甘いお汁粉やコンソメスープも喜ぶだろう。
「これならオバケ達もすぐに気付いてくれそうですね」
用意してきた南瓜ランタンやハロウィン装飾のイルミライトを飾り付け、室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)がスイッチを入れれば、薄暗く寂しげなオフィス街の公園は一気にハロウィン会場だ。
用意した手作りお菓子に南瓜やお化け、黒猫等のグッズも華かに飾れば、もうバッチリ。
「香乃果ちゃんのアリス可愛い~♪」
「ありがとうございます」
エプロンドレスがふわりと揺れ、もう一匹のアリス、ウイングキャット・エレルを伴う蒼羽・シアン(ハニートラッパー・d23346)が飾り付けを終えて戻って来た。
「シアンさんのハートの女王様も綺麗」
「ふふ、ありがと」
花のような二人の笑顔の元にカンテラを持つ白ウサギ、銀城・七星(銀月輝継・d23348)も戻ってくる。
「終わったよ、姉さん」
「ご苦労様、ナナ」
ぐるりと見渡せば、街灯にはちょこんとカボチャが乗り、遊具や公園内のいたるところに南瓜。イルミネーションも輝いている。
「さて、と」
公園の入り口からの気合十分な飾り付けも完了し、パーティー準備の仕上げは人払い。仙が語るは百物語。そして現れるのは沢山のオーナメント達と氷蛍。
「オバケのお祭りらしくなったかな」
スピーカーからは用意してきた音楽が流れ、七不思議達が踊り。あとはオバケ一家を待つばかり。
――と。
「どうした?」
「泣き声が聞こえたような気がしたんだけど……気のせいかな?」
南瓜のランタンを持つ三国・マコト(正義のファイター・dn0160)は七星に言うと耳をすませ、周囲を見渡した。
●
「うえええええー!」
「ままー! ままー!」
泣き声は遠くからでも良く聞こえた。
「相馬くんが言ってた迷子のオバケ姉弟ね」
エクスブレインからの説明通り、幼いオバケの姉弟が家族とはぐれて迷子になったようだ。だが、姿が見当たらない。
一体どこにいるのか。
「探しに行きましょ、行くわよナナ!」
「ちょ、姉さん!」
「香乃果ちゃんも行きましょ♪」
同じアリスだからか手を取り笑顔のシアンに頷き香乃果も探しに行く事に。
「何かあったら連絡するから!」
七星の声はランタンの光と共に消えていく。
「大丈夫かなあ……」
いきなり襲い掛かって来る事なだいだろうけど、万が一がある。ちょっぴり不安そうにマコトは見送るが、
「何かあったら連絡するって言ってたし、大丈夫――」
ぴこっと耳を動かし渚緒は言い、並ぶカルラが気配に気付いた様だ。
それは他の仲間達も気付いた様で、気配がする方へと向く。薄暗い公園の奥からぽつぽつ小さな灯りが揺れている。
「おおーい、どこだー!」
「出てらっしゃーい!」
野太い声に高い声。どちらも大人の男女の声だ。小さい声も沢山聞こえてくる。声と灯りは徐々にこちらへと向かってくるようだ。
「家族の方かな?」
「多分ね」
煌希と静は言い、こんばんわと仙も出迎えた。
灼滅者達の前に現れたのは筋骨隆々、カボチャ頭の大男とシーツを被った長身の女性にふわふわ浮いたシーツのオバケ達。
「ちょっとアンタ達、ウチの子見なかった?」
かつこつとピンピールを響かせシーツを被ったオバ美が聞いてくる。
「こいつ等と同じでとっても可愛いんだよ! 二人が迷子になっちまってな、知らないか?!」
カボチャ頭のカボ太もずいと迫ってくる。説明を聞くに、やはりハロウィンの雰囲気がない閑散とした公園内で姉弟と一家ははぐれてしまったようだ。
「もしあのコ達に何かあったらどうしましょ……」
「情けない父ちゃんを許してくれえ!!」
めそめそと泣き出す夫婦だが、まずは一家を安心させないと。
「今、仲間達が姉弟を探しに行っているんだ」
「もしかすると見つかるかもしれないよ」
「本当か?!」
仙と輝乃にずいっとカボ太は迫り、オバ美は再びめそめそと泣き出しそう。そうこうしていると連絡が入ってくる。
「姉弟オバケ、見つけたって」
「大変だ! ハロウィンに遅れちまう!」
携帯を手に報告するマコトだが、それと同時に連絡してきた本人の声が聞こえてくる。
七星を先頭に小さなオバケが2体やって来るのが見えた。その後にシアンと香乃果も駆けてくる。
「さあ、急いで!」
「みんなが待ってますよ」
七星の後を追う姉弟オバケは家族の姿を見つけるとものすごい速さで駆け寄った。
「ままー、ぱぱー!」
「うえええーん!」
「もうドコ行ってたのお前達!」
「父ちゃん心配したんだぞお!」
がしっと抱き合い一家は大号泣。感動の再開を仲間達は温かく見守った。
「すまんな、子供達を探してくれて」
「感謝するわ」
長い抱擁も終わり、礼を言う夫婦を渚緒は見つめ、すと夫婦と子供達の手に香乃果は笑顔でお菓子を差し出した。
「パーティーにようこそ!」
「合えて良かったね。さあ一緒に楽しもう」
しゃがんで手招きする仙も仲間達とパーティー会場へと誘う。
「せっかくだし、皆で楽しもうよ」
「じゃあお言葉に甘えて」
「楽しませてもらおうか!」
輝乃に夫婦が応え、小さなオバケ達もはしゃぎだす。
長くて短い、ハロウィンパーティーのはじまりだ。
●
「一年に一度のハロウィンだもの! 大人とか子供とか無粋な事は言わないで、目一杯楽しみましょ☆」
「ハッピーハロウィン、菓子はどうだ……どうですか?」
ふわりと浮かぶアリスを伴い、笑顔のハートの女王様に扮するシアンに続くのは、白ウサギに扮する七星。
「すごく可愛いですね。食べるのがもったいない」
七星お手製スイーツは香乃果が思わず言うほどの、とても可愛らしいものばかり。
物語をモチーフにしたそれは、トランプ兵のジャムクッキーにベリーのミニタルト。飴細工製の薔薇の花や紫芋で作ったチェシャ猫ロールケーキまである。
「どうぞ、トランプ兵を模したクッキーです。お口に合えば、何より」
「あらありがと」
「アリスもどうぞお受け取り下さい」
王女の使える白ウサギは行儀作法に気を付け、オバ美にクッキーを渡すと香乃果とマコトにも手渡した。
「ありがとうございます、じゃあお礼にこれを」
笑顔の香乃果はそれを受け取り、南瓜プリンを七星に。
「おいしそうね、ナナ」
「シアンさんにもどうぞ」
プリンに興味深々のシアンにも手渡すと、オバケ達も気になったようだ。
「クッキーもおいしそう!」
「プリンいいなー」
「じゃあみんなにはこれをあげますね」
テンション低めのエレルがお菓子を配るのに続き、香乃果は用意してきた飴の首飾りをオバケ達に掛け玩具の王冠を被せてあげれば、街灯の光を浴びてきらきら輝いた。
「似合う?」
「とても似合うよ」
「わー! ありがとう」
「ありがとー、おねえさん」
小さなオバケ達は嬉しそうにふわふわ浮き、お菓子を欲しがるオバケにはクッキーやカボチャのパイをプレゼント。
「美味いな、何か飲み物はあるか?」
「飲み物は紅茶、ハーブティーお好きな物をどうぞ」
美味しそうにミニタルトを頬張るカボ太に持参したハーブティーを手渡せば、それを見守るシアンは何だか嬉しそう。
「さっすがナナ、様になってるわね」
「そりゃあ姉……陛下の御心のままに」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げれば、子供オバケ達のはしゃぐ声が聞こえてきた。
「トリックオアトリート……です……です」
南瓜型の籠を手に、仮装した噤は魔女っぽい衣装をふわりとさせ、オバケ達にお菓子配り。
皆で協力して作った会場は沢山の南瓜やイルミネーションが輝き、保が飾った花も夜風にふわりと揺れる。
「おかしちょーだい!」
「いたずらしちゃうよー!」
「じゃあおかしあげます……です」
「とりっく、おあ……とりーと!」
大きなキャンディを手渡せば、オバケ達は大喜び。エクソシストに扮する保のカラフルな飴玉やクッキーも宙を舞う。
そんな中に始まるのは【峠部】の皆ではじめる戦いだ。もちろん、本当に戦う訳ではないけれど。
「ウオオ血ヲヨコセエ~!」
ばさりとマントを翻し、ドラキュラ煌希はオバケ達にダッシュで駆け寄り、
「頭のネジ落としたっぽいんだけど誰か知らない?」
どうやら静が仮装道具を落としたようだ。きょろきょろ探すも見つからず、まあ、そのうち見つかるかもしれない。
「ほーら口から白炎蜃気楼ー」
「きゃー」
「ままー、こわいよー」
フランケンシュタインの口からドライアイ代わりにもわっと出れば、オバケ達はきゃあきゃあ面白怖がり声を上げる。あ、これまだ脅かしが足りてませんよ?
「ヨコセ~! 血ヲヨコセ~!」
「うおおぉ~!」
さっきよりテンション上げて子供オバケ達へとぐいぐい迫って脅かし、きゃあきゃあ声が響き、
「そこまでだ!」
「ダ、誰ダ?」
「姿を表せ~!」
頭上から響く声にモンスター2体が見渡すと、天敵である神父とシスターが立っているではないか!
「せっかくのハロウィンというのに子供達を脅かす狼藉者め、ここで成敗してくれる!」
噴水を前に月光を浴び、びしっと決める仙とニュイ。
「覚悟しろ!」
「ヤレルモノナラ、ヤッテミロ!」
「負けないぞ~!」
こうしてモンスターとの戦いの火ぶたが切って落とされた。
「さあ、これを」
仙が皆に手渡すのはニンニクや螺子の形をした蝋燭。
「皆で攻撃だ!」
オーナメント達や氷蛍の応援を受け、攻撃開始!
お菓子やニンニク、十字架などが宙を舞い、モンスター達へと降り注ぐ。
「うおーおれはチョコレート系のお菓子をくらうとしぬぞー」
「うわあぁ、ちょこれーとあげるよーー」
自分から弱点を言う恐ろしいフランケンシュタインに保のチョコレート攻撃がクリティカルヒット! 仙からチョコを受けとる輝乃やシアンもぽいぽい投げ、シャッターを切りながら渚緒も笑顔で追加攻撃!
こうかはてきめんだ!
「ぐわー、やられたぁー。あとはたのんだー」
ばたんと倒れるフランケンシュタインが後を頼んだのは魔女と吸血鬼。
「私、魔女です?……はい、です」
「二人デ戦ウゾ~!」
慌てる魔女に吸血鬼はぐっとガッツポーズするが、次の瞬間には容赦ない攻撃を受ける事になる。
そっと保が魔女っこさんの帽子にお花をふわりと飾るが、吸血鬼に慈悲はなかった。
「いてえ! ちょ、あいたたたたた!?」
マシュマロから菓子、ニンニクから十字架まで容赦なく降り注ぐ中、煌希はゲラゲラ笑い逃げる。
ちなみに吸血鬼はオバ美の華麗なる鞭さばきからのカボ太のジャーマンスープレックスを受け、地に沈んだ。
「アリスたちにエクソシストとモンスターズの撮影するよ、魔法少女輝乃ちゃんもほら、ピース!」
お菓子や飲み物を手にする皆をパチリ。声をかけシャッター切る渚緒だが、もちろんオバケ達の写真も忘れなかった。
「アリスコスプレの面々の統一感すげえなあ、絵本から抜け出たみてえだ」
「血の代わりはトマトジュースで……飲める?」
可愛らしいお菓子に手を伸ばす煌希に仙がコップを差し出し、
「紅茶くらいはポットにいれてきたけどどう?」
輝乃へ紅茶を手渡し、チョコの香りがふわりと鼻孔をくすぐるシフォンケーキをぱくりと一口。
「デジカメって便利だよね……何枚撮ってもフィルムが切れない」
カメラマン渚緒はデジタルカメラを片手にカルラと一緒に写真を沢山撮っていた。今回の依頼の重大ミッション、皆のカメラマン役である。頑張らなけらば。
「栗ようかんも美味しいです」
「美味しいよね、はい写真撮るよー」
微笑む香乃果の笑顔もぱちりとカメラに収め、渚緒がのぞくファインダーにはお菓子を配る魔法少女がいる。二体の片翼の人形達の急降下にオバケ達は驚いたり追いかけたりで、背後から突然出てくる影獅子にはカボ太の巨体がどすんと揺れて。
「びっくりしたじゃねえか」
「アンタも意外と小心者ねえ」
尻餅をつくカボ太にコンソメスープを飲みながらオバ美は言い、きゃあきゃあ子供達も笑う。そんな楽し気な家族をを輝乃は少し離れてスケッチしていた。その姿もパチリと収め、
「家族仲良し、っていい光景だよね」
沢山の笑顔をカメラに収めカルラと笑いあい、渚緒は思うのだ。
――オバケも人間も、皆楽しい夜であればいい。
「せっかくだから皆で記念撮影とか、どうだ?」
「いいね」
お菓子や料理を味わい、交換したり。煌希と静は言い、
「お願いしていいです?」
「もちろん!」
七星に渚緒は応え、みんな並んで撮影準備。
「並んで並んで、オバケ一家も一緒に写ろう」
大人数だけど大丈夫、さあ並んで並んで!
はい、ポーズ!
●
用意してきたものもすっかりなくなり、楽しい時間もあっという間。
「さて、そろそろかしらね」
飲み干し温かさがまだ残るカップをことりと置くとオバ美が立ち上がる。
「そろそろ?」
スケッチも一段落といったところで輝乃が聞けば、オバ美は時計を見つめていた。時間は12時を過ぎ、10月31日は終わってしまった。
「さあお前達、遊びの時間は終わりだよ!」
「え?」
「なになに?!」
突然の鋭い声に香乃果とシアンは振り向いた。
「お前達の恐ろしさを教えておやり!」
「「「はーい!」」」
威圧するような声が響くと楽しんでいた子供達は飛び上がる。低く、高くお化け達はくすくすと笑いながら駆け抜ける。
「ちょっ、なんだよこれ!」
慌てて姉の元へ七星は駆け寄った。夜空は不気味な紫に染まり、月は血のような紅に。
「ほらアンタもとっておきの『アレ』を」
「任せとけって!」
ぴしゃんと鞭がアスファルトを打ち、カボ太は自信満々に胸を張る。取り出すのは、超巨大カボチャだ。
「そーら、いっくぞぉー!」
「やっておしまい!!」
小さなオバケ達がきゃあきゃあ笑いあう中、怒号と共に巨大カボチャ爆弾はぽーいと宙を舞い、灼滅者達は身構え――、
ギャハハハハハハハハ……!
「……?」
爆発音の代わりに笑い声が響き、仲間達を守るべく最前に立った静が見たのはカボチャ爆弾の中から飛び出した無数の星。きらきら輝くそれは宙を舞い、地を跳ねる。
ハッピーハロウィーン!
星たちが煌めくその中、渚緒とカルラは沢山の子供達と共に手を振る体格のいい男とスレンダーな女性の姿を見た気がした。手を振る大家族の姿は星と共に消えていく。
沢山の声が公園に響き渡り、気付けばオバケ一家の姿はどこにもなかった。
「すげえなあ、あの一家」
「確かに」
ニュイと共に夜空を見上げる煌希に頷き仙も空を見上げる。不気味な色はとうに消え、美しい月が煌々と仲間達を照らしている。
今のはきっと、オバケ達のイタズラなお礼に違いない。
――と、
「あいてっ」
静の頭上に何かが落ちてきた。地面に落ちたそれを拾えば――どこかで落とした頭のネジ。
「輝乃ちゃん」
ふと渚緒に呼ばれ何事かと向くと、すと伸びた指がスケッチブックをさしている。見れば、スケッチが何枚かなくなっていた。
「お化け一家がお土産に持っていったんだろうね」
「喜んでもらえて良かったわね」
静とシアンに輝乃はこくりと頷いた。
オバケ一家は消え、皆で片づけすれは楽しいパーティーの面影はもうどこにもない。
「お疲れ様でした」
ふわりと優しく微笑み香乃果はお菓子と共に大切な帽子屋さんの元へと駆けていく。
「ボク達も帰ろうか」
輝乃に渚緒も頷き、
「今年も面白い一家だったわね」
「確かに」
シアンと七不思議達をねぎらった仙は言葉を交わし、灼滅者達は公園を後にする。
こうして不思議な夜は更け、賑やかで不思議なパーティーは幕を閉じるのだった。
作者:カンナミユ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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