ソックスハンター・シャドウリターンズ!

    作者:空白革命

    「ククク、フフフフフ、ファーッハッハッハッハ!」
     靴下をソテーにしてスタイリッシュ塩振りした後フォークでつまんでむっしゃむっしゃ食い始めるバケモンを想像できようか。
     できたらそれはそれで大変だが。
    「うまい、うまいぞォ! 現実の靴下はやはり格別である!」
     そんなコトを喋るバケモン、もといシャドウ。
     正確には、頭に靴下をかぶりあとはビキニパンツしか着用していないシャドウである。シャドウじゃなかったら即通報されている存在である。
    「しかしここにある靴下だけでは満たされぬ。やはり美女の脱ぎ立て靴下がなければ……クッ、ここから出たら即座に靴下狩りを始めるというのに、ぬうううん!」
     靴下をバリムシャしながら、シャドウはもんもんとしていた。

    「靴下大好きシャドウだよ!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)がディスイズアペンのポーズで叫んだ。
    「……シャドウが、潜んでいたんだよ!」

     話をめっちゃ整理すると、スサノオにサイキックリベレイターをリベったことでなんか敗残勢力をめっちゃ匿ってるらしいことがわかった的なサムシングである。
     白炎の檻ってゆー予知防止処理がされた廃墟ン中にあり、きっと決戦時の戦力にするつもりなんだろーなというハナシである。
     モチロン、スサノオとガチる以上こいつも灼滅(ツブ)さなきゃなんねーよなー。というハナシである。

    「今回見つけた匿いダークネスはシャドウ。名前はソックスイーターだよ。ハンターどころかイーターなんだよ!」
     ことの重大さを説明すべくジェスチャー混じりで話すまりん。
    「脱ぎ立て靴下をこよなく愛し、靴下力によるサイキック……いやソックスキックは絶大な威力を誇るよ! あと吹けば飛ぶような雑魚戦力の兵隊こと『靴下狩り』がちょいちょいいるよ!」
     最後に靴下をぐいっと脱いでみせると、まりんは真剣な顔で言った。
    「スサノオがどーこーってゆー前に、こいつを野に放ったらそれはもうヤバいことこの上ないよ! おねがい、シャクって! 灼滅して!」


    参加者
    椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)
    白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)
    蒼汁・いーとみー(ぐれーとおーるどわん・d32159)
    立花・環(グリーンティアーズ・d34526)
    下乃森・藩茶(パンティ・d34680)

    ■リプレイ

    ●おいでよ怪物の森 ~灼滅者のほうがバケモン~
     (壮大な宇宙戦争ムービーが始まるかんじのテロップをご想像ください)
    「思い返すも五年前。私たちは罪の無いひとを救うべく、恐ろしいシャドウと戦いました」
     椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)は胸に両手を当て、じっと目を閉じた。
    「人知を超えた怪物を前に恐れすくむ人々。私たちは果敢に立ち向かい、そして退けたのです」
     小指立ててマイク持った黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)。
    「おもえばあれが初めての対ダークネス作戦。無垢だった私はただ彼らの猛威を退けることしかできませんでしたが……」
     めんつゆにつけた靴下を勢いよくすする靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)。
    「ずるるずぞっ、ずぼっちゅ、もっちゅもっちゅ、あぅんま……ンマァァイ! ハッフ! ハッフ! ンッンッンンンンンンンダイナマイッツ!」
     トーストにチーズとパンツを乗せたものにかぶりつく下乃森・藩茶(パンティ・d34680)。
    「こら靴下ばかりンガフグッ、食べるな! 栄養がハンガッフ、偏るぞ! ちゃんとパンツを食べンアアアアアアアイッ! パッパパッパパンティイイイイイイイイイイイイイ………………うっ」
     器を握力で粉砕し、二人の怪物は大きくのけぞった。大地からあふれる漆黒の波動があのなになんだっけこう罪深きアレしてこう、こう、こう……。
    「「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアイ!」」
    「うるっせえ!」
     立花・環(グリーンティアーズ・d34526)がいつものポーカーフェイスでマグロフルスイングを繰り出した。
     最近つかってねーなと思ったのでゲスト出演したマグロ兵器である。
     あとマグロはこのあとスタッフがおいしく頂きました。
    「まだハナシも冒頭じゃないですか。なにフルスロットルひねってるんですか」
     このままじゃ話すすまねえなと思った白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)が、懐からスッとマジカルステッキを取り出した。
    「マジピュア・ウェイクアップ!」
     光り輝く画面。ピンク色になる背景。始まる専用BGM。全身をフリルリボンでぐるぐると包むやボディにきゅっとフィットし一瞬だけぼんやーりしたシルエットが露わになったところで手首にリング足にはブーツ、胸にはおきまりのピンクリボンをふくらませ、ポーズと共にピンクカラーの衣装をなびかせた。
    「希望の戦士、ピュア・ホワイト。ソックスイーターから靴下を守るべく、愛ある限り戦います!」
    「つまり私が先に食べておけば万事安泰。ギブミーソックス!」
     美しいソックスバラードを歌いながらゆっくり近づいてくるムタンガの男、蕪郎。
     その足下にしがみつく藩茶。
    「こら! 靴下を喰うのはいいがパンツも喰え!」
    「あげません!」
     ジュン(いつも忘れそうになるけど男性)はスカートを押さえて後じさりした。
    「ソックスイーターの次はパンツイーターですと」
     眼鏡をキラッとさせる環。
     そんな考えた奴も育てたやつもどうかしてるバケモンどもを眺めて、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)はきわめてシリアスな顔をした。
    「フフ……やはり、人類は我ら灼滅者が管理せねばならないようだな」
    「いまそういう流れありました?」
    「定期的に言っておかないと基本を忘れるんだよ。今日はゆるく行かせてもらうからな、オレ」
     吸ってもいない煙草(よく見るとミントハーブ)を加えてニヒルに息をつく明日香である。
     少なくともこの人は仲間をとめるつもりはなさそうだなと判断した紗里亜は、咳払いをして言った。
    「皆さん! かつて戦ったシャドウとの再会は、私たちにとっても好機です。成長した私たちの力を見せましょう! ね、蒼汁さん!」
     まだ出てない人に声をかけるつもりで振り返ると。
     なんかうぞうぞしたやつがあった。
     冬場にさ、ミミズが沢山かたまって巣ごもりしてる時あるじゃん。あれを人間サイズにしたようなやつ。
    「えば、ばばぐいあぐあ、ぞるで、ろぐ、ろぐ、おお」
     人間の言語を発してなかった。
     っていうか蒼汁・いーとみー(ぐれーとおーるどわん・d32159)だった。
    「えっと、なんて……?」
    「書き手にアオジルを飲ませて地の文をジャックするヨ♪」
     ははっ、そんなことできるわけないじゃあないですか。ゲームとしての公平さというものが……うっ……!

    ●あああああああ
     あああ。
     うああうあ。
     ああ、うううああ。こふごふ。ふごごごふ。
     ぬうれべ、ふんぐあ。ふんぐあ。
    「ククク、今日も元気で靴下がうまい! 早くお外出たいのう! ハッハッハ!」
     ふんぐぬい、ふんぐねあ、ぜげべばぶ。
    「ハッ、なにやつ!?」
    「私たちの顔を見忘れたとは言わせませんよ!」
    「人々の靴下は私が守ります! マジピュア・ハートフラッシュ!」
    「グワーッ!?」
    「オレの靴下も喰いたいか? 欲しくば力尽くでこい。ハァッ!」
    「グゥワーッ!」
    「せやぁ!」
    「グアー!」
    「このっ!」
    「グオー!」
    「くらえ!」
    「グハー!」
    「はあ、はあ……ちょっととめろ! なにがとは言わんがとめろ!」

     うぞうぞしていたアオジルオバケを蹴倒すと、明日香はあちこちにかかった暗幕をはがしへんなスピーカーを踏みつぶした。
    「ふう、誰だこんないたずらをしたやつは。真っ暗で何も見えないだろうが」
     足下を見ると、靴下をくわえた半裸の男が仰向けにノビている。
     そして彼女の後ろから、ゆるやかな拍手が聞こえてきた。
    「ククク、見事な戦いぶりだな」
    「なんだと? ってことは今蹴倒したこいつは……」
     振り返る明日香を、かの者は嗤う。漆黒の法衣を纏い禍々しき鎧をのぞかせ、かの者はぬらりと明日香の足下を指さした。
    「残念だったな、そいつは本物だ」
    「じゃあお前誰だよ!」
    「かかったな!」
     足下にいた変態が飛び上がった。
    「そいつは我が眷属、靴下狩り十三号こと『シマシマ靴下甘酢がけ』君だ! シネェイ!」
     両手をYの字に掲げカマキリみたく手首を曲げ――た状態のまま天井からぶらーんってしていた。
     もっというと両肩にひっかかったパンツによってつり下げられていた。どういう原理かめっちゃ伸びるパンツである。
     こう、天井のパイプを滑車変わりにしてヤツをつり下げていたのは、下乃森藩茶パンティーマンである。
    「最近実写映画化された漫画から着想を得た新必殺技……イカロスパンティ・地獄の逆バンジー」
     ピンと伸びに伸びたパンツを指で弾くと、なんでか知らないけどソックスイーターが爆発した。
    「グワーッ!」
    「ゴウランガ。ソックスイーターはしめやかに爆発四散」
     状況をすげえ雑に語る環。どのくらい雑かというと、爆発はしても四散はしてないくらいである。
    「おっといけない。準備準備」
     環は七輪を取り出すと乗っけたお魚を真剣に焼き始めた。これが夜霧隠れのシーンだって言って信じる?
     もくもくあがった煙の中から、歌が聞こえてきた。
    「ソッソッソゥー、ソーックース、ぺろんぺろぉん」
     ムタンガのヒモで右乳首と左乳首を交互にぱちんぱちんするセルフパーカッションで現われたのは、頭まで靴下を被った変態だった。
     靴下を被った変態は、靴下被った変態へ歩み寄ると、靴下被った変態に靴下を差し出した。靴下を差し出された変態は名刺交換の要領で靴下を差し出し、変態と変態は受け取った靴下の先端を咥えじっと一分間制止したのちちゅるんと一気にすすり込んだ。
    「「そっくすまいうー」」
     靴下を喰った変態と靴下を喰った変態は握手をし、肩をたたき合い、そのまま強く抱き合った。
    「……じゃ、余は行くから」
    「……お元気で」
     名残惜しそうに身体をはなし、今一度強く手を握り合ったあと、変態は背を向けた。
     ガラガラと開く店のシャッター。さしこむまばゆい逆光。
     光に向けて歩き出す背中に、変態は手を振らなかった。
     別れの挨拶はいらない。きっとまた出会うから。
    「――って待て待てぇい!」
     フライングメイドキック(一般的な業界でもご褒美になるやつ)でソックスイーターの側頭部をぐきってやると、環は後方宙返りして着地した。
    「終わるな! まだ! 半分!」
     靴下いっぱいのワゴンに埋まったナノナノがおかしな顔をしている中、環はビシッと仲間を指出した。より正確にいうと押しつけた。
    「あとは、この人たちが相手をします!」
    「えっ」
     ガン振りされると思ってなかった紗里亜は、ひとしきりわたわたしたあと、とりあえず格闘の構えをとった。
    「ククク強大なるシャドウに単身挑むとは良い度胸だ。像に踏まれるアリの気分を教えてやろうぞ!」
     両手をYの字に振り上げて突進するソックスイーター。
     靴を脱いで片足を上げ、靴下の縁に親指をつっこむ紗里亜。
     正座の姿勢でスライディングブレーキをかけるソックスイーター。
    「あ、っと、バランスが……」
     近くのものにつかまりつつ、ぐいぐいと靴下を脱いでから、それをぽんぽんと叩いてからソックスイーターに差し出した。
    「ククク殊勝! 我に靴下を差し出すとは。早速香りを楽しませてもら……何ィ!? 綺麗に洗濯されているだとぅ!?」
    「説明しよう」
     パネルを持って現われる環。
    「紗里亜さんは相手に手渡す前にESPクリーニングを使って靴下を綺麗にしていたのだ」
    「無味無臭とかした味気ない靴下に絶望することでしょう」
     にっこりする紗里亜……の目の前で。
    「ズゾゾッ、ズバッ、はっふはっふ! あああンマァイ! もぐもぐじゅぅる! ふんむっふ! ふんむっふ!」
     ソックスイーターはめっちゃがっついていた。
     どん引きする環。
     どん引きする紗里亜。
     便乗する蕪郎。
    「めんつゆ出しましょうか」
    「出さんでよろしい」
     環は立花ハモ払い(↓溜→P)で蕪郎をひっくり返すと、返すハモ刀(追加P)でソックスイーターをひっくり返した。
    「下乃森さんもうちょっと寄ってもらっていいですか。両腕で肩を抱く感じで……はい、チーズ」
     その様子をパンティマンと一緒に撮影する璃羽。
     ソックスイーターは無駄に開脚旋回動作で立ち上がるとY字のポーズで飛びかかった。
    「貴様ァ! 吾輩を無許可で撮影するとは! シネェイ!」
    「私の靴下あげますんで大人しくしてて下さいね」
     ハイサイソックスをぐいぐいっと脱いで見せる璃羽。
     スイッチングジャンプで戻ると備え付けのソファでパンティマンや蕪郎と絡むポーズをとるソックスイーター。
    「ちょっとだけだからね! 靴下のためなんだから、勘違いしないでよね!」
    「控えめに言ってきもちわるい」
     とか言いつつぱしゃぱしゃ撮影すると、脱いだ靴下に十円玉を沢山詰め始めた。ブラックジャックっていう武器だよ。たまに拷問に使われるよ。
    「さ、約束通り靴下を叩き付けてあげますからね」
    「勘違いしないでよね! 快楽のためなんだからね!」
    「もうそれツンデレとかじゃないです」
     JKが喜ぶ大人の尻を硬化をつめた靴下で叩くというアブノーマルな光景を暫くお楽しみください、もしくはMMDにして配布して下さい。
     ちゃっかり便乗してご褒美をいただいてた蕪郎が紳士の顔で言った。
    「ふぅ、思いだしますなあ。五年前もこんな光景が広がっておりました」
    「あんた当時一般人だったでしょうが」
    「ちょっと待った! オレも協力したのにパンツがいただけないとはどういう了見だ!」
     飛びかかってきたパンティに『パンはパンでもレバーをやられるパンはなーんだ』とか言いながらハラパンを入れる璃羽である。
    「ふう、これもまた天丼……」
     ハラパンはしたっけかなと思いつつも額の汗をぬぐった。
     そして、ふと大事なことを思い出した。
    「待ってください。これ、尺的に見てもう終わりじゃありませんか」
    「尺ってなんですか!? どこの空間を見てるんですか!?」
     などと言いながら滑り込みで現われたジュン。
    「日曜朝のアニメでもお約束。必殺技でトドメのシーンですね! それじゃあ行きますよ、マジピュア――」
    「齧って啜って飲み込んで。召しませチョコ娘☆ いーとみぃ♪」
     それまであえて存在に触れられてなかったアオジルお化けがうじゅるうじゅるいいながらソックスイーターの口の中に飛び込んでいった。
    「召しませ、脱皮ソックス☆」
     そこからの光景を説明するのはとっても難しかった。
     明日香も紗里亜も、環も璃羽も、蕪郎や藩茶でさえ目を背けるようなシーンだった。
     気を利かせたジュンがモザイクプレートをかぶせてようやく見られるようになったアオジルお化けは、なんか最終的に喰わせたんだか喰ったんだかわかんない、ひどくホラーな殺し方でソックスイーターを灼滅した。
    「えっと……あの、これで終わりだと絵的にアレなので、ちょっと格闘シーンいれますね?」
     何かを感じた紗里亜が、それまでほんとに忘れられてた靴下狩りの皆さんを片っ端から掌打掌打また掌打の無双アクションをしまくることで『わーい敵をやっつけたぞ感』を出してくれた。
    「これで最後です!」
    「グワーッ!」
     両の掌による打撃によって壁をぶち破って外へ吹き飛んだ靴下狩り。
     あいた穴から外へ出ると、もう夕暮れ時だった。
     秋のどこか寂しい風が吹き抜け、彼らは顔を見合わせて変身を解いた。
     そして誰に告げることもなく日常へと去って行くのだ。
     って書いておけば綺麗に終わる気がしたので書いておくのであった。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年11月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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