コートの中を飛び交う無数の白球! それらがビシバシと一人の男に襲い掛かる! 痛みに「あぅっ!」とか「おぅっ!」とか叫びつつ、それらを全身で受け止め時には返す屈強な男! しかし何個目かのボールが顔面を直撃した時、ついにふらふらと倒れ込んだ。
「ハァ、ハァ、もうダメです、コーチ……」
「馬鹿野郎!」
コーチと呼ばれた、これまた屈強な男――ボールを受け止めていた男より一回り大きい――が叱責と共にまたボールを投げつけた。再びくらって卒倒する男。気にせず、コーチと呼ばれた男は続けた。
「こんなところで終わっていいのか! 我らが同胞を灼滅しまくった武蔵坂に目に物見せてやらなくていいのか!」
その言葉にはっとする男。「コーチ……!」と痛みをこらえて立ち上がった。見れば、二人の頭には黒曜石の角が生えている。つまり二人は羅刹。同胞を灼滅しまくった武蔵坂にいつか復讐するため、特訓を重ねているらしい。なぜバレーボール(っぽい)のかは知らない。ともかく、男は涙を拭って呟く。
「そうっすよね、あきらめたらそこで終わり……!」
「そうだ! それが分かったら、夕陽に向かって走……るのは匿ってもらってる立場上無理だから、この体育館を100周しろ!」
「はい!」
元気よく答えて走り出す男。どこまでも昭和スポ根風味だった。
「スサノオに対して、サイキック・リベレイターを使用した事で、スサノオ勢力の情報を得る事ができました」
教室で、桜田・美葉(桜花のエクスブレイン・dn0148)が語る。
「その結果、スサノオ勢力に、スサノオ以外の戦力が多く参加している事が分かったんです」
どうやら、スサノオ勢力は滅亡した勢力の残党を、サイキックアブソーバーの予知を防ぐ白炎の檻で囲った廃墟の中に保護し、決戦時の戦力にしようとしているらしい。
「……スサノオ勢力、及びナミダ姫に対して色々と思うところがある人もいると思います。ですが、スサノオと決戦する事を決めた以上、この戦力を放置するべきではありません。皆さんには、白炎の檻に囲われた廃墟に向かい、そこに住むダークネスの灼滅をお願いします」
そう言って、美葉は帽子を押さえて頭を下げた。
「それで、私が見たのは……」
面を上げながら、美葉はどこか遠い目をする。
「……なんか、昭和スポ根っぽい羅刹でした」
なんじゃそりゃ。
そう言いたげな目線を送る灼滅者達に、彼女は改めて説明を加えていく。
「ええと、この羅刹達は、どうやら同胞を灼滅しまくった武蔵坂にいつか復讐するために特訓を重ねている、ようです。ただ、その特訓内容が、どうもバレーボールっぽくて」
いや、なんでバレーボール? と当然の疑問を口にする灼滅者。美葉はこめかみを押さえた。
「私にも分かりません……ただ、羅刹って元々好奇心の赴くままに人里に降りてきたりする種族じゃないですか。もしかしたら、どっかで昭和スポ根モノ見て影響でも受けたのかもしれません」
本当のところはどうか分かりませんけど、と美葉は呟いた。
「ただ、いくらバレーボールっぽいっていっても、彼らはバレーボールのルール分かってないみたいです。なんとなくそれっぽいことやってるだけで」
なんちゃってスポ根かよ。呆れる灼滅者達に、美葉は表情を引き締めて言う。
「ですが、やってることはアホっぽくても彼らはれっきとしたダークネスです。そこまで強いわけではありませんが、舐めてかかると痛い目をみるでしょうね。今の皆さんの力なら大丈夫だと思いますが、油断はしないようにお願いします」
神妙に頷く灼滅者達。それを確認すると、美葉は詳しい説明を始めた。
「今回相手にする羅刹は二体。どちらも屈強な男ですが、片方はもう一人より一回り大きく、またやや強いようですね。この一回り大きく強い方がコーチ役やってる『カタムナ』で、もう一人が『ヒロオカ』って名前らしいです」
……なんだ、この妙にどっかで聞いたことあるような名前。なんでお前らテニスじゃねぇの? と突っ込んではいけない。
「そのカタムナとヒロオカは廃校と化した学校の体育館で特訓しているようです。廃校は白炎の檻に覆われていますが、白炎の檻はエクスブレインにしか見えないので。潜入は普通にできます。罠とかもないようです」
単純な真っ向勝負になるということだろう。
「二人が使用するのは神薙使いの皆さんが使うサイキックとほぼ同じです。ただ、それに加えて全力でアタックしてボールをぶつけてくる攻撃もしてきます。これにはエンチャントを解除する効果もあるようです」
その攻撃が特訓の成果なのかどうかは知らない。知らないが、威力も低くないようなので注意した方がいいだろう。
「ポジションはカタムナがスナイパー、ヒロオカがクラッシャー。曲がりなりにも二人でずっと特訓してたせいか、非常に連携の取れた動きをしてきます。お気を付けを」
説明を終えた後、美葉はこう締めくくる。
「滅びた組織の残党を匿うというのは、スサノオらしい動きですし、それ自体は悪い事ではないかもしれません。しかし、決戦を行う以上、敵の戦力を減らす事は重要になります」
仮にこのカタムナとヒロオカが決戦に参加する事が無かったとしても。そもそも彼らは、武蔵坂への復讐を狙っているのだ。放置しておくわけにもいかないだろう。色々と思うところのある人もいるかもしれませんけれど、と美葉は呟いた。
「確実な灼滅を。お願いします」
参加者 | |
---|---|
無道・律(タナトスの鋏・d01795) |
高麗川・八王子(KST634初期メンバー・d02681) |
ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125) |
雨月・葵(木漏れ日と寄り添う新緑・d03245) |
木元・明莉(楽天日和・d14267) |
●殴り込み
「バレーボールってさ、こう、あれだろ? くるくる踊りながら玉乗りする感じの」
――何もかも違う――。
木元・明莉(楽天日和・d14267)の一言に、雨月・葵(木漏れ日と寄り添う新緑・d03245)は初っ端から頭を抱えたくなった。
(「……実はちゃんと解説できるように、バレーの本とかスポーツ漫画であらかじめ調べて来たりしてるんだけど」)
ここまで違うともはやどこから説明していいか分からない。こうなったら実際に見た方が早い、と灼滅者達はものすごくボールの音が響く体育館を覗き込んだ。まぁ、体育館の中の彼らがやってるのもバレーボールもどきでしかないんだが。
コートの中では、無数の白球が飛び交っている。それらを果敢に受け止め、時には打ち返している屈強な男がいる。あれがヒロオカだろう。そのヒロオカに「もっと腰を落とせ!」「ボールから目を離すな!」などとボールと一緒に激を飛ばしているのがカタムナ。この風景だけ見れば、真っ当なスポ根に見えないこともない。
「す、すごい特訓でち……!」
昨今ではあまりお目にかかれない光景に、高麗川・八王子(KST634初期メンバー・d02681)は息を吞む。でも、と拳を握った。
「特訓はすごいと思いますが、それが学園への復讐のためというのなら、正義の味方として見過ごすわけにはいかないでち……!」
そうだね、と葵は頷く。とはいえ、同胞を倒しまくった相手に対して特訓して強くなろう、という気持ちは分からなくもない。分からなくもないけど。
「特訓イコールスポ根っていう感じになっちゃったのかな……?」
葵は呟く。ダークネスがなんで特訓にスポ根、という手段を選んだのかはよく分からない。
「スポ根羅刹って。結構、人類文化に染まっちゃってるね~?」
にししっと笑いながら、ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)は特訓風景を覗き込む。
「代表的なスポ根作品が混ざってしまった……という感じだね」
無道・律(タナトスの鋏・d01795)も、頷きながら特訓を見守った。
「……てーか、あの特訓続けさせたらお互いで何か勝手に自爆してくれんかな?」
眺めながら、明莉はポツリ呟く。
「そうだったら楽だけどねー」
ミカエラは苦笑する。そういうわけにもいかないだろうから、いざ! 灼滅者達はばーんと体育館に侵入した。
「頼もーう!」
そう声を掛けながらコートに乱入するミカエラは、『武蔵坂女子体操服』の『着ぐるみ』姿だった。しかも着ぐるみの頭は金の縦ロール。その後を、殺界形成を展開した律が赤い造花の花弁を蒔きながらしずしずと着いてくる。まるでどっかの夫人みたい。さすがにポカンとして手が止まってるヒロオカに、明莉の斬影刃が飛ぶ。
「何だそのキレの悪さはぁぁぁ!!! そんな事で俺達灼滅者を倒せると思ってか!」
「な……なんだとぉおおおお!」
キレ気味のヒロオカ。そのヒロオカに、ミカエラはずいっと着ぐるみを見せつけるようにして言う。
「この制服(着ぐるみだけど)でわかるでしょ? そう、武蔵坂よ。貴方たちに、球技試合を申し込むわ」
「な……武蔵坂だと!?」
仇敵の登場に、ヒロオカは目を見開く。
「そうよ、我が名は、レディ・パピヨン! 正々堂々、殺り合いましょうね!」
慣れないお嬢様口調で言い放ったミカエラがバチンとウインク。いつもはのほほんな人狼少女が、今回はどこかスイッチ入っちゃってる。同じく縦ロール仲間(?)な八王子も胸を張った。
「そうでち! ルールに則って正々堂々と戦いましょう!」
ルールなんてないようなものだが。頷きながら、律も口を開いた。
「今日、君達が僕等に出逢う……それはきっと、運命だったんだね。護りたいなら向かってくるんだ。正々堂々受けてたとう、僕等も譲れないものがある……!」
「そんなん知るか! 同胞を灼滅しまくりやがって!!」
今にも飛び掛かりそうなヒロオカをまぁ待て、と諫め、カタムナはこちらに向き直った。
「なるほど、貴様らが武蔵坂か。まさかそちらから出向いてくるとはな……。かえって手間が省けたというものだ。いいだろう、その試合、受けてたとう」
「試合成立、だね」
葵が頷く。それを受けて、明莉は掌を拳で打った。
「さあ来い! お前達の特訓の成果、しかと見届けてやる! 主に体で!」
●試合開始
「さぁ、憎き武蔵坂に特訓の成果を叩きつけてやれ!」
「もちろんっすコーチ!」
カタムナの言葉に大きく頷いたヒロオカは、「アターック!」と異形巨大化させた腕で明莉に殴りかかってきた。
「ああっ! あれは!?」
眼鏡をキラリと光らせた葵が息を呑む。
「鬼神変! 羅刹達の最も得意とするサイキックだぁー! ……最初からバレーボール関係ないぃいい!」
その場に崩れ落ちる葵。事前の勉強の成果はどこに。しっかと腕を受け止めた明莉も突っ込む。
「あの特訓どこ行ったんだよ!!」
「ふっ、攻撃とは常に最善手で行うものだ……まだまだいくぞぉ!!」
不敵に笑ったカタムナも、明莉に向かって激しく渦巻く風の刃を撃ち出し……。
「お前もボールじゃないんかい!」
明莉に突っ込まれた。しかしその風の刃は律によって阻まれる。
「レシーブを受け止める為には、視線の捉える位置が大切だ。集中、でも視野は広く足腰は柔軟に……」
解説しながら攻撃を受け止めた律に、カタムナは息を呑んだ。
「俺の攻撃を受け止めただと……!?」
これがスポ根なら「お前こそ俺が探していた輝く原石だ!」とかいう展開になるのかもしれないが、残念ながらそうはいかない。というか羅刹にスカウトされても困るわ。
それはともかく。目を煌かせたミカエラは、ウキウキとBGで拾ったきりたんぽ型ハンマーを構えた。
「あたくし、いつもは監督なのよ。でも、貴方がたを見ていたら、女子力がメキメキと……湧いてきたわ! 直々にお相手して差し上げるわね♪」
そして、ラケットの如くハンマーを振り回しながらヒロオカに突っ込む! 弧を描いて迫る回転殴打! それがヒロオカの頭に綺麗にヒットする。すかさず葵はマイクを構えて叫んだ。
「決まったぁー! きりたんぽスイング! しかし女子力の定義がもはや分からなーい!」
解説者っぽく叫びつつ、ラビリンスアーマーで律の傷を癒すことも忘れない。彼のウイングキャット、遥陽も「にゃー!」と主人に同意するように鳴きながら、ヒロオカに猫魔法をかける。
「こっちも行くでち! JRはち光線!」
八王子も張り切って得意のJRはち光線をヒロオカに向かって放つ。そう、まずはヒロオカから倒すということで灼滅者達の作戦は一致していた。
「スポ根としても先ずは選手からボロボロにならないとね」
律も彼を螺穿槍で穿つ。ヒロオカは唇を噛んだ。
「くっ……なかなかやるな……しかし!」
カタムナと視線を合わせ、頷きあって。今度こそボールを構えた。
「くらえ! 必殺のレシーブ!」
全力で八王子に向かってボールを打ち出すヒロオカ。あ、やっとバレーボールっぽくなった。すかさず律が彼女の前に立ちはだかり、代わりにボールを受け止める。しかしやはり特訓の成果なのか。その球は重く、律は顔をしかめた。
「……くっ! やるじゃん。けど……まだまだだね。通させないよ」
「ああ、まだまだぁ!!」
頷いた明莉も、続けてカタムナから八王子に向かって打ち出されたボールの軌道をよく観察し、待ち構え、受け止める! 顔面で。
……直撃は避けたかったんだけど、相手がスナイパーっていうのは伊達じゃなかった。
「……ふっ、なかなかいい球じゃねぇか……」
それでも、鼻血を拭った明莉は満足げにニヤリと笑い……。
「……マゾ?」
「……そこ、マゾっていうな」
首を傾げた八王子に突っ込んだ。そこで葵はピーッと笛を吹く。
「回復入ります!」
一旦解説者を捨てた葵が、怪奇煙で二人の傷を癒す。その隙に、ミカエラは再びきりたんぽハンマーを構えた。
「前の壁が頑張っている間に、そこの後輩面を徹底的に鍛えてあげましょう!」
そしてこっちに飛んできたボールごと、ハンマーでグランドスマッシュ!
「ふふ、コーチとどちらが痛いかしらん?」
にぱーっと笑うレディ・パピヨンことミカエラ。さらに八王子がヒロオカを持ち上げ、地面に叩きつけてご当地パワーで大爆発させる! そこに遥陽の猫パンチが追い打ちをかけた。次々にヒットする攻撃に膝をつくヒロオカ。
「くっ……コーチ……俺はもう、ダメかもしれないっす……」
清めの風で自らを癒しつつ、弱音を吐く彼に、
「しっかりしろ! 負けるなヒロオカ!」
とカタムナも激励と清めの風を送る。意外に美しい師弟愛……。しかし、カタムナを自由にさせとくわけにもいかない。明莉は勢いよく青灯輪をカタムナに向かって射出した。
「スマーッシュ!」
(「それはテニスなのでは?」)
そう思いつつ、律もサイキックを否定する魔力の光線で、カタムナの防護を貫く。二人がカタムナを抑えてくれている間に、残りのメンバーでヒロオカを集中攻撃した。葵の十字架戦闘術が、遥陽の猫魔法が、ヒロオカの動きを阻害する。そこに八王子は、
「純粋な若者だった頃の甘酸っぱい記憶を胸に蘇らせ昇天して下さい! 青春18キック!!」
と必殺のご当地キックを叩き込んだ。
「ナイス☆トスね!」
仲間の攻撃を称えながら、ミカエラはぶんぶんときりたんぽハンマーを振り回して攻め込み、ヒロオカに強烈な一撃をお見舞いする。その一撃が、かの羅刹を粉砕した。
●試合終了
「な……貴様ら、よくもヒロオカを! 許さん!!」
怒りに燃えるカタムナが、トドメをさしたミカエラに鬼神変で突っ込んでくる。その前に立ちはだかった律が、代わりに攻撃を受け止めながら叫んだ。
「ヒロオカさんから倒したのには理由があります!」
「何だと!?」
眉を顰めるカタムナに、律は切々と訴えかける。
「死をみて、希望をみる。カタムナさん、ヒロオカさんは貴方が倒れるところなんて絶対に見たくない筈……貴方にとっても、それは理解出来る筈です。だからこそ今日まで二人で同じ白球を追い、打ちのめされた困難に立ち向かって来たんでしょう」
はっと目を見開くカタムナ。律はさらに言葉を紡ぐ。
「僕等だって同じだ。仲間が倒れる場面なんて見たくないし見せない。僕は折れませんよ……ふふっ」
笑って、炎と大地の力を宿した石槍でカタムナを貫く。その律の後頭部に癒しの矢をぶすっと刺しつつ、明莉も不敵に笑った。
「ああ、その通りだぜ……! 灼滅者(スレイヤー)は折れない!」
「さぁ、コーチも覚悟するでち!」
八王子がJRはち光線を放つ。ミカエラも、
「MUSASHIで鍛えた武蔵坂を舐めないことね?」
とふっと笑いながら、きりたんぽハンマーでロケット噴射を伴う強烈な殴りつけ攻撃を放った。
「あれが! 噂のきりたんぽスマッシュ!」
適当にそれっぽいこと言いながら、葵は朝顔の影でカタムナを絡めとる。そこに、遥陽が渋く「にゃぁ」と頷きつつ猫パンチをお見舞いした。それを受け止め、カタムナは重く頷く。
「そうか……ならば俺も全力でお相手しよう」
そう言って清めの風で己の傷を癒し、カタムナは両の手を広げた。
「さぁ来い! お前らのボ……攻撃を受け止めてやる!」
「その意気だ、僕等も全力で行かせてもらうよ……!」
頷き返した律が、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを放つ。間髪入れずに、明莉は鍛えぬかれた超硬度の拳でカタムナを撃ち抜いた。そこにミカエラのきりたんぽハンマーが、葵の朝顔の影が、遥陽の猫魔法が、次々に襲い掛かる。
「コーチも若い頃の素敵な思い出を胸に蘇らせ昇天して下さい! 青春18キック!!」
さらに追い打ちをかける八王子のキックが、カタムナの足をふらつかせる。しかし踏みとどまり、カタムナは灼滅者達を確りと見据えた。しかし、どれほど格好つけたところで多勢に無勢だ。おそらくもう、回復したところで意味はないだろう。それが分かっているらしい彼は、最後の力を振り絞って白球を構えた。
「敵ながら天晴よ……だが、せめて一人だけでも道連れにしてくれる! くらえ! 俺の球を受けてみろ!」
おそらく最後のボールが唸りをあげて明莉に迫る! しかし、動作でその攻撃を予測していた彼は斬影刃を放って軌道を逸らし、相殺する。その勢いのまま、明莉は青く透明な光輪をカタムナに向かって射ち出した。
「アターック!」
揺らいで色を変えた光輪が、あやまたずカタムナの胸を貫く。
「ぐああ!」
苦悶の声を上げ、消えていく羅刹の鬼コーチ。すかさず葵は笛を吹いて言った。
「ゲームセット!」
●さらば、熱血羅刹
「さようなら、ヒロオカにカタムナ……敵ながら見事な熱血だったわ……」
縦ロールお嬢様の着ぐるみのまま、ついでに慣れないお嬢様口調のまま、ミカエラは目を閉じる。頷いて、律も葬送花のように、残りの赤い造花の花弁をコートに散りばめた。
「それにしても、スポ根って結構疲れるものなんだね……」
普段通りに戻った葵が、ふぅ、とため息をつきながら肩を叩く。にゃー、と主人を気遣うように、遥陽が鳴き声を上げた。
「すごく解説者頑張ってましたしね……お疲れ様でち……」
労いながら、八王子もタオルとスポーツドリンクを葵に渡した。お礼を言って受け取る葵。そのやりとりを見ながら、明莉はしみじみと呟いた。
「バレーのバの字も良く知らんけどさ、あの熱血な雰囲気は好きだったな」
もしも生まれる場所が違っていたなら、良いライバルになれたかもしれない……そんな思いを胸に、彼らは体育館を後にしたのだった。
作者:ライ麦 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年11月6日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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