南の海の青い月

    作者:六堂ぱるな

    ●UMAじゃないよ
     明るい日差しは強く、この季節ながら暑さすら感じる。
     沖縄県は石垣島、広がる海は碧く美しい。
    「どうだもこた、気持ちいいか?」
     コンビニのキャンペーンくじで沖縄旅行を引き当てた遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)は、子ペンギンのもこたを伴いやってきていた。
     ズボンの裾を捲って浅瀬でもこたと遊んでいたが、嬉しそうに波打ち際でぷかぷかしているのを見ていると一緒に泳ぎたくなる。
    「俺も泳いじまおうかな」
     監視員によるとこの浜は月末まで海水浴ができるらしい。といっても地元の人はこの時期になると海へは入らず、たまに観光客が泳ぐぐらいだという。
     その時ふうわりと、何かが海中の脛を撫でた。
     魚か、と何の気なしに見下ろす。
     そこにはクラゲがいた。水族館などでよく見るミズクラゲ、丸い傘状の体の中央に四つ葉のクローバーのような紋様のあるやつだ。口腕もあり人を刺したりするが、毒は弱い。
     のだが。
    「いやでっけぇよおかしいだろデッケェって!」
     ミズクラゲの直径はせいぜい30センチのはずだが、それはゆうに3メートルはあった。それがよっこいしょって感じで起き上がると、穣に覆い被さろうとしてくる。
    「ちょ、ま、ギャアアアー!」
     咄嗟にもこたを抱えて猛ダッシュ。監視員のところまで走っていくと、視界に入っていなかったらしい彼が怪訝そうな顔をした。
    「どうしました?」
     どうしたもこうしたも。
     とにかく仲間を呼んできて、どうにかしなくてはならない。

    ●都市伝説だよ
     騒ぎを聞いて集まった仲間へ、もこたを横に座らせた穣が話しはじめた。
    「あんなんいるわけねぇし、よく聞いてみたら、人食いクラゲってぇのか? そういう噂がこの辺にあるらしいんだ」
     もちろんというか当然噂で、クラゲは人を刺して死に至らしめても食べたりしない。子供じみた想像の産物が形をなした――都市伝説だろう。今日はたまたま他に海に入っていた観光客がいなかったからよかったが、このままでは人的被害が出ることになる。
    「手を貸してくれねぇか。倒しちまわねぇとなんねぇ」
     問題は相手の攻撃方法だが、あの一瞬の動きやクラゲの生態から考えて、相手に覆いかぶさり溶かそうとしてくるのではないか。だって歯とか生えて齧られたらおかしいし。
    「あの大きさだとまとわりつかれたら、剥がすのに苦労しそうだぜ」
     そして出現条件は恐らく、この季節に海に入ることだろう。
     大きいことは確かだが、そう苦労する相手ではない……と思いたい。
    「とにかく、さくっと倒しちまおうぜ。せっかく海まで来たんだ、楽しまなきゃ損だからな」
     横でもこたがぺちぺちと翼を振って小さく鳴いた。
     まだ綺麗な貝も拾っていないし美味しいご飯も食べてないのだからして。


    参加者
    冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)
    冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)
    ライル・メイスフィールド(大学生エクソシスト・d07117)
    エルーシア・ヴェンクローザ(玻璃の自鳴琴・d09834)
    咲宮・響(薄暮の残響・d12621)
    遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)
    鵜島・杏月(マキーナーフランメア・d18585)
    苔石・京一(こけし的な紳士・d32312)

    ■リプレイ

    ●分類『食用・非食用』
     それはゆうゆうと碧い海の中を漂っていた。人類を捕食すべく生まれたクラゲであるが、それを是としない者たちがいる。
    「3メートルのクラゲって何だよ。ウチの食いしん坊共に『食って下さい』って言ってるようなもんじゃねぇか」
     咲宮・響(薄暮の残響・d12621)が溜息をつく。実際二人ほど食べかねない。
    「調べたところによると、クラゲは触手等を除いた傘部分を塩蔵することで食用とするそうです。通常食用となるのはエチゼンクラゲ等らしいですが」
     淡々と鵜島・杏月(マキーナーフランメア・d18585)が説明し、無骨な愛刀をちゃきっと構え、続けた。
    「――ミズクラゲも、可能ではあるとか」
    「焼いただけじゃ食えないのかぁ……でかくて食い甲斐ありそうなのになぁ」
     人払いの殺気を放つ冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)の呟きを聞いて、エルーシア・ヴェンクローザ(玻璃の自鳴琴・d09834)が目をぱちぱちとさせる。
    「……えっと、あの……食べるんです、か? あの大きなクラゲ……いえ、食用に加工されたものなら、私は好きですけれど……」
    「食えるのか……」
     クラゲを食する習慣のないイギリス人として、ライル・メイスフィールド(大学生エクソシスト・d07117)の反応はまっとうだ。
    「いや悪ぃけど、俺クラゲは調理しねぇからな」
     戦いで破損しないようレンタルの椅子や机を陸へ寄せながら、冴凪・勇騎(僕等の中・d05694)が念を押す。妹や彼女が大食いだったりで、料理を大量に作る事に慣れ過ぎている感はあるが、さすがにクラゲは――いや、これは挑戦すべきなのか?
     考えこむ彼を横目に、苔石・京一(こけし的な紳士・d32312)が大きなこけしの頭をかくんと揺らした。一応言っておくが頭部は覆面である。
    「クラゲも色々と問題が起きているようですが、こういう問題ではないでしょうね……」
     顔を出してくれた仲間たちに、遠藤・穣(反抗期デモノイドヒューマン・d17888)は笑顔全開で謝辞を述べた。
    「皆来てくれて本当サンキュな! おッしゃあ、クラゲぶちのめして遊ぶぜーッ!」
     テンションにつられてもこたが羽根をぺちぺちさせて鳴く。子ペンギンを鞄へおさめて穣は言い聞かせた。
    「あ、もこたは戦闘終わるまで鞄で留守番な。いい子にしてろよ」
     翼の殺気に中てられた人々が、居心地悪そうに浜辺を離れていく。

    ●バーベキュー控えてるので手短にね
    「お疲れさん。交代の時間だぜ」
     早く帰りたくなっていた監視員の青年は、突然響に声をかけられて目を瞬いた。
    「え? 俺終日じゃなかったっけ」
    「勘違いだろ。それに雷警報が出たらしいぜ、避難した方がいいぞ」
    「その、危ないので……天候が崩れないうちに、移動をお願いします」
     水着にパーカーの穣と、水着にシャツのエルーシアにも口を添えられて天を仰ぐ。いつの間にか浜辺の客は半分ほどになっていた。とはいえまだちらほら人が――実際は灼滅者だが、いるわけで。
     青年が口を開くより早く響が先制する。
    「アイツら俺の後輩なんだ。知り合いの方が話通じるし、追い返したら俺も戻るわ」
    「ならいいか。お先な」
     そわそわと青年が立ち上がり、追われるように駆けだしたのは、いままで殺気に耐えていた反動だろう。これで浜辺に一般人はいなくなった。
    「よーし、いくぜ!」
     翼が海中のクラゲに躍りかかった。螺旋を描く刺突が胴体ど真ん中を貫く。
     ぶるっと震えたクラゲが波を蹴たてて体を持ち上げた。踏み込んだ響が雷光閃く拳を、穣が体重を乗せた飛び蹴りを胴体に叩きこむ。
    「ぎゃーッ、なんかブヨブヨした!」
     悲鳴をあげる穣に倒れこもうとするクラゲに、京一が稲光をまとうボディブローをくらわせた。代わりにのしかかられそうになるのをからくもかわす。
    「ははは、私を狙っても需要(?)などありませんよ」
     腕を異形化させた勇騎の爪に引き裂かれてクラゲが震える。杏月が鮮やかな身ごなしで距離をとり、庇い手の京一に防護の符を飛ばした。
    「モード、ディフェンシヴジャマー……援護はお任せください」
     怪我をしないよう、ライルがエルーシアへダイダロスベルトを滑らせる。
     援護を受けたエルーシアの傍らに、書生のような姿のゼルーカスが顕現した。携えた刀の優雅な、しかし力強い斬撃で怯んだクラゲをエルーシアの天使のように透き通る歌声が揺るがす。
    「私の歌で……守ります……」
    「こいつは何に弱いのかねえ」
     首を捻る勇騎の踵が炎を噴き上げた。火の粉を散らす蹴撃が重い音をたてて叩きこまれると、クラゲは縮みあがった。
    「お?」
     響がガトリングで魔力をこめた爆炎を撃ち込むと、クラゲが明らかに縮んでいる。
    「シフト、オフェンシヴジャマー……畳み掛けます」
     舞うようにふわりとドレスの裾を翻した杏月が、クラゲを見据えて符を放った。動きは一層鈍くなり、今度は杏月めがけて倒れかかってくる。
     彼女を庇って割り込んだ響は、思いっきりぬめるクラゲの下敷きになった。
    「重っ、早くどけて……って何撮ってんだよ! 俺だって需要ねえよ!!」
    「はっはっは」
     『響さんクラゲに押し倒される』図をRECの京一である。翼が義兄同様、炎を纏った蹴りを食らわせると、クラゲは慌てたように響から離れた。
    「こいつ火に弱いぞ!」
    「なるほど、納得の理論だ」
     主に精神のダメージが重い響を癒しながらライルが頷く。炎系の攻撃手段を持たない穣は、クロスブレイブで半泣きで殴りかかるしかない。
    「早いとこ潰れやがれ!」
    「兄様、お願い……!」
     エルーシアの願いを受けてゼルーカスが斬りかかった。傘が大きく削げて落ち、さらに聞き惚れるようなエルーシアの歌声に晒されて動きが鈍くなっていく。
     かくてクラゲは殴られ蹴られ、こんがりと焼かれて消滅したのだった。

    ●クラゲは生じゃかじれない残念
     一行は手早く戦闘を終えるとバーベキューの準備にとりかかった。
    「よっしゃ、バーベキューやるぜー! でっけえの借りてきたッす!」
     八人分の食材をたっぷり焼ける特大コンロを、穣とライルで浜辺に設置する。
    「バーベキュー! にっく、にく~♪ あ、火を起こすくらいはやるぜー」
    「手伝おう」
     ライルと翼が炭の準備を始めると、響もクーラーボックスを取りだした。学費の一部と生活費を稼ぐ必殺アルバイターである彼が、バイト先の1つの肉屋からいい肉を安く仕入れてきたのだ。京一はタコに海老やホタテなど、新鮮な具材を披露する。杏月はというと大きな段ボール箱を置いて、眼鏡のずれをそっと直した。
    「商店街住まいの子に協力を仰ぎ、野菜類を仕入れさせて頂きました……予想以上に多量になりましたが、翼さんがいらっしゃるので問題無いと判断しました」
    「ナイス判断だ」
     響が頷くそばで、翼が炭を火であぶりながら声をあげる。
    「兄ちゃん、焼きおにぎりとかも食いたいー」
    「はいはい。騒がしいのもいるしちゃっちゃと飯の準備するとしますかね」
    「お手伝い致します」
     杏月が野菜を持って調理台へ移った。途端にホットサンドの準備をしながら勇騎が悲鳴をあげる。
    「だっ、大丈夫なのかそれ、危なっかしいぞ!」
    「問題ありません、あの臨海学校の私とは違います」
     自信満々で杏月が野菜を刻む手つきに、勇騎の鳥肌がおさまらない。火起こしを終えたライルが申し訳なさそうに眉を寄せた。
    「……料理はその、なんだ。どんなに頑張っても上手くいった事がないからな……すまん」
    「こういうのは出来る奴がやるもんさ」
     肉や野菜を串に刺しながら勇騎が笑う。もこたが火に近づかないよう、彼がみてくれるだけでも助かるというものだ。エルーシアが調味料を取り出しているが、何故かやたら辛いものが多いようだ。
     響が肉を焼き始めると、翼がうきうきと紙皿や箸の用意を始めた。
    「あれ、こんな魚あったっけか?」
     鮮やかなエメラルド色の魚を見つけた穣が首を傾げる。その目の前にぬっと、真紅の魚を持ったずぶぬれの京一が現れた。
    「ぎゃあああー!」
    「それはイラプチャーですね。こちらはアカジンミーバイですよ」
     今獲ってきたらしい。涙目の穣をよそに、京一が魚を捌き始める。
    「器用なものだな……」
     仲間を見回してライルはしみじみと呟いた。いや、本当に料理とは魔法のようなものだな、と改めて思う。

    ●真の戦いの始まり
     肉や野菜が香ばしく焼けるなり翼がスタートを切った。
    「いっただきまーっす!」
    「うおぉ食材すげえ……ゴチになるッす!」
     穣も負けずに食べ始め、鉄板の上にあった肉がかき消えていった。肉の焼きに徹する響が叫ぶ。
    「野郎と翼は己の腕で肉を勝ち取れ!」
    「言われなくても勝負はこっからだろ!」
    「翼に言ってんじゃねえよ!」
    「ホットサンドと、ホタテのホイル焼きできたぞ」
    「肉美味いッす咲宮先輩! ホイル焼きもすげえ美味いッす、冴凪先輩!」
    「ワカメスープを持ってきました。こういうのも必要でしょうしね」
    「ナイスだ京一、そんで焼きを手伝ってくれ! エルーシアも杏月も遠慮なく食えよ。ここは肉に飢えた翼がいるからな」
    「俺でも女子からはとらねぇよ!? ってか俺が飢えてんの肉だけじゃねぇもん、何でも食うもん」
     鉄串を持ったまま響に抗弁した翼がエルーシアの方を向いた。
    「エルーシアは辛いの好きなんだっけ? 何か調味料足す?」
    「食事は控えめに……いえその、皆さんがよく召し上がるので、見ているだけでお腹がいっぱいに……特にその、翼さん……どこにそんなに……」
     ぷるぷる首をふるエルーシアはと言うと、肉に色が変わるほど真っ赤な調味料をぶっかけていた。なんかもう見た目だけで辛い。
    「ほらもこた、苔石が魚とってきてくれたぞ」
     穣が長身を屈めてもこたに魚を差し出した。喜んだもこたが魚をくわえ、呑み込むなり次をねだる。
    「こういうものもありますよ?」
    「びゃっ?!」
     京一が背後から新鮮なアジを手に現れて穣が飛び上がった。
    「もこた、ほら。魚を準備してくれているようだ。貰ってきてはどうだ?」
     ライルに促されたもこたがアジを貰って嬉しそうに羽根をぱたぱたさせた。でれでれの穣の皿に響が肉を盛っていく。
    「もこただけじゃなくてお前も食えよ?」
    「あざッす!」
     穣に超尊敬の眼差しを向けられながら、響は今度はライルへ声をかけた。
    「ライルも遠慮すんな? ここの連中は遠慮知らずだからな。そこのコケシは焼いても食べられな……冗談だからいつの間にか寄らんでくれ」
    「はっはっは」
    「すまんな」
     ライルが肉をほおばり、「美味い」と笑みを浮かべる。不器用なりに肉の焼き加減をみていた穣も、うまく焼けた肉を彼へ勧めた。
    「ライル先輩、どうぞ!」
    「ああ、ありがとう」
    「よいではないか~、よいではないか~」
    「止めてお代官様! それは俺の肉だっての!」
     悲鳴をあげる響をよそに、肉を掻っ攫った翼も仲間に気を回す。
    「穣先輩やライルも食ってるか? 早く食わないと食べつくすぞー? 杏月、こっちのホイル焼きも美味いぞ」
    「ありがとうございます」
     答えたものの、杏月は少し考えて響を振り返った。
    「響さん、私もあれくらい食べた方が?」
    「やめて。あれは規格が違うから」
    「違いますか、そうですか」
    「京一……はそもそもその状態で食えるの?」
     京一のこけし的な覆面が汚れていない。皿の肉はきっちり消えていて、翼が心底不思議そうに覗きこむ。
    「勿論食べていますとも」
    「ほい、チョコフォンデュにマシュマロな。焼きパインもあるぞー」
     一通りの調理を終えた勇騎ももこたに新鮮な魚を差し出した。
    「ほら、もこた」
     大喜びのもこたが跳ねるように勇騎のほうへ歩いていくと嘴を開く。
    「ああ、もこたもたくさん食べたか? 海に行く時は誰かと共にいくんだぞ?」
     ライルに応じるように尾をぴぴぴと振るもこたのお腹は、いつになく丸かった。

    ●思い出のひと欠片
     大騒ぎのバーベキューが終わり、片付けも概ね済むと、まったりした時間が流れた。
    「お腹いっぱい食べたらちょっと泳ごうかなー」
     足が攣らないよう柔軟をしながら、翼がシーズン終わりの海に臨む。
    「もう秋だし、泳ぎ納め! って事で。折角だから誰か競争しようぜー」
    「受けて立つぜ!」
     二つ返事で穣が勝負を受ける。浜辺から沖の岩まで行って戻るスピード勝負。
     両者、同時にスタートを切った……が。翼が我に返った。
    「……あれ、もしかしてもこたが一番早い?」
     二人の横をもこたがすいーっと追い抜いて行った。ペンギンのもこたに人類が対抗するのは楽ではない。いやそこは灼滅者、もしかしたら頑張ればワンチャンあるのか。
     浜では片づけを終えた響が、砂浜に置いた椅子にかけてひと息ついていた。杏月も離れた椅子で美しい海を眺めている。
     勇騎は浜辺を散策しながら、色や形の綺麗な桜貝を探し歩いていた。ゼルーカスのエスコートを受けながらエルーシアも砂浜へ目をやる。
    「……ここ、綺麗な貝殻が多いんですね。勇騎さん、これなんてどうでしょう……?」
    「あーそれも綺麗だな。ありがとな」
     貝殻を拾いあげて砂を払う勇騎のむこうに、穣と翼をぶっちぎって一番に戻ってきたもこたが見えて、エルーシアは微笑んだ。
    「……もこたちゃんは、気に入ったの、ありました……?」
     浜へ上がってきたもこたが首を傾げると、目の前の砂を啄んだ。そっと砂を払うと傷ひとつない桜貝が姿を現す。桜の字を名に持つ彼女へのいい土産になりそうで、勇騎がぱっと表情を輝かせた。
    「すごいなもこた。これだけあれば揃いで何か作れそうだ」
    「あらヤダ、リア充は肉より桜とは。お熱いこった」
     響の冷やかしが終わるよりはやく、どえらい勢いで上陸してきた穣と翼が彼をぱあんと宙へ撥ねあげた。
    「どあああああ?!」
    「おっしゃ勝ったぜ!」
    「ちげーよ穣先輩、俺が先だし!」
    「咲宮が椅子ごと吹っ飛んだが」
     ライルが控えめに声をかけたが、両者勝負の判定でそれどころでない。と、穣と翼の間の水中からぬうっと京一が顔を出した。
    「びゃっ?!」
    「うわっ!」
     珊瑚のかけらを頭に乗せたまま滑るように浜にあがると、椅子ごと響を起こして元通り設置。何事もなかったように杏月がペットボトルのお茶を差し出した。
    「どうぞ」
    「ありがとな……」
     呻くように響が応じてお茶をすする。
     遠い目になっている勇騎の手の貝殻に気付いた穣が目を輝かせた。
    「あっ、貝殻ッすね。俺も拾いますよ!」
     もこたと一緒に砂浜を駆け回って、日暮れまで貝殻探しに精を出す。

     大騒ぎの沖縄旅行を終えて、一行は再び学園へと戻っていった。
     たくさんの思い出と、綺麗な貝殻を手土産に。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年11月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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