樹々を抜ける金風にも涼が沁み、すっかり色付いた木の葉が路に躍る――向寒の候。
短くも味わいのある秋の深まりと共に、武蔵坂学園の恒例行事『芸術発表会』に向けた準備が始まろうとしてた。
「いよいよ芸術の秋っす!」
「ええ、今年もこの季節がやってきたわ」
日下部・ノビル(三下エクスブレイン・dn0220)が噛み締めるように、槇南・マキノ(仏像・dn0245)がしみじみ頷くように、芸術のなんたるかを競う『芸術発表会』は、武蔵坂学園の秋の風物詩となっている。
大きな戦いが続いて忙しい中ではあるが、灼滅者も学業を修めるべき勤勉な生徒として、これまで芸術科目や体育科目、総合教育の時間などを使い、各々の芸術を磨いてきた筈だ。
その自ら学び、問い、突き詰めてきたものの成果を発表する事は、更なる高みを目指す為に必要で、また表現する事の妙味を、芸術の秋を楽しむ事を忘れてはならない。
ノビルとマキノは掲示板の前で声を弾ませ、
「今年の芸術発表会は、芸術ならばなんでもOKだそうね」
「無差別級! 自分、ワクワクしてきたッス!」
そうなのだ。
今年は各分野の枠を取り払い、各人が思い思いに培ってきた芸術魂をカタチにする――全ての美の競演。
「……燃えるわ」
「前人未踏の世界に踏み入れたいっす~!」
勿論、最終的に完成したものが「作品」として披露されるのだが、芸術とは「過程」を含んでこそ。
発表会当日のみならず、制作中や苦労や練習中のハプニングも含め、出来上がった作品が観覧・選評に至るまで、存分に芸術と向き合おうではないか。
「うーん、私はこの一年のご当地巡りで学んだ地元愛を、木彫りで表してみようかしら」
「仏像を」
「違うわ。モチーフは今から考えるの」
表現する――それは中々簡単なものではなかろうが、芸術発表会に参加する学生は、目標に向かって芸術を磨き上げ、一つの作品を作りあげる。
「枠組みは取り払われたけれど、前年にあった部門を更に高めるのも良いみたい」
「個人発表の作品でも、制作過程での協力プレイはアリなんすね!」
芸術発表会の優秀者を決定する11月24日に向け、学生達はそれぞれが目指す芸術を、それぞれの方法で表現し、芸術の火花を散らすべし――。
掲示板に記された要綱を読んだ二人は、自分らしい表現を得るべく、楽しい思考の時間へと没入していった。
●
「ありゃ、今年は部門別じゃないんだー? いつも以上にカオスだねー」
弥勒の言う通り。
無差別級となった今年は愈々カオス。
「今年の糸括映画は、密林に眠る伝説を探る冒険活劇でっす♪」
「個々の魅力を如何に引き出すかが焦点な」
明莉Pとミカエラ監督がロケ地に選んだのは、求めるものが全て其処にある――彩の国。
「初出演で女役……桃色ウサミミプリンセス、衣装も拘らないと」
澪ら俳優陣を乗せるバンがゴトゴト揺れるが、気にしちゃいけない。
早速カチンコが音を鳴らすや、二人の探索家がファイト一発、森を疾り崖を登り、
「伝説のアイドル戦士『うさみん☆スター』の金ウサミミ……どんなんだろ」
ポンパドールは白ウサミミをピコピコ、
「1カメさん、僕のお弁当ズームで美味しそうに撮って下さいよ」
隣の真名は、手持ちのピクニック弁当を堂々お披露目。
「いい匂いなのーっ!」
「にゃご」
そこへ南瓜の妖精・杏子が木からくるりと一回転、
「森はあたしのお庭なの! 泥舟に乗った気分で、どーんと任せちゃってなの!」
タコさんウインナーを対価に心強い標を得た二人は、ヤッタネ、全ての罠にごあんない☆
宝の守人・隅也は侵入を拒み、森の蝙蝠・千尋は空言に誘って、
「あの恐ろしき代物を解放させはしない」
「秘宝ならこの洞窟の奥にありますよ、ええ本当に」
然し相手の強運属性か、本人の不憫属性か、刺客は悉く自滅する。
「罠を仕掛けている間に拠点が奪われ、秘蔵のコンビニスイーツが食べられた……」
「ヒャッ、背筋に洞穴の水が! クソッ、覚えてろ!」
なんやかんやで泥舟は、物語は、撮影は、進む。
それもワイヤーを引くなどして頑張る渚緒のお陰だが、
「裏方は黒子ウサミミにお任せあれ!」
チラッチラッと頻繁に見切れるのはご愛嬌。
物語が中盤に差し掛かれば、試練が、ウサミミ頭巾を被った和奏が行く手を阻み、
「うさみん☆スターに会いたくば、この守護者にウサミミ力を見せてみよー!」
これを乗り越えれば伝説も近いか――?
「ざんねん、うさみっち☆スターでしたー!」
いや、現れたのは薄桃ウサミミの未知。本物と同じ膝上15cmのミニスカが惜しい。
斯く言う伝説は、悪夢と戦った代償に黒歴史に蝕まれた身を自ら封印し、イースター輝うさこと輝乃のお世話に預っている。
彼女は折に句を詠んで、
『うさぎさん 昔思い出し 脱兎する』
(「くっ……」)
脇差は兎の抱き枕にしかめっ面を埋め、カットの声を待った。
発表会を盛り上げようと、出展者へ取材に回る陽司が先ず声を掛けたのは、木乃葉。
「ボクが見る景色を、撮った場所に合わせて地図のように繋ぎ合わせて……」
作品の構想を語ってくれる友の傍で、ペンが走る。
窓の外では残暑が空に箒を走らせ、
『空を見上げて歩いてみたら、
ふとした拍子に飛んでみよう』
爽やかな歌い出しで始まる『そして空高く』を作曲中。
出展作品は一人一作だが、共同作業は認められている。
和スイーツ作りに挑む沙雪とアリスは、先ずは二人で下拵えに掛かり、
「生クリームのホイップ終了、と。アリスの餡は?」
「こっちの餡はできたよ……別の餡は……もう少し練らないと……」
甘い香が漂う調理室で、仲良くクッキング。
陽桜は皆の心の友・サーヴァントらを3Dアイシングクッキーで作り、
「おいしい幸せな芸術を、です♪」
手乗り人形をリボンでおめかし。
「芸術祭出展皆勤、撫桐娑婆蔵たァあっしのことでござんす!」
と、慣れた風に滑る筆は、
『仁義』
この一語、二文字。
筆勢筆意に侠が染む――その隣ではニアラが詩篇『傾倒』の創生に掛かり、
『普遍的な精神に茫然と陥り。
我は己を見失う――』
「事務所から凄まじい業が」
「ヒー、怖いッス!」
混沌、溢流中。
「テーマは、でかい、もふもふ、かわいい……アルパカは、どうでしょう?」
「いいじゃねーか!」
水鳥のぬいぐるみ制作に付き合うマサムネは、型紙作りから生地の裁断、丁寧な縫合と、テキパキ作業する恋人に目を丸くして、
「いいお嫁さんになれると思うぜ。オレのな勿論!」
褒めて伸ばすがモットーと、にかーっと笑った。
イミテンシルは大きなテディベアを個室で黙々と製作中。
「作品を見て触って楽しめるように、生地の質感から拘りたいわ」
但しバレたら恥しいので、見られた時には口止めが必須。
木彫り仏に挑戦中のファムは、手本が隣に在れば楽々、
「ナイフ使いが上手ね」
「うん、完璧な薬局のゾウさ……ガネーシャさん!」
またも奇跡の腕が異彩を放つ。
來鯉とカンナは、モンゴルの草原をイメージしたジオラマ付きシリンダー・オルゴールを出展しようと力を合わせ、
「ヤスリ生産量一位、呉のご当地ヒーローとして模型も覚えておきたいし」
「ジオラマは任せる故、妾は作った曲を円筒に移しこむ作業をしよう」
練り合わせたお互いのイメージをカタチにしていった。
星空芸能館のテーマは『成長』。
「決めたはいいけど、中々難しいお題ですね。自分の成長って見え辛いですし」
「う、私、精神的にも肉体的にも自信が無いのだけど……成長してるんでしょうか……」
紗里亜とえりなが頭を捻る傍ら、寛子は自ら作詞作曲したハイパーテクノの振付中。
「この『振り返れば あの日は遠く』で、こうなの」
奥の暗室では、徒が戦争の最中に撮った一枚に向き合っていて、
「灼滅者に覚醒した幼い少女の一歩を、今だからこそ僕らも忘れちゃいけない」
各々の真剣を見守る流希は、
「人間、二十歳にもなると、若い人達の挑戦する姿が眩しく見えるものですよ……」
彼等の様子をオリジナルの即興曲に纏めていた。
武蔵坂軽音部がヲタ芸をする――特報に駆けつけたマキノは、連日の特訓に汗を絞るもののふの姿を見た。
「ここで光刃放出っす!」
厳しい指導の下、彼等は熱心に光を振り、一曲を打ち終えて尚も貪欲。
「ノビル先生。ロマンスのコツ、おしえて」
「ヤナ氏、ナイス根性ッス!」
夜奈は従者を師に猛練習(しんけん)、
「常に機敏に柔軟に……おぉ、この動き、脇腹攣りそう」
イチがストレッチしつつ動画に学べば(しんけん)、彼を押す錠も背越しに画面を見て、
「ははっ、なんかすげー久々に学生の青春ってカンジする!」
滴る汗の爽やかさといったら!
「ヲタ芸も演る人によるわね……」
マキノがふるえていると、そこに袋を携えた葉が現れ、
「まぁ、葉先輩も?」
「俺は肉まんその他食わせに来ただけ。あ、ナノまんは俺んだから食べんなよ殺すぞ」
先に錠が差し入れたスープを啜る淡然に、手と手がサッと引っ込む。
然し彼は袋の他にカムコーダも持っていて、
「しゃあねぇから練習には付き合ってやんよ」
映像は任せろと言う相棒に、錠はにっかり笑った。
刹那の幻想曲のテーマは、猫の集会。
「なんか、腰回りがふわふわするわぁ」
普段から付けている狼尻尾を猫のそれに変えた乃麻をはじめ、本日は衣装のお披露目の日。
日頃アイドル活動をしている蛍姫は慣れた風に、
「白いもこもこの仔猫をモチーフにした衣装だよ!」
「ど、どうでしょう? 似合ってますか?」
碧は少し恥しそうに猫耳と尻尾をピョコリ。
見桜は山猫っぽくワイルドにメイクして台本を確認し、
「最初はバッキングしながらコーラスをして皆を支えるよ」
彼女がギターなら、ゆまはヴァイオリン、空凛はキーボードを携えて輪に加わる。
「満月の夜、小さな公園を背景に、皆で歌い、躍りましょう」
「はい。私は歌い出しと主旋律を務め、歌を整えますね」
白いワンピースが清楚に、ゴシックなミニドレスが優雅に揺れる傍ら、薫は衣装を揃えて本番が見えてきたか、
(「お客さんは野菜、野菜と思い込むのです……」)
猫執事が緊張気味に「こほん」と咳払いした。
時に音楽室では、くるみと音色が譜面を広げて仲良く曲探し。
「この曲を二人で作った時、楽しかったよね。発表、お互い頑張ろうね!」
「うん、心はいつも一緒……がんばるもんですよ♪」
二人は本番まで猛特訓する気概。
過程の美あれば、当意即妙の芸術もあろう、
「シケンヤ、愛をテーマに! 即興で! 都々逸を詠むッ!」
綴は勝負を当日に決めた。
●
芸術発表会、当日――。
全作品を一冊に纏めた陽司は、冒頭の詩に製作者への賛辞と、観覧者への感謝を書いて、
『一人じゃ会話はできないように、芸術の最後のピースは見てくれるキミなんだ』
今日という日の芸術を皆で作ろう、と入口で配る。
「あ……『ボクMAP』も載って……もっと考えて名付ければ良かったでしょうか」
木乃葉は丁寧な解説に笑みつつ、カメラが切り取った日常が永遠に胸に残り続けるよう祈った。
冊子を受け取った観覧者は、仕切られた各ブースと、中央ステージで作品を愉しめる。
「あの子達の供養の意味も込めて、ね」
イミテンシルは完成したテディベアに前の依頼で会ったヌイグルミを重ね、そっと青瞳を細める。
丁度スクリーンでは、糸括による自主制作映画が上映されており、愈々伝説に近付く探索者に胸が高鳴ろう。
「わぁい、コレ絶対先に進むための仕掛けだよ!」
ポンパドールが怪しいボタンをポチポチ押せば、振り被る災禍は全て他者が負い、
「血ぃ吸うたろかぁ! ――パチンコ弾痛ぁ!」
「我の贄となれ。 ――落とし穴とは見事だ……」
強運が千尋蝙蝠及び隅也大蛇(ハリボテ)を見事潜り抜ければ、今度は真名が持つ美味が難敵を手懐ける。
「謹製きび団子はいかがです?」
「食べるー!」
未知の胃袋を摑めばこっちのもの、
「ずっと眠ってるお師匠様を起こしてやって!」
彼が指差す方向を行けば、遂に伝説との……邂逅が……!
「一年(べちゃ)かけて(べちゃ)ウサミミで書す技を会得したというに(ずべべーっ)……書道部門が無いとは!」
「木元さん。ここバランス悪いし誤字ってますよ」(きりり)
チガウ!
此処は明莉仙人と赤ペン役・澪による書道場。
作品(赤入り)がビシバシ投げられるが、これを凌げばゴールは目前。
森の奥では、脇差……ならぬ膝上15cmの生足アイドルが光を浴びて覚醒し、
「あなたの夢に不法侵入、うさみん☆スターをよろしくぴょおおん!」
背のスモーク(渚緒による)に疾る『USAMIN』ロゴ(渚緒による)もキラッキラッ☆
然し、ここで和奏はウサミミ頭巾よりキラリ鋭眼を暴いて、
「守護者なんてうさみんに近付く為の口実! あたしの真の狙いは金のウサミミ!」
「!!」
金のウサミミ危うし――!
観客が手に汗した瞬間には、大量のバナナの皮が降り、皆々入り乱れて滑る、滑る。
「ほら、ハイヒール慣れてないから……」
優しい輝乃は、すてんと尻餅をつく兎に肩を貸してやり、
「中身はスタッフが美味しく頂きましたなのっ!」
その隣、杏子は指で字幕をなぞり中。
ヤケクソ気味に外された金ウサミミが怒涛のラストを象徴したろう、
「新たなる(黒)歴史の幕開けです。お行きなさい、ウサミミの力と共に!」
宙を舞う秘宝は誰に――という処で『うさみんズのテーマ』は盛大に、
「次代のうさみん☆スターは、あなただー!」
「えっ」
「えーっ!」
ミカエラ監督は金ウサミミを客席に投げ込み、映画と会場を繋いで締めた。
水鳥とマサムネは等身大アルパカぬいぐるみ(リアル)を運び終えて一息、
「デカいな。ま、可愛くていんじゃね? 展示が終わったら抱き枕にしようか」
「抱き枕……いいね……っ!」
つぶらな瞳のフワフワを、二人、ぎゅっと抱き締める。
会場の片隅で胡座する綴は、短冊に一筆、
『酸いも辛いも 蓼食う虫の 数寄に好んで 添うただけ』
「むーん、難しいな……」
頭(ヘルメット)を捻りつつ作品を飾った。
時に舞台ではニアラが闇黒を纏い、狂熱を跫に詩を誦す。
『――視るが好い。嗤うが好い。
傾いて。倒れた先には。斃れた自身!』
絶叫の裡に『語り』果てた男、その空蝉を肩に担いだ娑婆蔵は、手に我が筆を示して、
「提出し終えた作品は持ち帰ってもよござんすよね?」
「事務所に『仁義』、かっけーす!」
丸眼鏡が頷くと、ここで木彫り組も集合。
ファムはカメラを手に、
「去年の訓練のセイカ、見せるよ!」
「はい、チーズ!」
冒涜物、侠客と三下、仏像、そして手榴弾が、一枚の絵に収まった。
「BGMにゆったりした曲でもいかがー? リクエストも大歓迎だよー♪」
弥勒は行き交う足を三線の音に誘い、エイサー定番の軽やかな曲に聴く者の心を躍らせる。
陽桜は来場者に作品を配りつつ、
「あまおとそっくりな白柴も作りましたが、これは犬用じゃないので」
「くぅん」
「無糖のこっちをあげます」
「うぉふ!」
相棒にご褒美ひとつ。
沙雪の作品は、嘗て『調理部門』で優秀を得た――、
「見た目楽しいナノナノパフェ2017、召し上がれ」
餡や抹茶、ナノナノ白玉がゆかしくも愛らしい和スイーツ。
そのブースではアリスが和菓子『練りきり』と『こなし』を配っており、
「会場のみんなで……一緒に食べよ……」
季節モノからキャラ物まで、心を込めた『笑顔の和』が皆々を喜ばせた。
完成したオルゴールのお披露目の前に、カンナは馬頭琴の音を添えて、
「草原の一日をイメージして作った曲じゃ」
「ジオラマの上で動くミニ・カンナと動きが重なって良かった」
ジオラマやミニチュアの再現力に労苦した來鯉は、耳に届く優しい旋律に完成を見て、にっこり笑った。
「センター、挑戦してみっか?」
「え!!!」
練習中、錠Pにそう告げられたノビルは恐々首を振っていたものだが、
「だいじょぶ、ヲタ芸やってるノビルはかっこいいから」
自信もって、と背を押す夜奈にこくり頷き、ステージに出る。
イチは期待して黙す観衆に声を置いて、
「軽音部だから音楽、とは限らない。光の芸術と化したヲタ芸――魅せます」
「虹色が疾るエモーショナルダンス……曲は『マイヒーロー』!」
刹那、闇に沈む空間に光刃が閃く。
「感情を繋いで隙ナシね」
マキノが声援を送る隣、葉は今の演目を焼き付けた円盤(神編集)を配布中。
彼は飛び切りのキレとコシで踊る仲間を瞳に映し、
「いっとう楽しんだもんが一等賞ってな」
と、眼鏡を押し上げた。
徒の写真は『踏み出す時』と題され、
「咄嗟とはいえ、勝手に撮ってスミマセン。ご連絡頂ければ御礼と謝罪させて頂きます!」
星空芸能館のブースに流れるブルースハープは、流希の『眩しい芸術の即興曲』――その静けさが快い。
紗里亜が「絶対家族には見せられない」という作品はこちら、
『母の浴衣に袖通す。
母に似て来たと笑う父に、
胸のきつさは言えぬこと』
その隣には、えりなの三行詩が寄り添う。
『小さな時の流れの先に、
会わなかったあなたは大きく大きくなって。
更に先の未来の萌芽を思い描かせて』
丁度ステージでは、寛子が『Giant Grow』を歌い上げ、
『あなたとわたしのGlory Load、幸せ導くYellow Brick、これが二人のGiant Grow』
軽快なラップが会場を沸かせた。
次なるステージの演目は、刹那の幻想曲による『猫の集会』。
シャン、と鳴るタンバリンが月光の如く、これより始まる素敵なパーティの幕明けを告ぐ。
「やあやあ、みんなお揃いかい? 月夜の下で踊らないかい?」
薫のメゾソプラノがライトを浴び、観衆を釘付けて幾許……期待に満つ沈黙は、重奏と共に浮かび上がったシルエット――空凛が歓声を連れて破った!
「さあさあ、今よりお見せするのは猫のダンス。ステップを踏んで、1、2、3!!」
七色の音の響きと、軽快なステップが観る者の目を一瞬にして奪う。
ゆまは悪戯な笑顔を零しつつ、馥郁たるソプラノに世界を広げて、
「お魚、お肉、チーズもいいけど、今日は皆で楽しむ夜にゃ!」
「まんまるお月様が見つめてるから、うつむいてないで躍ろっ! 歌おっ!!」
碧は沸き上がる歓声に合わせてアクロバティックに宙返り、観客を魅了する。
(「いつもは主役だし、こういう時は脇を固めるのもいいかな」)
会場の好反応に笑んだ見桜は、1フレーズだけ中央に出てハスキーボイスを披露し、
「寒さを吹き飛ばす勢いで躍って歌っちゃうんだ!」
「皆で、じゃーんぷ! でハイタッチ!」
露出度高めな衣装もなんのその、蛍姫は元気にバク宙を一回、少女の躍動にタイミングを合わせた乃麻は着地の後にころころりん、その姿は無邪気な仔猫そのもの。
瑞々しい笑顔と汗は月下に輝いて、
『にゃー!』
という愛らしい猫の声と仕草が、会場を拍手で一杯にした。
音色はミュージカル『Winter Castle』で二役に挑み、
『待って、待って、一緒にいよう。この冷たい楽園で永遠に!』
男装して少年を演じるや、人造灼滅者の異形と成って冬の娘に変わる名演技。
彼女の後を継いだくるみは、ピアノで『Reinforce』を弾き語り、
『あなたに捧ぐこのエール 歌に乗って届けこの想い』
クルルンの木琴と見事共演を果たした。
そうして全作品を見届けた残暑は足取りも軽快に、
『僕らに翼は生えてはこないけれど、
飛び方はいくらでもあるんだから』
澄み亙る秋穹に佳声を融かした。
空が茜色に染まる頃――優秀賞を得たのは、己が魂を二文字で書き上げた娑婆蔵。
その生き様を凝縮した筆に芸術の極みを見るようだと、惜しみない拍手が贈られた。
作者:夕狩こあら |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年11月24日
難度:簡単
参加:47人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 6
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