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とある裏路地に隠された小さな家。
10人の20前後の青年達があちこちに暴力の痕があり、虚ろな眼差しをした少女を値踏みしている。
程なくして青年の一人が鋭く少女の頬を打って叫んだ。
「おらぁ、さっさと次の奴連れてこい!」
少女は無表情に頷きその場を後にしようとする。
「おい、もし俺達のことをチクったりしたらどうなるか分かっているんだろうな?!」
別の男が鋸を突き出すのに少女は頷き立ち去るのに別の青年がついていく。
大体10代後半の何人かの拘束された少女達がその少女を見送っていた。
「へへっ……それにしたって愉しいねぇ、これ」
缶ジュースをがぶ飲みしながら10人の中の一人が愉快そうに笑えば。
「こんな容易く人を殺せる力を持っている奴等なんて俺達位しかいないだろうからな。やりたい放題だぜ」
この間、釘で全身を貫き地面に埋めた少女の泣き叫ぶ姿を思い出しながらまた別の青年がゲラゲラと笑う。
「まあ、他にも何組かいるっぽいから程々にしないといけねぇけどな?」
捕らえている少女の一人を戯れで金槌で殴り飛ばしながら他の男が笑った。
その言葉に他の男達が同意して笑う。
――それは囚われの少女達が自分達がこれから味わうであろう更なる絶望と何時殺されるかもわからない恐怖に身を震わせるのに十分だった。
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「サイキック・アブソーバーの予知によって、グラン・ギニョール戦争で逃走したジョン・スミスがナミダ姫の陣営に加わったことが分かったよ」
何処か憂鬱そうな表情をしながらそう告げたのは北条・優希斗(思索するエクスブレイン・dn0230)。
「何人かは灼滅出来たけれど、ジョン・スミスはそれ以上に多くの六六六人衆を生み出していたらしい。ただ、一つだけ想定外があったみたいだけど」
それは、六六六人衆の性質……すなわち序列を巡って殺し合うことが起きなかったこと。
本来であればこの殺し合いによって一人前の六六六人衆として成長させる予定だったのだが、ランキングマンによる序列システムが崩壊したため彼等が殺し合いをするのではなく、自分と似た境遇の者達と徒党を組んで自堕落に暮らし始めてしまったことだ。
「ジョン・スミスがスサノオ勢力に加わったからな。末端である彼等の事も予知で見つけることが出来た。最も彼らは六六六人衆になりたてで、自分達六六六人衆以外のダークネスや灼滅者の存在を知らないらしい。まあ、辛うじて自分達と同じ立場にいる者達がいることは知っているから目立ちすぎる行動は避けている様だが」
しかし、既に彼等による被害は少なくないし、放置しておくわけにも行かない。
「と言う訳でこれ以上被害が広がるよりも前に、六六六人衆の班を壊滅させて全ての六六六人衆の灼滅を行って欲しい。出来ることなら、被害に遭っている一般人の救出もね」
優希斗の言葉に灼滅者達は其々の表情で返事を返した。
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「俺の視た六六六人衆の徒党はとある裏通りに小さな家を作って暮らしている10人程の徒党だ。その上……」
そこで優希斗が何処か硬く低い声音になって呟く。
「常に5人の少女を軟禁し、戯れに甚振っている。衝動が動けばそいつらを殺し、そして新しい『家畜』を補充する為にその中の一人を脅して拠点に連れて来させる」
今回の介入タイミングは新しい少女を補充する為に別の少女を脅している時となる。
「全部で10人程だがまだダークネスになって間もない分戦闘能力は低い。皆が2人がかりで挑めば1人は確実に灼滅出来るだろう」
状況によっては1対1でも勝利できるだろう。
「ついでに言うと彼等は皆の事を知らない。だから、みんなを見ても『自分よりも弱い六六六人衆』であるとしか認識できない。上手く利用すれば彼等の班に加わって内部から攻撃することもできるかも知れないね」
尚、ジョン・スミスの判断により今回この徒党を救うための援軍は来ない。
彼等10人を如何にして灼滅するかだけに注力すればいい。
「後、敵の使うサイキックに関してなんだがすまない。全員分は読めなかった。ただ、全員が殺人鬼とシャウトのサイキックは使えるだろうけど」
それ以外に分かっていることは釘を使う者、金槌を使う者、鋸を使う者が一人ずついると言うこと。
「後、DIY事件で闇堕ちした以上大工道具に関わる何かを使う者が多いことだ。そこは気に留めておいてくれ」
優希斗の言葉に灼滅者達は其々の表情で返事を返した。
「相手は徒党を組んでいるとは言え、戦いに関しては素人だ。バラバラに逃走される可能性はあるけれど、今の皆であれば全滅も決して難しくない」
そこまで告げて優希斗が少しだけ目を細める。
「ましてやこの徒党のやっていることは完全な暴虐だ。とても許されることじゃない。どうか皆、彼等に然るべき報いを与えてやって欲しい」
優希斗の言葉に見送られ、灼滅者達は静かにその場を後にした。
参加者 | |
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彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131) |
聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654) |
文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076) |
神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262) |
聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863) |
師走崎・徒(流星ランナー・d25006) |
獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098) |
白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470) |
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(「囚われ暴力で踏み躙られる少女達と、踏み躙る少年達、か……」)
現場に着いた彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131)が叶鏡を通して見た己の深淵、最初の闇堕ち時に起こした遠い過去の最愛の人と彼女を暴力で踏み躙った自らの“罪”と重ねて暫し沈思黙考する。
戦友の様子を見つつ文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)が呟いた。
「ジョン・スミス、スサノオ勢との合流は厄介だがそのお陰で捕捉できるってのも皮肉な話だ。俺達の介入は予測してるだろうに新人教育に試練を与えているつもりなのかね」
「そうかも知れないっすね、文月先輩。まあ、それならその考えが如何に浅はかなのかを教えてやればいいと思うっすよオレは」
「天摩……そうだね。堕ちる前は色々あったんだろうけれど、この現状を見過ごすことは出来ない。一人も残さず灼滅しよう……!」
獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)の戦意の滾る呟きに、師走崎・徒(流星ランナー・d25006)がそう返す。
「さて、準備は万端だ。後は、奴らが現れるのを待つだけだな」
猟奇サイトを装った連絡サイトを開設し且つ盗聴器を仕込みながら、神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)が頷いた。
「クハッ。一人残らず灼らせて貰うぜ」
「凛凛虎。分かっているだろうが、役割は果たせよ?」
聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654)から溢れる殺戮心に釘を刺すのは聖刀・忍魔(雨が滴る黒き正義・d11863)。
「出て来たぜ、あいつら」
少女と監視の鉈男を見て、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)が舌なめずりを一つ。
(「あの女も中々美味そうだな」)
ダンピールの本能に身を浸しながら、明日香が合図を出しサウンドシャッターを展開した所で忍魔達はその男に襲い掛かった。
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「な……なんだぁ?!」
「もう大丈夫! 家に帰れ!」
唐突に現れた天摩達を見て戸惑う男に抗雷撃を放ちながら徒が少女に叫ぶ。
反射的に男が逆手の鉈を振り上げるのを天摩が前に飛び出して受け止めBlack Ash & Gun Smokeで黒い灰と煙による漆黒の弾丸を練り上げ敵を撃ち抜く。
それで味方と判断したのだろう。言われた通り、戦場から逃げ出す少女。
「あっ、くそ、待ちやがれ!」
「遅いぜ!」
男の片足を明日香が不死者殺しクルースニクで斬り飛ばし、忍魔が神薙刃を放つ。
全身を細切れにされた、男は間もなく灰燼に帰した。
「次は私達の番だな」
摩耶の呟きにさくらえ、咲哉、凛凛虎が頷く。
「それじゃあ、後は頼んだぜ天摩、明日香」
「了解っす、文月先輩」
(「あの女を逃がしたのは少し勿体ないが、他にも良さそうなのはいるか」)
「ああ、分かったぜ」
「咲哉達も気を付けて!」
明日香と徒に見送られ、凛凛虎を先頭にアジトに向かい、摩耶が呼び鈴を鳴らした。
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「んっ? 何だお前等?」
現れたカッターナイフ形の腕の男が咲哉達を見て首を傾げる。
「クハッ、同じ匂いがするな。此処は一つ仲良くやろうぜ?」
「俺達は見ての通りの弱小グループで合流先を探しているんです」
凛凛虎に頷きつつ咲哉が丁寧に続け、摩耶が自慢げに刃の長い鋏を見せびらかし、腰まで届く長髪を掻きあげた。
「……なるほどな。良いぜ、入んな」
「仲間に入れてくれてありがとうございます」
さくらえが一礼すると、満足気に男は頷き凛凛虎達をアジトの中へ。
程なくして下品な笑い声が聞こえてきてさくらえは内心で湧く怒りの感情を押さえて目を伏せる。
辿り着いたその時には少女達を相手に愉しんでいる男達が見えた。
「おい、そいつら、なんだよ?! ……って新米か」
鋸男が摩耶達を招き入れた男に問いかけるが勝手に一人で納得している。
「しかも、女連れかよ。こいつはまた、愉しくなりそうだぜぇ」
服の裾下にメジャーを付けた男が下品に笑うと他の3人もまた笑った。
「相当お強いようですね。もしよろしければ、皆さんの武勇伝でもお聞かせ頂けませんか?」
「あっ、其れは僕も聞かせて欲しいね」
咲哉が手を触れ合わせてくれ、と伝えたさくらえが頷き4人の男達の会話に混ざる。
その間に摩耶と凛凛虎は、カッターナイフの男と共に少女達で遊ぶ男達に近づいた。
衣服事体の端々を斬られて所々肌が剥き出しになり、更に急所を外して釘で体を貫かれている少女達の死んだ魚の様な眼差しと、それを見てつまらなそうな男達に心底怒りを感じる摩耶。
「中々、楽しそうなことしているじゃないの」
摩耶の言葉に男の一人が振り向き、少しだけ驚いた表情になる。
「ああっ? 女だぁ? ……まっ、丁度いいや。こいつら、何も反応が無いんだけどよぉ。何かいい方法ねぇか? 女同士なら何か分かることもあるだろ?」
「それなら簡単よ。こうしてやればいいのよ」
摩耶が彼女達の後ろに立ち、罪悪感に蝕まれつつ刃の長い鋏を駆使して髪を斬り刻む。
「ただ、体を甚振るだけじゃ美しくなくってよ? こうやってね……」
髪を斬り刻まれる感触にそれまで無感動に甚振られていた少女が震えた。
「髪を穢されるのは、身体を穢される以上に辛いものなの」
そう言って何処からともなく手鏡を取り出し、その娘に今の髪の状態を見せつけてやると彼女は泣く。
「おっ、泣いた泣いたぜぇ!」
「へぇ……そういうやり方もあるんだなぁ」
男達の内の3人ほどが摩耶の甚振り方に感心の声を上、凛凛虎が仲良くなった男2人に笑いかけた。
「力さえあれば、女も金も好き放題だしな。良いことだ」
「へへっ、よく分かっているじゃねぇか!」
親しげに肩を叩いてくる2人に、凛凛虎が告げる。
「仲良くなったんだ。女の好みを教えてくれよ」
「俺は気の強い女が良いな。ああいう奴に限って痛めつけると泣き叫んで命乞いをしてくる……それが堪らなくイイんだよなぁ」
「俺は清楚そうな奴だな。やっぱ、そういう奴が穢れるのは飽きねぇよ」
携帯を取り出し猟奇サイトに忍魔達への連絡を密かに書き込みながら凛凛虎が頷く。
「なら丁度いいや。家出少女と連絡取り合って、網に掛かったけど、お前等俺と一緒に行かね?」
「へへっ、よく分かっているじゃねぇか、新入り」
「よし、俺も行くぜ!」
そのまま2人を引き連れて屋外に向かう凛凛虎だった。
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「こいつら……!」
徒が拳を握りしめる。
死者はまだいないが護りたい人々が傷つくのは辛い。
「来たぜ」
凛凛虎の書き込みを確認した明日香が呟き、忍魔が清楚そうな口調を考える。
程なくして凛凛虎が連れてきたメジャー男と、金槌男の前に忍魔と明日香が立った。
「おっ、こいつらか?」
「えっと、泊めてくれる人たち……だよね?」
忍魔が目一杯清楚らしさを出そうとたどたどしく話すのに、内心で噴き出す凛凛虎。
「なんだ、この弱そうな奴等は?」
逆に素で勝気な女を演じる明日香に男達2人は堪らなく嬉しそうな表情になるが程なくして怪訝な表情へ。
「こいつら……?!」
メジャー男が何かに気付くよりも先にサウンドシャッターを展開した徒が黒塗りの短槍TUBAKURO LANCEを構えて一瞬で懐に潜り込み、下段から燕返しの様に撥ね上げる。
その刃が男の脇腹から肩にかけてを螺旋型に穿った。
「ギャァァァァ!」
悲鳴を上げつつメジャーを放って徒を縛ろうとする彼の前に天摩が立つ。
「手加減の必要がないのは楽っすね」
カウンターとばかりにOath of Thornsと共に背負った罪を漆黒の光へと変えて天摩が流星の如き速さで蹴りを放つ。
「ぶっ殺す」
明日香が天摩に追随してティアーズリッパ―で斬り裂く間に、忍魔が金槌男に【鋸引鬼】斬魔の蒼い刀身を大上段から振り下ろして頭部を斬り裂いた。
「テッ、テメェ話が違うじゃねぇか?!」
金槌を振るう男の攻撃から明日香を庇いつつ【鋸引鬼】斬魔で受け止める忍魔。
天摩も徒への一撃を受け流す。
「悪いな、嘘を吐いた。俺の姉貴なんだ」
悪びれず凛凛虎がTyrantで攻撃の衝撃を逃がしながら、拳を鋼鉄化させて叩きのめす。
容赦のない殴打が、男の肺の空気を空にし。
「お前は、次に『こんな筈じゃ……』と言う!」
「ば、馬鹿な……こんな筈じゃ……?!」
徒の予言と共に放たれた抗雷撃に強打されて力尽きる彼を見て不利を悟った生き残りが叫びながらアジトへと逃げようとするが。
「通行止めだ!」
明日香がグラインドファイア。
絶叫と共に燃え尽きる男を見ながら、忍魔が凛凛虎へと視線を向ける。
「未熟者だったな。凛凛虎、怪我してたら回復しとけ」
忍魔の言葉に凛凛虎が戦神降臨で自らの傷を癒し、天摩も煙へと姿を変えた魔力を取り込み自らの傷を癒す。
「徒っち。今、向こうはどんな感じっすかね?」
天摩の問いかけに、徒が盗聴器を通してアジトの様子を聞いている。
「そろそろみたいだよ」
「戻ってスタンバるか」
徒の言葉に凛凛虎が頷き、何時でも突入できる様に忍魔達とアジトの入口に陣取った。
●
――アジト内。
(「大分、温まって来たな」)
手慣れた様子で4人の武勇伝を持ち上げた咲哉の内心の呟き。
探偵学部と言う所属柄尤もな話なのだが、こうまで上手く演じれてしまうと、嘗て友を殺し今はダークネスを殺し続ける殺人鬼である自分を実感してしまい、何処か忸怩たる思いを抱く。
さくらえも気付かれぬ様にそっと睨む様に目を細め小さく息を吐く。
左手に嵌めた『連理』の光に気を静めそっと右手を重ねて『彼女』に思いを馳せた。
(「そろそろ、だな」)
そんなさくらえに咲哉が腰の【十六夜】の鞘で触れて指示を接触テレパスで伝えた。
さくらえが少女達を守るべく精神的に少女達を嬲る方法を男達に教えていた摩耶に視線を向けると、摩耶は密かに左手で書き込みによる連絡を開始。
「ところで……皆さんの中で一番強いのは誰なんでしょうね?」
咲哉の言葉に、男の一人が当然、と言う様に胸を反らす。
「無論、俺様に決まっているだろう? なあ、お前等!」
「いやいやいや、僕だって、僕!」
別の男がそう告げるのに、我も我も、と男達が名乗りを上げ始めた。
「おい、姉ちゃんはどう思う?」
摩耶の話を聞いていた男達の問いかけに、摩耶は微笑を浮かべた。
「それは勿論、勝った者が美しいのよ? 私は貴方達に勝てないからまだまだだけどね」
「そうかな? 単純に腕力が強いのがリーダーに相応しいって思っている?」
摩耶と咲哉にさくらえが否定的な意見を述べる。
「力を誇示して押し付けるのがリーダーって時代はもう終わったんだよ。選ばれた僕らが持っている力を最大限に面白く使うってんなら、リーダーに大事なのはココ(頭)だっての」
「じゃあ、この作戦の立案者の僕がリーダーだな!」
さくらえに煽られるようにディスクグラインダーを装備した男が告げれば、他の者達が色めき立った。
「いや、オレだ! オレに決まっている!」
別の男も言い募り、皆が皆リーダーを主張して一触即発の状態に。
ここぞとばかりに咲哉が提案を一つ。
「僕達は皆さんより弱いですから。此処は皆さんの中で誰がリーダーに相応しいのか、戦ってみたらどうでしょうか? 僕達は力は弱いですが、皆さんの傷は癒せますから、勝った方に従う。どうです、実にシンプルでしょ?」
「よーし、そう言うことだったらやってやるぜ! この中でリーダーは俺だ!」
「いや、僕だ!」
「オレだ!」
残った7人が口々に叫んで其々に武器を構えながら、同士討ちを始めた。
既に自分達より力が弱い、さくらえ達の事など気にも留めない。
その間に、4人の少女に近づいていた摩耶が周囲の魔力を紫の波動に変換し、傷を負った少女達の体を癒す。
さくらえもまた、同士討ちを始めた7人にディスクグラインダーに見せかけた断罪輪で支援する振りをして清浄なる風を吹かせて後方の少女達を治癒する。
(「慣れない癒し手だけど後ろに回ったのは正解だったね」)
その間に、彼等の醜い争いは続き……7人の内2人が倒れ、更に5人が其々に深手を負い、疲労に顔を青褪めさせていた。
(「頃合いだな」)
「摩耶!」
咲哉の合図に摩耶が叫ぶ。
「今だ、突撃しろ!」
盗聴器を通した摩耶の指示に徒達がアジトに飛び込んだ。
「クハッ! 不死身の暴君の力、思い知らせてやるぜ!」
凛凛虎が飛び出し、目前の男をTyrantで唐竹割に斬り捨て。
「第2ウェーブだ」
忍魔が凛凛虎の肩を足場に高く飛び上がり虎杖に籠められた魔力を虎型に変形させて別の一体を圧倒的な熱量で嬲れば。
「終わりっすよ!」
天摩がティアーズリッパ―で忍魔の狙った相手を残虐に斬り裂き止めを刺し。
「くっ……くそっ!」
敵の一人が飛び込んできた徒の死角に踏み込むが。
「ほら、当てて見なよ!」
ひらりと空中で二段ジャンプをして華麗に攻撃をかわしつつ落下ざまにダイダロスベルトを射出。
放たれた其れが傷だらけの彼の首を締め上げ窒息死させる。
「遅いぜっ!」
徒の脇を駆け抜けた明日香が傷だらけの敵の一体を逆袈裟に斬り捨てた。
瞬く間に制圧され残り1体となった男が刺すような殺気を叩きつけるが。
「無駄だ」
摩耶が徒を、忍魔が凛凛虎を、天摩が明日香を庇い事なきを得る。
さくらえが服の裾を靡かせて清めの風を吹かせて忍魔たちを癒す間に。
「終わりだ!」
咲哉が最後の一体、カッターナイフ形の腕を持つ男を【十六夜】で一閃した。
「ち……畜生……」
「すまなかったな。京子の時の様に罪を犯す前に止められなくて」
其れが、償いになるとは思わないけれど。
咲哉が謝罪と共に【十六夜】を引き抜いた時……男は、ヒュー、ヒュー、と声にならない音を立てながら力尽き……光になって消えて逝った。
●
状況終了後、部屋の隅で縮こまっていた少女達へと摩耶が近づき、震える彼女達を安心させるべく膝をついた。
「身体への危害を避けるためとはいえ、酷いことをした。すまなかったな……」
悄然と頭を下げる摩耶に唖然とする間に、咲哉がそっと少女の一人にコートを羽織らせる。
「もう、大丈夫だ。怖い思いをさせてすまなかったな」
「心配なら、家まで送って行ってやろうか? オレでよければ、何時でも相談に乗るぜ?」
明日香の優しげな表情に少女達が其々の表情を浮かべた。
その間に、徒が既に埋められたであろう少女達の死体を探し出し、警察たちに見つけやすい位置へと密かに運ぶ。
(「助けられなくて、御免」)
敵は全滅できた。
そして、今生きている少女達を救うことは出来た。
でも、それがその前に犠牲になった者達への報いになるのだろうか。
(「僕のあの時の“罪”は決して消えない。だからこそ……」)
他の者達が“罪”を犯すのであれば、“灼滅者”としてそれを止めるのを手伝いたい。
徒を手伝い掘り起こした少女達の遺体を見ながらさくらえは想い静かに空を見上げる。
煌々と煌めく月の姿は、まるで死者たちを労わる様だった。
作者:長野聖夜 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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