薄暗くほこりっぽいゲームセンターの中で、20代後半の男女計五人が立っていた。
うち一人、髭面の男は手に持った金づちを振り上げている。それを、床に転がる何か――人間の死体へ、振り落とす。飛び散る肉片。
「あー。死体潰してもつまんねー」
髭面が言うと、ぎゃははっ、他の者達が笑う。
「そりゃそう。生きてる奴を殺すから楽しーんだしさー」
「じゃあ、二階にいる女、やっちゃう?」
「えー? でも、あれ人質じゃん? 人質のおかげで、旦那さんたちが、いろいろ持ってきてくれるし。飯とか金とか……そこで死んでるホームレスとか! ひゃはっ!!」
「じゃあまた明日呼び出して、別のホームレス連れてきてもらう?」
「ふふっ、そしたらまた殺せるー」
明日の殺戮を想ってか、彼ら――六六六人衆たちは陽気に騒ぐ。
学園の教室で。
姫子は灼滅者に説明を開始する。
「サイキックアブソーバーの予知で、グラン・ギニョール戦争で逃走したジョン・スミスが、ナミダ姫陣営に加わった事が判明しました。
ジョン・スミスは、DIY殺人事件により多くの六六六人衆を生み出したのですが、その六六六人衆たちがちっとも殺し合わない事に業を煮やしたようです。
六六六人衆は序列をめぐって殺し合う習性があり、生み出された六六六人衆達も互いに殺し合い、一人前の六六六人衆に成長する筈だったのでしょう。
しかし、ランキングマンが灼滅された為、六六六人衆同士で殺し合うシステムが崩壊、新たに生まれた六六六人衆達はチームを組み、自堕落に暮らしだしたようです。
10人程度のチームを組んだ六六六人衆達は、一昔前の不良グループのように、一般人を支配下におき、金銭を要求したり、殺してもよさそうな人間を連れてこさせ、戯れに殺す等、しています。
ジョン・スミスがスサノオ勢力に加わった事で、末端である彼らもスサノオ勢力となった為、彼らの活動拠点及び状況が予知で判明する事になりました。
彼らは、六六六人衆以外のダークネスの存在も、灼滅者の存在も知らず、自分達は特別な力を与えられた特別な存在と思い込んでいます。
自分達と同じ立場の六六六人衆が他にいる事は理解しており、目立ちすぎる行動は避けているようですが、既に何人もの人間が殺害されるなどの被害を被っているようです。
この隙をつき、彼らのチームを壊滅させ全ての六六六人衆の灼滅を行ってください。
また可能なら、一般人の救出もお願いします」
姫子は灼滅者が頷くのを待ってから、続けた。
「ここにいる皆さんに行ってほしい、六六六人衆の拠点は、ある校外のゲームセンター」
六六六人衆は、計十体。
六六六人衆は、五体が一階ゲームコーナーに、残り五体が二階にある広いスペースにいて、それぞれどんちゃん騒ぎをしている。
二階のスペースには、監禁した一般人女性が、三人いる。
六六六人衆たちは、監禁した女性を人質にときどき一般人を呼び出し、金品を持って来させたり、殺害用のホームレスを連れて来させたりしている。
が、灼滅者が辿り着く時点では、ホームレスも呼び出された一般人もいない。
六六六人衆の戦闘力はダークネスとしては低い。敵一体を相手に、灼滅者たち2人で戦えば勝利は可能。
「しかし、正面から挑むのは、得策ではないでしょう。戦力的には彼らが皆さんよりも上。またばらばらに逃走されてしまえば、全員を倒すのは難しいでしょうし。
でも、彼らは灼滅者の存在を知りません。皆さんを見ても『少し弱い六六六人衆』と思い込みます。
なので、仲間になる振り等をして、内部に入って不意打ちするのがいいと思います」
この作戦をとるなら、どんなふうに敵にとりいるか、どんなタイミングで攻撃するか、決めておく必要がある。
敵は本格的な戦闘経験はない。うまく奇襲できれば敵は混乱し、有利に戦えるだろう。
姫子は灼滅者を一人一人見る。
「ジョン・スミスは、六六六人衆の育成のため灼滅者を利用しようとしていますが、なら、全員を灼滅してしまえば良いだけ。
百戦錬磨の皆さんなら、きっと可能。自堕落で邪悪な六六六人に終焉を。お願いします!」
参加者 | |
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アンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153) |
神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766) |
神虎・華夜(天覇絶葬・d06026) |
リーファ・エア(夢追い人・d07755) |
陽乃下・鳳花(流れ者・d33801) |
ニアラ・ラヴクラフト(トルネンブラ・d35780) |
●
薄暗いなかにゲーム機の明り。騒がしい男女の声。
アンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153)、神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)、陽乃下・鳳花(流れ者・d33801)、リーファ・エア(夢追い人・d07755)の四人は今、六六六人衆の拠点のゲームセンター内にいる。
それぞれ用意した称賛の言葉で、巧みに六六六人衆を上機嫌にさせ、潜入に成功したのだ。
アンカーは六六六人衆と対戦ゲームに興じていた。
「ゲームやり放題って楽しいっすね! 対戦ゲーム最高っす!」
アンカーは筐体から顔をあげ、周りの六六六人衆に、
「対戦……そういえば、実際に対戦したら、誰が一番強いんですか? 上の人も誘ってリアル対戦ゲーム、しません?」
ノリよく提案するアンカーに、
「リアル対戦ゲーム? マジおもしろそー」
「それあるー!」
二人が即座に乗ってくる。二人は上の階の二人を連れてきて、一階の中央へ。
アンカーに乗せられるまま、四人は模擬戦を開始。金槌と鋸の音。新鮮な血の臭い。
残りの六六六人衆は観戦を始め、ぎゃははっ、と爆笑。
うち一人、髭面の男の隣に、華夜は腰かける。
「面白いゲームね。一緒に見物させてもらうわ」
彼が持つグラスにジュースを注ぎ、耳に囁きかける。
「皆に見えない場所で、内緒にお楽しみがあるの……後で行きましょ、一緒に」
ごく。男が唾を飲む。
全員が戦いや観戦を楽しんでいるわけではない。部屋の隅で、
「ゲームなんて退屈ー。実際やらなきゃー」「よねー」
と欠伸する六六六人衆も。
鳳花とリーファは、欠伸した二人に近づき、声をかける。
「対戦ゲームは嫌い? じゃあ、人質の旦那さんを呼び出してからかうとかどう? 人質つれて脅して、お金も貰うの。ボク、先輩達と楽しく遊びたいなー」
「折角だし、外で刺激的にしましょうよ!」
退屈していた二人は、鳳花とリーファの言に目を輝かせた。
「そのアイデアいただき!」「やっちゃおー」
●
数分後。
鳳花とリーファは路地を歩いていた。
泣きそうな顔の人質女性の手を取りつつ、六六六人衆を先導。
角を曲がり、人気のない路地裏に入ったところでリーファは足を止め、六六六人衆たちに向き直る。
「こんなに簡単に引っかかるなんて……序列システムがなくなれば本当に種族としては崩壊しているんですね。ま、排除させてもらいますよ――風よ此処に」
鳳花は一般人に逃げるように指示。そしてサウンドシャッターを展開し、
「さてと、お芝居は終わり。まあ要するに、君たちは井の中の蛙ってやつだったわけだね。さあ、じゃあ戦いを始めようか」
ニアラ・ラヴクラフト(トルネンブラ・d35780)と神虎・闇沙耶(鬼と獣の狭間にいる虎・d01766)は物陰に隠れていたが、敵の逃げ道を塞ぐように、立つ。
「貴様は壁『袋』の中の鼠だ。我らの足音は闃に抱擁される」
粘液にまみれた鋏をくいっと開くニアラ。
「蛙であろうと鼠であろうと、貴様らは既に籠の中の獣。生きたければ我を討つのみぞ?」
闇沙耶は『無【価値】』の先を敵に向けた。
敵が構える間なく、闇沙耶は接近。炎を宿す刃を一閃。敵の悲鳴。
「なにこれ? まじなにこれー?!」叫ぶ敵を容赦なく攻める、鳳花、リーファ、闇沙耶、ニアラ。
六六六人衆二人は喚き続けていたが、一分後には鋸を構え切りかかってくる。
ニアラの両肩から血が零れた。が、ニアラは痛みを顔に出さない。黒い瞳で敵の目を覗き、デッドブラスター。敵を貫通。
不意打ちで怯んだ敵二体を葬るのは容易いことだった。
ことを終え、鳳花とリーファは敵本拠へ。ニアラと闇沙耶は再び路地裏に隠れる。休憩する間もなく、
「お楽しみはこっちよ」
華夜が髭面の六六六人衆と腕を組みながらやってきた。華夜も言葉巧みに相手の情欲と好奇心を掻き立て、敵を連れ出したのだ。
華夜のウィンクを受け、ニアラと闇沙耶は再び動く。
「我が精神は堕落を嘲り、怠惰な闇を傲慢で貪る」
ニアラの影が蠢く。女子高生の姿へと変化。六六六人衆は腕を交差させ顔を庇うが、その腕を影の刃が斬る。斬影刃。
痛みにたまらず尻もちをついた六六六人衆。彼を跨ぐように、闇沙耶は立った。
「我が怒りに触れし愚か者、死をもって償い、塵芥となれ」
闇沙耶は拳を振り落とす。雨の如くに連打。路地裏に響く打撃音と悲鳴。
●
華夜が連れてきた六六六人衆も無事灼滅。華夜はその後、さらに一人を釣りだし、六六六人衆のべ四体の灼滅に成功。残る敵は六体。
路地裏でニアラと闇沙耶は顔を見合わせる。
「神虎様からの内部情報を勘案するに、これ以上の釣りは困難と我は思考する」
「ああ、数が減ったことに気づいたのもいるらしいからな。まだ潜入組は疑われてないみたいだが。なら、模擬戦で傷ついている今、突入すべきだろう」
二人は移動を開始し、数分後に敵拠点ゲームセンターの扉を開ける。
「我等も六六六人衆、我等も遊戯に参加する」
ニアラの言葉に六六六人衆が、
「まじでー? いいじゃんいいじゃん。一緒に殺そーぜ」
はしゃいだ声でニアラと闇沙耶を出迎える。ニアラと闇沙耶は視線を走らせる。
ゲームセンター一階にいるのは、潜入組を含む灼滅者六人、六六六人衆六人全員。アンカーの提案した模擬戦に参加・観戦するため、二階にいた者も降りてきている。
模擬戦は終わったようだが、負傷者もいる。また灼滅者が敵と気づいてない。好機だ。
闇沙耶は仲間とアイコンタクトをとり、何気ない風に六六六人衆の一人、禿頭の男に接近。
「この怒り、貴様を燃やし尽くす!」
禿頭の男を、炎の刃で、斬る!
不意を突かれた六六六人衆たちは騒然。
アンカーは敵の分断は困難で、ここは攻撃が得策と判断、
「兄貴、援護するっす!」
斬られた禿頭に近づき、チェンソー剣を振り上げた。加勢すると見せかけ――禿頭の肩を裂く!
禿頭は悲鳴を上げ、下がろうとするが、華夜と霊犬・荒火神命が退路を断つ。
「騙して悪いけど、これが私のやり方。文句はないでしょ?」
「あるにきま……」
敵の抗議を遮るように、華夜の足元で影が動く。人型の『バールのような者』の触手が禿頭に伸びた。足首に巻き付き、くいっとひっぱる。荒火神命も逆の足に切りかかる。
たまらず膝をつく禿頭。
すかさず、リーファがクルセイドソード『L・D』の柄を握る。赤く輝く刀身から破邪の光を放ち、斬撃! ウイングキャット・キャリバーも前脚を突き出し、主に加勢。
キャリバーのパンチが顔に当たり、リーファの剣が敵の胴を両断。敵を灼滅!
六六六人衆は奇襲と裏切りに混乱していた。
それでも彼らは闘争心を取り戻し、武器を手に灼滅者に迫る。
戦いの最前線に立つは鳳花。
鳳花は鋸で三度斬られたが、なお構えを崩さない。
拳を光らせ祭霊光で、そしてウィングキャットの猫の支援で傷を癒し、さらに敵の金槌を体で止める。
殺意に満ちた敵の目を、鳳花は茶の瞳でまっすぐ受けとめた。
鳳花が戦線を支え続ける中、戦闘は続く。
ニアラはおもむろに敵群に跳び込んだ。
鋸を振り上げる敵の眉間を漆黒の弾丸で撃ち抜く。
さらにダブルの動きで、口を開く。ニアラの唇が紡ぐは冒涜的に禍々しくかつ美しい歌。
耳から血を流し、一体が倒れる。
が、ニアラの腹部からぽとり、と血。ニアラも、敵の鋸に裂かれていたのだ。
ニアラに駆け寄る、荒火神命。清らかな目の力でニアラの傷を塞ぐ。
ニアラは目礼すると、再び床を蹴った。霧と目玉を発生させる大鎌を手に、新たな標的に跳びかかる。
四体に減った六六六人衆は、
「犬と猫が、回復役だぞ!」
「じゃあ、やっちゃう? やっちゃえー」
と攻撃を灼滅者のサーヴァントへ絞る。
前衛で守りと治療を担当していた荒火神命は、懸命に粘るが、金槌に耐え切れず消滅。
「ぎゃはー!」
六六六人衆の一体、唇にピアスをつけた女が、勝ち誇った声をあげる。
その唇ピアスの女を華夜と闇沙耶が左右から挟み込む。
闇沙耶は緑の瞳に強い意志を浮かべている。
唇ピアスの胴へ、戦艦斬り。勢いと意志を込め躊躇などみじんもない、一撃。
華夜は黒影刀の柄を強く強く握りしめていた。怒っているのか。
呼吸を止め、刃を一閃――敵の脳天へ雲耀剣。
闇沙耶と華夜の刃は、唇ピアスを絶命に追いやった。
事前に複数の策略で敵戦力を削っていた。奇襲やクラッシャー三人の攻撃的な陣形で、敵に大打撃を与えるに至った。
しかし。敵はなお強力。
リングを光らせ、味方を必死に治療していた猫が鋸で狙われ、意識を失う。
猫を倒した茶髪の六六六人衆の懐へ、鳳花が潜り込む。
爆霊手で茶髪の顎を殴り、霊力で縛り付ける。
だが。残り二体が怒りの声をあげ、鳳花へ近づいた。衝撃波で打たれ、鋸で刻まれる鳳花。
血を流しつつ、鳳花は、
「エア先輩、今のうちにっ」
「分かりました、鳳花さん。もう少し我慢してくださいね。――キャリバー!」
鳳花の言葉を聞いて、リーファはキャリバーに指示。
主の意を受けて、キャリバーは茶髪へ猫魔法を行使。「がっ」声をあげる茶髪へ、リーファは跳んだ。エアシューズ『Burn the dark』で蹴り、燃やす!
リーファの火に包まれ、倒れる茶髪。
灼滅者は勢いに乗る。
傷つき、血を流しつつも戦い抜き、さらに敵一体を葬った。
残るはモヒカンの男のみ。
「貴様ら、何もんだああああっ」
「実は灼滅者っていう六六六人衆キラーです。死ぬまでの間覚えておいてください……といっても、もうまもなくだけど」
叫ぶような問いに答えたのは、アンカー。
モヒカンは金槌で殴り掛かってくるが、動きは鈍い。アンカーはチェンソー剣で敵の武器を弾く。飛び散る火花。そして返す刀でズタズタラッシュ。
悲鳴、血しぶき……最後の六六六人衆を消滅させる。
●
「終わったね……」
「ええ……一般人には十分な脅威でしたからね、ここで排除できてよかったです」
鳳花は敵が完全に息絶えたことを確認し、息を吐く。
リーファも剣を構えていた手を下におろした。
敵はもともと十体。真っ向勝負では勝てない相手だった。知恵と力をつくしての勝利。
消耗は少なくないが、休憩してはいられないと、アンカー。
「まだ二階に人質の女性がいる筈だ。エスコートしないとね」
階段へと歩を進めるアンカー。
幸い人質の命に別状はなく、アンカーは彼女らを解放。一階の入り口へエスコート。
「我等も帰還すべきと思考する」
端的に告げるニアラ。他の者達も彼女に頷き、アンカーに続いて外へ。
日はもう暮れていた。
薄暗い街の中を灼滅者たちは歩く。
闇沙耶はゲームセンター、六六六人衆たちの拠点だったそこを睨み、
「ジョンめ、小賢しい真似をする……」
呟く。
呟きを聞いて、華夜は目を閉じる。
「貴方達に幸せを潰す権利は無いわ。踏み潰されない」
ここにいない敵に告げるかのように。
冷たい風の吹く中、灼滅者たちは歩き続ける。助けることのできた命と共に、しっかりとした足取りで。
作者:雪神あゆた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年11月28日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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