少しだけ、殺す

    作者:呉羽もみじ


    『人を殺したい』
     そう思うようになったのはいつの頃だったか。
     数日前? 数ヵ月前? それともずっとずっと昔から?
     確か「刺激が欲しい」。そんなことをふと思ったのが切っ掛けだっただろうか。
     いや、今となってはそんなことはどうでも良い。人を殺したい。
     イヤ! 駄目、人を殺すのは駄目!
     ――何故? あれだけ沢山の人が居るんだ。一人くらいなら――
     駄目! もし、人を殺したら私はとんでもないところまで落ちてしまう予感がするの。
     ――じゃあ、こうしたらどうだろう? ほんの少しだけ殺す。その辺りを歩いている人を呼び止めて人気のない所で、ほんの少しだけ、殺す。
     殺人では無い。なにせ「ほんの少し」だから。腕でも、足でも良い。捻りあげて千切ってしまったらどうだろう? それとも動脈近くを死なない程度に切るのも悪くない。
     流れる血は綺麗だ。見てみたいと思わないか?
    「……見たい」
     少女はふらりと立ち上がり、人通りのある商店街へと足を進めた。

    「一般人がダークネスになりそうな気配を察知しました」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は真っすぐに灼滅者達を見据える。
     落ちかけている少女の名前は佐月・理央(さつき・りお)。
     通常なら直ぐに人間としての意識を手放し本能の赴くままに殺戮を始めるのだが、彼女は殺戮衝動を別人格として捉え、会話をするようにして自分と向き合い殺意を抑えていた。
     しかし、それには限界が有り――遂にその限界が近づきつつある。
    「もし彼女が灼滅者の素質を持つのならば皆さんの手で救い出して下さい。もし、完全に落ちてしまった場合は……灼熱をお願いします」
     理央の外見を丁寧に記したメモを灼熱者に手渡しながら、姫子の柳眉が辛そうに寄せられた。
     六六六人衆。
     彼らは自らの殺人技術を高める為に、日夜殺人を行う非情な集団である。
     理央に与えられるであろう番号は662。
     集団の中では最下位に近い位置に居る。
     が、その力は絶大。8人の灼熱者が束になってかかっても勝てる可能性は決して高くは無い。
     唯一の救いは、理央はまだ完全にダークネスに身を落としていないことだ。
     人しての倫理観が殺人衝動を寸でのところで食い止めている。
     が、ダークネスは「ほんの少し殺す」という曖昧な表現をして彼女を籠絡しようとしている。
     戦うことは避けられないが、理央に説得をしながら戦うことにより、ダークネスの力をある程度抑えることが出来るかもしれない。
     シンプルに「殺しは良くない」と訴えるも良し、狡猾な「662」を論破するも良し。
     しかし、ギリギリの状態で自我を保っている理央に負担を与えすぎるような言葉は逆効果となるので注意が必要である。
     また、理央は殺人鬼と同等のサイキックを使用する。
    「ほんの少しの刺激が欲しい、と思った結果がこれなんて……酷すぎます」
     退屈な毎日から逃れたい、と思うことは誰しもあるだろう。
    「彼女が完全に闇に取り込まれてしまわないように、どうかよろしくお願いします」


    参加者
    荒城・夜月(茨を纏う月虹・d01005)
    来栖・桜華(櫻散華・d01091)
    東風・希(全力系ガサツ女子・d02315)
    氷上・蓮(白面・d03869)
    識守・理央(迷走する少年期のヒロイズム・d04029)
    ヘカテー・ガルゴノータス(深更のひと・d05022)
    文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)
    皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)

    ■リプレイ


     商店街を歩く人々の群れは誰もが同じような様相をしており、その人々の群れの中で目的の彼女を探すのは困難かと思われた。
     しかし、目的の少女は案外早く見つけることが出来た。一見すると、どこにでもいる少女である。寧ろ、か細く、頼りない。しかし、彼女は通常とは異なる存在感を醸し出していた。
     事前に情報を聞いていたから、と単純に解釈するのは容易では無かった。再確認の為に、もう一度、事前に得た情報と照らし合わせる。
    「(間違い無いようですね。行きますよ)」
     氷上・蓮(白面・d03869)と識守・理央(迷走する少年期のヒロイズム・d04029)は軽く頷き合い、行動を開始する。
    「あの」
    「……え?」
     自分に声を掛けられたとは思ってもいなかったのだろう。振り返った少女――佐月理央は少し警戒したように声を掛けた彼らを見る。
     少女の目が、さり気無い動作ではあったが、素早く彼らを頭から爪先まで一瞥する。何かを確かめるような少女の動きに若干の居心地の悪さを感じてはいたが、それは心の中に留め、蓮は少女に笑顔を向ける。
    「ねぇ、一緒に……遊ばない? 楽しいこと、あるよ」
     袖を軽く引きながら蓮は少女を誘う。
    「楽しいこと?」
     袖を引かれ驚いたのであろう。少女は僅かに眉をひそめ、やんわりと引かれた袖を引き戻し、両腕で自身を守るように抱きしめる。
     不意に身体に触れるのは早計だったか――様子を窺っていた理央は、蓮の言葉を引き継ぎ口を開く。
    「貴女に話があります」
    「私に話?」
     疑問を口にし、軽く首を傾げた後、数秒瞳を閉じる。そして、目を開ける。
    「……『私』に用事? へえ、どんな?」
     微笑む顔は屈託の無い少女そのものなのだが――何かが違う。
    「どうしたの?」
     戸惑う彼らを見て少女は再び笑みを見せる。
     それは、数秒前とは明らかに異なる様相であった。少女は笑っている。先程までは怯えた顔をしていたのに。
     ――ここに居るのは佐月理央では無い。六六六人衆のひとり「662」だ。
     まさかこんなにも早く662が現れるとは。仲間達への伝達方法はどうやるのだったか? 焦る彼らを交互に見て、少女は微笑もうとし――ふと、瞳が閉じられる。再び開いた時は先程の怯えたような表情。
    「私に用事? なんで?」
     今、この瞬間にも少女は内面の闇と戦っているのだろう。少しの時間も許されない。理央は全ての説明を棚上げし、要件だけを端的に述べた。
    「僕達は、貴女の悩みに立ち向かう方法を知っています」
    「悩み? ――っ! もしかして」
    「ここでは話せません。もっと人気の無いところでゆっくりお話しましょう」
     少女の訴えを途中で遮るようにして理央は少女を仲間が待つ場所へと誘う。
    「わ、かった」
     彼の後に着いて行こうとする少女の背中がとても苦しそうに見え――、
    「つらそうな、顔してる子は……放っておけないね」
     蓮が少女の背中に軽く触れる。ビクリと身体を震わせるが、先程の様に振り払われる事は無かった。
     その様子を見て理央は「接触成功」と書いただけのメールを、少女に気付かれない様に仲間達に一斉送信した。
     誘い出しはどうやら成功したらしい。目立たない様に背後からそっと様子を窺っていた東風・希(全力系ガサツ女子・d02315)、ヘカテー・ガルゴノータス(深更のひと・d05022)、文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)はメールを確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
     彼らが一番恐れていた事。それは少女が接触の段階で警戒され、逃げられてしまう事であった。何度も議論を重ね、2重3重に接触方法を準備していたが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。
     しかし、少女は非常にアンバランスな状態であることを忘れてはいけない。今は接触――第一段階が成功しただけに過ぎない。
     これから行わなくてはいけない少女への説得、避けられない戦闘の事を考え、灼滅者達は決意も新たに仲間達の後を追いかけた。


     ――何を話しているのだろうか。理央と蓮が少女に声を掛け、少女はそれに応えるように軽く頷いたり、時には微笑む仕草も見受けられる。
     程無くして、予め戦闘場所へと決めていた場所へと到着した。
    「ここで話をするの?」
     少女の疑問に答えるように、隠れていた仲間達がそっと彼女の周りを取り巻いた。
    「……あなたたちは?」
    「そんなに怯えなくて良いよ」
     少女の怯えを感じ取り、荒城・夜月(茨を纏う月虹・d01005)が安心させるように柔らかく微笑む。それでも状況が掴めない少女は泣きそうな顔をして逃げ場を探すように視線を彷徨わせる。
    「(今まで、一人で気持ち、を抑えるのは大変だった、と思います。貴女の苦しみ、を私にも分けてください)」
     少女の姿が余りにもいじらしく、来栖・桜華(櫻散華・d01091)は、声に出して言ってしまいたいのを寸でのところで抑える。それを言うのはもう少し先、仲間が全て揃うまでだ。
    「(皆さんの到着はまだでしょうか……)」
     怯え、今にも逃げ出しそうな少女から眼を離さないようにして、皇樹・桜夜(家族を守る死神・d06155)は焦れた様に呟く。その呟きが聞こえたかの様に誘導のフォロー役を務めていた3人が戦闘場所へと到着した。
    「な、に? 何なの? 一体」
    「佐月理央、君の悩みは知っている。解決の手伝いをさせてくれ」
     8人に囲まれ更に混乱する少女に向かいヘカテーが口を開く。
    「なんで私の名前を?」
    「言った……でしょう? 私達は、知っている、の。貴女を助ける方法、を」
     蓮がふわりと言葉を掛ける。
     理央が接触時に説明を省いていたダークネスや灼滅者の存在を簡単に説明する。
    「そんな、いきなり言われても、私……」
    「混乱するのも無理は無い。が、確かにあったんだろう? 殺人衝動が」
     咲哉の「殺人」という言葉に少女は息を飲む。
    「でも、ここまで衝動を抑えられたのは君の強さだ。大丈夫、君はまだ引き返せる」
    「理央、大丈夫だよ。キミはちゃんと分かってるよね、本当は」
    「刺激が欲しいって気持ちはまあ、わからなくもねーんだよな。あたしだってそうだし」
     夜月と希の言葉に少女は泣きだす一歩手前の表情になる。
    「私、ずっと怖くて――先程から煩いな。もう少しでコレは落ちると言うのに」
     少女の目つきが変わった。再び662が現れたのか。
    「貴女はまだ闇に墜ちていない……だからまだ間に合う。絶対に救ってみせる。だから、自分を見失わないで!」
     いつでも戦闘に入れる様、身構えながら桜夜は「佐月理央」に呼びかける。
    「血がどうとか殺すとか、それって本当にやりたい事じゃないだろ? それに」
     希はそこで一旦言葉を切り大きく息を吸う。
    「どうしても殺りたいならあたしらをやれ。安心しろ、お前の衝動ごときにやられるほどヤワじゃねーよ!」
     そして、少女の心に直に響く様に大声で挑発する。
    「ふぅん? じゃあ望み通り――イヤァァァァァ!!」
     薄く微笑む662が突如悲鳴を上げる。
    「イヤァァ! 殺したくない、殺したくない! ――チッ、まだ、理性が残っていたのか――お願い! 誰か分からないけど、今のうちに私を殺――……黙れ」
     身体の所有権を奪われながらも、彼女は必死で灼滅者達に訴える。「私を殺して」と。その訴えを最後まで言わせること無く、662は自身の頬を殴り付ける。
     少女の口から血が流れる。殴り付けたことにより頬骨が折れたのか。片頬が歪んだままに少女は微笑む。
    「……全く、手間が掛かる」
     少女は再び意識の底に沈んでしまったのか。
    「それならば、起こすまでだ! 行くぞ!」
     咲哉が日本刀を構え、少女を睨みつける。
    「コレの最初の犠牲者は君達か。……悪く無いな」
     少女――662は8人の灼滅者達を見据えながら、目を細めた。


    「(理央さん、を助けたいの。だから今、は全力で止めたいの)」
     桜華は祈りと共に仲間達を支援する。その祈りは敵の攻撃をある程度和らげることの出来る盾の様に皆の身体を纏う。
    「私は、もっと、お話……したいな。理央と」
     蓮は素早く少女に近づき回転しながら体当たりを喰らわそうとし、咲哉が少女の背後に回り背中を激しく切り裂こうとする。
    「……遅い」
     前後からの攻撃をかわし、少女はひらりと飛ぶ。
    「攻撃の手を休めては駄目だ」
     標的を失い、一瞬呆然とする二人を叱咤する様にヘカテーは鋼糸を少女に巻きつける。
    「君の心を蝕む闇を……少しだけ、殺す!」
     動きを封じられ、軽く眉をひそめる少女に理央は必殺の居合斬りを放つ。
    「……ふふ」
     ぱっと飛び散る自身の血を見て、少女は嬉しそうに声を上げた。
    「楽しいなあ。やはりこうでないと。……さて」
     血を、頬や額に塗りたくり少女は笑いながら灼滅者達を見る。そして何の前触れも無く不意に鏖殺領域を放つ。
     前列に居た仲間たちは一斉に攻撃を受け、決して軽くは無い痛みに顔をしかめる。
    「(さすがに強い……でも)」
     痛みに耐えながら桜夜は地面を蹴る。
    「この程度の痛みじゃ、私達は崩れない!」
     気合と共に鎌を薙ぐ。少女は左腕を盾として鎌を受け止め、後ろに飛び退る。
    「逃がさないぜ!」
     希が少女に向け漆黒の弾丸の弾丸を放ち、それを追い掛けるように咲哉が斬り付け、ニヤリと笑う。
    「悪いな。そう簡単には死なないぜ。もう少し付き合って貰おうか」
    「ふふふ、そう来ないと」
     少女は咲哉の攻撃を腕で受け止め、逆の手で攻撃を放つ。咲哉と少女の血が地面を濡らす。
    「大丈夫です。回復、をします」
     それを見た桜華が咲哉を回復する。そのタイミングを見計らった様に彼女のビハインドが宙を駆け、少女を攻撃する。その隙に咲哉は少女を蹴り上げ距離を取る。
    「ねえ、理央。聞こえる? 大丈夫、理央はまだ、大丈夫だから」
     夜月の言葉と笑みは意識の奥に閉じ込められた佐月理央に向けて、攻撃は662に向けて鋭く突き刺さる。
    「きっと、これから、楽しいこと、いっぱい……あるよ。一緒に探して……みない?」
     蓮も口調は柔らかいままだが、顔は能面の様に表情を変えずに武器に闇を宿して力任せに殴り付ける。
    「少し煩いな、君達は」
     少女が不快そうに唇を歪める。目が灼滅者達を素早く見て、標的を探す。
    「――そうだ」
     ふふ、と少女は笑い標的へと駆ける。
    「あなたも「理央」って言うんだ? 私と同じだね」
     理央の背後で、少女の口調の662が笑う。
    「ねえ、理央は二人も要らない……そう思わない?」
    「――っ」
    「逃げろ!」
     仲間の叫び声と、佐月理央が理央の背中を撫でるのはほぼ同時。但し、撫でるように見えたのは見た目だけ。その威力は理央の生命を奪うのに充分な威力を持っていた。
     ――しかし。
     倒れた理央にはまだ息がある。それを見て少女は不服そうに鼻を鳴らし、理央の血に塗れた手をぺろりと舐める。
    「……おかしいなあ。絶対に殺ったと思ったのに。まあ良いか。……次で仕留める」
     振り上げる少女の手が止まった。
    「――……。オネガイ、ワタシヲ、コロシテ――チッ、まだ意識が残っていたのか!」
     殺意に満ちた表情の中でひとつだけ殺意とは異なるモノが見えた。それは涙。血に染まった顔を、少女の流す涙が一筋分だけ洗い清める。
    「佐月理央」は、意識の内側から「662」を少しでも出し抜く機会を窺っていたのだろう。
     仲間に支えられ、荒い呼吸をしながらも理央が立ち上がる。
    「僕はこの程度じゃ死なない。だから、君は自分の闇と戦って、君を取り戻すんだ、理央!」
     二人の「理央」が対峙する。識守理央を見つめる佐月理央の目から涙が止めどなく流れる。
    「オネガイ……ワタシ、ヲ、コロシテ……」
    「――死なせないよ。そっち側には行かせない」
     咲哉の重い一撃が少女の身体を射抜く。
    「アリガトウ」
     倒れながら微笑む少女の顔は「佐月理央」の顔だった。


     一番深手を負った理央の治療も済み、少女の傷も癒した一行は只ひたすら待っていた。「佐月理央」が目覚めるのを。
     倒れる直前の少女は完全に自分を取り戻していた。目覚めなければおかしい。
     しかし、彼女は眼を開かない。
    「救えた筈……ですよね? 何故目覚めないんでしょう?」
    「大丈夫。きっと、疲れてるだけなんだよ」
     不安そうに言う桜夜をなだめる様に夜月が微笑んで見せるが、もしかしたら、救えなかったのでは無いかと、最悪の事態がちらりと脳裏をかすめ、慌ててそれを打ち消す。
     ヘカテーが少女の頬にそっと触れ、体温があるかを確認する。
    「呼吸もあるし、体温だって暖かい。そろそろ目覚めるだろう」
    「……。もしかして」
     希が何かを思い付いたようだ。おもむろに少女の前で膝を付き――、
    「おはよーー!!」
    「ひぁぁ!?」
     奇妙な声と共に佐月理央が飛び起きた。
    「あー……、やっぱなあ。もしかして自分が死んでるって思い込んでるんじゃないかな、って思って」
     まさか、そんな理由で――と誰かが言いかけた時、
    「え? え? なんで? 私、死んだんじゃないの?」
    「……」
     希の大胆な推理は意外にも大当たりだったらしい。脱力感が灼滅者達を襲うが、それ以上に彼女を救えたという事実が嬉しかった。
    「今まで、お疲れ様でした。 頑張りましたね。すごい、と思います」
    「ええ? な、何?」
     桜華が少女をそっと抱きしめる。状況が掴めずおたおたとする少女を見て、皆の顔に自然に笑みが溢れてくる。
     混乱する少女をどうにかなだめ、戦闘前に簡単に説明していたダークネスや学園の存在を改めて説明する。
    「そんな事が現実にあるなんて……」
    「もう分かってるんだろ? 君は既に非日常へと足を踏み入れている。……戦いは好きか? 刺激が欲しいなら学園に来ればいい。まぁ君の人生だ、好きに決めると良いさ」
     少女の呟きを聞き、咲哉が口を開く。
    「戦うべきは人の心に潜む闇なんだ。こうして立ち向かえば誰かを救うことができる。今度は、君が灼滅者として誰かを助ける番だ」
     同じ名前を持つ理央に声を掛けられ、少女は暫く悩む素振りを見せる。
    「ほら、あたしらと来れば受験勉強もしなくていいんだぜ? エスカレーター式だからな」
    「本当!?」
     希の囁きに少女の目が輝く。
    「そこまで受験勉強が重荷だったか……」
     ヘカテーが苦笑いを漏らすが、希と少女には聞こえなかったようだ。何やら楽しそうに盛り上がっている。
    「そうと決まれば、新しい灼滅者の誕生を祝して、どこか食べに行きませんか?」
    「さんせー!」
     桜夜の提案に、希と少女が嬉しそうに両手を上げる。どうやらすっかり意気投合したらしい。
    「あ……ずるい。……私も」
     並んで歩く希と少女を見て、蓮が少女と腕を組もうとする。それに少女は少し驚いた様な表情を見せたが、嬉しそうに蓮に笑いかける。
     もうここに、血を求める恐ろしい怪物はどこにも居なかった。
     その代わりにちょっぴり勉強が苦手な灼滅者が、今日、新しく誕生した。

    作者:呉羽もみじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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