混戦の群馬密林~混沌の向こうに

    作者:長野聖夜


    「皆、お疲れ様。もしかしたら皆の中にいるかもしれないけれど、群馬密林を探索していた皆の仲間が有力な情報を持って帰還したよ」
     北条・優希斗(思索するエクスブレイン・dn0230)が思案気な表情のままに告げた。
    「群馬密林の地下にアガルタの口の入り口があって、そこに向かってアフリカンパンサーが、ドーター・マリアに接触しようと配下を送り込んでいたのが判明したんだ」
     結果は探索している灼滅者達の活躍により、六六六人衆とご当地怪人が戦闘を行い、ご当地怪人が敗北して死亡している。
    「ただ、使者として派遣したご当地怪人を殺されたから、結果として群馬密林でアフリカンパンサー率いるご当地怪人と、ドーター・マリア率いる六六六人衆が、一触即発の状況で睨みあうことになった」
     とは言え、これはあくまでも睨みあいで在り、戦端が切られる様子は無い。
     あくまでもアフリカンパンサーはドーター・マリアと同盟を結びたいのだから。
    「此処からが本題だ。この状況を知ったナミダ姫が戦いを仲裁すべくスサノオの軍勢と群馬密林に入ってきている」
     彼女の今までの外交手腕を疑う者はいないだろう。
     このままいけばスサノオ達によってこの一触即発の状態が調停されドーター・マリアはスサノオの傘下に入り、ナミダ姫とアフリカンパンサーの協力関係が強くなってしまう。
    「こうなってしまったら、スサノオの戦力は更に増強されてしまう。皆には。スサノオによる調停が始まるよりも前に戦闘に介入してこの状況を利用して皆が有利になる状況を作り出すか、或いはその混乱を利用して有力な敵の灼滅を行って欲しい」
     何処か複雑そうな表情で告げる優希斗に灼滅者達は其々の表情で返事を返した。


    「現在、ご当地怪人と六六六人衆は互いに睨みあっている状態だ。だから、130名程度の戦力であれば、気づかれずに近づくことが可能になる」
     灼滅者達が戦場に近づき、スサノオの軍勢の到着までに使える時間は12分程度。
     更に言えば、スサノオの軍勢の進行方向も判明している為、彼等の足止めを出来れば、到着を遅らせることは出来るだろう。
    「当然だけど、正面から皆が戦争に介入して戦う程の戦力は無い。だから、皆がどうやって両勢力の戦端を開かせるか、そして戦闘が発生した後にそれを激化させてスサノオの仲裁を失敗させるかが肝になるだろう」
     最低条件は、双方の戦力を減らす事。ただ、その上でドーター・マリアがスサノオの傘下に加わらなかったり、アフリカンパンサーとスサノオの関係が悪化すると言った状況になれば、スサノオとの決戦で大きなアドバンテージになるだろう。
     尚、マンチェスター・ハンマーやジョン・スミスはこの作戦に参加していない。
     あくまでも、ナミダ姫の配下は、壬生狼組をはじめとしたスサノオの軍勢となる。
    「アフリカンパンサーはご当地怪人勢力、ドーター・マリアは六六六人衆の軍勢となる。作戦の組み立てによってはアフリカンパンサーやドーター・マリア等の灼滅は不可能では無いだろうから、状況が許すのならば狙ってみるのも一つの手、だろうね」
     優希斗の言葉に、灼滅者達は其々の表情で頷いた。
    「有力敵を灼滅出来るかどうかはさておき、少なくとも六六六人衆の残党がこれ以上スサノオ傘下に入るのを放置しておくことは出来ない。それだけは何とか阻止して欲しい。……皆の武運を祈っている」
     何処か複雑そうに告げる優希斗の言葉を背に、灼滅者達はその場を後にした。


    参加者
    夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)
    城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)
    柊・玲奈(カミサマを喪した少女・d30607)
    白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)
    荒谷・耀(一耀・d31795)
    貴夏・葉月(勝利と希望の闇中輝華イヴ・d34472)

    ■リプレイ


    「一触即発ってところだな」
    「ええ、そうね」
     白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)がダブルジャンプで登った木の上から偵察を行いながら呟くのに荒谷・耀(一耀・d31795)が僅かに翳りのある微笑を浮かべて頷く。
    「全く都合のいい誤解をしてくれたものね」
    「荒谷……まあ今更何かを言うつもりは無いが、お前……」
     耀の呟きに微かに眉を顰める明日香。
    「あの時の二の舞は御免なのよ」
     ――あの時。
     それは、アッシュ・ランチャーとの戦いの時。
     一般人は灼滅者達の脅しにあっさりと屈し、自分達の戦艦を突撃させた。
     そしてそれを扇動したのは灼滅者。
     自分達が守り続けてきた筈の一般人達がちょっとしたことがあればすぐに手の平を返すと理解し、明日香が一般人を見限ったあの時に耀に与えた絶望は計り知れなかったのかもしれない。
    「明日香さん! 耀ちゃん! 様子はどう!?」
     柊・玲奈(カミサマを喪した少女・d30607)の下からの声に明日香達は地面に降りてきた。
    「焚き付けやすそうな前線はあったの?」
     夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)の問いかけに、耀が無表情に頷く。
    (「耀ちゃん……」)
     かつて純粋に笑っていた耀と異なる今の彼女に務めて明るい笑顔を向ける玲奈だったが、その心中は、士元が察するにあまりある。
    (「どうして、こうなってしまったのだろうな?」)
     貴夏・葉月(勝利と希望の闇中輝華イヴ・d34472)が心中で密かに思う。
     本心を言ってしまえば、彼女がどうなろうと全く関係ない。
     ただ葉月自身の在り方と、耀の今の在り方に以て非なる何かを感じてはいるが。
     しかし、葉月がそれを伝えたところでどうなると言うのだろう。
    「レイナ」
     白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)が玲奈に話しかけたのはその時だった。
    「夜奈ちゃん、どうしたの?」
    「ヤナは、ヒカリやアスカが、どうしたいのかは、分からない。けれども、レイナが、ヤナと同じで、みんなで一緒に、帰りたいと思っているのは、分かる。だから……」
    「ありがとう、夜奈ちゃん。そうだね。皆で帰らなきゃ駄目だもんね」
     夜奈の言葉に玲奈が微笑を浮かべる。
     何度も共に戦いを潜り抜けてきた仲間達だ。
     だからこそ、皆に安心して背中を任せて貰えるように皆を守る。
     そう思い直した玲奈が先頭に立ち、森の小路で道を切り開き始めた。
    「皆の中には、ヤナも入っていることだけは忘れちゃ駄目よ」
    「うん。ありがとう、チハヤ」
     城守・千波耶(裏腹ラプンツェル・d07563)が肩を叩くのに夜奈が笑顔になる。
     そんな千波耶達の姿を見ながら、士元が玲奈の後ろから森の子路で周囲の草を切り払い移動しやすい状況を作りながら軽く肩を竦めた。
     見届けられるだろうか。明日香達のすれ違う想いの結末を。
    「まあ、その為には先ずは目の前の状況を生かす必要があるわけなんだけどね」
    「そうだな。その為に俺達は、俺達で出来ることをやる必要があるだろう」
     士元の呟きに周囲を警戒していた鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が同意する。
    (「全く、厄介な話だとは思うけれどな」)
     此処最近の仲間達の活躍によりご当地怪人達とは比較的良好な関係を築いていたのだがその努力が水泡に帰してしまいそうな不安のある今回の作戦は複雑な気分だ。
     出来ることなら穏便に話し合いで済めばとも思うのだが、以前同盟を結ばなかった時点で現状ご当地怪人は敵でもある。
     スサノオ達にリベレイターを照射すればこの可能性は十分にあった。
     そう、目前にある現実こそが。
    (「それならば、全力で事に当たる」)
     今出来ることをやり尽くし、足掻いて足掻き続けて前に進む。
     それが、脇差の覚悟だった。


     ――程なくして。
     今にも戦端を切り開きそうになっているご当地怪人の一群に脇差達は接触した。
    「むっ? お前達は……」
    「見ての通り、灼滅者よ。今日はお礼を言う為に来させてもらったわ」
    「それと、恩返しのためにです」
     耀の挨拶に同意しながら葉月が告げる。
    「恩返し、だと……?」
    「ええ。貴方達の仲間の犠牲のお陰でわたし達の仲間は救われたのだから」
     興味を持ったか問いかけてくる怪人に千波耶がそう告げると。
     尊い犠牲と言う単語にご当地怪人達が反応した。
    「我等が同胞、モグラ怪人の事か……!」
    「ええ、その通りです。皆さんのお仲間が、心無い六六六人衆によって殺されたことを、私達は誠に遺憾に思います。せめて、恩返しにと皆さんの助太刀に来たのです」
     口調こそ冷静だがやや熱を籠めて騙る葉月に周囲の怪人達がざわめいている。
    「そうだ……奴等は我等が同胞を殺した! モグラ怪人はとてもいい奴だった! それを何の見境もなく奴等は……!」
    「そうそう。六六六人衆って問答無用で襲い掛かって来るところあるからさ。このままじっとしていたら、もしかしたら皆に先に攻撃を仕掛けて来るかも知れないよ? あいつら、そういう奇襲とか大好きだからねー」
     玲奈の言葉にここぞとばかりに脇差が畳みかけた。
    「しかもだ。もし仮に奇襲をしてこなかったとしても今度はナミダ姫の軍勢が迫っている。それが来たら、戦況が動く可能性もある。俺達やお前達にとって不利な様にな」
    「なんだと?」
     脇差の告げた事実にご当地怪人が驚いた表情になる。
    「今、ナミダ姫は六六六人衆の残党を次々に取り込んでいる。と、言うことは……」
    「まさか、貴様はこう言いたいのか? ナミダ姫の軍勢は、六六六人衆に加勢する為に此方に向かってきていると?」
    「ええ、わたし達の情報が正しければそうなるわね。スサノオ達の軍勢が来てしまったら、数の優位もひっくり返ってしまうわ」
     脇差の告げた真実。
     だがその中に虚偽を組み込めば騙すのは容易い。
     怪人達の様子を見てそう判断した千波耶は、脇差の言葉を後押しするように告げた。
    「くっ、そういうことならば……こんなところで暢気にしているわけには行かないではないか!」
     ご当地怪人の一人が呻き、周囲の怪人達にもその何時援軍が来てもおかしくないと言う事実が恐怖となって伝染していく。
    「でも、今なら向こうの方が劣勢だからね、チャンスだとオレは思うよ」
     士元の告げた其れが決定的になり、周囲のご当地怪人達が闘志に燃え始める。
    「それじゃあ、私達が恩返しのために先陣切って六六六人衆と戦うから、皆も続いてね!」
     玲奈がそう言って、六六六人衆に向かって走り出し、其れに煽られるようにご当地怪人達も六六六人衆の群れに向かった。


    「ここまでは、作戦どおり、だね」
     玲奈に並走しながら夜奈が呟き、千波耶もそうね、と頷く。
    「ご当地怪人達が単細胞で助かったな」
    「末端だからでしょ? 初歩的な扇動に引っかかってくれるなら、それでいいわ」
     明日香の呟きに耀がさらりと返し暁を構えて六六六人衆達の集団に向かう。
    「敵襲だ、掛かれ!」
     指揮官と思しき六六六人衆の一人が檄を飛ばし、ご当地怪人達とぶつかる間に檄を飛ばしている指揮官の懐に脇差が飛び込み黒い影の刀【黙】でその足を斬り裂いた。
    (「イヌガミヤシキ……俺は……」)
     ガイオウガの尾となったかの者との絆を思い出し、複雑な胸中をその胸に抱きながら。
    「ちっ、灼滅者とご当地怪人が同盟を結んだのか?!」
     慌てる様子の六六六人衆に明日香が不死者殺しクルースニクを横薙ぎに振るい不敵な笑みを浮かべている。
    「まあ、そういうことだ。分かったら、とっとと消えろ!」
     残虐に胸を斬り裂かれる六六六人衆がお返しとばかりに、明日香の懐に飛び込み、その腕に仕込んでいた刃を放つ。
     玲奈が割って入って漆黒の刀『怨京鬼』でそれを受け流すのに合わせて士元が光る輪を放って玲奈が受け流しきれなかった衝撃を癒していく。
    「そんな傷じゃ、オレ達は倒せないぜー」
    「お返しだよ!」
     傷を癒されながら返す刃で玲奈が袈裟懸けに敵を斬り裂き合わせる様に、耀が周辺の樹から飛び跳ねて空中から『暁』を振るい、明日香の穿った傷を更に深く斬り裂いている。
     自分達の隊長が狙われているのに気が付いたか、2体の六六六人衆が此方に向かって駆けてきて、後方から貫くような殺気を飛ばしてくるが……。
    『我が名はイヴ・ヴィクトリア・エデナ。勝利と……希望の娘』
     呟きと共にその背に翼を広げた葉月が翼を羽ばたかせて美しき風を呼び込み、刺すような殺気の片方を吹き飛ばす。
     もう片方の殺気が後衛に直撃しかかるが、葉月の前に影の様に現れた菫さん、士元の前に夜奈により被害が最小限に食い止める。
    「みんなは、ヤナが守る、から」
     夜奈が藤紫チューリップの留め具を外した月白の帯『花顔雪膚』を射出。
     月光の煌めきを感じさせるそれが夜奈の脇を抜けて攻撃を集中させていた指揮官らしき六六六人衆を締め上げ、ジェードゥシカが追随するように手に持つ杖で六六六人衆を叩きのめし、菫さんが手に持つ漆黒の輝きを持つ槍で指揮官を貫いている。
    「これでどうかしら?!」
     猛打を踏み止まり、ふらつく指揮官に向けて、千波耶が『Comet tail』の金緑石の刃の先端から黄色く光り輝く弾丸を撃ち出し、敵を射抜き止めを刺した。
    「た、隊長……?!」
    「え、ええい、おのれ!」
     目の前で指揮官を灼滅され反撃をしようとする六六六人衆を轢殺す様に、ご当地怪人の部隊が殺到した。
    「モグラ怪人の恨み思いしれ!」
    「ウオオオオオッ!」
     拡大していく戦線の中で脇差が注意深く周囲の状況を観察。
     まだ比較的戦いが膠着状態となっている箇所を確認し割り込みヴォイスで叫ぶ。
    「あっちにもいるぞ! 放っておけば仲間が危ない!」
    「おお!」
    「今、行くぞ同胞よ!」
     脇差に煽られ向かっていくご当地怪人達を見ながら、士元も又、まだ周囲で戦い続けている怪人達を煽る様に呟いている。
    「同胞の敵討ちなのに、灼滅者に後れを取ったら誇り高きご当地怪人の名折れじゃない?」
    「そうだ! 俺達の力を見せてやるぜ!」
     そのまま喝采を上げ突撃していくご当地怪人達を耀が見つめる。
    「さて、次に行くわよ。この調子で六六六人衆の指揮官を潰していけば、戦線が拡大するわ」
    「どうせなら、収拾がつかなくなるくらいになればいいんだけどな」
     明日香が告げながら木々を飛び回り、次の六六六人衆の部隊へと向かっていくのを、葉月達は追うのだった。


    「この程度で私達を倒すことは出来ませんよ」
    「くっ……くそっ!」
     耀に向けられた攻撃から玲奈が庇って受けた傷を葉月が闇夜を照らす天使の輪……angel ringを手から撃ち出しその傷を癒す。
     ご当地怪人達の扇動に成功した千波耶達は怪人達の群れの中に紛れ込み、ゲリラ戦による短期決戦で六六六人衆の各部隊を率いる指揮官を灼滅し、六六六人衆の軍勢を確実に後退させていた。
     ジェードゥシカが杖で殴りつけるその隙をついて夜奈が、スイートピーブローチをきらきらリボンで結ぶ瑠璃色ブーツ、ひとつ星の幸福で舞うように走り、蒼白い炎を発光させながら六六六人衆を蹴り上げる。
     空中へと放り出されて身動きの取れなくなった六六六人衆との間合いを千波耶が詰め、六六六人衆を沈黙させるべく、Silencerを起動させ圧倒的な爆発と共に止めを刺した。
    「かなり、押し返せてきたわね」
    「そうだね、チハヤ」
    「ですが、油断は禁物ですよ」
     再び現れた六六六人衆からの明日香への攻撃を、菫さんに指示を出して庇わせながら葉月が夜奈と千波耶を宥めるように告げる。
    「そうだね、夜奈ちゃん、千波耶さん、葉月さん。もう少し頑張って戦線を拡大させるよ!」
     怨京鬼……不吉な名とは裏腹の暖かな風を呼び起こしながら玲奈が自分達の傷を癒していた時……。
    「いや、これ以上は危険そうだよ玲奈センパイ」
    「この足音……近いぜ」
     それまでご当地怪人を煽りつつ、退路を確保していた士元、そして後衛から戦局を監視しながら攻撃を繰り返していた脇差が同時に渋い顔になりながら告げた。
    「鈍? どういうことだよ?」
     目の前の六六六人衆に大上段から斬りかかった耀に合わせて対ヴァンパイア用に作られた、とされている鎖状のダイダロスベルト、縛鎖グレイプニルを放って六六六人衆を締め上げながら明日香が問いかけた時。
    「……増援、ですか」
     後ろからの新たな軍勢と思われる足音を瞳ではなく気配で察し、葉月が淡々と呟いた。
     しかもその軍勢の殺気は、六六六人衆ではなく、自分達に向けられていることを直感出来る。
    (「アフリカンパンサーの暗殺は失敗したようだな」)
     経緯を何となく察し、葉月の内心の呟きを裏付ける様に煽られて戦っていた筈のご当地怪人達に本隊のご当地怪人が声を掛けた。
    「大変だ、お前達! 武蔵坂の灼滅者がアフリカンパンサー様の暗殺を狙って攻撃してきたんだ!」
    「……なんだって?!」
     煽られ、戦い続けていたご当地怪人の一人がその言葉に足を止める。
     更に、それまでじりじりと後退を続けていた筈の六六六人衆達も不意に足を止め、乱闘していたご当地怪人へと声を掛けている。
    「お前達も聞いたかもしれないが、お前達の主、アフリカンパンサーが灼滅者に狙われた。襲撃者は撃退したが、他にも灼滅者が紛れ込んでるかもしれないので捜索せよ、との話だ。今は、私達が争っている場合ではないのではないか?」
    「……! なんだと、じゃあ、俺達はあいつらに……!」
     六六六人衆の言葉に、ご当地怪人の軍勢が動きを止める。
     その様子を見て、形勢不利を悟った士元が咄嗟に声を掛けた。
    「逃げるよ! このままご当地怪人と六六六人衆に囲まれたら逃げ道がなくなる!」
    「荒谷と白石は木々を伝って退け!」
    「了解よ」
    「もう少し、暴れたかったけどな」
     耀と明日香が其々に脇差に返事を返してダブルジャンプで木々を伝って速やかに撤退する。
    「柊は夏雲と一緒に道を切り開くのを頼む!」
    「分かったよ、脇差さん!」
     それを見届けながら脇差が声を張り上げるのに玲奈が頷き士元が確保しておいてくれた逃走経路を確実なものにするべく士元と共に道を切り開いていく。
     士元達が退路を確保する間、夜奈、千波耶、菫さんが殿を務め、葉月がその支援に回り、ジェードゥシカが牽制の為に切り払われた周囲の木々をポルターガイスト現象を起こしてダークネス達に叩きつけていた。
    「他の皆は、ちゃんとそれぞれの目的地に向かえたかな?」
     その音を聞きながら玲奈が、ポソリと呟く。
    「分からない。でも、ここにヤナ達がのこっても、みんなを、危険にさらすだけ、だから」
     殿を務めていた夜奈がそう告げるのに、千波耶が頷く。
    「後は他の皆次第よ、玲奈ちゃん」
    「そうだね、夜奈ちゃん、千波耶さん。ありがとう」
     千波耶の柔らかな言葉に頷き玲奈は士元と共に退路を確保する。
     そこを足掛かりに葉月達は密林の中に紛れ込み……まるで、周囲の風景に溶け込むかの様に姿を消した。

    作者:長野聖夜 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月8日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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