混戦の群馬密林~二兎を追う?

    作者:九連夜

    「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。群馬県で新たな動きがありました」
     灼滅者たちに向かって、いつも通りの柔和な表情で語りかけたのは五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)。
     先日、突如出現した群馬県内の密林地帯――六六六人衆、ドーター・マリアの仕業とみられる――を探索していた灼滅者が、有力な情報を持って帰還したのだという。
    「群馬密林の地下に、先日の『グラン・ギニョール戦争』の折にも出現した密林洞窟『アガルタの口』の入り口がある事。ご当地怪人のアフリカンパンサーが、ドーター・マリアに接触しようと配下を送り込んでいた事。わかったのはその2点です。本来、学園にとっては不利な流れだったわけなのですが……」
     だが探索していた灼滅者の活躍により、当地の六六六人衆とご当地怪人が戦闘し、ご当地怪人が敗北して殺される事態が発生している。そのおかげで群馬密林ではアフリカンパンサー率いるご当地怪人と、ドーター・マリア率いる六六六人衆が、一触即発の状況で睨み合う事になっているらしい。
     こほん、と小さく咳払いをして姫子は状況説明を続けた。
    「ただし今のところ、両者とも自分から戦端を開くつもりはないようです。さらにスサノオの姫・ナミダが、戦いを仲裁すべく軍勢を率いて群馬密林に入っており、このまま放っておけば仲裁を受けたドーター・マリアはスサノオの傘下に入り、ナミダ姫とアフリカンパンサーは協力関係を強くするという結果になってしまうでしょう。スサノオとの戦力を大きく増強する事になりかねないこの流れは阻止しなければなりません」
     そのためには灼滅者たちの工作が必要になる。具体的にはスサノオの調停が始まる前に戦闘に介入、両勢力が全面戦闘を行うように仕向けること、または戦闘が開始されたらその混乱を利用して有力な敵の灼滅を狙うことなどだ。
    「ご当地怪人と六六六人衆は互いに睨み合っているので、全体で130名程度の戦力であれば気づかれずに近づく事が可能だと解析されています。そして灼滅者が戦場に近づいてからスサノオの軍勢が到着するまではおそらく12分程度、ただしスサノオの軍勢のルートは判明しているので、うまく戦力の一部を割いて足止めをかければ到着を遅らせられるかも知れませんね。ですがいずれにしても……」
     投入できるこの戦力は、正面から戦争に介入して両者を、あるいはスサノオの軍勢を叩き潰せるほどの力はない。
     いかにして両勢力の戦端を開かせるか。また戦闘が発生した後に激化させ、スサノオの仲裁を失敗させるか。そこが作戦を成功させる肝になってくる。
    「双方の戦力を減らす事ができれば学園的には作戦は成功といえますが、さらにドーター・マリアがスサノオの傘下に加わらない、またはアフリカンパンサーとスサノオの関係が悪化するといった状況を生み出せれば、近い将来に発生するスサノオとの決戦での大きなアドバンテージとなるでしょう。作戦の立て方によっては各勢力の有力敵の灼滅も不可能ではありません。作戦全体を成功させることのほうが重要ですが、状況が許せば狙ってみても良いでしょう」
     幸い、この戦闘に加わるのは「ドーター・マリア配下の群馬密林の六六六人衆」「アフリカンパンサー配下のご当地怪人たち」「ナミダ姫配下のスサノオ軍(壬生狼組中心)」のみであり、マンチェスター・ハンマーなどの厄介な敵の介入はないと予測されている。
     そう説明すると、姫子は灼滅者たちに向かってにっこり笑ってみせた。
    「ダークネス同士が戦い合って戦力を減らしてくれれば、それだけ私たちのなかから犠牲者が出る危険が減ることになります。身体よりも頭の回転が、個人の活躍よりも参加者同士の連携が必要な難しい作戦ではありますが、皆さん自身と学園の将来のためにも、どうか健闘をお願いします」


    参加者
    刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)
    松苗・知子(吸血巫女さん・d04345)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)
    カンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)
    松原・愛莉(高校生ダンピール・d37170)

    ■リプレイ

     初冬の肌寒さを帯びた空気のなかに、まるで狂い咲くかのように鮮やかな緑が映えていた。
     うかつに足を踏み入れれば方向感を失う熱帯のジャングルはしばしば緑の地獄と形容されるが、人ならざる力で群馬の地に生み出された異形の密林もまた、常人のうかつな訪れを拒む威容を寒空の下に晒していた。
     だがある種のものたちにとってはその地もまた、気軽な訪問が可能なただの遊び場に過ぎない。たとえば彼女のような者にとっては。
    「敵、いないね。もっと先みたい、ねえ」
     生い茂る草木をかき分け、というより蹴散らしながら松苗・知子(吸血巫女さん・d04345)は密林の中を元気に歩み続けていた。
    「……ん、元気ないみたいね。だいじょうぶ?」
     ふと気づいたように足を止め、そんなことを口にしながら、少し遅れてついてきていた松原・愛莉(高校生ダンピール・d37170)のどこか浮かない顔をのぞき込む。
    「うん、ちょっとね。でも平気だから」
     愛莉は無理な笑顔を浮かべて答えつつ、心の中で溜息をついた。かつてナミダ姫と会って直接言葉を交わした彼女にとって、間接的にとはいえ彼女と敵対する今回の任務は非常に気が重いものだった。
     できればまた会いたい。そしてかつて尋ねたことを今一度尋ねたい。
    (「灼滅者とダークネスには……いや、よそう。確かに心中は複雑だし、どうも嫌な予感がするけれど」)
     今はやるべきことをやるだけ。そう心を決めて前を向いた彼女の横では、刻野・晶(大学生サウンドソルジャー・d02884)とカンナ・プティブラン(小学生サウンドソルジャー・d24729)が気楽な感じで言葉を交わしていた。
    「ひとまず関係をこじらせて、かつ、スサノオに交渉のタイミングを与えない。肝心なのはそこだな」
     ぶっきらぼうな言葉で今回の戦術目標を確認する晶に向かって、カンナはうむ、とうなずき返した。
    「まあ、ご当地の御仁には悪いがスサノオに戦力を拡大させる訳にはいかぬからなあ……おっと」
     ひっかけそうになった足下の枝をESP「隠された森の小路」で押しのけると、彼女は小さな肩をすくめて見せた。
    「此れが原因で友好が壊れる可能性が高いのは正直きついが、状況的に他に取りうる作戦が無い以上はの」
     これまでいろいろありはしたが、武蔵坂とご当地怪人たちとの関係はそれほど悪くはない。ナミダ姫がドーター・マリア勢力を取り込むことを防ぐために、それをあえてぶち壊すことが果たして正解か否か。その答えはやって見なければわからないのだろうと、彼女は思った。
    「ああ。いかに六六六人衆と噛み合わせるかだ。ここの混乱が深ければ、収めるのは困難で……」
     考えながら言葉を続けようとした晶の足が止まった。入れ替わるように脇から別の人影が進み出る。
    「だいたい予想通りの場所ですね」
     事前の打ち合わせで使ったものか、幾つもの印がついた地図をポケットにしまい込みながら、桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)は皆より少し先の大木に歩み寄り、茂るその葉の下に身を隠した。細めた眼で草木のカーテンの向こうを透かし見、ややあって呟くように後方の仲間達に告げる。
    「二人組。そんなに強く無さそう。計画通りでいきましょう」
    「了解。じゃあ、まずは灼滅しない程度に」
     低い声と無愛想な顔で応じた槌屋・透流(ミョルニール・d06177)は、すでにガトリングガンを手にしていた。
    「ぶっ潰す」
    「あ、先陣は譲れない、なのね」
     その身を深紅の霧状のオーラに包みながら、知子が笑う。
    「では」
     晶が振り向いた。
    「うん」
     愛莉が身構える。
    「始めるかの」
    「…………」
     シロフクロウの面を被りつつ歩むカンナに無言の夕月が続き。
     そして。
    「ぶち抜く!」
     密林の木々を揺らし響き渡る透流の凜々しい叫び声と共に、灼滅者たちは敵に向かって殺到した。

    ●偽りの激闘
     灼滅者とダークネス。互いにバベルの鎖を纏う者同士の戦闘において完全な不意打ちは困難だ。今回はエクスブレインの解析により「灼滅者勢力」の隠蔽には成功しているものの、個人戦闘レベルまでそれが通用するかというとある種の運による。この場合、木々の合間を縫って殺到する灼滅者の刃が届くよりも、六六六人衆たちが襲撃に気づく方がわずかに早かった。
    「な、こいつら!」
     強面の巨漢に小柄な優男風の青年、その二人組のうち優男のほうが声を上げた。透流のガトリングガンの斉射をかろうじて横っ飛びでかわし、だがその直後に回り込むように襲いかかった知子の拳をまともにくらって弾き飛ばされた。
    「ご当地怪人への借りを」
     離れた場所から朗々と宣言したのは晶。手にした弓が限界まで引き絞られ、つがえた矢が彗星の輝きを宿す。
    「今こそ返す!!」
     誤解を生むための虚言と共に放たれた矢は、過たず巨漢の肩に命中する。さらに愛莉のダイダロスベルトの煌めきが知子の身体を包み護るのを見た巨漢が吠えた。
    「こいつら灼滅者か!? おい!」
     一撃一撃に致命の威力はないが間断なく畳み込まれる攻撃と隙の無い相互連携。灼滅者特有のその戦闘方法に見覚えがあったらしい。
    「わかったっ!」
     即座に優男が踵を返す。走り出した。密林の奥へ。おそらくは敵の本拠「アガルダの口」がある方へと。
    (「!!」)
    (「どうする?」)
     夕月とカンナは一瞬目を見交わし、即座に決断した。二人組の偵察役なら片方が足止めを担当し、片方が報告に戻るのは常道だ。だが報告役を深追いして敵側に近づけば、作戦計画そのものが崩れかねない。
     結論。極力、欺瞞情報を与えるようにする。
    「はっは! 我ら連合軍の手から逃れられると思うてかぁ!」
     カンナはわざとらしく笑ってみせた。シロフクロウの面に白い羽の、いつもの自分の戦装束をご当地怪人のコスチュームと見間違ってくれるようにと祈りつつ、巨大なクロスグレイブを持ち上げて逃げる優男の背に光弾をぶちかます。
    「ティン、やって」
     自分がイロモノご当地と見間違われるのは無理だろう、変装でもしておくべきだったかと考えながら、夕月は愛犬に優男の後を追わせた。入れ替わるように飛び出してきた巨漢の、体当たりまがいの一撃を全身で受け止める。
    「こ、こいつ、強い!」
     わざとらしく驚いて見せながら夕月は大きく跳び下がった。木々の間を擦り抜けさらに後退。案の定、敵は追ってきた。
    「行けそうだね、このまま……」
    「了解。意外と簡単だな」
     仮面のビハインドを敵に向かわせた晶と、射撃の間合いを取るために後退した透流もすれ違いざまに小声で言葉を交わす。もともと個体戦力では灼滅者はダークネスに少なからず劣っている。調子づいた相手の勢いに押されてずるずる自然に下がることは、演技をするまでもなく容易なことだった。
     そのままさらに数合、刃が交わされ密林の中に戦いの音が響き渡る。そして最初に後方の変化に気づいたのは、仲間たちの癒やしを担当しつつ周囲の状況に気を配っていた愛莉だった。
    「もうダメよ、みんな、退いて!」
     わざとらしくならないように叫んで背を向ける。総崩れの演出だ。
    「うん、味方のいる方に退きましょ!」
     知子は叫び返し、敵に背は向けぬまま後退してしんがりのポジションについた。
    「逃すかよ!」
     突進と共に繰り出された蛮刀を受けきれず浅手を追いながら、知子はその勢いに押されるようにさらに下がる。
     そのときだった。
    「何だ?」「何だ?」「何だ?」
     木々の影から現れたのは、餃子に無理矢理目鼻をつけたような三つの巨大な頭部。典型的なご当地怪人としてその名も高き宇都宮餃子怪人だ。
    「助かったあ。ゴメン、あれお願い!」
    「悪い、頼む」
     夕月と透流が即座に駆け寄り、軽く頭を下げる。
    「お、おう!? いったい何が……」
     密林の中、突如現れた女の子二人から助けを求められる。いきなりマンガ的なシチュエーションに出くわした怪人たちは、とりあえず状況の把握につとめようとした。が、そのうちの一体がいきなりのけぞった。敵の増援と見誤った巨漢が放つ殺気、要は「殺戮衝動」の威力をまともにくらったのだ。
    「っ! 兄弟!」
    「兄弟! おのれぇ!」
     怪人たちが激昂して即座に巨漢に向かっていくのを横目で見ながら晶が応援するように叫んだ。
    「アフリカンパンサー『も』狙われている、気をつけろ!」
     声に載せたエンジェリックボイスの力が一撃をくらった餃子怪人の怪我を癒やす。
    「助かったのだわ!」
     振り向きざまに敵に導眠符を投げつけ、知子もそのまま離脱を計る。
    「すまんな」
     怪人たちとすれ違いざまに半分本気でねぎらいの言葉をかけつつ、しかしカンナは逃亡の足は一切緩めなかった。そのまま全力で逃げ続けることしばし、やがて激闘の音は密林の奥に消えた。
    「とりあえず、成功ね」
     足を止め、遙か後方を振り返り、わずかに上気した表情で晶が言った。
    「いけそうね」
     知子と夕月が負った軽い傷を相棒のナノナノ「なのちゃん」で手分けして癒やしつつ微笑と共に愛莉が応じる。
    「少し回り込んで進みましょう。状況に変化がなければ、同じ手で」
     再び地図を引っ張りだして進行方向を指示した夕月に他の皆も頷いて。
     そして再び密林をかき分けて進むこと数分。
    「今度はひとりぼっちかえ」
     カンナが透かし見た木々の合間。うろついていたのは、単独行動の六六六人衆だった。
    「方針に変更はなし、だ。ぶっ壊す!」
     宣戦布告の一撃代わりに透流が放った導眠符は、ノコギリのような得物を手にした敵に吸い込まれるように命中した。
    「っっ!」
     いきなり膝を落としかけた六六六人衆にさらに夕月とティンの刃、知子の拳が容赦なく炸裂する。
    「うぐ! き、貴様ら!」
     呻いた敵はそこで皆が思ってもいなかった行動に出た。背を向けて走り出したのだ。
    「敵わぬとみたか。『堕ちたばかり』か何かか? だがのう」
     カンナの眼が細くなった。
    「逃がさぬ」
     淡々とした宣言と共に放たれた光弾が敵の背に炸裂する。
    「背中から撃つのは趣味じゃないけど」
     呟く愛莉の攻撃にも容赦はない。伸ばしたダイダロスベルトが男の肩のあたりを切り裂き、その傷を抉るようになのちゃんのたつまきが命中する。さらに幾つもの攻撃が逃亡を図る男の身体に叩き込まれ、そして最後に。
    「こういう頭を使わない戦いのほうが」
     回り込んだ知子が、明るく笑いながら男の前方に立ち塞がった。自暴自棄に振り回されるノコギリの一撃を、愛莉の援護のかかった左腕で受けとめながら、カウンターで全身のオーラを集中させ、敵の心臓あたりを貫いた。
    「やっぱり楽ねえ」
     言葉が消えたとき、一塊の闇と化した男の姿は密林の中へと溶け込んで消えていた。
    「……ま、これはこれで良し、かな」
     回復役としての出番もほとんどなかった晶が肩をすくめた。偵察に出た仲間が戻らない。きっとやられたのだろう、おそらくはご当地怪人に。そう敵方に思わせることができれば、想定とは違うが十分に成功だ。夕月が頷いた。
    「そうですね。ただし他の班も同じように動いているなら、もうそろそろ」
     こちらの動きが読まれ始めているかも知れない。バベルの鎖の範囲外とはいえ100人近い灼滅者たちの動きとその意図は遠からずバレるだろうと、夕月はシンプルに判断した。
    「うむ。心すべきかのう。だがその時までは」
     カンナは傍らの透流を見上げた。
    「引っかき回し続けるだけだな」
     透流の答えもシンプルだった。

    ●白い炎
     そして6人と3匹の密林の中の作戦行動はさらに続いた。
     次に出会った三人組の六六六人衆には、近づかないようにしてやり過ごした。
     単独行動をしていた壮年の六六六人衆、かなりの手練れで苦戦に陥った敵は、なんとか浜松鰻怪人の一党に擦り付けた。
     さらに次の六六六人衆、軽装の女性二人組との戦闘を始めたときだった。
    「いたぞ」
    「灼滅者だ」
    「狩れ」
     これまでとは違う雰囲気を纏って後方から近づいてきたご当地怪人たち。巨大な眼鏡を煌めかせた「福井鯖江眼鏡怪人」たちは明らかに灼滅者たちを狙っていた。
    「退くよ」
    「わかった。敵中突破、かけるぞ」
     即決した夕月に即座に透流が叫び返し、灼滅者たちは一斉に踵を返した。
    「なっ」
    「お!」
     予想外の動きに慌てて攻撃を繰り出そうとする怪人たちの脇を、あるいは間を攻撃もせずに擦り抜けて、ただ逃げる。彼らが振り向きかけたところへ追ってきた六六人衆二人が激突し、その結果発生した大混乱を尻目に、6人は悠々と逃げ延びた。
    「ついに悟られたか。パンサーを直接狙った班もいたし、まあ当然か」
     速度を緩め、ゆるゆると歩を進めながら晶が苦笑した。心を落ち着けて周囲の気配を探って見ると、静かなはずの密林が、どことなく騒然とした空気に覆われているのが感じられた。学園の意図が悟られたのはさておき、ご当地怪人と六六六人衆の全面戦闘も始まっているのだろう。
    「作戦も成功したみたいだし、この辺が潮時なのね。引き上げましょ」
     知子の元気の言葉に皆が賛同し、再び夕月の先導のもと、安全性が高いと思われる経路をたどって撤退を開始する。
     そしてしばしの時が過ぎ、間もなく密林を抜けようとしたそのときだった。
    「「「!!!!!!」」」
     皆が一斉に足を止めた。
     振り向いた。同じ方向を見つめて。
     密林の彼方、しかしそれほど遠くはないところ。
     そこに急速に巨大な力が膨れあがっていた。いやただの力ではない。空に向かって立ち上り渦巻き荒れ狂うそれは、煌々と輝く白い炎だった。
    「ほう。やったかの。二兎を捨てて、瓢箪から駒を拾いおったか」
     カンナがシロフクロウの面に手をやってどこか満足げに呟き。
    「……嫌な予感が当たった、か」
     愛莉が溜息と共に力なくうなだれた。
    「ナミダ姫灼滅成功、ね?」
    「それしかないだろうな」
     知子の問いと透流の答えは共に簡潔だった。
    「これは……いろいろと動きそうだね」
     戦闘中とは打って変わった大人しそうな顔で考え込みつつ、晶が呟く。
    「なるようになるでしょ」
     夕月の回答もまた明確だった。
     そんな仲間たちを背に、炎のほうに向かって一歩歩み出た愛莉は手を祈りの形に組み合わせた。軽く目を閉じ、心の中でその名を呼んだ。
    (「さようなら、ナミダ姫。『灼滅者とダークネスは同じものなのか』、この問いへの貴女の答えをもう一度聞きたかったのだけれど」)
     ダークネスの各勢力のなかで、例外的に均衡と調和を重んじた彼女はもういない。彼女が持っていたであろう答えもまた、立ち上る白い炎の中に消えてしまった。
     ならば答えは自分で見いだすしかない。
    「そういうことですよね、姫」
     愛莉は口の中で呟き、もう一度今は亡き姫のために祈った。
     そして顔を上げて葬送の炎のように立ち上る白い炎に背を向け、仲間たちと共に歩き出した。決然と胸を張り、一度も振り返らずに。

     そして白い炎に包まれた密林の中から再び、新たな動きが始まる。

    作者:九連夜 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月8日
    難度:やや難
    参加:6人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ