百合展開へ持ってゆく美女

    作者:芦原クロ

     とある露天風呂に、女性が2人、入って来る。
    「わー、広い! やっぱり露天風呂は良いね!」
    「景色も良いし、来た甲斐が有ったねー」
     タオルを巻いて体を隠し、喜び合っている2人は、いつの間に居たのか、湯に浸かっている1人の女性に気づく。
    「あ、ごめんなさい、騒がしかったですか?」
    『いいえ、無邪気でとても可愛らしいと思っていたところよ』
     一糸まとわぬ姿の女性は、思わず見とれてしまいそうなほどに美しい。
     美女は距離を縮め、一般女性の肩に指を這わせ、甘い声で囁く。
    『せっかくの温泉なんだから、こんな邪魔なものは取ってしまって……私と、もっと楽しいことをしましょう?』
    「は、はい……」
    「よ……喜んで」
     美女に完全に心を奪われてしまった一般女性たちは、タオルを捨て、いけない世界へ連れていかれた。

    「……と、いう内容の、ラジオウェーブのラジオ放送が確認されたよ。このまま放っておけばラジオ放送と同様の事件が発生して、一般の女子達が次々といけない世界に連れていかれちゃうよ!」
     須藤・まりん(高校生エクスブレイン・dn0003)は少し赤くなりながらも、必死に灼滅者たちに伝える。
    「この都市伝説は、魅了のような能力を持っているようだね。一般人なら即、心を奪われていけない世界へ連れて行かれちゃうだろうけど、灼滅者のみんななら、完全に心を奪われることは無いと思う……多分。でもこの都市伝説に素肌を触られたら……ど、どうなっちゃうんだろう? これは予知じゃないから分からないことが多いんだ」
     ラジオウェーブのものと思われるラジオ電波の影響により、都市伝説が発生する前に情報を得ることが可能になったが、エクスブレインの予知では無い。
     その上、都市伝説はダークネスとは異なるが、バベルの鎖の効果を持っている為、事件になっても一般人や警察では解決出来ないのが現状だ。
    「男子だけで行った場合、出現しないかも知れないね。もし男子しか集まらなかったら、誰か1人、女装するとか。あくまで予想だけど、もし心を奪われてしまっても、キュアや声掛けなどで我に返るかも! ……それとこの情報は、ラジオ放送の情報から類推される能力だから、低確率だけど予測を上回る能力を持つ可能性が有るかもしれないよ」
     まりんは気をつけるようにと、灼滅者たちに伝える。
    「もしも、いけない世界に連れていかれたとしても……みんなが無事に戻って来るように祈ってるね」


    参加者
    花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)
    神凪・燐(伊邪那美・d06868)
    紅月・瑠希(赤い月の使者・d08133)
    枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)
    黒絶・望(封印されし幼き果実・d25986)
    荒谷・耀(一耀・d31795)
    月影・木乃葉(レッドフード・d34599)
    リディア・アーベントロート(お菓子好きっ子・d34950)

    ■リプレイ


    (「露天風呂か、楽しみだね」)
     赤のビキニ姿の紅月・瑠希(赤い月の使者・d08133)は、機嫌良さそうに、ウイングキャット烈火の頭を撫でている。
    (「露天風呂、ですか。ちょっと楽しそうなので、露天風呂を満喫しましょう。でも、まずは都市伝説をちゃんと倒す事が先決ですね」)
     本来の目的を見失わないよう、気を引き締め直す花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)。
    「混浴という事は男性も入浴するのでしょうか? だとすると少し恥ずかしいですね……」
     水色のビキニを着ている黒絶・望(封印されし幼き果実・d25986)は、気恥ずかしそうに頬をほんのりと赤く染めた。
    「眼鏡は曇るから外しますか」
     ホルターネックのビキニ姿の神凪・燐(伊邪那美・d06868)は眼鏡を外すが、視力に問題は無い。
    「さぁ温泉! たのしんでいこ~!」
     黒い水着姿のリディア・アーベントロート(お菓子好きっ子・d34950)は、元気いっぱいに声をあげる。
    「恥ずかしいので……」
     長めのウィッグを付け、湯着の上にバスタオルを巻いて女装している、月影・木乃葉(レッドフード・d34599)。
     恥ずかしそうに、仲間たちから少し離れている。
    「温泉で女性を襲うなんて許せないっ!!」
     枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)は、間違った解釈をしてしまい、現れるのは痴漢男の都市伝説だと思い込んでおり、女性としていきどおりを覚えている。
    「都市伝説ごとき、絶対負けたりしないんだから」
     荒谷・耀(一耀・d31795)がバッチリと、フラグを立てた。


    「魅了とか、かかわるわけないない。逆にやっつけてやろ~!」
    『あら、可愛らしい子ね。セクシーな黒い水着が良く似合っているわ、ふふ……体はキレイに育っているのね』
     リディアが自信満々に言った直後、いつの間にか一糸まとわぬ姿の美女が話し掛けて来た。
     美女の妖艶な笑みと、甘い響きの声音が、いけない雰囲気をかもしだす。
    「んぁ……!」
    『可愛い声ね。もっと素直になって? ほら、私の指が貴女の……』
    「~~!! ひぃいッ!」
     リディアは弱いところをあちこち攻められ、ぶるっと大きく震えた。
     腰砕け状態になり、美女にしがみついて悶絶する、リディア。
     熱っぽく息を弾ませ、とろけた表情のリディアを『可愛い子』と言いながら、攻め続ける美女。
    『体は素直ね……もっとして欲しい?』
    「あぁぁぁぁ! ……は、はい……☆」
     リディア、陥落。
     あっという間の、いけない出来事に、仲間たちは手も足も出なかった。
    「百合展開を開こうなんて、そんなことは僕が許しませんよ」
    『ボクっ子かしら? あなたも可愛いわね』
     ビキニを着ているマヤは、完全に女性だと思われている。
    「うう、都市伝説を倒すためとはいえ、こんな姿になるとは……」
     マヤは、女性物のビキニを着ているのだ。
     男性陣は全員、女装をしており、マヤは自分の姿を嘆き始める。
    「気軽に温泉を楽しめるって聞いたから来たんだけど……百合展開とか聞いてなかったわ」
     いけない光景を目の当たりにし、耀が思わず言葉を零す。
     美女は耀に気づき、リディアの体をいけない動きで攻めながら、耀を手招きする。
    「面倒だしちゃっちゃと片付けるわよ」
     耀が勢いよく飛び出し、美女に接近。
    「……都市伝説には勝てなかったよ……」
     いけないことをされまくった耀は倒れ、体をビクンビクンと跳ねさせている。その表情は、恍惚しか浮かべていない。
     やがて耀がゆっくりと立ち上がり、遅い動きで水織に迫って来た。
     水織は自分になにか用が有るのだろうと判断し、待っていると、いきなり胸を触られてしまう。
    「!?」
     驚き、焦り、耀のことを魔導書でバシバシと物理的に殴る水織。
    「痛いの、気持ちいい……」
     どうやら耀は魅了のような状態になり、殴られると動きを止めたが、悦んでいる。
     痛みや恥ずかしいことに快感を感じる、いわゆるエム状態になっているようだ。
    「色んな意味で目に毒ですね……」
    「えっちなのはいけないとおもいます……」
     燐の呟きに、顔を真っ赤にした木乃葉が目をギュっとつむり、こくこくと頷いている。
     水織に迎撃された耀は標的を変更し、相変わらずゾンビのようなゆっくりとした動きで、燐に迫って来た。
     幼い頃から妹と弟の面倒を見て来た燐は、抱きつかれることに慣れている為、抱きついて来た耀を抱き締め返す。
    「思わずいつもの癖で……」
     耀に体を触られ始めると、燐はハッとし、迎撃する。
     迎撃された耀は、それ以上続けることはせず、悦に入ってしまった。
    「心を奪われてる人がいますね……しっかり、ですよー! 変態みたいになったらダメですよー!」
     望がなるべく大きな声で、呼び掛ける。
    「温泉で女性を襲う都市伝説……」
     水織は痴漢男性を想像していた為、美女をまじまじと見つめていた。
     そんな水織の素肌に、美女の指が触れ、ツツー……っと肌をなぞられる。
    「えっ……体に、力が……」
     美女に触られただけで全身の力が抜け、へたり込んでしまう、水織。
     水織の背に美女の腕が回り、そっと押し倒される、水織。
     抵抗出来ずにいる水織は、体のあちこちを刺激され、いけないことをされてしまう。
     美女の豊満な胸が押し付けられ、いけない気持ちになりそうなのを、なんとか必死に抑え、理性を保つ真面目な水織。
     体に力が入らないが、それでも抵抗を試みようとしている水織の姿に、美女は甘ったるい声で笑う。
    『ふふ……真面目な子ね。女性同士の好さを、たっぷり教えてあげるわ……』
    「え、えっちなのは……いけないとおもいます」
    「大丈夫? 癒しの光よ、仲間を助けてあげて!」
     木乃葉と瑠希が、揃ってキュアを仲間に掛け、リディアと耀を我に返らせた。


    『不思議な力を持っているわね。それに……改めて見ると、魅力的な女性がいっぱい』
     気絶してしまった水織から離れ、今度は望を狙う、美女。
    「ひゃうっ……!?」
     美女に肌をなぞられた望は、少女のような高い声をあげ、ビクッと大きく身を跳ねさせた。
     望の敏感さを堪能しながら美女は、他の灼滅者達へ眼差しを向ける。
     男性陣は女装がバレないかとひやひやするが、美女はそこまで気づくことは無かった。
    「皆楽しそうだなぁ、私も今くらいなら楽しんでも良いのかな?」
     のんびりと湯に浸かっていた瑠希が、混ざりたそうにしている。
    『絡み合いましょう? 私1人で相手をするのも良いけれど……見る側に回るのも面白いから』
     美女が、木乃葉の後ろに回り込み、うなじへそっと口付けを降らす。
     思春期の木乃葉には刺激が強すぎたのか、木乃葉は真っ赤になり、アワアワとうろたえた後、脱兎のごとく逃げ出した。
    「うー、うー……」
     岩の後ろに隠れ、涙目で美女を睨んでいる、木乃葉。
    『愛らしい反応だわ……キュンとしちゃった』
     美女が自分の胸元に手を置くと、えっちなのが苦手な木乃葉は、慌てて視線を逃がす。
    「そ、そのですね? マヤさん。変な意図はないのですよ? 私彼氏いますし。でも……その……もしよければ……ほっぺとか触っても……いいですか?」
     美女の能力により、誰かに絡みたくなってしまった望が、控えめに言いながらマヤに近づく。
    「望さん、何処から見ても女の子らしくて、可愛いです……え、僕のほっぺを触る……ですか、照れますけど、大丈夫ですよ」
    「はわぁ……柔らかい……」
     了承したマヤの頬を触り、満足げな様子の、望。
    「私は立場上、いかがわしい感情に支配される訳にはいきません」
     自我をなんとか、保ち続ける燐。
    「百合展開、楽しそうだけどね。えいっ」
    「ふわっ!?」
     いつの間にか瑠希は百合堕ちし、リディアの胸を揉む。
    「みんな、しっかり……正気に戻らないとだめ~っ!」
     瑠希に胸を揉まれ続けているリディアが、体を震わせながらも、必死に呼び掛ける。
    「きゃーっ!?」
     女性の悲鳴、では無く、木乃葉の叫びが響く。
     ついに理性を失ってしまった燐が、木乃葉がまとっているバスタオルを切り裂いてしまったのだ。
    「正気に戻ってください」
     木乃葉が半泣き状態でキュアを掛けると、燐はすぐに理性を取り戻す。
    『さあ、もっとたくさん……楽しいことをしましょう?』
     美女が耀の顎をくいっと上げ、耀の唇へキスをしようとする。
     が、耀がシャウトした為、未遂に終わった。
     間近で耀の咆哮を浴びた美女は、頭を抱え、無防備状態になる。
    「こんなに手間取るなんて聞いてないわ。このくん、よろしく」
     耀が木乃葉に声を掛けると、木乃葉は清めの風を使い、前衛メンバーをまとめてキュアする。
    「もうないと思うけど、もしまたリディアが魅了された時は元に戻してね、お願い!」
     リディアは度重なるいけない行為の影響で少しふらつきながらも、ふかふかナノちゃんに頼み込む。
    「これ以上近づかないでください! 私に……触らないでぇぇぇぇ!?」
     近づいて来る美女に対し、望が声を張り上げる。
    「惑わされたりなんて! もうしませんから! 多分! 攻撃は最大の防御! 都市伝説さえ倒せば終わりです!」
     先端に黄金の林檎が付いた美しい望杖・カルディアで、望は美女を殴りつけた。
     流し込んだ魔力が、敵を体内から爆破させる。
    「次は負けたりしない」
     湯桶を飛ばし、敵にぶつける耀。
    「醜態を晒してしまったので証拠隠滅を……」
     燐は太白を構え、容赦なく敵を殴った。
    「どんどん精度を上げていきますよー!」
    「温泉っていいですね~。心が洗われます」
     マヤは射出した帯で敵を貫き、遠い目をしながら木乃葉が呟きつつ、湯桶を敵に向けて飛ばす。
    「さぁ、私達灼滅者の力を舐めてもらっては困るよ」
     結界を構築し、烈火と共に敵を攻撃する瑠希。
    「やっつけるよ! お返しだぁっ!」
     ふかふかナノちゃんと合わせ、リディアが巨大な腕型の祭壇兼武器で敵を殴る。
     それがトドメとなり、都市伝説は完全に消滅した。


    「よーし、リディアの、勝ちぃ! 温泉改めて楽しめるといいかな~」
     リディアが一番に湯の中に入り、色々なことで疲れ切った体を休める。
    「き、消えました、ね? グスン。これで漸く安心してお風呂に入れるのです。でも、ちょっとお腹も空いてきましたかね……?」
     泣いているのか、望は目隠しの上から目を軽く手の甲で擦り、温泉の中で脱力した。
    「ふう、ちょっと湯冷めしそうだからもう一度露天風呂に入りなおそうかな」
     瑠希も続き、温かい湯の中へ体を預ける。
    「一番年上のはずが……一番トラブルの中心になってしまいましたね」
     燐は反省した態度で、仲間たちに詫びていた。
    「これで気休めでも恥ずかしさ軽減しませんかね……」
     木乃葉はニホンオオカミに戻り、温泉の中でぶくぶくと泡を立てている。
    「ううぅ……な……なんか胸が変……」
     意識を取り戻した水織は、妙に水着が擦れる感触に、戸惑う。
    「ふぅー、極楽ですね。もうちょっと露天風呂を満喫したいです。皆さんとても可愛らしい水着ですね」
     褒める余裕も温泉を堪能する余裕も無かった為、ようやく一息をつく、マヤ。
    「色々やらかした……黒歴史として忘れよう」
     仲間たちに謝罪をし、早く忘れることを決める耀だった。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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