ブルマ

    作者:聖山葵

    「まず、頭にブルマをかぶせます」
     何気なく、本当に大したことでもないように男は通りかかったオッサンの頭にそれをかぶせた。所謂ブルマというモノを。えっとかオッサンが言っても気にしない。
    「まず」
     男はそう言った、つまり続いて何かしてくるだろうと目撃した秋山・梨乃(理系女子・d33017)も思った、だが。
    「お、おい君?!」
     狼狽えるオッサンを残して男はそのまま立ち去り。
    「くっ、一体どういう……な」
     困惑したオッサンは次の瞬間目を見開く。
    「か、身体が動かない。待て、待ってくれ……それでは私はこのまま――」
     あわや放置プレイされるところだったオッサンのブルマかぶせを放置して立ち去る気に梨乃はなれず。
    「え? あ、君、これは誤解だ!」
     近寄る梨乃に気づき狼狽えるオッサンのバーコード頭から梨乃はブルマを取り去った。

    「……という訳なのだ」
     人の頭にブルマを被せる者が居るという噂を聞いて現場に赴いたら、都市伝説化しており被害にあったオッサンを助けてきたのだと梨乃は集まった君達と鳥井・和馬(中学生ファイアブラッド・dn0046)へ説明した。
    「えーと……」
     オイラはどこからツッコめば良いのかと和馬は遠い目をする。都市伝説の行動にか、冬の公園なのにイメージ映像の中の梨乃が水着姿であることか、それとも。
    「とりあえず、水着のことは流してくれると助かるのだ」
    「あ、うん」
     きっと深い事情があるのだろう。お姉ちゃんに知られたらお説教コースだから触れて欲しくないとかそんな理由ではきっと無いはず。
    「話を戻すぞ? 都市伝説が出現するのは夜の公園。ブルマを頭にかぶせられた一般人は身動きが取れなくなってしまうみたいで、私が助けたおじさんも喋ることしか出来なくなっていたと話してくれたのだ」
     これを梨乃はESPの様なものと見た。
    「おそらく、私達には動けなくなるような効果はない……と思う」
     だが、都市伝説の元になった噂を鑑みると、件の男、つまり都市伝説は効果の有無などに頓着はしないだろう。
    「視界に入ればまず確実に、私達全員の頭にブルマをかぶせようとする」
    「うわぁ」
     ロクでもない都市伝説だった。
    「とりあえず、現場となる公園には街灯がある。都市伝説の出現する時間帯でも明かりを持ち込む必要はないと思う。ただ、人よけの用意だけはしておいた方が良いと思うのだ」
     何せ、下手すればブルマをかぶせられるかもしれないのだ。そんな姿を無関係の一般人に目撃されるのは嫌だろうし、迷い込んできた一般人が戦闘に巻き込まれるのもよろしくない。
    「また、都市伝説がおじさんにブルマをかぶせると立ち去ってしまった事を考えると私達全員がブルマをかぶせられたら都市伝説はきっと逃げ出してしまうと思う」
     つまり、現場に行って都市伝説と遭遇し、全員がブルマをかぶせられる前に都市伝説を撃破する必要がある訳だ。
    「そして、申し訳ないが、都市伝説の攻撃手段は確認できなかったため何をしてくるのかは未知数なのだ」
     この手の変態系都市伝説は触手だとか服破りとか【恥ずかしい】みたいな追加効果付きの攻撃手段を用意していることが多いが、今回のケースも同様なのかどうか。
    「一応、着替えとか用意しておいた方が良いのかなぁ」
     どこか遠くを見つつ和馬はこぼした。
    「ともあれ、これ以上あんな変態をのさばらせては置けないのだ」
     力を貸して欲しい、そして水着の件はくれぐれも内密にと梨乃は君達に頭を下げるのだった。


    参加者
    アルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674)
    備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)
    双海・忍(高校生ファイアブラッド・d19237)
    ジェルトルーデ・カペッレッティ(幼きアッセディグイーダ・d26659)
    安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)
    秋山・梨乃(理系女子・d33017)
    下乃森・藩茶(パンティ・d34680)
     

    ■リプレイ

    ●ヅラじゃないブルマだ
    「しかし、頭にブルマをかぶせてくる都市伝説さんですか。高級なかつらをかぶせてくる都市伝説さんだったら、需要もあったと思うのですが……」
     街灯の明かりに照らされる公園を視界に収め、開いた双海・忍(高校生ファイアブラッド・d19237)の口から白く曇った吐息が零れた。
    「ブルマって、あれだよね、運動服てきな……なんで頭に、被せるんだろ。なんでなんで!」
     首を傾げ、なんでなんでのポーズをとるのは、ジェルトルーデ・カペッレッティ(幼きアッセディグイーダ・d26659)。
    「何故だ。何故またブルマ……。私の周りはどうなってしまったのか?」
     額に掌をあてさしずめ頭が痛いですのポーズをするのは、先程までどこか遠くを見ていた秋山・梨乃(理系女子・d33017)。
    「しかも、後ろから『次は8時丁度の超特急B2号とかどうかな』という不気味な声が聞こえて来るのだ……」
     どうやら幻聴まで聞こえるらしく、割と予断を許さない状況の様にも見える。私個人として言わせて貰えるなら、オッサンとぢごく要素が抜けてしまってる分、ちょっと変態性が足りない様にも思えるが、それはそれ。
    「いや、だから私は変態など望んで……はっ! 幻聴か、疲れてるのだろうか……」
     額に当てていた手を離しかけたところで驚きに止めた梨乃は体操服にブルマと言う出で立ちで憮然とする。
    「それに、寒いのだが……。早く帰りたいぞ」
     己を抱きながら無意識に顔を向けた方角に返るべき家があるのか。
    「僕が日本に来て驚いたのは、体育の授業で女子の服装がアニメと違う事でした」
     情報提供者が早くもホームシックにかかる中、独白した安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)はほぅと吐息を漏らすと携帯端末を取りだして言葉を続けた。
    「調べてみると……こういう輩のせいで廃れたようですね……。ふふふ……きっちり締めましょう」
     おそらく調べてみたのだろう。怒気を押さえつけるかの様な笑い声にジェルトルーデが怖いのポーズをとることすらせず物影に引っ込む。
    「くっ……まだだ、まだ被るな」
     そして、下乃森・藩茶(パンティ・d34680)は中二病患者よろしく何分かに一度のペースで何かと戦っていた、パンティを頭に被ることをせずに。
    「えーと……」
    「……その、和馬くん申し訳ないですがよろしくお願いします」
     始まる前から不穏な気配しかない状況にどこからツッコむべきか視線を彷徨わせた鳥井・和馬(中学生ファイアブラッド・dn0046)にアルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674)は頭を下げた。
    「や、オイラも男の子だし――」
    「さて、行こうか」
     気にしなくて良いと全身で訴えつつもここぞとばかりに自分は男の子アピールする誰かの言を遮る様に口を開いた備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)は感情の起伏を感じさせることなく淡々と、仲間達を促し。
    「ふふふ……そうですね、行きましょうか」
    「ああ、ブルマ被せの被害などこれ以じょうっ……はぁはぁ、これ以上出す訳にはいかないしな」
    「意気込むのは頼もしいものの、ジェルトルーデさんが若干怯えてるのだが……」
     一部の味方が何とも言えない雰囲気を醸し出す中、口元を引きつらせた梨乃は仲間達と共に公園へ歩き出す。都市伝説出現前だというのに、もう既に嫌な予感しかしなかった。

    ●遭遇、そして
    「都市伝説を探すね!」
     公園に着くなり宣言と共に索敵を始めるジェルトルーデへ幾人かが倣い、周囲を見回す。
    「気づいた時には接近されていて頭に……その、ブルマを被せられていたでは遅いですからね。そもそも――」
     被せられるブルマは新品かそれとも。忍としてはそちらも気になっており。
    「鳥井君。アルゲーさんの事は頼んだぞ。全員がブルマを被せられたら逃げられるのでな」
    「あ、うん」
    「さて、と」
     自身が肩を叩いた和馬の反応を見た梨乃は満足げにこちらへ近寄ってくるロングコートを纏った人影へと視線を移した。
    「あれがブルマ被せ……!」
    「ああ、あの時の奴なのだ」
     視線を追った藩茶の呟きは情報提供者にして目撃者に肯定され、ジェルトルーデが無言で後ずさる。みつけたのポーズとかを取っては変態都市伝説の興味をひいてしまうと思ったのかもしれない。
    「なら、もう話は早い」
     淡々と話ながら、鎗輔は自称ごく普通の男の子の背中に手を置き。
    「うん、もてる奴から汚れていくのは、基本中の基本だよね。というわけで、もてる代表の鳥居君から、レッツ装着、逝ってみさせよう」
    「ちょ」
    「大丈夫、その後ろに皆が繋がるはずだから」
     顔を引きつらせ、思わず振り返る和馬に相変わらず感情の起伏を見せずに鎗輔は頷いた。
    「では、まずそちらの鳥居君の頭に」
    「や、何でそっちも疑問に思わず言葉に従ってるの? と言うか、オイラは鳥井何だけど?!」
    「声に出してみると読みは同じなんですけどね」
     思わずツッコむ標的にされた誰かの叫びを聞きながら動じずコメントしたのは、忍。
    「それはさておき、とりあえず言っておくが……ブルマは被るものではないぞ」
    「その通りだ」
     言っても聞かないだろうな的な諦念を帯びた仲間の言葉に頷いたのは、普段パンティを被ってる藩茶。
    「でしたら、まずブルマを被せましょう」
     都市伝説は噂に行動を縛られている。故に、都市伝説は動いた。無駄に洗練された無駄のない動きで気づいた時には手にブルマを持ち、地を蹴り。
    「っ」
     都市伝説がすれ違った直後、和馬の右目を隠す様斜めにオサレな感じでブルマが被せられていた。
    「……和馬くん!」
    「っ、大丈夫、ただ、被せられただけだし」
     都市伝説は他者にブルマを被せた直後、つまり。
    「隙だらけだよ!」
    「おげっ?!」
     捻りをきかせたジェルトルーデの突きを脇腹に喰らったロングコートの変態は身を捩りながら吹っ飛び。
    「タンゴ」
    「にゃっ」
     帯を射出するジェフの指示でウィングキャットのタンゴは和馬の被せられたブルマを剥ぎ取り。
    「それは爪で引き裂いてください」
    「にゃあっ」
     一瞬でズタズタにされたブルマが無惨な姿で地に落ちた時。
    「……迷惑をかける都市伝説は許しませんよ」
     思い人に危害を加えられたアルゲーが砂場に落ち、ジェフのダイダロスベルトが突き立ったままの都市伝説目掛けウロボロスブレイドを振るっていた。ビハインドであるステロと連係しての攻撃が容赦ないものになってるのは、無理もない。
    「ぎゃーっ」
    「畳みかけましょう」
     あがる悲鳴の中、忍は炎を宿した釘バット・巨大『一撃粉砕』を変態に振りおろし、ビハインドのうつし世はゆめが素顔を晒すことで追い打ちをかけ。
    「このまま袋叩きにして終わりならいいのだが」
    「梨乃さん、それはフラグにしかならないと思うよ」
    「わかってはいるのだがな……もう、この手の都市伝説とは縁を切りたいのだ」
     袋叩きに加わる鎗輔の指摘に首を左右に振ると消えてもらうぞと続け、梨乃は詠唱圧縮した魔法の矢を撃ち出す。放ったのは、霊犬のわんこすけがくわえた刃で斬りつけた直後。
    「がっ」
    「ミケ、そいつの動きを止めるのだ」
    「みぃっ」
     矢を膝に受けた変態都市伝説が傾ぎ、主がすかさず出した指示に従いウイングキャットのミケがブルマ被せへ襲いかかった。
    「ちょっ、やめ」
     止めてと言われて止めるはずもない。
    「さとと」
     オイラも反撃開始と行こうかなとサイキックソードを構える誰は。
    「パンティ殺法神拳の秘技、その目に焼き付かせるんだな。都市伝説よ」
    「や、どこにもパン……ソレがない状態で言っても『どこが?』ってことになるから!」
     ここぞとばかりに跳び蹴りを放つ藩茶へのツッコミで反撃が若干遅れたのだった。

    ●なるべくして
    「何と言う身のこなし!?」
     幾ら何でもやられっぱなしでは終わらないと言うことか、とっさに地面を転がることで流星の煌めきと重力を宿した自身の蹴りをかわされた藩茶は戦き。
    「しかし、貴様には隙がある!」
    「なっ」
     されど怯まず変態を挑発する。
    「しかし、鳥井君は下着が見たかったのか」
    「ちょ、なんでそうなるの?!」
    「いや、さっきのツッコミがだな……」
     その一方でどこかの誰かは不要なツッコミが元で弄られていたとか居ないとか。
    「……和馬くん、その」
    「や、そんな思い詰めた表情しなくても良いからね、アルゲーさん? たぶん冗談だから」
    「ふーん」
     変態疑惑をかけられようと揺るがぬ恋する乙女の有り様が感情の起伏を見せぬ鎗輔を更に修羅に追い立てたとしても、きっと無理はない。
    「まず、ブル――」
    「ほら、そんなに被せたいなら」
     被せちゃいなよと味方の前に割り込むような形になりつつも攻撃を優先して進み出た鎗輔は頭にソレを被せられかけた所でカウンター気味に重い斬撃を都市伝説へ振り下ろし。
    「ぐ、ぁ」
     地に突っ伏すブルマ被せの身体に引っ張られることでブルマも引き下ろされ、変態な覆面を装着した鎗輔が爆誕する。
    「ブルマ仮面……だと?!」
     そして何故か戦慄する藩茶。
    「わけわかんない!」
     あまりの混沌にわけわかんないのポーズをとるジェルトルーデ。
    「きっと深く考えてはいけないのですよね」
     忍は何かを悟った様に言った。
    「そんなことよりこの胸のモヤモヤは鳥井君に自爆装……いえ、あの変態に狙ってくれたお礼としてぶつけることにしましょうか」
    「ちょ、今何か不穏なこと言いかけてたんだけど?!」
    「はっはっはっはっは、鳥井君は細かいことを気にしすぎなのだ。それはさておき、この戦いが終わったら私はイラストを頼もうと――」
     ジェフの発言に顔を引きつらせかけた誰かへ朗らかに笑いながらフラグをぶっ立てる梨乃。
    「……っていうかさ、全うな戦闘って起きるの? おきちゃうのか?」
     そう、戦いになる前に鎗輔は呟いてたのだが、これってどう見ても真っ当には見えないよね。
    「次に君は『まず、頭にブルマをかぶせます』という」
    「まず、頭にブル、っ」
     行動を縛られる都市伝説の欠点を突き、藩茶は帯状に繋いだパンティを射出しながら自分の予言を成就させ。
    「ですが、ブルマは被せました」
    「ふっ、君の被っているのはブルマかな? 否、俺が被せたパンティだ!!」
     ブルマを被せられたまま気を取り直した変態の頭部を指さし叫ぶ。
    「なっ」
     そこにはあった、カウンターで被せたブルマのプリントパンティが。
    「そもそも君はその前から間違えているっ!」
     驚きに立ちつくす変態へ変態はさらに指摘する。
    「パンティも被らずブルマを被せたらノーパンだろうに」
     と。
    「ハッ」
     目から鱗が落ちそうな顔で都市伝説は藩茶を見返し。
    「パンティ神拳奥義! うぉおおお、パ、パンティィィァァァアアア! うっ」
     もう問題ないとばかりにブルマをとってパンティを頭に装着するなり、藩茶は頭を激しく前後に振ってからがくっと脱力する。悪のエンゼル体操、でいいんでしたっけ、これ。
    「とりあえず、頭にかぶる時点でおかしいと指摘するべきだったかも知れませんね……」
     一通り見てから忍はコメントし。
    「日本人、おかしい」
    「日本はやはり僕の想像を容易に超えて行きますね」
    「ちょっと待つのだ、そこの二人。流石にあれを日本とひとくくりにされるのは流石に心外だぞ」
     おかしいのポーズをとるイタリアン少女と何やら考え込むジェフへ梨乃がずびしとツッコんだ。
    「と言うか、ツッコミ事案発生中なのに鳥井君はどう――」
    「やあっ!」
    「ぎゃああっ」
     そして首を巡らせて見れば、目に飛び込んできたのは、変態都市伝説に斬撃を見舞うその人であり。
    「……和馬くん達も頑張って下さい」
     思い人の勇姿に頬を染めつつも魔力の宿る霧を展開してアルゲーが応援する中。
    「さんじゅうしーち、さんじゅうはーち、さんじゅうきゅーぅ」
     斬られた変態目掛けて続いて殴りかかったのは変態覆面もといブルマを被ったまま延々何か数えつつ都市伝説を殴っていた鎗輔だった。
    「よんじゅー、よんじゅういーち、よんじゅ――」
     男のなんかこう、捨てちゃいけない何かをモテないから完全に捨て去った清々しささえ漂わせつつ一心不乱に敵を攻撃する部活の仲間を目撃した梨乃を絶句させるも、鎗輔は止まらない。
    「それはさておき、変態にブルマは不要です」
     これは処分してしまいましょうと藩茶のリリースしたブルマを拾って燃やし。
    「これが『汚物は消毒だー』というものですね」
    「な、ブルマがべっ」
    「あなたが持ってるブルマなど汚物です」
     一瞬そちらに気をとられ誰かの攻撃をモロに喰らったブルマ被せにジェフは言い放つ。こう、カオスは相変わらずの様であり。
    「だいじょうぶ?」
    「ああ。く、この程度では挫けないぞ」
     だいじょうぶのポーズでジェルトルーデから顔を覗き込まれた梨乃は頭を振ると気を取り直し。
    「このままではノルマが達成出来ません。ならばっ、最終奥義ッ」
     ズタボロの変態がロングコートの前をおっ広げて叫んだ直後。天気は雪ならぬブルマの雨へと変わったのだった。

    ●おつかれさま
    「ひどかった」
     ブルマを降らせた変態はやりきった笑顔のまま炎を纏わせたジェルトルーデの蹴撃を喰らって消滅したが周囲に広がる光景はまさにブルマ地獄。
    「まぁ、催眠を受けて自分のブルマを脱いで頭にかぶるだとか服破りで恥ずかしい格好にされる様なことがなかった分、マシだとは思うが、確かに酷いのだ」
     ブルマを踏まない様に足下に気をつけつつ梨乃はこぼし。
    「……和馬くんは大丈夫でしたか?」
    「あ、うん」
     どことなく疲れた様な表情で頭には三枚重ね両腕にそれぞれ数枚のブルマを通したままの誰かがアルゲーさんは何とか庇えたしと苦笑する。
    「ディフェンダーが鳥井君をふくめて四名でしたし」
     後衛も四名、数字の上では後衛だけは無事だったことになる。
    「何というかいい画がとれたことだけは救いだな」
     やはり疲労のぬぐえぬ顔で梨乃はカメラを一瞥し。
    「う、うおおおおおおっ、ぱ、パンティアアァァァッ!」
     勝利の雄叫びとばかりにブルマを振り払いつつヘッドバンキングする藩茶が落としたブルマ達が都市伝説からちょっぴり遅れて消滅して行く。
    「このブルマも都市伝説の一部だったと言うことでしょうか?」
     後片づけを始めていた忍としては片づけの手間が省けた訳であり。
    「とりあえず、帰ろう」
     片付けもブルマの消失によって時間短縮され、この場に留まる理由の消えた鎗輔は歩き出す。ちなみにこの時不穏な発言をしていたジェフはもう帰路についたのか、姿が既になく。それは別の意味で正解だったかも知れない。
    「……和馬くんはクリスマスに行きたい場所はありますか?」
    「んー、イルミネーションは去年ツリーと一緒に見た気がするし……」
     とか一組の男女が早くもクリスマスの計画を話題に会話していたのだから。
    「外歩いてて、女の子と間違われてナンパされるのもアレだし、家でのんびりとかじゃ駄目かな?」
    「……家、わかりました。掃除しておきますね」
    「え?」
     ただ、聞かれた方が家についてオイラのと付け加えなかったからか、アルゲーは別の意味に取ったらしい。そう、思い人が自分の家にお泊まりにくる的な方向に。
    「……パジャマや着替え、歯ブラシも必要でしょうか」
    「えーと」
     一瞬呆けたかと思えば真剣な顔をして計画を立て始めるアルゲーに勘違いだよとはとても言えず。
    「所で、ブルマって最近、使ってる学校ってないらしいけど、何で皆知ってるんだろう? やっぱ興味が有るのかな?」
     鎗輔はまるっきり関係ないことを口にして首を傾げる。モテない男として耳に入ってくる会話には思うところ有るかも知れないが、感情の起伏がなく、淡々と話す様は同じ部活の仲間が見る限り、表面上はいつも通りであり。
    「嵐の前の静けさでないと良いのだが……」
     心配そうに呟いた梨乃の言葉はそれ自体フラグじゃないっすかね。
    「しかし、そうか。クリスマスか……」
    「パンティアアァァ!」
     ちらりと振り返ると、そこにはまだ男子スクール水着一丁でヘッドバンキングし続ける藩茶。
    「私も帰るとしよう。何だか疲れたのだ」
     カオスは最後までカオスであった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月20日
    難度:普通
    参加:7人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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