巨大スサノオ体内戦~白炎横奪

    作者:佐伯都

     群馬密林に巨大な白狼の慟哭が響く。白狼の姿をしてはいるがその正体は、ナミダ姫灼滅に伴って制御を失ったスサノオ大神の力の塊、だ。
    「あっは、何コレ。見た目なんか凄そうだけど、ただのでっかいハリボテじゃんね」
     その足元に、けらけらと高い声で笑いながら、見上げるほど大きな白狼の脇腹へ大穴を穿つ制服姿の少女がひとり。血肉を伴う生物ではなくただの力の塊だけに痛みなどはないのだろう、スサノオは慟哭を繰り返すばかりで少女に気付いた様子もなければ、体内に血や肉などの組織も見当たらない。
    「まあ暴れられるよりはいっか。皆いくよお」
     足元で踊るように絡む、蔓に似た細い影を駆って彼女はさらにスサノオの中を『掘り進んだ』。
     不吉な赤さに汚れたインパクトドライバーを片手にした、配下らしきダークネスを引き連れて一行は白狼の体内へ侵入していく。空にはただスサノオの慟哭だけが響き続けていた。
     
    ●巨大スサノオ体内戦~白炎横奪
     群馬密林でナミダ姫を灼滅したことはもう聞いていると思うけど、と成宮・樹(大学生エクスブレイン・dn0159)は話を切り出した。
    「制御を失ったスサノオ大神の力が暴走して、巨大スサノオが15体出現したようで」
     一口に巨大スサノオと言っても大きさは桁違いで、ざっと見積もっても全長100mは堅い。とは言え怪獣映画よろしく暴れ回ったりはせず、その場から移動することもなければこちらに攻撃してくるわけでもない。
     ただ悲しそうに、その場で嘆きの声をあげるだけだ。
    「まあ無害だしこのまま放っとくこともできなくはないんだけど、そこまで待つにはちょっと問題があってね」
     要するにこの突如出現した巨大な力の塊であるスサノオを、ダークネスが黙って見逃してくれようはずがない、という話である。実際、すでに巨大スサノオの体内に侵入して中枢を破壊し、その巨大な力を奪おうとしているダークネス達もいるようだ。
     そのためスサノオ内部へ侵入したこれらのダークネスを討ち取ったのち、力がいいように利用されぬよう灼滅者の手で中枢を破壊しなければならない。
    「スサノオ内部に侵入したダークネスはマンチェスター・ハンマー配下の六六六人衆と、DIYで量産されたらしい配下が5名。こう、スサノオの横っ腹に穴を開けて体の中を掘り進んでいるから後を追うのは簡単だね」
     当然のことながら一本道なので迷うこともないが、逆に奇襲をかけることはできないため真っ向勝負のぶつかりあいになるだろう。
    「マンチェスター配下の六六六人衆は制服姿の女子高生で、弥生と名乗っている」
     殺人鬼のものに酷似したサイキックと影業を行使することがわかっているが、それ以上は不明だ。
     配下はDIYで量産されたと思われるためそう特殊な能力はないはずだが、個体能力が高めな六六六人衆という点は覚えておくべきかもしれない。所持しているのがインパクトドライバーとあって、バベルブレイカーに似たサイキックを扱うようだ。
     ナミダ姫灼滅が予想外の大戦果であったことは間違いないが、ここでスサノオの力を他の勢力に奪われてしまうのは避けなければならない。もはやその真意は想像するしかないものの、恐らくナミダ姫当人も自らの意に沿わぬ形で力を流用されたくはないだろう。
    「……まあ、それを、倒した側が言うのも何だけどね。主がいなくなったスサノオの力を灼滅者の手で地に返してやるのが、収まるべき形なのかもしれない」


    参加者
    科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353)
    峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)
    黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)
    森田・依子(焔時雨・d02777)
    不動峰・明(大一大万大吉・d11607)
    桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)
    炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512)
    エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)

    ■リプレイ

     オオオォ、と低く低く、スサノオの遠吠えが聞こえている。
    「ダークネスの常識と言ってしまえばそれまでなんでしょうけど、つるんでた相手がくたばった途端に火事場泥棒ってのはねえ」
    「まあ、スサノオと言えどこうなってしまえばダークネスにとっては資源の塊、ということだろう。いずれ慟哭ごと地に還るものなら放っておいてもよかろうが、横取りを許すのも面白くない」
     黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)の声に、峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)が小さく肩を竦めた。
     力の塊と表現されていたスサノオの体内は『体内洞窟』という印象で、生物的なイメージがあまりない。事前情報通りにそこかしこで蠢動している肉もなければ、横穴をあけられたことによって流れる血もなかった。生き物としての温度も。
     なるほどこれならサイキックで掘り進められるわけだ、と不動峰・明(大一大万大吉・d11607)は納得する。振り返れば、先行しているはずの六六六人衆らが開けた穴の入り口はずいぶん遠くなっていた。
    「難しい事はよくわかんねえけど、あっさり合流相手の力を盗みに来させた当のマンチェスターは今頃どこで油売ってるんだか」
    「どっかで次の嫌がらせのタネでも仕込んでるんじゃねえっすかね……」
     思えばその懸念もあった、と蓮司は少々ずれてしまった黒いパーカーのフードを被りなおす。科戸・日方(大学生自転車乗り・d00353)の指摘通り、配下ともどもスサノオ勢力に合流しているはずのマンチェスター・ハンマーは今どこで、何をしているのだろうか。
    「どのみち一派とわかっている以上、野放しにするワケにゃいかねーでしょう」
     そんな台詞を聞きながら、森田・依子(焔時雨・d02777)と桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)はダークネス達が掘り進んだという洞窟の先を急ぐ。
    「……哭き声が」
     奥へ奥へ進むごと少しずつ遠くなる、スサノオの遠吠え。
     可能ならもう一度だけ姫と言葉を交わしてみたかったけれど、と依子はやや複雑なほろ苦い思いで薄暗い天井を仰ぐ。生きるための選択と考えれば、理解できなくもなかった。だからこそ。
    「私達にできるのは限られた選択肢の中からですが、それでも……少なくとも自分達の力をほかに奪われるを、良しとしたわけじゃないと思います」
    「まあ、始めたことは終わりまできっちりやりましょう、だよね」
     一度はじめたものは、仕舞いまでやり遂げるのが筋であると夕月は思っている。
     あまりにも急な首魁の死こそあれ、灼滅者はスサノオ勢との交戦を望んだのだ。予測していた、望んでいた終局ではなかったとしても、幕を引くべきは最初に引き金を引いた側に責任があるだろう。
    「……見えた」
     唐突に響いた、先頭をきる炎帝・軛(アポカリプスの宴・d28512)の呟きに一行は身を引き締める。
     効率を求めるなら、容易に掘り進められるとは言っても人ひとり歩ける幅さえ確保してまっすぐ進めばいい。しかしここまでの道中、六六六人衆らが掘り進んだ洞窟は無意味に広がったり狭まったり、蛇行したりを繰り返していた。
    「ちゃんと全部、終わらせるね」
     不意を突いて奇襲をかけられない以上、気配や物音を消すのはただの手間。背後から迫る、味方ではありえないいくつもの荒い足音に気付いたのだろう、掘り進む手を止め量産型DIYらしき影が身構えるのがエメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)の目にも見えた。
     エメラルの手には赤い水晶を核とした杖があり、身には赤と黒のワンピース。殿を守るように立ち止まったエメラルが見上げる体内洞窟は、なぜだか不自然に広い。
     生物ではない力の塊。掘り進んでも暴れないということは、痛みもない。
     つまるところ中枢に向かいつつも戯れに荒らしているということだと気付いてしまい、明は短い溜息をついた。表情は揺るがない。揺るがないが、気持ちのよいものではなった。
     そしてそれに気付いたのも明ひとりきりではない。
    「お前達にしてみれば、この焔も利用できる力のひとつでしかないのだろうな」
     軛の表情も明と同じく揺るがないが、足元から立ちのぼるようにして伸び上がった影が日本刀のかたちを成し、握った指先には常以上の力がこもる。
    「邪魔するんじゃねえ、灼滅者!!」
    「それはできかねる」
     ひどく生真面目に言い返し、明の長ドスが指し示す地点が突如真っ白く凍りついた。ぎゃっ、とインパクトドライバーを手にした量産型DIYが揃って個性のない悲鳴をあげる。
    「まぁ、なんだ。アンタらもとっとと血の染みになってくれやがりませんかね、色々面倒なんで」
    「うっわあ自信満々ン、何の根拠もないくせにそこまで言い切れる自信すっげーな!」
    「――」
     蓮司のウロボロスブレイドをからくも回避し、マンチェスター配下だという女子高生が茶化すように、あるいは気分を逆撫でするように笑った。もっとも、そのわかりやすい悪意に気付かない蓮司ではないのでただ沈黙を守る。
     替わりとばかりに依子は複数を巻き込むように【焼野】を振るいつつ、まったく弥生の発言が堪えていない顔で言い放った。
    「こちらも伊達に『灼滅』者は名乗ってないのだから、自信なんてあって当然ね。でもさすがは六六六人衆、同盟相手が壊滅したとたん横から力を盗みにくるなんて、やることが他と違うもの」
     弥生と呼ばれているはずの六六六人衆は一瞬鼻白んだが、いけない、と自分を律するように頭を振る。こちらからのわかりやすい挑発を自制できる程度の頭はあるようだ、と依子は冷静に考えた。
     そしてそれを気取られていることも理解しているのだろう、弥生は顔を俯かせることなくむしろ傲然と言ってのける。
    「そんなもの当然じゃね? 負けた奴が後始末もしないで残していったものをどう使おうが、何も言われる筋合いねーよって感じ。そっちだって頼まれもしないのに勝手に阻止に来てるんだろ、やってる事は同じだと思うんだけどどこか違う?」
     ……弥生の主張はある意味正しい。確かに、このスサノオ達は死んだナミダ姫が勝手に残していったものだ。それを、残ったものがどう使おうが非難される謂われはない。
     灼滅者がダークネスの手に落ちぬようこうして排除に動いたのだって、別にナミダ姫に事後を託されたわけでもなければスサノオと同盟していたからでもなかった。むしろ直近では積極的に敵対していたのだから何をか況んや、というものだろう。
    「まあ、そういう難しい事は俺にはわからねえ。ナミダに力を守ってくれなんて言われた覚えもねえし、スサノオがこうして哭いてる理由だって、本当のところは誰にもわからねえ」
     これらの膨大な力の塊の使途だの所有権だのその正当性だの、ここで議論したって何も意味がないことは誰もがわかっている。それこそ弥生当人だってそうだ。
     しかしそれでも日方は揺るぎなく口にする。
    「泣いてる奴をなんとかしてやりたい、死んだ奴を静かに眠らせてやりたい。人間にとっちゃ理由なんて、それだけで充分なんだよ」
    「……ま、自分らとあんたらが根本から相容れないなんて、別に今に始まったことじゃないし?」
     こーんな風に戦闘におあつらえむきな空間を遊びで掘っちゃうくらいだし? と夕月が軽く首をかたむけた。わふん、とあまりよくわかっていなさそうなティンがひと鳴きする。
    「理由がなんであれ、どのみちやる事は変わらぬ。お前達を斬り、力の中枢を破壊する――実にわかりやすいではないか」
     どこか軛の空気が剣呑さを増したように思えた瞬間、影色の刃がもういちどその手に凝った。
     軛をはじめ前衛を足止めしようと複数のインパクトドライバーからビスが射出されるが、逆に再度放たれた明のフリージングデスと夕月のゲシュタルトバスターで痛烈なしっぺ返しを喰らう。
    「先ほどは根拠のない自信と言っていたが」
     弥生の牽制は他に任せ、明は量産型DIY配下のうち最も被ダメージの高そうなものを狙い撃ちにいった。なるほど量産型と言われているだけあり無個性な五人だが、手にしたインパクトドライバーはそれぞれ気に入りの機種かこだわりのカスタムらしく型や色が違うのがなかなか面白い。
    「立派に根拠はあるぞ、弥生」
    「……一応聞こうか」
     先行して洞窟を掘り進んでいるという地理的状況は、実はさほど有利ではない。
    「唯一の逃走路がこうして我々に塞がれている」
     実にシンプルで、そして最後の可能性をおおおかた失っている現実を、弥生は今ここにきて初めて理解したようだった。最低でも8名を突破しなければ逃走さえ不可能という状況に、弥生が唇を噛む。
     量産型DIY配下も、それまで認識していたほど有利ではないことを知り一気に攻勢に出てきた。狡猾な六六六人衆のこと、中枢へ至り力を手に入れることは早々に諦め逃走を選んだとしてもおかしくない。
    「ティン、絶対に通さないで!」
     今度は正しく夕月の意図を理解したのだろう、ティンの威勢の良い吠え声が響いた。蓮司が後衛から牽制するよう弥生を狙い撃ち、他メンバーは配下の撃破にうつる。
     ここで無駄にディフェンダー揃いの配下に守りを固められるよりも、攻勢に出てきてくれたほうがむしろ早くカタがつくだろう、と明は冷静に戦況を分析していた。それこそ唯一の退路を塞いでいるのだ、何も焦ることはないし、こちらは落ち着いて一手一手追い込んでゆけばよい。
    「はらわたブチ抜いてやらァ!」
    「断る」
     インパクトドライバーの凶悪な一撃を回避し、軛は勢いを殺さずそのまま身を翻した。ちょうど側転の要領で野の獣を思わせる体のこなしで反転すると、心得たタイミングで依子が踏み込んでくる。
     完全に大振りの体勢だった量産型DIY配下はすぐに依子へ対応できない。
    「あなたに訊いても答えられないかもしれないけど」
     明が月光衝と織り交ぜつつばらまいていたフリージングデスの冷気だろう、ひゅ、と細く息を吐いた依子の口元が白く煙る。
    「スサノオの力はダークネスだけに変化を及ぼすのかしら?」
     そんな依子の問いに、量産型DIYの返答はなかった。永遠に。
     渾身のレーヴァテインによって一瞬で燃やし尽くされ、煤じみたごくわすかな黒い灰だけ残して消滅する。
     弥生を背後に守りながら突破口を開くつもりでもいるのか、量産型DIY配下の攻撃が熱を帯びてきた。壁役の回復とサポートに徹することで夕月の相棒・ティンがよく前衛を支えているが、清香はこの優勢を盤石のものとするため回復を最優先させる。
     さらに消滅した量産型が残した灰も数瞬観察してみたが、そこに何らかの道具のたぐいは見当たらない。清香としてはかつて短剣が様々な事例で関わっていたことを思い出したのだが、今回はそのケースに該当しないようだ。
     もし何か回収できればしばらくは退屈せずに済みそうだと思ったのだが、残念だ。
     そんな言葉を飲みこみながら、清香は半ば弥生と一対一のサイキックの応酬になりつつある蓮司の援護に入る。後衛という事も手伝い、非常に高い精度を誇る蓮司の蛇咬斬は早いうちに弥生から自由な行動を奪い去っていた。
    「邪……魔、なんっ、だよっ!! ほんと横から現れてなんなんだよ一体!!」
     ついに色々腹に据えかねた弥生が金切り声をあげる。その傍らで日方が配下を一人、そしてエメラルがもう一人、と坂を転がりおちるように配下は討ち取られていった。
    「だから何度も言ってるじゃないっすか。ダークネスをバラす『灼滅』者だって」
     多少面倒そうに蓮司が首をかたむけ、そのまま妖の槍から射出された妖冷弾が弥生を打ちすえる。ごほりと咳き込んだ口元は赤く濡れていた。
     もともと数の有利と地形の有利がある以上、一度形勢が傾いてしまえば立て直すのは容易ではない。それは個々の能力が他の組織よりも高めとされる六六六人衆でも同じことだった。夕月のセブンスハイロウが容赦なく量産型DIY配下への追加効果を増幅させ、エメラルのスターゲイザーがもうろくに動かぬ手脚へ重しを加えていく。
    「ぐ、ぐ、ああああっ」
     渾身の叫びで量産型DIY配下が己を奮い立たせても、もはや焼け石に水だった。
     一瞬顔に生気が戻るがみるみる力を失い、このままずるずると苦痛を引きずるよりかはマシと判断した軛がクロスグレイブを向ける。
    「我らの身体には、いまだ白き焔が宿る」
     その白炎を継いでゆかねばならないことに変わりはない。スサノオの脅威が去ったとしても。白炎を継ぐ人狼の終着点はまだ見えなかった。
    「……しかしヒトを棄てる気はないのでな」
     恨むなよ、と言いおいて軛は全砲門を開く。まばゆい光線の乱射のあと、そこに残っていたものはごく少ないインパクトドライバーの残骸と、わずかな灰。そして配下をすべて失った現実に甲高い叫び声をあげているマンチェスター配下のダークネスがひとり。
     ゆらりと右手に下げた長ドスをゆらめかせ、明は弥生の前に立った。
    「王手だ、弥生。覚悟はいいか」
    「……ッ」
     傷だらけのままぎらりと睨みあげてくる目はすっかり充血している。
     蓮司が積み上げてきたダメージは的確に弥生を削っており、まだまだ余力を残している灼滅者と対峙したところで長くは保たないだろう。もはや誰の目にも弥生は万策尽きたかのように思えた瞬間、ぶわりと彼女を中心に白く揺らめく力が溢れだしてきた。
    「え? あ、――」
     ぼろぼろだった制服が、手脚の傷が癒やされていく。
     得物を構えたまま日方はじっと様子を見守った。白く揺らめく、まるで炎のような力。スサノオの力だろう、とすぐに想像できる。
    「あ、はは、これってスサノオの力?」
     何故弥生にスサノオの力が治癒の形でもたらされたのかはまったくの不明だが、明は鉄のような揺るぎなさをもって再度攻勢に移った。ここで手を緩める理由などどこにもないのだから。
    「スサノオ! ねえ、助けてよさっきみたいに!」
     期待していなかった相手からの思わぬ助力に気が大きくなったのか、途端に弥生は足元の影を積極的に駆りはじめる。しかし弥生へもたらされた予定外の幸運はそれきりだった。冷静に依子や日方、そして後方の蓮司と夕月の攻撃手が攻め続ければ、あっという間に戦況は元に戻る。
    「ねえ、なんで? なんでもう助けてくんないの?」
     ろくな回復方法を持たず、8人に対したった1人では、それこそ一度きりの治癒があった所で結果は変えようがない。結局、まるでぬか喜びをさせるような所業に呪いの言葉を吐きながら弥生は崩れ落ちていった。
    「……さよなら」
     どこかしこりが残るような思いを抱えながら、エメラルはそれでも小さく笑う。
     スサノオの中枢はすぐ近くだ。遠い慟哭が止まる瞬間を思いながら、灼滅者たちは思い思いのサイキックを放つ。
     とりどりの色が白い炎ととけあって、一緒に大地に還ればいいと願いながら。

    作者:佐伯都 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ