巨大スサノオ体内戦~『力』という名の焔を燃やして

    作者:長野聖夜


     ――群馬密林。
     悲し気に慟哭する巨大な白焔を思い起こさせるスサノオ。
     そのスサノオの内の一体へその手に持つ刃でその道を切り開いていく殺人ドクター。
    「カカカッ」
     嬉しそうに奇怪な笑い声を上げる殺人ドクターの他に、3人の大工道具を装備した六六六人衆がその穴を掘り進めていく。
    「こいつを倒せば強大な力が手に入る!」
    「ヒャッハー、急ぐぜ、急ぐぜ!」
    「私達、穴掘り大好き3人トリオ♪ 私達皆の為にえんやー、こーら!」
     殺人ドクターの笑い声に合わせて鼻歌交じりに3体の大工道具持ちの六六六人衆がスサノオの体内へ向けて道を掘り進めていく。

     ――すべては、その強大な力を自分達のものにするために。


    「群馬密林戦への介入作戦、お疲れ様。スサノオの姫ナミダを灼滅出来たのは……ダークネス達の連携を崩す為には大きな意味のある事だったと俺は思う」
     北条・優希斗(思索するエクスブレイン・dn0230)が集まった灼滅者達に告げている。
     胸中にどの様な想いが宿っているのか。それを一切表に出すことなく、優希斗が事務的な口調で続けた。
    「ただ、ナミダ姫を灼滅した結果スサノオ大神の力が暴走して群馬密林に15体の巨大なスサノオが現れた。そして、各ダークネス勢力がスサノオの力を手に入れる為に行動を起こした、と言うことだ」
     放置しておけば、数か月以内にスサノオの力は消える。
     だがそんなことをすれば行動を起こしているダークネス達によってスサノオの力を奪われてしまう。
    「外からスサノオを攻撃して灼滅するのは、時間が掛かりすぎて無理がある。そこで皆には、ダークネスが侵入した経路を辿ってダークネスに追いつき、彼等を灼滅して欲しい」
     優希斗の言葉に、灼滅者達が其々の表情で返事を返した。


    「さて、皆に潜入して貰うことになる、スサノオに向かったのは、全部で4体の六六六人衆だ。うち1体はマンチェスター配下の殺人ドクター。後の3体は大工道具持ち六六六人衆になる」
     一体は無敵残艦刀相当の鋸を装備しており、残り2体もまた、解体ナイフ相当の大工道具を所持している。
     巨大な鋸持ちの六六六人衆が盾となり、中衛から解体ナイフ相当の大工道具持ちが攻め、最後衛から殺人ドクターが止めを刺してくると言うスタイルの様だ。
    「構成としてはディフェンダー1、ジャマー2、スナイパー1と言った所だろう。それから、彼等が入っていった後を追う形になるから、スサノオの中枢に辿り着くまでには追いつけるが奇襲などは行えない」
     要するに正面からの真っ向勝負。
     どう戦うかは自分達次第。
    「後、スサノオの力が戦いの中でどう働くか分からない。対策のしようは無いけれども念のため、警戒だけはしておいて欲しい」
     優希斗の言葉に灼滅者達がそれぞれの表情で返事を返した。
    「……ナミダ姫を灼滅したことには賛否があるのではないかな、と俺は思う」
     一つ息をつきながら呟く優希斗。
    「ただ、それでも皆が選んだ道だ。今はその是非を問うよりは起きた結果を受け止める方がいい。それに……如何な理由があるにせよ、スサノオの力を他勢力に奪われるのは危険だろう。それを防ぐためにも、どうか皆最善を尽くして欲しい」
     優希斗の言葉を背に、灼滅者達は静かにその場を後にした。


    参加者
    レイ・アステネス(大学生シャドウハンター・d03162)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)
    風峰・静(サイトハウンド・d28020)
    白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)
    有城・雄哉(大学生ストリートファイター・d31751)

    ■リプレイ


    「ふむふむ。もう少しで追いつけそうだね」
     鼻を鳴らしながら、風峰・静(サイトハウンド・d28020)が呟く。
     足元が急に陥没する様子も無く、広さも戦場にするには差支え無さそうだ。
     ——体外での悲しげな叫びが空間で反響した。
    (「スサノオの力か。悲しいよな、俺もだ」)
     その悲しみを感じた鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が心の内で呟き自らの胸に手を当てる。
    (「こんな形になって、すまない」)
     出来ることなら戦いたくなかった。
     可能であれば共に歩みたいと思っていた。
     でも……叶わなかった。
    「ワキザシ、だいじょうぶ?」
     白星・夜奈(星探すヂェーヴァチカ・d25044)が、脇差の方を見つめるのに思わず苦笑を零す。
    「大丈夫だ、白星」
    「あまり無理はするな」
    (「ナミダ姫が居なくなった今、マンチェスターとジョン・スミスはどう動くのだろうな?」)
     レイ・アステネス(大学生シャドウハンター・d03162)が内心で思いながら気遣っている。
    (「アステネスらしいと言えば、それまでか」)
     既に戦闘態勢に入っている有城・雄哉(大学生ストリートファイター・d31751)がナミダ姫を灼滅した時と同じ、金の瞳のままに内心で呟く。
    「有城、その目は……?」
     雄哉の変化に気が付いたのだろう。
     槌屋・透流(ミョルニール・d06177)が問いかけると、雄哉はちらりと透流を振り返った。
    「俺達が引き起こした事態の結果に責任を取るためにこうしているだけだ。戦いが終われば、元に戻る」
    「……そうか。まあ、こうなった以上は後片付けまでしっかりと……というのには同意だな」
     雄哉の声音に以前の様な気負いは薄くなっているのを感じ取り、今はこれでいい、と透流が小さく呟く。
    (「闇を受け入れた結果、ね……」)
     白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)が雄哉をつまらなそうに見ている。
    (「まあ、今特に何かを話す事も無いな」)
     明日香がそう思い直した時……。
    「見つけたぞ、我等が怨敵ども! 今や無秩序に蠢く蛆虫共が!」
     狂気じみた嘲笑をあげるは西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)。
     織久の哄笑を聞き、殿を務めていた鋸装備の六六六人衆が驚愕の表情を浮かべた。
    「ばっ、ばかなぁ! 俺達穴掘り仲良し3人組の掘る速度に追いつく灼滅者がいるだとぉ?!」
    「キキキッ」
     鋸男を宥める様に最奥部に向かっていた殺人ドクターが笑い声をあげ、此方へと向き直る。
    「私達穴掘り三人衆に追いつける奴がいるとはね!」
    「まあ構わんではないか。さっさとこいつらを倒せばいいだけであろう」
     軽口を叩きながら殺人ドクターと、鋸男の中間に位置する2体がカッターノコと鉈を其々構える。
    「前回の借り、返すわ」
     夜奈が藤柴チューリップの留め具を外し、月白の煌きを示す花顔雪膚を舞うように展開しながら再後衛にいる殺人ドクターに目を細めて告げた。
     あの時、それは……世界救済タワーでの戦い。
     脇差を送り出し、レイ達に救われたその時の事。
    「カカカッ」
     夜奈の言葉にその時のことを思い出したか、殺人ドクターが笑う。
    「『それ』は僕達が狩るものだ。渡さないよ、『絶対に』」
     静の呟くと同時に、彼の全身を自由気ままに漂う白焔の魔性が覆い、その右腕を巨大な漆黒の腕へと変貌させていく。
    「ヒ、ヒハハハハハハッ! もっと惨めに足掻け、蠢け我らが怨敵共! 塵芥残さず我らが喰らいつくしてくれる!」
     織久の狂気を孕んだ嘲笑と共に。
     戦いの火蓋が、切って落とされた。


    「ぶち抜く」
     小さく呟き戦場へと真っ先に飛び出したのは透流だった。
     打合せ通り、中衛の六六六人衆へと黒いガトリングガンによる掃射を開始。
     黒光りする銃口から飛び出す無限の弾丸が雷光の如き轟音を立てながカッターノコ男を撃ち抜こうとしている。
    「おっと! ブラザーをやらせはしないぜ!」
     鋸男が立ちはだかり鋸で弾丸の一部を叩き切るが、何発かはその足を撃ち抜き、一瞬だがその身をよろけさせていた。
    「お前達にその力を奪わせはしない。あいつらを俺は大地に還したいんだ!」
     透流の放った銃弾を目晦ましにした脇差が庇われたノコ男の懐に潜り、その足を【黙】で切り裂き。
    「白星!」
    「まずはあなた、ね」
     夜奈が舞うように展開した花顔雪膚を射出。
     月白色の綺羅星をヴェールの様に纏いながら放たれたそれが、脇差に切られたノコ男を締め上げ、ジェードゥシカが接近して手に持つ杖で連続攻撃。
    「ヒャハハハハハッ! 滅びろ、滅びろ我らが怨敵よ!」
     狂気の入り混じった叫びをあげた織久が赤黒く染まった闇器【百貌】を螺旋状の渦と共に突き出しその身を貫き。
     明日香が呼応するように不死者殺しクルースニクで鋸男の胸を切裂くべく撫で斬りに。
     明日香が鋸使いに攻撃を加えて牽制する間に、深傷を負っているノコ男に静が音もなく忍び寄り、クルセイドソードを一閃。
     その刃に切り裂かれ鮮血を噴出させながらカッターノコ男が突き刺す様な殺気を後衛に向けて放った。
    「通すわけないだろ」
     蒼穹を思わせる薄い膜の結界を張った雄哉がレイを庇う様に前に立ち、静が透流の盾となる。
    「この位で僕達をやれると思っているの?」
     静の挑発に応じるかの様に鉈使いが起こす漆黒の風。
     漆黒の毒を纏った風が明日香達に襲い掛かるが、明日香は半ば押し出すような形で雄哉の背後に回り、静が突出している織久の前に飛び出し、薄青い結界を貫通した風の毒を受け、顔色を青ざめさせるが。
    「計算通りだな」
     冷静に状況を観察していたレイから解き放たれた黄色の光条が静の毒を取り払った上で雄哉が展開した蒼穹の結界と混ざり合い、より強固なものにする。
     鋸男が鋸を天空へと掲げて傷を癒した。
    「キキキッ!」
     笑いながら殺人ドクターが五連メスをレイへと投擲。
    「狙いは私か。考えたものだな」
    「でも、君達の好きにはさせないよ」
     冷静に呟くレイの前に静が立ちはだかり、五連メスに貫かれながら何処か茶目っ気のある笑みを浮かべ。
    「そう言えばさ体内にドクターとか……これも手術なの?」
    「キキキッ!」
     ピクピクと耳を動かしながら問う静に殺人ドクターが一気に肉薄しその体を切断するべくメスを振るうが、その前に金の瞳で状況を見ていた雄哉が飛び出しClear blue-sky Shieldで代わりにその攻撃を受け止め。
    (「此処は、俺が引き受ける……!」)
     厚い碧空の結界を生み出し傷を癒しながらその眼差しで睥睨した。
    「あんたらはその力を手に入れて何をする気だ?」
    「ケケケッ」
    「ユウヤ、むだだよ。そいつには、話をする気、ないから」
     後退する殺人ドクターを見つめながら夜奈が告げ、瑠璃色ブーツで滑るように接近。
     きらきらリボンでスイートピーブローチをコーディネートしたその靴が擦過すると共に生み出された瑠璃色の焔がカッターノコ男を焼き払った。
    「ぶっ壊す」
     畳みかける様に透流が雷光を象った影の刃でその身を切り裂き更に脇差が腰に帯びた鍔に月と猫のあしらわれた月夜蛍火を蛍の意匠が凝らされた鞘から抜いて大上段に構える。
     鋸男が盾となるべく其方に向かおうとするが、その時には鱶の笑みを浮かべた明日香が縛鎖スレイプニルを放ち、その身を鎖で締め上げて鋸男の動きを阻害。
    「助かったぜ、白石!」
     振り下ろされた脇差の刃に、カッターノコ男が断末魔の声をあげた。


    「ぶ、ブラザーを……よくも!」
    「ヒャハハハハハッ、泣け、喚け我等が怨敵! その絶望こそ、我等が悲願だ!」
     怒りのままに振るわれた鋸男の鋸にその身を切り裂かれながら、織久が哄笑と共に血色の炎を纏う黒い大鎌で残虐にその足を斬り飛ばす。
    (「西院鬼が突出し過ぎているか」)
     状況を冷静に観察しながらラビリンスアーマーで織久の負傷を癒すレイ。
     その間に後退しようとする鋸男を逃さぬとばかりにハンドスプリングで飛び出し上空から音もなく急襲を掛ける静。
    「おっと、逃がさないし進ませないよ」
     そのまま両足で脳を目掛けて叩きこまれた蹴りに朦朧とする鋸男。
     ジェードゥシカが周囲の肉片をポルターガイスト現象を引き起こして鋸男に叩きつけた。
    「私達を舐めるんじゃない!」
     鉈使いが今度は刺す様な冷たい殺気を明日香達に向けて放つ。
     明日香は咄嗟に雄哉を盾にするが、攻撃に集中していた織久は避けきれず刺す様な殺気にその身を蝕まれる。
    「キキキッ!」
     殺人ドクターが続けて五連メスを織久に投擲。
     雄哉が盾となり代わりにその攻撃を受け止めるが急所を貫かれたか、想定より負傷が大きい。
    (「アステネスだけじゃ間に合わないか」)
     内心で思いつつ、自身にもう一度ソーサルガーターを使用して自らの傷を癒す。
     その影から明日香が飛び出し、ティアーズリッパーで鋸男を残虐に切り裂いた。
    「退けよ!」
    (「オレにはあの力が必要なんだ!」)
     内心で膨れ上がる欲望に突き動かされる明日香の凶刃に、深手を負った鋸男を脇差が【黙】で空間を切り裂いて衝撃波を生み出して叩き切り、夜奈が花顔雪膚で締め上げ、ジェードゥシカが更に手に持つ杖で鋸男を打ち据えそして……。
    「ぶち抜く」
     透流が影を解き放って鉈男を牽制しながらBlitzschlagに込めた漆黒の爆発弾を乱射。
     目の前の鋸男を爆発に巻き込み、そのまま灰燼へと帰させた。
    「きょ、兄弟―?!」
     絶叫する鉈男に一斉に攻撃を叩きつけ、織久の闇器【百貌】がその心臓を残虐に貫き灼滅していた。
    「キキキキキキッ!」
     鉈男に止めを刺した織久へと殺人ドクターがメスを振り下ろす。
     その前に咄嗟に静が立ちはだかるが……。
    「ガ……ハッ……?!」
     先ほどよりも遥かに重く強化された斬撃を受け、意識を持っていかれそうになる。
     ——けれども。
    「風峰?!」
    「まだまだ、いけるって」
     脇差の呼びかけに魂を凌駕させ強引に立ち上がる静。
    「ぶち抜く」
     透流が呻きながら雷撃の様な速度でガトリング連射。
    「有城、回復は私だけで大丈夫だ。頼む」
    「分かっている、アステネス」
     レイがダイダロスベルトで雄哉の傷を癒すのに頷きながら自らの闘争衝動を雷へと変えて放った掌底が殺人ドクターの鳩尾を痛打し、ジェードゥシカがポルターガイスト現象を起こして殺人ドクターへと乱打。
    「前はひとりで、守るためだったけど」
     ジェードゥシカと雄哉が作ってくれた隙をついて、青白い星の光と共に縛霊撃を放つ夜奈。
    「今度は、みんながいる」
    「ああ、あの時の御礼はきっちりさせてもらうぜ!」
     夜奈の呟きに応じた脇差が殺人ドクターの死角から黒死斬でその足を斬り払い。
    「私も白星には恩があるからな」
     ほぼ同時に透流が斬影刃で殺人ドクターを切り裂き。
    「ハハハハハッ! 残るは貴様ただ一人! 此処で皆殺しだ、我等が怨敵よ!」
     狂気の笑みを浮かべながら織久が闇器【闇焔】で脇差の反対に生まれた死角から殺人ドクターの足を切り刻み。
    「そんな借り物の力で……調子に乗るな!」
     静がスターゲイザーでその足を砕き、明日香がレイザースラストでその身を締め上げ、酷薄な笑みを浮かべるが、殺人ドクターは倒れない。
    「ケケケケケッ!」
     自らに流れ込む力に歓喜の笑い声をあげながら五連メスをジェードゥシカへと投擲。
     強化されたその一撃にジェードゥシカが耐え切れずに消滅し、勢いづいた殺人ドクターが目前の明日香を切り裂くべく、大上段からメスを振り下ろした。
    「有城、仕事だぞ!」
     雄哉の後ろに回り盾とする明日香。
     レイのラビリンスアーマーに傷を癒され辛うじて踏み留まった雄哉が鋼鉄拳。
    「押し切らせてもらう」
     雄哉の拳が殺人ドクターのあばらを何本か持っていき、夜奈と透流が左右からグラインドファイアとブレイジングバーストで同時攻撃。
     互いに互いを救いあった縁も手伝い、瑠璃色の炎と漆黒の爆炎の阿吽の呼吸による一撃が重傷を殺人ドクターに与えた。
    「続くぜ!」
     辛うじて立つ殺人ドクターに脇差が月夜蛍火を振り下ろし、袈裟懸けにその身を斬り裂けば。
    「ガガガッ!」
     苦しげに呻きながらも、殺人ドクターは自らに切開手術を施そうとするが……。
    「ハハハッ! 臆病風に吹かれたか怨敵が!」
     嘲りながら織久が血色の炎を纏う大鎌による『死』の一撃で引き裂いた。
     血色の炎が殺人ドクターの手術を阻害し回復の効果を最小限に留めたところに、静が幻狼銀爪撃。
    「ケケケケケケッ!」
     殺人ドクターが捨て身の猛攻で弱点を曝け出していた織久を切り刻もうとしたのを静が守り抜き。
    「後は任せたよ、かっこよく決めてね!」
     そう笑顔で告げて静がその場に倒れ伏す。
    「シズカのがんばり、むだにしないよ。トオル、ユウヤ、レイ」
    「ああ」
     夜奈とレイが同時に帯を射出し殺人ドクターの両腕を締め上げてその動きを阻害し。
    「終わりだ」
     雄哉が抗雷拳を叩きつけ。
    「ぶち抜く」
     透流が漆黒の銃弾を連射して全身を貫き、脇差が【黙】を正眼に構えてその身を薙ぎ払った。
     そして……。
    「こいつで、終わりだ!」
     明日香が絶死槍バルドルの先端から放たれた弾丸が全身を凍てつかせた。
    「ガ……ガガ……」
    「これが、ヤナたちの力、よ」
     夜奈のそれが、氷の彫像と化して砕け散った殺人ドクターが最期に聞いた言葉となった。


    「さて……」
     中枢にたどり着き、明日香が舌なめずりを一つ。
     邪魔はなくなった。後は、如何にしてこのスサノオの大神の力を取り込めるのかのみ。
    (「スサノオ大神の力、灼滅者が手に入れることは出来るのか?」)
     レイの脳裏にもそんな考えがちらりと浮かぶ。
     ただ、それで闇堕ちしてしまうならば、先ずは如何にして制御できるかどうかを求めてソウルボードを調査するのも悪くない、とも思えるが明日香はどうやらそうでは無さそうだ。
    「白石」
     無意識に感じた危惧をレイが明日香に伝えようとしたその時。
    「誰にも、この力を奪わせはしない」
     瞳が蒼に戻った雄哉が躊躇なく拳を振り下ろし、スサノオの中枢を粉微塵に砕いた。
    「有城……!」
     そんな雄哉を明日香が睨みつけるが、彼はそれに動じない。
    「僕達の役割は、スサノオ大神の力を大地に還して誰の手にも力を渡さないようにすることですよ白石先輩」
    「お前……!」
    「そうだな。俺達の役割は、スサノオの力を大地に還すことであり、この力を自分のものにすることじゃないな」
     脇差の言葉に明日香が天を仰ぐのを見ながら、レイが意識を失っている静を担ぐ。
    「任務は達成した。撤収するぞ」
    「分かった、レイ」
    「そうですね」
     レイの促しに夜奈と織久が同意を示し素早くその場を後にする。
    (「もし、垓王牙の尾と会えたならナミダと共に共存を目指したその想いをあいつ等にも伝えて欲しい。そしてお前にも、尾の仲間と触れ合った俺達の事を知って欲しい。俺は、過去を還らずとも未来なら変えられる。そう、信じているから」)
     脇差の小さな祈りと共に。

    作者:長野聖夜 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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