クリスマス2017~願い実るクリスマス・ツリー

    作者:中川沙智

    ●twinkly
    「伝説の木って、知ってる?」
     クリスマス準備が進む学園にて。
     茜色の髪揺らし、少し悪戯っぽく微笑んだのは小鳥居・鞠花(大学生エクスブレイン・dn0083)だ。
     その言葉に頷いたのは鴻崎・翔(高校生殺人鬼・dn0006)。そして不思議げに首を傾げたのがアンリエット・ピオジェ(ローズコライユ・dn0249)である。
    「ええと……この学園にある木なのですよね?」
    「ああ。この学園で盛大に開かれるクリスマスパーティー、メイン会場は伝説の木の元で行うのが習わしなんだ」
    「じゃあクリスマスの象徴みたいな感じなんですね!」
     笑顔ほどけさせるアンリエットは、武蔵坂学園で過ごす初めてのクリスマスに心躍らせている。そんな彼女をあたかかく見守っているのが翔と鞠花、という構図だ。
    「アンリエットはフランス出身だっけ。クリスマスツリーを飾る習慣はあるんだろう?」
    「はい。モミの木にオーナメントを飾ります。それぞれに想いを籠めて。あの、この学園のはどうなんですか?」
    「この学園のは……あ、」
     何かを思いついたように翔が瞬いた。その様子を見遣り、鞠花とアンリエットもきょとんとした表情になった。

    ●Merry!
    「クリスマスツリーを飾らないか」
     翔からまろびでたのはささやかな提案。
    「クリスマスのパーティ会場にある伝説の木、俺達で飾ろう。そうしたらきっと感慨も何倍にもなるんじゃないかって、思うんだ」
     翔が学園で過ごすクリスマスももう何度目だろう。同じように日々を重ねた仲間達と一緒に過ごす事が喜ばしく、嬉しい。
     憶えている人もいるだろうか。パーティ会場の真ん中に聳え立つ約束の木は、過去にもクリスマスツリーとして飾り付けられた事がある。
     約束の木を飾る数多の輝き。
     それを今年も自分達で煌かせようというのが、今回の趣旨だ。
     鞠花が指折り数えながら言う。
    「LEDのイルミネーションライトなんかの一般的な装飾は、あたしや鴻崎のほうで用意しておくわ。一番上の星も飾っておくわね。そしてオーナメントなんだけど……」
    「折角ですのでこんなのは如何でしょうか。幾つか、素敵なお話も聞いています」
     進み出たアンリエットが取り出したのはつややかな林檎のオーナメントだ。勿論ただの飾りとして扱ってもよいだろうけれど、どうやら逸話があるらしくて。
    「例えばこの林檎でしたら、『ごめんねが伝えられるように』という願いが籠められているみたいです。聖なる夜です、きっと願いは聞き届けてもらえます」
     その他様々なオーナメントが用意されているという。ひとつひとつ願いを込めて飾ったなら、その願いが本物になるという風習が、アンリエットの地元にはあるらしい。
     真偽を問うのも無粋なほどの、ささやかなおまじないだ。
     例えば天使は自分らしさの象徴、リボンは結うことから縁結びを表すんだとか。他のオーナメントもそれぞれの意味を持っているから、自分に合ったものを選ぶといい。
    「それだけでなく、色も自由に選んで頂けます。そう考えるとどんなツリーになるかは想像もつかないですよね。楽しみです」
     最初の時点ではまだまっさらな約束の木。
     皆が持ち寄った思いを飾っていく事で、ツリーとして聖夜の祝福を纏う事が出来るのだ。
     翔と鞠花とアンリエット、三人が顔を見合わせてそれぞれの笑顔を掲げる。
    「当日は晴れの予報だけど、雪もちらつくみたいだ。少し寒いかもしれないな」
    「寒くない格好してかなきゃいけないわね。あ、あたたかい飲み物も用意しようかしら」
    「賛成です! 皆でとびっきりのクリスマスツリーにしましょうね」
     もうすぐ、彩りに溢れた聖夜がやってくる。


    ■リプレイ

    ●祝福
     願いが本物になるというのなら、一つ飾ろう。
     紗夜が手に取ったのは青白二色のキャンディケーン。末永く共に歩けるようにという願いは、大好きな先輩達がそうであればいいという祈り。
     ヒトの思いというのは不思議な力がある。だから叶うさ。そう嘯けば隣のアンリエットも眦を緩めた。
     伝説の木に飾られるオーナメントのうち、キャンディケーンは今日特に人気だ。
     出来るだけ高いところに飾ろうとリケが梯子を支えれば、織兎が任せろと勢いに乗せて腕伸ばす。彩鮮やかなそれを飾らせ、末永くいつまでも一緒にと思いを籠めよう。
    「飾りつけ終わったら遊びにいこう~! まだクリスマスはこれから!」
    「夜にはこの木を見に来ましょうね」
     顔を見合わせ笑う。防寒しっかりな身体だけでなく、心まであたたかい。
     一対の青い雉鳩の飾りが付いたミニリースは、桃香の手作り。雉鳩は童話の青い鳥の所以にもなっていて、途切れない縁を願うそれに、遊が目を細める。
     手を伸ばして飾る天使の飾りは桃香が羽ばたけるようにという願い。そして傍にキャンディケーンも添える。
    「願わくば、その隣に末永くオレがいられますよう」
    「……そんなの当たり前じゃないですか」
     鳩飾りを渡したい相手は目の前の遊だけなのだと手を差し伸べれば、確かに結ばれる。楽しいクリスマスデートの始まりだ。
     紗は青と白のストライプキャンディケーンを綾なす。銀の林檎に夢中なヴァニラも楽しげだ。
    「これからも一緒に、遊べますようにってお願いを込めてるよう」
    「俺も、これからも皆との縁が結われますように」
     紺色リボンを飾った鴻崎・翔(高校生殺人鬼・dn0006)と肩を並べる。きっと願いは、叶うよ。
     林檎とキャンディケーンを結い、里桜は囁いた。想い馳せるは闇の畔。
    「あの時、勇騎が来てくれて嬉しかった。だから……ごめんなさい、ありがとうな」
    「無事に帰ってきてくれたんだからそれでいいさ」
     二度目はないと揶揄うように笑い、勇騎もキャンディケーンとリボンを飾る。繋いだ縁、繋ぐ縁の両方を大事にしたいのは共通の思い。
     そしてケーンは――言葉などいらない、同じ気持ちの表れだ。
     飾りの意味を考え巡らせてふたりはオーナメントを選び往く。
     この先も繋がり共に歩いて行けるよう。
     縁を大事にしたい。
     キャンディケーンとリボンに互いの思いが重なる。巽が霧夜にマフラーを巻いてあげたなら、サンタとトナカイの姿も遠目で見遣る事がきっと叶う。
    「ならばその姿を見に、帰る前に少し散歩でもするか?」
    「Yes,your highness」
     問いには笑みと最敬礼を返そう。
     自分のサンタクロースは彼だと、知る日。
    「そういえば小さい頃、ツリーに願い事書いた紙ぶら下げてたなあ」
     七夕との境目が曖昧だった壱の幼少期。微笑ましく見守るみをきにも問えば、思い出し目を細める。
    「お菓子入りのブーツがどうしても欲しくて……駄々を捏ねたことがあります」
     クリスマスと無縁の家だったから母と兄を困らせた。懐かしむ矢先壱が靴下飾りも下げ、もう一つ如何と誘う。
    「聞いた? キャンドルは神様に届ける光なんだって」
    「向こうから見えるでしょうか」
     晴空の向こうに今幸せだと、光と祈りを手向け。
     帰りにクリスマスブーツも買って帰ろう。
     烏芥はキャンディケーン携えた雪白の天使。
     揺籃はベル戴く純白の天使。
     最後まで共に在るように、願う。
     リボンに籠めた翔の願いも聞いたなら、届けられるようお手伝いしますと天使を添える。完成に笑み零し、心に宿る煌きを、歓びを皆で分かち合う。
     伝説の木を飾るなんて高校以来だと感慨抱く葉は、キャンディケーンに南京錠飾る錠を呆れ気味に見遣る。緑にオーナメントを下げていく中、葉が紛れ込ませたのは松毬抱いたナノナノ。
     戦争ばかりやっているせいか、今年もナノナノ様が来る気配がないから。
    「これを見つけたヤツらにささやかな祝福がありますよーにと」
     小さな呟きを拾った錠は頬を綻ばせた。丸くなったものだと、相棒を評する。
     捜す事を口実に彼を誘えるから、毎年ナノナノ様が見つからなければいいと想っていた。
    「……きっとバレてんだろうな。まァ、いいや」
     囁きは賑わいに、溶けていく。

    ●鈴音
    「幸ちゃん、もう少し右……うん、そこ」
     七ノ香が弟に抱えてもらって飾るのは思い出のブルースターのリボン。
     いつかきっと、会えますように。
     そう祈ったらアンリエットが素敵ですねとはにかんだ。
     クリスマスの高揚感に胸弾ませて。
     狙うはチアのショルダースタンド風。高みにはリボンが二つ、綺麗に並んだ。
     会いたい人に会えるように、ちゃんと縁結びしてもらえるように、祈りを籠めて結われる。
    「小さい頃、あのまあるいオーナメントが好きだったわ」
    「僕はあのてっぺんの星が好きだな」
     愛と静がツリー仰げば、視界には煌きが入り込む。噛みしめるように囁いた。
    「……君の願いも叶うと良いね」
    「……まあ、雪だわ」
     氷片が、舞う。
     ナノナノ様探しを話題に出すも、あれは恋人を祝福するという触れ込みだったような。
     頬に走る朱を誤魔化す脇差の一方、彼の大怪我思い返し来年は無事に過ごせますようにと輝乃は祈る。ベルと天使に纏わせたのは黒い、互いを思わせる彩のリボン。
     感じる光の行方は知れずとも、気持ちは確かに息衝く。
     これからも素敵な縁で結ばれますように。
     その隣でナノナノ飾りとキャンディケーンに脇差は願いをかける。
     大切な人と、いつの日も共に歩んでいけるように。
     大切な人に、いつの日か想いを伝えられるように。
     ケーンに手を伸ばしかけ、深青リボンを選んだ薙乃に蒼刃は気づく。奇跡のような幸福の向こう側を望んでいいのか、躊躇いが過る。
     隣に結われるピンクのリボンは彼女を模すもの。
     もう少し縁を結んでいたいという気持ちに差異はなくとも、形は別で。
     何を思っているかを手繰るように肩を並べ、想い馳せる。
    「来年も」
     側に居たい、を言い換える。
    「良い年だといいね」
     兄妹の幸いの行方を今は、裡に秘めて。
     式は未だだから、共同作業は憧れる。
     七葉は時折大切な人を振り返りながら、共にツリーを飾る。背伸びして届くくらいの高さだ。
    「末永く共に歩めるように……病める時も健やかなる時も、かな」
     頬染めて、素敵な彼に指を絡めながら。
     めいこが拵えた飾りはアルニカの花。律にどんな願いを籠めたのか聞かれれば『クラブの皆様の武運と無事』だという。成程皆が居る日々が大切なのは同意だと、律はクリスタルベルに厄払いを想い馳せた。
     いつも通りの日常に歓びを憶える。ただ祈るより、願いながら飾ればきっと届き易い――そんなめいこの指先は優しい。
     今後も闘いは続く。前線に向かう皆の無事を祈り、二人はツリーを見上げた。
     立ち向かう日々に、数多の願いに、幸甚を。
     オーナメントに意味をかけるのも悩ましい。
     首捻り、希は乳白色のクリスタルベルを選ぶ。聖夜のその先も平穏無事で安泰であるように。一方己の願いがない厳は躊躇の末、ダチに押し付けようと手にしたのはジンジャーマン。
    「手前等が食いっぱぐれないように」
    「ええ? クリスマスだよ? もっとこう……あるだろ!」
     健やかに育てとの返しについ梛が噴き出した。厳も喉震わせ、希もつられて笑いだす。
     全く、この友人達はこれだから楽しくていけない。だから梛は金のリボンで二人のオーナメントを繋いでみる。こんなのがなくてもとっくにとは思えど、形になる願いは慕わしい。
     神頼みは性分じゃなくとも、願掛けを必要とする人もいる。三人でツリー仰ぎ見れば、眸に沢山の煌きが映る。
    「皆の願いごと、叶うといいね」

    ●細雪
    「今日は楽しいクリスマスー♪ 皆で集まるクリスマスー♪」
    「今年は何時になくツリーの飾り付けも豪華じゃない!」
     天音が真赤なダッフルコートで息を弾ませ、鈴音が臙脂の手袋の手を伸ばす。カフェの皆で集まって、伝説の木を飾りつけよう。
    「気を付けてね」
    「ありがとう、大丈夫。店の飾りつけで慣れてるしね」
     鈴音の心配に勇弥が口の端を上げる。勇弥が飾るは四十一のベル。其々色や材質、柄が異なるリボンを結ってあるそれは、カフェに客やバイトとして所属する皆の厄払いと多幸を祈ったもの。察したさくらえが瞬いた。
    「とりさん、これもしかしてカフェの皆の分?」
     頷きが返れば店主の鑑だねと笑み刷いて、取り出したのは小さなリース。キャンディケーン持った天使の人形が二つ飾られている。
    「こーゆーのもありかなって。あとはジンジャークッキー♪」
    「さくら先輩、いいですね」
    「わたしもクッキーをオーナメントにしてみたよ」
     恢が破顔した隣、凛の手にもアイシングクッキーやステンドグラスクッキーが綻ぶ。試行錯誤したけれどうまく出来て良かったと笑う凛に、いい感じに出来てるわよと鈴音が深緑のリボン結いながら眦緩めた。
     これからも皆と一緒に、これからもずっと続いていきますようにと、凜は願う。
     一方恢の手持ちの籠には金糸銀糸のレースリボンが大小様々。結構編めたなとほくほくしながら、これからを思い丁寧に結んでいく。ツリーが賑やかになっていいですよねと褒めたのは、涼子の飾り。感謝のモールと幸運祈るリース、魔除けの柊。林檎と仏頂面の天使の人形と多種多様。
     兄への思い秘めつつ勇弥に高い位置の飾りつけ頼めば、更にツリーが華やいでいく。
     ミニスカシスターサンタ風のオリヴィアが、鼻歌交じりに可愛い天使の人形を飾る最中。紅白のキャンディケーンもそっと重ね合わせる。愛する人と末永く、隣で支え合うように。
     オリヴィアがちらり視線を流せば、天音が飾った天使の人形が見える。見る人が見ればすぐわかる、真っ白なドレスにヴェール、ブーケをつけた幸福な姉の姿。嘗て翔と行った依頼を思い返せば、懐かしいなと翔も瞳細める。気づいた鈴音も視線を伏せた。
     他方、神凪の義きょうだいの絆思わす、天使の人形も揺れる。白いマフラーも揃いで揺れる。
     人形は五体、ケーンも五本。仲良く並べて飾ろうか。はしゃぐ陽和に空凛がはにかむ。
    「姉さまが届かない場所は私が飾りますね」
    「では陽和が届かないところは私が」
     一際背の高い双調が角度を調節すれば、灯りに天使が浮かび上がる。
    「最後に葡萄を飾りましょうか。『家族の幸せ・安泰』を願って」
     豊かな房が実る頃、義きょうだいの縁も繋がっていく。
     そうして全体を見渡した勇弥が笑みを零す。その思い辿ったように、
    「この学園そのものみたいな素敵なツリーですね」
     恢が声を手繰る。オリヴィアも本当に綺麗ですねと微笑んだ。
    「皆と飾れて、よかった」
     カフェのぬくもりこそが、ツリーに宿っている。

    ●祈念
     そちらはどうした?
     各種飾りを揃えた純也の問いに、昭子は青と白のリボンを掲げてみせる。点ではなく線、帯の縁を願う事に内心得心しつつ、純也は望む縁への援けが必要なら知らせるよう告げた。昭子も頷く。
     くるくると指先にリボン遊ばせ。
    「ぜんぶ。ぜんぶ、純也くんの願いなのでしょうか」
    「ぜんぶだ。……、俺の為の祈りだが俺の願いでは無いな」
     これだけ願いが託されたなら、夜には昇り星になる。
     一瞥された小箱に夜色リボン添え、彼の願いにも繋がるものがあればと、祈る。
     高いところにするりと登った勇真が翔と目が合った時、そういえばと言葉紡ぐ。
    「高三仲間だっけ、進路どうした?」
    「多分理学部かな」
     灼滅者として活動するうちに気付けば高三。
    「ま、なんとかなるか」
     天使を飾り、有りの侭の自分を見出そう。
    「んなもんギフトボックスに決まってんじゃん」
     リュシールに問われた一がにししと笑う。意味を鑑みなくとも、めいっぱい欲張り楽しむだけ。
    「らしいわよね。あなたの宝物って何になるのかしら……ひゃっ」
     思索に耽った隙を突き、リュシールの後ろ髪に赤いリボンを結ぶ。オレからのプレゼントだと胸張る一は子供らしくも堂々と。
     一方リュシールは意味を顧みて、頬を染めた。
    「……勝手に女の子の髪を触るんじゃないわよ?」
     ケーンで軽く頭を叩けば、煌きがきらりと、降って来る。
     倭に肩車してもらったら、ましろも巨人になった心地。輝くベルを飾って、彼や皆の厄を祓ってくれる事を願う。
     傍らで倭は林檎とケーンを下げていく。
    「今年は一緒に居られる時間がちょっと少なかったから、来年はその分を取り戻したいなぁ、って」
    「……ふふ、大丈夫だよ」
     いつもきみはわたしのここにいる、と心を指して。
     飾り終えたら写真を撮るため、倭がましろを抱え直す。近寄る輪郭、重なる吐息。
     鼓動が跳ねる。
     これじゃ、頬がアップルドロップみたいになっちゃうよ。
     りねとポンパドールが選んだのは赤いキャンディケーン。
     高いほうがサンタさんに見つけてもらえる、と脚立に乗って飾りに行こう。
     明日も一緒にいられますように――そんなささやかな願いはきっときざはし。一段一段の積み重ねこそが君との大切な未来を築いてくれる。
     手を伸ばしながら、視線交わしはにかむ。
    「明日が来ても、私が一緒にいるから大丈夫」
     りねが囁けばポンパドールも優しく瞳を細めた。
     また夜に飾り付けしたツリーを見に来ようね。
    「登っちゃダメなの?」
     ミカエラの訴える視線に、天辺の星を飾った翔が大丈夫だよと柔く笑んだ。銘子にはダメと念押し、明莉に茶化されていたけれど。
    「俺の願いなんてたかがしれてるけどね」
    「自分の願いをそんな風に言わないの」
     自己を卑下しているようなもの――銘子がそう告げデコピンを向ければ、明莉は敵わないと苦笑刷く。
     杣にブリキ葉のガーランドを飾る場所相談する銘子の横で、ミカエラはクリスマスカラーのリボン紐解く。オトナっぽいでしょと胸張る彼女の願いは、『これからもいっぱい、仲良しが増えますように』という、欲張りでキュートなもの。
     賑やかしと嘯く銘子にらしいと瞳細め、杣が導いた先に明莉は金の林檎を飾った。
    「ごめん」
     大地に届け。伝わってくれ。
     祈り傾け向かう次の会場は、お腹を満たしてくれる場所。
     内羽根の靴と空色ピンヒールに、薔薇とオレンジのポプリが薫る。
     二足を赤い糸で結ぶ。美希がわたしでも手が届く所に飾ってくださいねと膨れ面になれば、優生が高く掲げた手を慌てて下げた。
     二人分の靴にかける願いは――『死が二人を分かつとも、黄泉路へ向かうその前に、この樹の下であなたを待つ』。
     御呪い紡いで、離さぬよう捉えてしまえ。この身灰になった先も傍に。そう思えば不安も消える、だから。
    「精々長生きしましょうねぇ」
    「そうだなあ、まだまだやりたいことは沢山あるからなあ」
     密やかな契りは粉雪に紛れる。
     手を繋いで、歩いていこう。

     冬風が吹きベルが鳴る。
     メリークリスマス。

     見るだけで心がほっとあたたまるようなツリーが、祝祭を見守っている。

    作者:中川沙智 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月24日
    難度:簡単
    参加:55人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 3
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