水着を着てくれェーッ!!

    作者:芦原クロ

     ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)が事前に調査した結果、とある露天風呂で都市伝説が出現することが判明した。
     灼滅者たちを連れて来たと同時に、一般人たちの悲鳴が聞こえて来た。
    『頼む! 着てくれ! 出来れば美女が美少女か、美少年か美男子でもいい! 女性用水着だが!』
     急いで露天風呂に向かうと、すみっこに固まって怯えている一般人たちに、男が頭を下げて頼み込んでいる。
    「い、いやー!」
    『着てくれェエエエッ!!』
     逃げようとする一般人たちに男は襲い掛かり、手にしていた水着を無理矢理着せてしまった。
     一般人は全員もれなく気絶し、男は、まだ水着が残っているのに……と嘆いている。
    「時期が過ぎて売れ残った水着を、無理に着せてくる都市伝説。間違い無いね」
     ミルドレッドは気絶した一般人を安全な場所へ運びながら、灼滅者たちに説明した。

     実際に現場を目にすると、いくつかの点が発見出来た。
     見えるか見えないかの、ギリギリのスピードで、身にまとっているものを取って水着に着せ替える、都市伝説の手際の良さ。
     水着を着せられると一般人なら気を失うが、灼滅者たちなら大丈夫な気もする。精神的なダメージはともかく。
     水着は女性物だけで、セクシーなビキニから、可愛いワンピースタイプや、なぜかスクール水着まである。
     そして、この都市伝説は変態だということ。
    「水着を着せられる前に倒せば、問題ないよね」


    参加者
    ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)
    辻堂・璃耶(六翼の使者・d01096)
    月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366)
    羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)
    一条・京(爽涼雅遊・d27844)
    深夜白・樹(心は未だ薄氷の上・d32058)

    ■リプレイ


    「よーし、ミリーちゃんで遊ぶぞー! あ、口が滑った。都市伝説を倒して、ミリーちゃんと遊ぶんだった!」
     口が滑っても、笑顔を崩さずに言い直す、羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)。
    「ミリーさんには着せる、さっちゃんは守る、樹さんは遊ぶ、でいきますですね」
     日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366)が方針を告げ、しっかりと頷く。
    「皆さんでミリーさんで遊べばよいのですか……」
     ある意味、空気を読んでいる辻堂・璃耶(六翼の使者・d01096)。
    「変なの見つけちゃったから、みんなに協力お願いしたわけだけど……なんでみんなでボクで遊ぶ流れになってるの!?」
     ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)が味方は居ないのかと、仲間たちを見回す。
    「売れ残った水着、それも無理やり着せるなんて趣がない都市伝説だよね。うーん、一般人が来ないように百物語使うね。深夜に色々な妖怪がやってくる温泉物語……」
     都市伝説の男から一定の距離を保ちつつ、一条・京(爽涼雅遊・d27844)は怪談を話し始めた。


    『び、美女や美少女がこんなに!? 頼む、水着を着てくれェーッ!』
     男は灼滅者たちを見るなり、スライディング土下座。
    「どういう欲望が渦巻いたらこういう都市伝説が生まれてしまうのか……」
     月雲・彩歌(幸運のめがみさま・d02980)は生ぬるい眼差しを男に向け、思案している。
    「変態さんは、めっなのですよ」
     男の手から水着を取り上げる、日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)。
     取り上げた水着は、数秒も経たない内に消え、男の手に戻った。
     都市伝説を倒してから、奪った水着でのんびりとショーは出来ないのだと察する、灼滅者たち。
    「女の子たちの少しアレな水着とその反応見るのは楽しみだから、うーん……倒すタイミングが難しいなぁ」
     誰にも聞こえないほどの声量で、京はぽつりと呟く。
    「売れ残りってどんな水着なんだろ」
     不思議がる結衣菜に、男が水着を着せようと動いた。
    『水着を着てくれ! キミらのような美女や美少女に着られる為に、水着は存在するんだーッ!』
    「だ、大丈夫ですか……って……!?」
     結衣菜をかばった深夜白・樹(心は未だ薄氷の上・d32058)は、真っ白なビキニを着せられてしまった。
     その水着にどんな用途が有るのかは不明だが、完全に布地が透けている。
    「これじゃあ着てないのとあんまり変わりませんー!」
     恥ずかしさに顔を真っ赤に染め、慌てて、いけない部分を手で隠す、樹。
    「ああ、なんてことなのです。私たちから犠牲者が出てしまうなんて」
     言っていることと、言葉の抑揚が合っていない、沙希。
    「これを使って!」
     身動き出来ずに居る樹に、京がラッシュガードを渡す。
     流石にショックが大きそうだと、思ったのだろう。
     優しい京のお陰で、ラッシュガードを着た樹は羞恥の地獄から、一時的に救われた。
    「ミリーちゃんにはお姉ちゃんは絶対渡さないのですよー」
     急に翠の手を握って引っ張り、沙希はミルドレッドから翠を引き離そうとする。
    「沙希は、ボクにとっても妹のようなもののはずなんだけど、今回は恋敵?」
     どうなっているのかと、不思議がるミルドレッド。
    「ミリーちゃんはいつも独り占めしているんですから、たまには私とおねえちゃんでラブラブするのです」
    「恋人なんだから、独り占めにするのは当たり前じゃないかー」
     沙希が不満を零すと、ミルドレッドも自分の恋人が取られているように感じ、不満げに主張する。
    「売れ残りとはいえ冬に水着を着せるとか、ちょっとズレた都市伝説さんなのです……ですから水着も売れなかったんでしょうねー……」
     当の翠はほんわりと、感想を述べている。
    『冬でも温水プールとか有るだろ!? 売れ残っててマジでピンチなんだよ! 着てくれー!』
    「この都市伝説って実は可哀想な奴なのでは? 夏のシーズンに、希望を抱き入荷した水着が大量に売れ残って破産した店主の怨念とか……世知辛いね!! 折角だし私もエイティーンして、膨らみをアピールするよ」
     結衣菜が1人納得し、エイティーンを使用してきらきらと光る。
    「ビキニとかまでは良いけど、変な水着はお断りよー?」
    『美少女が美女になった!? い、いや、細かいことはこの際どうでもいい! 着てくれ!』
     茶色のポニーテールが映える、水色のオトナ可愛いビキニが、結衣菜に着せられる。
    「露出多いのだったり派手なものばかりかと思ってたけど、似合うのも有るんだね」
     楽しそうに見守っている京に、男が急接近。
    「けれど、自分の番が来る前に……って、キャー! やめて、見ないでー」
     棒読みで悲鳴を上げる、京。意外と、ノリノリである。
     着せられたのは、スリングショットの水着。体型が普通の京も、水着効果で胸が大きく見える。
    「さすがに無理矢理着せられたくはないんだけど……って、ちょっと待って、翠! なんで翠がボクに着せようとするわけ!?」
     ミルドレッドの悲鳴が上がり、一同が目を向ければ、持参した水着を片手に翠が、ミルドレッドを追い駆けている。
    「いつかミリーさんに着てもらおうと思っていたものです。この機会に着てもらっちゃうのです。紐、貝殻、メッシュの中から選んでもらいたいのですー」
    「どれも微妙な……えー、これが翠の趣味、なの……?」
     恋人でも、たまに見える今回のような感性にはついていけず、逃げ回るミルドレッド。
    「ふふ、ミリーちゃん。樹ちゃんみたいにナイスバディになりたいなら、大人しくいちゃつかれなさいー!」
     結衣菜が満面の笑みで、接近する。
    「うふふ、この胸でミリーちゃんを抱きしめて、包み込んであげるんだ……はい、ミリーちゃん、堪能してねー!」
     結衣菜まで加わり、ミルドレッドは複数人から追い駆けられることになってしまう。


    『水着を着てくれー!』
    「樹シールドも駆使して何とか水着にならないようにはする……!」
    「ミリーさんを集中攻撃しちゃうのですか!? って、そこでまたこうなっちゃうのですかー!? 大胆なデザインのが割と多いのですが……!?」
     あわてふためく樹を盾にし、ミルドレッドは男から水着を着せられることを防ぐ。
     なぜか樹に着せられる水着は、いけない感じのものが多い。
    「樹さんには水着っぽいシールも用意しますです」
    「水着シールを貼っちゃいましょう♪ よくできていますので、水に浸からなければわかりにくいのですよー」
     沙希と翠が愛らしく笑い合いながら、樹にシールを貼る。
    「ひゃうっ!? そそそそんなにしっかりはろうとしなくてもだいじょぶですのでー!? それに、温泉に入ったらはがれちゃいそうな予感がするのですがっ」
     真っ赤になりながら、樹は焦り、あたふたする。
    「お姉ちゃんに審査して貰いましょう。どの水着がミリーちゃんに似合うかな~。ひょっとして、お姉ちゃんとしては、裸の方がいいかな?」
     沙希が翠を見ると、翠は真面目な顔をしていた。
    「ミリーさんで遊ぶのはいいとしましても、ミリーさんがギルティサイズになってしまいますと、いよいよ取り残される感じなのです……ミリーさんは、わたしが初もぎするのですー!」
     翠にとっては深刻な悩みのようだ。
    「ボクの味方はいないのっ!?」
     ミルドレッドが、とっさに叫ぶ。
    「大丈夫だよ、ミリーちゃん。色々楽しみにしてるからね!」
    「ミリーさんに向けられる視線が中々凄いことになっていますね。なんていうんでしたっけ、これ……因果応報……?」
     結衣菜は笑顔で返し、彩歌は楽しそうにクスクスと笑っている。
    「以前も洒落の利く範囲で味方を盾にしていたこともあったし、それはそれで運命なのかもしれない。そもそも今回は洒落の利く範囲だし……まあいいか」
     こくっと頷き、呟き終えた彩歌は微笑む。
    「私は、ミリーさんがどんな水着になるのか楽しみに見守りますね!」
     普段は真面目な彩歌だが、悪乗りが出来る時は、お茶目な一面も見せる。
    「沙希や結衣菜もボクを狙ってるし、京や彩歌は見守る構えだし、璃耶くらいはせめて……」
     助けを求め、瞳をうるませながら璃耶を見つめるが、璃耶は微笑み返すだけだ。
     仲の良い者同士の、じゃれ合いだと思っているのだろう。
    「いろんな人に揉まれた樹ちゃんはたったの1年であんなにも成長して……羨ましいと思わない? たったの1年で見違えるほどのバストを手にいれたのよ!」
    「ボクも胸揉まれたからって、そんな簡単に膨らむかー!? エイティーンしても変わんなかったしね……くっ」
     結衣菜の説得に、悲しい事実を吐露するミルドレッド。
    「うぅ……沙希もエイティーン結衣菜も、ついでに傍観組も、ぎるてぃはもいでやるーっ!」
    「辛そうなミリーちゃん……私がなでなでしてあげる。あ、もがないでー!」
     やけになったミルドレッドが、仲間たちに襲い掛かる。
    「どうしたのミリーちゃん、わたしそこまで大きくないよー! ね、落ち着いて……」
     水着効果で胸が大きく見えるようになった京が言っても、説得力は無い。
    「ミリーちゃんも、ぎるてぃにしてあげますよ」
     沙希は反撃の構えで、ミルドレッドの胸を揉み返す。
    (「大きくなるのですよ」)
     しっかりと、そんな願いを込めて。
     ミルドレッドの手から逃げていた彩歌が、急に、水着を着せられた。
     都市伝説の男はミルドレッドを狙い続けているのだろうと、安心しきっていた彩歌は、隙だらけだったのだ。
     スタイルが良く、豊満な体型の彩歌が着せられたのは、自分では普段は絶対着ないような、過激な水着。
     スリングショットの水着を着せられ、耳まで赤面する、彩歌。
     羞恥にさいなまれている間に、マイクロビキニを着せ替えられる。
     露出した彩歌の肌は、全身、ゆでだこのように赤らみ、彩歌は恥ずかしさで身動きが取れなくなってしまう。
     いつの間にか、ミルドレッドもスクール水着を着せられていた。
    「結局は……なんでスク水……だれ? ぺたんだから似合ってるなんて言うのはっ!?」
     ミルドレッドが周囲を見回している間に、都市伝説の男は沙希に急接近。
     水着を着せようとするが、その前に、手をすごい力で掴まれる。
    「さっちゃんに、なにをしようというのですか」
     笑顔だが、黒い。
     男の手首をギリギリと力強く掴みながら、翠はドス黒い怒りのこもった笑顔を向けている。
     彩歌もプツンとなにかが切れ、瞳の奥の光が消えた。
    「さっちゃんはわたしが守るのですよ」
    「悪い子は、お仕置きなのです」
    「……うん、都市伝説はさっさと斬りとばそう」
     異形巨大化させた片腕を大きく振るい、翠は敵を殴り飛ばす。
     連携した沙希が攻撃を繋ぎ、ミルドレッドが同時に、大鎌を敵目掛けて振り下ろす。
    「仲間を守る事を優先! って、攻撃できそうですか!?」
    「ふふ、樹ちゃん。折角だし一緒に攻撃しない?」
     声を掛け合い、樹は内蔵した祭壇を展開し、結界を構築。
     逆方向から結衣菜が破邪の白光を放ち、強烈な斬撃を敵に浴びせる。
    「クラッシャーとして攻撃に専念しましょうか……」
     彩歌は翠羽の飾りがほどこされた柄を握り、先祖伝来の名刀、斬線で重い斬撃を繰り出す。
     クラッシャーの璃耶の攻撃が直撃し、都市伝説の男は消滅寸前だ。
    「酷い目にあったし都市伝説を倒そうか。お仕置きだね」
     死角に回り込んだ京が、敵の急所を絶ち切り、トドメを刺す。
    『美少女も美女もぺたんも最高だぁあああッ!!』
     都市伝説の男は最期にそう叫び、完全に消滅した。


     戦闘が終わると、慈愛の心を持つ璃耶は、一般人の様子を見に向かう。
     百物語が使用されていた為、一般人は目覚めるなり次々と去ってゆき、露天風呂は貸し切り状態になっていた。
     着せられていた水着も都市伝説と共に消え、裸体をさらすことになる灼滅者たち。
     女性メンバーだけで良かったと、胸をなでおろす。
    「ひとまずはのんびりと過ごしましょうか……。色々と大変でしたし……」
     彩歌が仲間たちに声を掛け、色々な疲れを取ろうと湯に入る。
    「みんなで温泉に入りたいですね。水着なしでもおっけーですけど、着用なら湯浴み着を着たいのです。あ、樹さん、シールのままだと……!」
     翠は沙希とミルドレッドの間に入り、湯の中で2人と手を繋ぎながら温泉を楽しむが、はっと思い出し、声を掛ける。
     が、時既に遅し。
    「あわわわ……やややっぱりだめでしたぁー!」
     温泉に入っていた樹は、貼られたシールが剥がれてしまう。
    「露天風呂でゆっくりお姉ちゃんとラブラブするのですよー。ミリーちゃんともスキンシップするのです。皆で、ぎるてぃになろう」
    「そうよ、いやんいやんと遊ばれ続けたから樹ちゃんは立派な、ないすばでーに成長したのよ」
     沙希がミルドレッドの胸を揉もうとし、結衣菜もそれに乗る。
    「だから揉まれてもそんな急には膨らまないからぁっ!」
    「温泉で洗いっことかしたいなぁ」
     ミルドレッドが反論していると、京が言葉を挟む。
     その案をあっさり受け入れ、灼滅者たちは和気あいあいと、楽しそうに温泉を満喫した。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年12月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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