「皆の者ォ! いまより雪合戦をすりゅのじゃ! 支度をととのほびゅっ――!?」
シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)の横顔に雪玉が直撃した。
なんで急にこんな話になってるのかっつーと、シルフィーゼたちがかのラジオウェーブ放送を確認したためである。(ラジオウェーブ放送ってのは、放送された内容が都市伝説として実体化しちゃうウワサのアイツだよ☆)
それは北陸のイイカンジに雪が積もった原っぱでのこと。
どこからともなく現われた雪だるま軍団が雪合戦を挑んでくるというものだ!
●最終話 雪合戦部員の逆襲(嘘)
「ようすりゅに、ゆきだりゅまとゆきをぶちゅけあうようにさいきっきゅでやっちゅければよいのじゃ!」
しりゅふぃーぜ語ではいまいち分からないという人のためにエクスブレインが要約するにゃあ――雪だるまの軍団が現われ雪を投げつける的な攻撃をしてくるので、そいつらをサイキックで倒せばいいという話である。
「たかが雪だるまと侮りゅなよ! 放置しゅれば一般人に危害がおよびゅかもしれにゅのじゃ! いやじゃろ、『死因:雪合戦』とかいやじゃろ!」
相手も相手で雪合戦をするためにいるような存在なので、普通にポン刀でぶった切ったりガトリングでばーってやると「そんなん雪合戦とちゃう!」とか言いながらひょいひょい回避するかもしれないので、雪合戦ぽさを出しながら戦うと非常にグッドだ。
「理解したようじゃな。では改めて――雪合戦をすりゅのじゃ!」
参加者 | |
---|---|
彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131) |
シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461) |
風真・和弥(仇討刀・d03497) |
天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476) |
一条・京(爽涼雅遊・d27844) |
癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265) |
ルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246) |
吸ヶ峰・血早(高校生ダンピール・d35925) |
●雪玉でも殺し合いができちゃう世界
紫リボンがついたフードポンチョ。
雪道を長靴でざくざくとやりながら、もこもこの手袋で雪玉を転がしていく。
冷たくなった手を口元にあててはーってやりながらシルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)は振り返った。
「ハッ、ちがうにょじゃ! バリケード用の雪をあちゅめてりゅのじゃ! 遊んでるわけじゃない!」
「わかってるわかってる。ほら、コーヒー買ってきたよ」
彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131)の出した缶コーヒー(甘いやつ)を受け取って、プルタブをかしゅっとやる。さくらえと二人でふーふーしていると、集めた雪で壁を作っていたルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246)がぐいっと額をぬぐった。
「不思議だね。雪だらけで寒いはずなのにむしろ熱いや」
「本来そういうものですもんね、雪合戦って」
癒月・空煌(医者を志す幼き子供・d33265)が雪玉を二個重ねて雪だるまにすると、にっこり笑って頬に寄せた。
いま美少女が四人いると思うじゃん。男女比五分五分なんだぜこれ。
「したいから」
「したいとき」
「したいでしょ」
「「いっしょに――」」
ハイッの勢いで雪塹壕の裏から看板を引っ張り出す天原・京香(銃声を奏でる少女・d24476)。
『ざんごうぐらし』と書いてある看板を一旦へし折り、京香がすぐそばの一条・京(爽涼雅遊・d27844)の襟首をひっつかんだ。
「言うとおりにやったら大やけどしたじゃないの!」
「私はそこまでやれとはいってないよ? それはそうと、さ」
京はほんわかと笑って京香の肩を叩いた。
「今日はどんなおもしろいことをするの?」
「しないわよ!」
「雪遊びって……」
吸ヶ峰・血早(高校生ダンピール・d35925)は徹夜明けみたいな目をして缶コーヒーをすすった。
「賑やかな遊びなんですね」
「どこをみたらそう思えるのよ」
「けどあっちは楽しそうですよ?」
血早が指さした先では、風真・和弥(仇討刀・d03497)が天空に拳を突き上げて英雄ポーズをとっていた。アニメのオープニングくらいでしかやらないポーズだった。
「雪が降ったら雪合戦! 今年も遊びに来たよ灼滅者! 節減でうなりを上げる雪玉貫通殺! そして粗鳴る魔球44ソニックオンフリーズとは! 冷たい雪のなか、炎より熱い激戦に何を得るのか! 次回、雪原の死闘に――スノーファイト・レディー……ゴー!」
●雪合戦に公式ルールがあるらしいって話?
「知らんなあ!」
地面からバホンと音を立てて飛び出した雪だるまたちが、どこから取り出したのかわかんない雪玉を大量に投擲してきた。
「前置きナシでオンステージなんて、ゲリラなことしてくれるね――いいよ、受けて立つ!」
ルイセは防寒耳当てのようなヘッドホンを装着すると、ギター片手に雪壁の上に飛び乗った。
「上に乗った!? なにしてるんですか、なんのために雪で壁を作ったと思ってるんですかあなたは!」
驚いて見上げる血早。
ルイセはベルトバックルからギターピックを引き抜くと、ニカッと笑って指を突き下ろした。
「壁は乗り越えるためにある!」
「――!」
そのめちゃくちゃな理論は、千早の脳を揺らした。ベルリンの壁が壊れた時、壁の上でハンマーを振り下ろした男たちがいた。その光景が、なぜか脳裏に浮き上がる。
「ロックンローッル!」
ルイセが強引にかき鳴らしたギターミュージックは大量に飛来する雪玉を相殺して破壊していく。
「どうなっても知りませんからね……!」
などと言いながらも、血早は雪を熱で溶かしてミストを発生。ルイセの姿をぼやけさせていく。
「はじまったみたいだ」
雪を投げる雪だるま軍団。鳴り響くギターソロ。
さくらえは固めた雪で足を踏みならすと、パチンと指を鳴らした。
オーラが赤いしぶきのように散り、パッとひらいて盾となる。
雪玉をはじいて壊すと、もう一方の指を鳴らして払う。
空間が裂けたかのように開いた、雪玉の隙。そこを狙い撃つかのように、オーラで握り固めた雪玉を投擲した。
「へっへっへ、俺たちの猛攻におされてやがモゲハ!?」
「兄弟~!」
雪だるまの頭が一個無くなった。
「うみゅ」
雪壁に身を隠していたシルフィーゼがニッと笑った。
「サイキックエナジーでできた雪玉を投げて戦い――全滅した方が負け。シンプルなルールじゃの」
制圧戦ルールにしようと思ったのに、とチョッピリ気持ちを右拳に残しつつ、されどこいつぁサイキックバトル。実体化した都市伝説は、サイキックで破壊するが定め!
「受けて立ちゅのじゃ!」
雪壁から飛び出したシルフィーゼは、刀の背にエネルギーで固めた雪を大量に乗せ、バットスイングで打ち出す勢いで振り切った。
「雪玉月光衝!」
拡散して飛ぶ雪玉。
距離を詰めて雪壁ごと破壊しようとしていた雪だるまたちに直撃し、彼らは一斉にひっくり返った。
「今じゃ!」
「よし!」
シルフィーゼのカットイン。
アンド、和弥のカットイン。
「今こそ見せるぜ、多くのダークネス組織を崩壊させ、レベル90台に達したこの俺の――」
豪快なフォーム。
輝く右腕。
握りしめた雪玉が紅蓮に光る。
「雪玉貫通殺!」
往年のソフトボールオリンピック選手さながらのアンダースローで放たれた雪玉が、雪だるまの腹を貫通していく。
グッと右腕でガッツポーズする和弥。
学園が動き出した当初、8人がかりで戦っていた相手。今の和弥なら、当時の敵を一人で相手にできるかもしれない。そういう意味では……。
「もはやこの強さ……もはや闇そのものか」
「あいつら、『やってる』ぜ」
「ただもんじゃねえ、ぶっ飛んでるよ」
「かんけーねえ! ころせー!」
ホーリーのランドに出てくるヤンキーみたいなことを言いながら雪玉突撃をしかけてくる雪だるまたち。
「ひゃっ、つめたいです……!」
隙を見て攻撃に出ようとした空煌に雪玉がばしばしと当たり、服のあちこちがびしょびしょになっていく。なんだかんだでHPも削られるサイキック雪合戦なのだ。
空煌ぴょんと雪壁の裏に飛び込むと、大きな護符を雪壁に貼り付けた。
ガチガチに硬くなった雪壁が雪玉を弾いていく。
それでも次々にぶつけられる攻撃に、壁も徐々にもろくなっていった。
「このままじゃ耐えきれないです」
「大丈夫大丈夫。ちょっと頭を下げててね」
京が殺気を込めて握りしめた雪玉をピラミッド状に積み上げていった。
その一番上をちょんとつまみ上げ、くるくると回しながら放り上げた。
まるで大きな石でも投げたようにごうんごうんと空気が唸る。
それを掴み、握り、雪壁から身を乗り出す。
「壊れちゃっても、しらないよ」
投げ込んだ雪玉が雪だるまの一体に直撃。
倒れた雪だるまを飛び越えるようにして、複数の雪だるまが接近をしかけてきた。
「至近距離から雪玉をぶつけるんだ!」
「壁なんて回り込めばこっちのもんだぜ!」
「ヒャッハー! 女だー!」
途中から世紀末みたいなことを言いながら雪玉を振りかぶる雪だるまたち。
京は近づいてきた雪だるまに雪玉をぶつけて倒すと、サッと壁の裏に引っ込んだ。
「京香さん、よろしく」
「まさか雪合戦でこのモードになるとはね」
雪壁を支えにしてアサルトライフルを構える。
フルオート射撃で右から左へ流し打ち。至近距離で放たれた極小の雪玉が、近づいてきた雪だるまたちにばちばちと当たっていく。
何体も打ち倒し、起き上がっては倒し、まるでゾンビの群れと戦うシューティングゲームよろしく撃ちまくった。
ガチンという弾切れの音。弾数をカウントしていた京香は既にサブウェポンの拳銃を抜き、直後には構えていた。
眉間を狙って、トリガーを引く。これを15セット。
機械のように小刻みに動作すると、すぐさま頭を下げ『リロード!』と叫んだ。
リロードタイムを補うように飛び出した京が両手に握った雪玉で至近距離から雪だるまたちをなぎ倒していく。
「一人だって近づけさせないよ」
薄く笑う京。
雪壁の後ろで、空煌はハッと頭を上げた。
「あれ? これって雪合戦ですよね?」
●雪合戦という名の殺し合い
「これは本当に雪合戦なんですか……?」
千早はぼそりと独り言をいって、雪壁から飛び出した。
サイキックを集めて雪だるまのような着ぐるみを着込み、ぶつかる雪玉に耐えながら突進。
相手の作り出した雪壁をそのままタックルで破壊すると、壁の裏から現われた雪だるまが至近距離から雪玉を叩き付けてくる。
こちらも負けじと紅蓮のオーラを纏わせた雪玉で反撃。
双方の雪だるまヘッドが崩壊。
相手はあそのまま崩れ落ちたが、血早は雪だるま着ぐるみが壊れただけだった。内側に展開していたエネルギーシールドが、雪玉の侵入をギリで防いだのだ。
息切れ汗。頬にながれる汗を手の甲でぬぐい、血早は腕を乱暴に振った。
氷で覆われた雪玉が放射状にとび、雪だるまたちにぶつかっていく。
「助太刀っ!」
飛び込んできたルイセがスタンドマイクを握りしめ、ぐるぐると回転して雪玉をはじき飛ばした。
「雪を投げて楽しければ、それでもう雪合戦だよ」
「そんなメチャクチャな」
ルイセは大地を踏みならすと、あちこちに積んだ雪玉を振り上げた、ギタースイングで打ち放ち、周囲の雪だるまたちに反撃を仕掛けていく。
「で、一方的にやれないのも雪合戦だよね」
ピッと指を立てる。と、ルイセに大量の雪玉が集まってきた。咄嗟に庇い倒す血早。
「うわ、集中攻撃ね……」
雪壁の裏からアサルトライフルを撃ちながら、京香はルイセのありさまを見ていた。
「けど相手の防御を壊したのは正解だったわ。火力はこっちが勝ってるから、押し流すように勝ちにいける」
「京香さん京香さん」
「なによ、さっさと弾よこしなさ――」
「今日はおもしろいことしないの?」
マガジンを手渡しながらニッコリと笑う京。
それを受け取りながら真顔の京香。
「私がいつおもしろいことしたのよ」
「いつもしてる印象だけど。脱いだり、脱がしたり?」
「ぬがしてない!」
地面にべちーんとマガジンを叩き付け、京香は立ち上がった。
「大体今日は雪合戦でしょ!? そんな少年誌のエッチなサービスシーンみたいなこと起こるわけ……ハッ!?」
京香の脳裏にいろんなものがよぎった。
宇宙。アルパカ。アメリカ総理大臣。あとエッチな少年誌が冬になるとやるサービス回。大体が温泉ネタだが中には雪合戦ネタがあったはずだ。
なんだっけあの、雪合戦で『私のアソコは○○君のでぐしょぐしょなの』って言い出した漫画。
「まずい! ここも射程圏内!」
振り返る京香。
その横を走り抜ける空煌。
「こ、これでどうですかっ?」
空煌が導眠符を巻き付けた雪玉をえーいといって投げると、それが直撃した雪だるまがしめやかに爆発四散。『永久に眠れ』的な導眠符である。
が、反撃にと他の雪だるまが投擲を開始。
ひいといって雪壁に引き返した空煌が足を滑らせ、宙を舞った。
「――!?」
慌てて身を屈める京香……の頭上を飛んでいき、その後ろにいたシルフィーゼに覆い被さるようにぶつかった。
「「うにゃー!?」」
「いたた……」
雪上で仰向けに倒れ、おでこをさすりながら頭を起こすシルフィーゼ。
「ん?」
何かに気づいて胸元を見ると。
力尽きた雪だるまが乗っていた。
雪だるまだった。
そっと横を見ると、京香が絶妙な角度で空煌の頭をキャッチしていた。
ぷらーんとぶらさがる空煌。
「えっと、なにがどうなったんですか……?」
「わしにもさっぱり」
ふうと息をつくと、京香は空煌をその場に下ろした。
そして人生の先輩みたいにふぁさあっと髪をかき上げてみせる。
「シルフィーゼ。あなた確か『事務所OK』だったと思うけど……事前確認やピンの前例が無かったからとりあえず止めといたわ」
「なんにょ話じゃ?」
きょとんとしつつも、すぐに思考を戦闘モードにチェンジ。
シルフィーゼは飛び込んでくる雪だるまに零距離雪玉パンチを叩き込むと、紅蓮のオーラで内側から爆殺した。
「よくわからにゅが――雪合戦を続けりゅのじゃ!」
「応!」
急に加わってきた和弥が雪玉を両手に持って雪だるまへと飛びかかった。
「雪玉――紅蓮斬!」
握った雪玉を豪速で叩き付けることで雪だるまを切り裂く風間和弥の必殺技である!
「雪玉――神霊剣!」
握った雪玉を非物質化させ敵の霊魂と霊的防御だけを直接破壊する風間和弥の必殺技である!
「雪玉正当防衛ラッシュ!」
正当防衛が成立するか曖昧な雪合戦で正当防衛を主張しながら殴る風間和弥の必殺技である!
ふうやりきったぜ、みたいな爽やかな顔で額をぬぐう和弥。
そんな彼に雪だるまによる雪だるまボディプレスが炸裂した。
「ぐあああああああああ!」
「和弥さーん!」
「ククク、忘れていたぜ。自らが雪玉である以上、体当たりは雪合戦に含まれるということをな!」
「この期に及んでずるいぞそれ!」
「ずるいかなあ」
もはや雪を握っただけの殺し合いと化しつつある現状、今更である。
「なら」
雪を強く踏みつけたさくらえが、強烈な跳び蹴りを叩き込んだ。
へぶうといって吹っ飛ぶ雪だるま。
「雪駄をはいた蹴りは雪合戦に入るよね」
「はいるかなあ」
「どんどんいくよ」
華麗に踊るように相手の雪玉をかわし、急速に接近するさくらえ。
至近距離まで入ると、雪玉を掴んだ両手で相手の頭を掴み、キックボクシングかってくらいの顔面膝蹴りを叩き込んだ。
粉砕する最後の雪だるま。
さくらえは手にしていた雪をはらはらとおとして、深く深く息をついた。
「さて、と」
武装状態を解除し、手近な雪を掴んで握る。
「雪遊びを、続けようか」
振り返って笑うさくらえ。
一同は一秒ほど真顔でじっとしたあと……。
「「いえー!」」
思考停止顔で拳を突き上げた。
都市伝説をみごと灼滅した灼滅者たち。
しかし雪遊びは、まだまだ続く。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年1月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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