初夢2018と初夢喰らい

    作者:るう

    ●武蔵坂学園、教室
     七福神に宝船。初夢といえば目出度いものだけど……それを誰かに語ってはならない。何故なら、年の境はこの世とあの世の境でもある。初夢話に誘われた魔が、語る人ごと初夢を食ってしまうのだ……。

    「今まで何度か初夢の話したけど、そんなこと、なかったけどなぁ……」
     不思議そうに首を傾げる姶良・幽花(高校生シャドウハンター・dn0128)。けれど、五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)に言わせてみれば、それは当然のことなのだ。
    「というのも、これはまだ、生まれたばかりの怪談なのですから。それが、恐らくは既に皆さんご存知のタタリガミの首魁『ラジオウェーブ』によるラジオ放送によって、新年早々に都市伝説になって、誰かを傷つけてしまうんです」
     赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)の調査によって明らかになったラジオ放送は、確かにその事件を予言してくれた。だが……それはエクスブレインによる未来予測ではない。事件が起こることはわかったが、具体的に誰が襲われるのかまでは判っていない。
    「そこで、皆さんには……お互いに初夢を語りあって、都市伝説をおびき寄せてほしいんです。そうすれば都市伝説は、本来の被害者の元には現れず、皆さんのほうに現れるでしょうから」
     その際、都市伝説は初夢に関する姿と能力を持つのだと、姫子はラジオの内容を灼滅者たちに語った。悪い初夢はそのまま具現化してしまうだろうし、良い初夢も良いものを装った魔物が現れるのだろう。お互いの初夢の話の中に、攻略のヒントが隠されているかもしれない。
     ……そう聞いて、ふと疑問を呈する幽花。
    「都市伝説を出すには、本当の初夢の話をしなかったらどうなるんだろ? 実際は何も見なかったのに適当な話する、とか」
     対する姫子の推測は、都市伝説には話の真偽は区別できないだろう、というものだ。
    「その気になれば、嘘の初夢話を使って、都市伝説の能力を誘導することもできるかもしれませんね。でも、せっかくの機会なんですから、そんなことは一旦忘れて、好きなように初夢を語ればいいんじゃないでしょうか? 皆さんであれば、都市伝説がどんな能力になったとしても、決して遅れは取らないはずですから」


    参加者
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)
    鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)
    山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)
    荒谷・耀(一耀・d31795)
    エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)
    御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)
    月影・木乃葉(レッドフード・d34599)

    ■リプレイ

    ●至福のこたつ
    「ああ、おこたの中が気持ちいい……」
     もぞもぞとこたつに入りこむ華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)の目が、思わずとろんと幸せそうに閉じた。
     ある種学園に『救われた』とはいえ、彼女は今も修行の身。年末年始は今年もお伊勢さんでの修法で忙しく、ようやく一息吐いたのだ。
     いつもは隙なんて作りたがらないのになぁ、とは姶良・幽花(高校生シャドウハンター・dn0128)の言。けれどもその何気ない一言が引き金となって、慌てて紅緋はこたつから飛びだしてしまったのだ。
    「……ご挨拶が遅れましたね。幽花さん、みなさん、あけましておめでとうございます」
     畏まって両手をついたなら、今度は立ち上がってその場でくるり。赤地に金雲・飛鶴の振袖は、目出度い新年によく映える。
     さりげなく簪と巾着袋もアピールしてポーズを決めた後、紅緋は、再びこたつに潜ってしまった。
    「みかんはありますね?」
    「とびきり甘いのを持ってきましたよ~」
    「じゃあお餅は?」
    「無論、正月には外せんだろう。雑煮にしてもよいだろうしな」
    「お餅を薄く切って揚げたおかきも持ってきたのよ。一昨年作ったのと同じなのよ」
     月影・木乃葉(レッドフード・d34599)、御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)、鏃・琥珀(ブラックホール胃袋・d13709)の答えを聞くと、紅緋は荷物におせちがあるから数の子取ってくださいと頼んで微睡むのだった。
     雑煮もいいが……あれは、初夢のわんこ雑煮のせいで、食べ飽きた。

     そうやって眠ってしまいたくなる気持ちは、木乃葉にも大変よくわかる。実際、彼は……落ちそうになる瞼と戦いながら、半ば舟を漕いでるんだから。
    「あのね……そういう時は、こうするシャキーンってするの!」
     そんな木乃葉の様子を見ながら、エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)が満面の笑みを浮かべた。それから自分の服の中をごそごそとまさぐり始めると……木乃葉の眠気もふっ飛んでゆく。
     エメラルは何もかもが歳不相応にお子様なタイプだ。木乃葉も女装に違和感がないとは言われるけれど……それでも彼は男の子。目の前でそんなことをされたなら、目が覚めて真っ赤になって俯くなと言われてもどうしようもない。
     もちろんエメラルの目的は誘惑じゃない。しばらくごそごそやってた彼女が取りだしたのは……。
    「さっぱりめのチョコアイスと、濃いめのミルクアイス……どっちがいい? 悩んじゃうと思うけど、今日はたくさん持ってきたから心配はいらないの!」
     木乃葉はどちらがどちらか確認もせずに、エメラルの手からアイスをもぎ取っていった。それから口いっぱいに頬張ったアイスで自分の顔を冷ましたら……誤魔化すように今日の本題を語りはじめた。

    ●サバイバル初夢
    「今年は、サバイバルゲームをしてる初夢を見ましたね~」
     夢の中。木乃葉が立つのは巨大な街。彼の手には重いモデルガンが握られており、空気はやけに張りつめている。
     戦場は街全て。見知らぬ相手と協力しあい、不注意な親友の側頭部に銃を突きつけて。
     救出を目論む敵チーム。が……それこそが木乃葉らの仕組んだ罠だ。
     読みあい、奇襲、騙しあい。
    「とっても楽しかったですけど、最後に食べたこれも、美味しかったです♪」
     そういって彼は鰹節粉末を取りだして、水で練り固めると皆に振るまった。

    「鰹節は……お魚! お魚といえばボクは、海行ってたの!」
     大きくて、やけに静まった海。特別なはずの初夢なのに、エメラルは広大な海の中に独りぼっち。
    「でも目をこらすと、遠くにぎりぎり陸地があるのがわかるの。そしてね、そこまで続く、長い足場がひとつ、あったんだ」
     風もなく、幅もそこまで狭くない。なのに、どうしても足を踏みだせない。
    「だってね……ボクは、解ったの。ボクは、これを渡らないといけない。でも、もしも途中で足を踏み外したら……その瞬間、たくさんの人の命が失われるって」

     プレッシャーに押しつぶされる前に目が覚めたのは、彼女にとっては幸いだったかもしれない。
    「一体、何がそんな夢を見せたのだろうな」
     百々は少しばかり考えこんでから、次に自分の初夢を思い返して語る。
    「我は七不思議使い。我の初夢は、物語を集めたいという願望が夢に出たのかもしれんな」

    ●夢の中にて出会うもの
    「我が初夢にて向かった先は、とある骨董市だった」
     無論、そこには壺や掛け軸もあるのだが、百々の主な狙いはひとつだ。
     古書。
     それも、誰にも知られぬ物語が綴られているものがいい。
    「すると我は、江戸時代の古書を見つけたではないか。少しめくってみて驚いたな……というのも、そこには失伝した筈の怪談が幾つも記されているではないか」
     その時感じた興奮といったらない。なにせ、内容をよく読もうと思ったというのに、興奮のあまりとび起きてしまったくらいなのだから。
    「初夢は、宝船の絵を枕の下に入れるのがよい、という話があるだろう。それを試してみた故あのお宝に出会えたのだとは思うが……まさかそこで目覚めてしまうとは、実に惜しいことをした。代わりに……というわけではないが、良ければ我に、皆の初夢の物語を記録させては貰えぬだろうか?」

    「そう言われても、私の初夢は……まあ、ごく普通よ」
     素っ気なく答えた荒谷・耀(一耀・d31795)ではあったが、彼女の夢ほど驚くべきものもそう多くないのではなかろうか? もっとも……だからといってそれを記録できるかというと、他人が書きとめ、あまつさえそれを元に別の物語を作りだすなど、到底してよいものではなかったのだが。
    「だって私の初夢は、愛する彼を玄関で見送って、家事をする夢。お洗濯にお掃除、お夕飯のお買い物……色々するの」
     確かに耀の初夢は、何の変哲もない日常話のようだった。……本当に?
    「その最中、私は彼と私の愛の結晶……娘をずっと背負ってたわ。ぐずった時はあやしてあげたり、お乳をあげたりして……」
     淡々と語る。けれどもその頬がほのかに赤みを帯びて、語り口も次第に早まってゆくさまは、彼女自身もそれに気づいたようには思えない。
     惚気に中てられRBとか何とか呟きつつ目を澱ませる木乃葉も目に入らずに、彼女は熱に浮かされたかのように饒舌に喋り続ける。
    「……そうこうしてる間に、彼が帰ってきて。おかえりなさいのキスをして、家族三人で幸せに団らんするの。一緒にご飯食べて、お風呂入って。私が娘を抱っこして、娘ごと彼に抱きしめてもらって……それで、そろそろもう一人、欲しいねって話をして……」
     あまりに日常すぎた光景のせいで、朝、目が覚めた時、耀は隣で寝る夫との間に、まだいない娘の姿を探してしまったほどだ。
    「ね? 普通でしょう?」
     語り終え、普段どおりのクールを装った耀。けれども左手の薬指に光る指輪から溢れる幸せは、彼女自身にも堪えきれなかった。

     はぁ……。
     崇田・來鯉(d16213)の顔をちらと見て、崇田・愛莉(d27995)は溜め息を吐いた。広島ヒーローの來鯉の広島名物お菓子各種も、今日はどうにも喉を通らない。
    「兄者は『デンマーク人の事績』という中世の歴史書を知っているか?」
     その中に、ホテルス王という優れた人物が描かれている。彼にはナンナという恋人がいたのだが、ある時、オティヌス神の息子で半神のバルデルスがナンナに横恋慕し、恋敵として命を狙われるのだ。
    「夢では、私はナンナ姫に、兄者がホテルス王になっていてな? 兄者との夫婦生活は嬉しかったが……」
    「……バルデルスは倒したものの、ボーウスと相打ちになっちゃうもんな」
    「しかも……その死に際まで夢で見てしまったのだ」
     縁起が悪い。自分も耀のような夢を見たかったのにと俯く愛莉に、來鯉は優しく声をかけた。
    「でもさ、僕はこんな初夢だったんだ」
     気づけば、彼はおじいちゃんだった。訪れてくるお客さんと世間話をしたり、霊犬のミッキーの散歩をしたりして。
     そんな彼の隣には常に、見たことのないおばあちゃんがいた。でも……それが誰か、來鯉には判るのだ。
    「あれは、間違いなく愛莉だったよ。おばあちゃんになっても、綺麗で、愛らしくて。一緒にお茶を飲んだりもしたんだ」
     ほう、と再び溜め息を吐いた愛莉。けれど今度の溜め息は、最初の溜め息とはまた違う。
    「兄者と……一緒に年をとっていけるのか。そっちの方が正夢だといいなぁ」
    「うん……大切な人を残していくのは、僕だってまっぴら御免だからね」

     また何やらぎりぎりと木乃葉の歯軋りが聞こえた。そして何やら山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)も複雑そうな顔。
    「ホテルスは北欧神話のヘズのことだったはず。デンマークだとトールも悪神扱いなんだっけ……?」
     自分がトールの生まれ変わりだと信じる透流も、愛莉の夢は逆夢だと信じたい。けれども初夢の中の透流は……雷神の偉大さを証明するどころか情けないことになっていたのだ。

    「私のは、学校で受け損ねた健康診断を受けにいく電車の中で、アニメ映画を見るお金がない小学生に出会った夢」
     そこで、余裕を見せて奢ってあげたまではいい。が……映画の値段がやけに高くて、当の小学生は怖気づいて逃げだしてしまった。
    「でも……偶然会った学校の友達を空いてしまった席に誘って見たら、値段が高い理由も納得。だって、主人公さんたちの活躍はムービーで、端役さんたちが主役になる時は無名の役者さんたちが館内で演劇をくり広げていて」
     興奮し、観客の皆も立ちあがる。けれども、透流だけは例外だった……何故ならスカートのホックがいつの間にか壊れていて、立つわけにはいかなかったからだ。
    「気づけば、私も映画の主人公のように、モンスターと合体していた」
     そうやって次々に奇妙な状況が発生するのは、幽花曰く、夢の楽しさだそうだ。彼女自身の初夢も、見知らぬ場所と知っている場所をワープするように行き来するものだった。
     知らない人が不思議な話を語ってくれたり、よく覚えてないけど変なものを見つけたりして……怖かったり、焦ったりしながらも楽しめる。それが幽花が夢を愛する理由。
     けれども透流の初夢の場合、さらに酷い目ばかり続いたのだとか。
    「偉い人に目をつけられて、合体の件で後日話しあいすることに。そうしたら、何故か健康診断も後日になることになっていたんだけど……健康診断の資料を見ていたら、その時に提供される昼食が、山葵の炊きこみご飯と袋モノの豚肉炒めだけで落ちこんでしまった。最初は、健康診断の後は何故かやってたW杯を見にいこうと思ってたのに、どうしてこんなことになったんだろう……?」

    ●もふもふ
    「これでも食べて気を取りなおすのよ」
     そんな透流の前に差しだされたお汁粉。おかきが一昨年の初夢だったなら、このお汁粉は琥珀の今年の初夢だ。
    「私は今みたいに、こたつに入ってのんびりとお汁粉を食べていたのだけれども」
     すると突然、こたつの中から声がしたのだという。
    「ニャーニャーとかわいらしく……ごほん、恐ろしく鳴くそれは、はじめは1匹だったはずなのに、だんだんと数を増やしていったのよ」
    「恐ろしく?」
     疑問を呈する幽花の口をおかきで封じ。
    「当然、こたつに入っている私の足にも、そのモフモフとした感触が伝わってきて、私は恐怖で動けなくなってしまったのよ」
     ああ、なんということだろう。それはこたつの限界を超えて外まで溢れ。そして琥珀の身は竦むのだ……あの短い手足! 白目のない真っ黒で丸い瞳! 全身は無数の毛で覆われている!
    「その30cmくらいの特大仔猫の恐ろしい姿から目を離せないまま……私はその群れに全身すりすりモフモフと飲みこまれてしまったのよ。あの至高のモフモフ具合、あぁ、とっても恐ろしい夢だったのよ」
     こうして創作初夢作戦・コード『饅頭こわい』を発動させると、琥珀は都市伝説の到来を今か今かと待ちのぞむのだ。
     ……まさか、あんな結末になるとは思わずに。

    「……ほう、恐ろしい獣が現れるのか。私と同じだな」
     何故か無駄に対抗するように、神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)が胸を張った。
    「ここ数年、スフィ――幽花のそのぬいぐるみの成長記録と化していた私の初夢だが、今年は……」
     そこまで言いかけると彼女は一瞬首を傾げて、こっちの方が手っとり早いと謎の袋(土嚢に使うようなやつ)を取りだし中に入りこむ。
     袋には『神崎家』って古い布が縫いつけられていた。そして小さく、『退魔七つ道具』とも。
     だが、彼女はツッコミを許さない。夢の中に来いとだけ言いのこし、その場で眠ってしまうマイペースさこそ摩耶クオリティ!
    「お休み!」
     …………。
     ……。

    「……言われるがままに夢の中に入ってきましたが、あれはスサノオなんでしょうか?」
     紅緋が頭を捻るのも無理はなかった。
     彼女らの目の前に現れたのは、白い炎に包まれた巨大な獣。それが……温泉の湯船にみっちり詰まって、困り顔で幽花を見つめている。
    「なんで私を?」
     お前が飼い主か、という顔の客たちが、恨めしそうに幽花を見る。その瞬間……場面は唐突に温泉宿の宴会場に変わるのだ!

     部屋の中央には巨大こたつ。その上には巨大みかんピラミッド。
     が、突然それは弾けて崩れ落ちてきた。何故ならみかんをかき分けるように、再びあの獣が顔を出したのだから!
     しばし当惑していた獣は、まっすぐに幽花へと突進する。身構える幽花……でも、獣はその手前でぽんと音を立て、スフィの姿になったのだ。

    「その後撫でてやったら、満足げに鳴いていたな! いや、良い夢だった!」
     起きてくるなりはっはと笑う摩耶。一方の紅緋としては、こんな茶番のために呼ばれたのかと思うと不服顔。
    「まあ……灼滅者なら今のソウルボードでも少しは滞在できますし、いいんですけど。そういえば……アガメムノンの初夢作戦は一昨年でしたっけ? 去年はシャドウ勢力も滅ぼしてしまいましたし、ナミダ姫に囲われたシャドウもどうなったことやら? でも、『ザ・ハート』や『ザ・スペード』とはもっと話してみたかったです」

     そんな思い出話をしていると……部屋の戸が、突然開いたのだ。

    ●初夢喰らい
     扉の外は一面の海。その中に一本道が伸びており、遥か彼方まで繋がっていた。
    「ボクの夢、風景だけが使われちゃった……!」
     そう言って扉にかけ寄ろうとするエメラル。けれども彼女の足元をすり抜けて、1匹の仔猫が道から部屋へと入りこむ。
    (「やったのよ!」)
     作戦は成功なのよ……琥珀は内心ガッツポーズする。思わず弛みそうになる目尻を精一杯ひき締めて、作る表情は戦慄と恐怖。
    「あれは……初夢に出てきた恐ろしい生き物なのよ……!」
     だが直後、仔猫は増えるのではなく巨大化し……。
    「あっ! さっきソウルアクセスの時に見た夢とも混ざってるの!」
    「それじゃダメなのよーっ!」
     喜ぶエメラル。悲鳴を上げる琥珀。このまま部屋が巨大仔猫に潰されては敵わない……相手が夢の姿で現れるなら、木乃葉も夢での経験をガンナイフに乗せるのみ!
     パン! パン!
     正確な射撃が獣をたじろがせた。その隙を逃さず紅緋の神薙刃! 真紅が獣を斬り刻む!
     しばらく戦いは続いたが、互いの夢を聞きあった灼滅者たちが、その模倣にすぎぬ敵に遅れを取ることなどあるわけがなかった。
     そして、木乃葉の薬莢が床に落ちる乾いた音とともに……。
    「初夢を汚せしものよ、冥府に落ちて消えるがいい」
     去年の正月に百々が手に入れた『冥府の門』の都市伝説の力が、初夢喰らいを逆に喰らいつくすのだった。
    「……だが、折角だ。朝露とともに消えてしまった初夢の中の怪談に代わり――『初夢喰らい』よ、その物語を蒐集し、我が物語のひとつとしてくれよう」

    ●結
     かくして、全ての物語は語られし。物語を喰らいに現れた魔は、百々に新たな物語へと転生する。
     憂いを断ち斬った灼滅者たちが、この祭りを後にするのはいつだろう?
     きっと、用意した食材も底をついた後、しばらくおこたの魅力を名残惜しんでからになるに違いない。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年1月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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