「……みんなの力でスサノオ勢力はほぼ壊滅して、スサノオ大神の力も失われた。……それ自体はとてもいいことなのだけれど」
集まった灼滅者達に、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は、話の内容とは裏腹に陰気な声でそう告げた。
「……ガイオウガやスサノオ大神の力の源は、龍脈と呼ばれる大地の力だったの。……龍脈の力は『フォッサマグナ』とも呼ばれ、日本を真っ二つに引き裂く程の力を秘めてる」
龍脈を支配した『ガイオウガ』が、旧世代の勝者となり『サイキックハーツ』を引き起こしたのは、ある意味当然だったといえるだろう。
「……現在、この『龍脈』は、ナミダ姫が奪ったブレイズゲートのエネルギーによって活性化されてる。……このまま、誰も制御もせず使用もせずに放置すれば、自然現象として暴発してしまう危険性がある」
その威力たるや、関東大震災と南海トラフ巨大地震と富士山の大噴火が同時に発生するような大災害を引き起こしかねないのだという。
「……実はその危機に際して、龍脈の鎮静化と封印を行いたいと申し出てくれた存在がいる」
妖はそこで一旦言葉を切り、灼滅者達を見回した。
「……薄々予測してる人もいるかもしれないけど、その存在っていうのは、学園で保護していた『ガイオウガの尾』なの」
その一言に、教室がざわめきに包まれる。妖はざわめきが収まるのを待って、静かに話を続けた。
「……スサノオは、龍脈たるスサノオ大神の一部だから、龍脈を鎮めることができれば、スサノオ残党の大半も同時に消滅させる事ができるはず。……でも、ガイオウガの尾の力だけでは、封印の儀式は行えないから、みんなに儀式を手伝って欲しいそうなの」
儀式が行われるのは、秩父山中にある古い神社になる。
「……儀式を行うのは『1月1日~1月11日』の間で、地脈の流れをみて、適切なタイミングで行う事になる。……そのタイミングは、同行するイフリート化したガイオウガの尾が判断するから、心配しないで」
儀式の流れとしては、まず余裕をもって神社の近くに移動。場合によっては近所で数日宿泊する場合もあり得るだろう。
「……それから、龍脈の流れのタイミングを見計らって、神社に移動する。行う儀式は、普通の参拝とそんなに変わらない。時期的に、初詣をすると思えばいい」
龍脈上にある神社は、もともと大地の力を鎮護するためのものでもあるので、神社の作法と儀式の内容はほぼ同じなのだという。
「……儀式が成功すれば、神社近隣で天然温泉が湧くから、イフリートと共に温泉に入って、イフリートが大地の力と合一するように補助してほしい。……ついでに、一般人が迷い込まないように対処したり、大地の力を狙ったダークネスの襲撃に対して警戒する必要もある」
そこまで言い終えると、妖は窓の外に目を向けた。
「……今の説明であってる? ヒノコ」
見れば、窓の外にはいつの間にか、全長6メートルはある巨大なイフリートが立っていた。
「ガウッ! 俺ハヒノコデアッテヒノコデナイ。ヒノコノ一部ヲ受ケ継イダ、ガイオウガノ尾ダゾ」
「……じゃあ、何て呼べばいいの?」
「ガウッ! ……ガウ……? ……メンドクサイカラ、『ヒノコ』デイイゾ」
「……それじゃヒノコ。何か皆に言っておくこと、ある?」
問われ、ヒノコと名乗ったイフリートは教室内の灼滅者達に目を向けた。
「ガウッ! ガイオウガノ力ヲ喰ラッタスサノオヲ滅ボシテクレテ、アリガトウ。俺達ガ今日マデ存在シテキタノハ、コノ儀式ノ為ダッタ気ガスルゾ」
そしてヒノコは、気合を入れるように一声吠えると、
「今後ハ、大地ノ力ガ他ノダークネスニ利用サレナイヨウニ、俺達ガ見守ッテク。ダカラ、オ前達ノ力、貸シテホシイゾ」
そう言って、燃え盛る大きな頭を下げたのだった。
●再会と警戒と
「ヒノコ、久しぶりだね。僕のことを覚えているかな?」
神社の前に姿を現したヒノコに、最初に声を掛けたのは穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981)だった。
「ガウッ、オレ、オマエノコト、覚エテルゾ。今日ハヨロシク頼ム」
以前に出会った頃よりもしっかりとした態度で、ヒノコが応じた。確かにヒノコではあるが、別人のようにも感じる。それが少し寂しいけれど、覚えていてくれたのならば、それだけで嬉しくもある。
「キミからはかけがえのないものを受け取ったからね」
「ガウッ? オレ、オマエニ何モアゲテナイゾ?」
体も以前より大きくなって、喋り方も以前とは少し異なるけれど。首を傾げるその様子は以前のままだ。
「ヒノコはヒノコじゃないけど、あたしにとってはやっぱりヒノコだ。ヒノコとまた会えて、本当に嬉しいヨ」
堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)はそう言って、鶴見岳でそうしたように、ヒノコとしっかり目を合わせ、思い切り笑った。
「ガウッ! 知ッテル奴イルト、オレモ心強イゾ」
無邪気にそう返してきたヒノコに、朱那は口にしかけた言葉を飲み込んだ。
(「ホントはこの儀式を行う事で君がどうなるのかとても不安で、聞きたいけれど」)
それを聞いてしまったら、今の大切なこの時間が終わってしまう気がして。
一方で、柿崎・法子(それはよくあること・d17465)は、心の中で覚悟は決めているようで、
「寂しいことだけど……うん、仕方がないよね」
そう呟くと、お土産に持ってきたイフリート焼きをヒノコの口元に差し出した。早速齧り付くヒノコの姿からは、気負いも悲壮感も感じない。ならば、法子から言うべき事は、もう何もない。
そんなヒノコ達の様子を遠目に見ながら、垰田・毬衣(人畜無害系イフリート・d02897)は神社内に一般人が立ち入らないように『殺界形成』を発動させた。いつもは着ぐるみ姿の毬衣だが、今日は作法に則って、着ぐるみはお休みだ。
朱那や崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)も『殺界形成』を使用しており、一般人対策はこれで充分だろう。
「ガウッ! デハ、儀式ヲ始メルゾ」
ヒノコの先導で、灼滅者達は神社の境内に足を踏み入れたのだった。
●初詣と作法と
せっかくだからと振り袖を着てきた若桜・和弥(山桜花・d31076)は、
「似合うだろう、おだてても良いんだぞ久良クン」
隣を歩く居木・久良(ロケットハート・d18214)にその姿を見せつけつつも、
「コートやマフラーは外すのが礼儀だなんて、真冬だのに容赦ねぇな神様」
そうぼやくのも忘れない。そんな和弥に微笑みかけながらも、久良はそっと首から下げたペンダント『フレイムフラワー』を握りしめた。それは、ヒノコとの友情の証。
(「友達に会うのに理由はいらない。だから」)
自然に、久良の視線は前方を歩くヒノコに向けられる。
「今や僕が……僕こそが『文字の妖精さん』だ。参道、手水、参拝、正式参拝についてその都度解説しよう!」
海は『文字の妖精さん』を使って記憶した知識を披露しようと張り切っていたが。
「ん、鳥居前では一礼。で、手水、そして実際の参拝、だね。基本的にいつもお参りでやってることを普通にやればいいんでしょ?」
カフェ・フィニクスの仲間達とやってきた彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131)は、メモを片手に閉じた扇で一つ一つ指し示して仲間達と手順を確認しあっており、
「神の通る道である真ん中は歩かないことも重要です。まあ祀られている神に失礼のないようにという所でしょうか」
ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)も義弟の來鯉に丁寧に説明している。
海の助けが必要な者はいないようだ。
むしろ、
「神凪の家は神社ですので、こういう儀式は本職ですよ」
「物心つく前から毎年やってるからね」
神凪・陽和(天照・d02848)と神凪・朔夜(月読・d02935)の姉弟は、姉の神凪・燐(伊邪那美・d06868)共々、本職らしくごく自然な所作で進んでいた。
「……作法は姉貴から教えて貰ったけど、必要なかったみたいね」
氷上・天音(拳が打ち砕くのは悲しみの氷壁・d37381)は、今は別行動をしている姉のことを思い出し、今どうしているのかと北の方角を見やる。
「手水舎では柄杓は左で持って右手から順に、それから最後は柄杓に水を流して、だったわね」
手水舎に向かった綾瀬・涼子(サイプレス・d03768)が、作法に則り手水場で手と口を洗い清める。その後に続こうとした神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)は、ふと神社の脇を流れる小川に気付き、
「これ、大昔なら手水じゃなくって、川での禊だったんだよな。この時期にはきつそうだ」
そう言って苦笑を浮かべた。
「夏ならいいかもしれないけど、この冬空の下では流石に、ね」
天音もあはは、と苦笑で返し、
「川で禊かぁ……」
その話を聞いて、桃野・実(すとくさん・d03786)が思い浮かべたのは、滝に打たれて念仏を唱える人達のイメージ。
「……気合入ってるなぁ……」
神凪家の面々を見ながら、しみじみとそう漏らした。
「まあ、神凪の3人にとっては厳冬の川の禊は普通にやるレベルですが……。私と双調さんは違いますからね? 燐姉様?」
「そうです。私と空凛さんは違いますからね? 燐姉さん?」
思わず同時にそう念を押したのは、神凪家の一員の中でも直接血の繋がりのない黎明寺・空凛(此花咲耶・d12208)と壱越・双調(倭建命・d14063)だ。
「「……流石にここではやらないよね、燐姉?」」
陽和と朔夜も声を揃えて、戦々恐々とした様子で姉の燐を見やる。
「川での禊ですか? 確かに神凪家では厳冬の禊は普通にやりますが……」
燐は平然とそう話してから、きょうだい達のおびえた視線に気づき、
「流石にここではやりませんよ」
まるで信託でも告げるように、そう言ってにっこりと微笑んだ。
それから、あきらかにほっとした表情を浮かべるきょうだい達を促して、拝殿へと向かっていく。
そして燐を中心にきょうだい5人並んで、心を合わせて。
二例、二拍手、一礼。
(「大地の力が護りとなって龍脈を鎮め、大地の護りとならん事を。大切な方と世界が平穏で、そして笑顔でありますように」)
そんな願いを込めて祈る。
「神凪さん家は流石ね。和装も揃って豪華だし」
絵になるその参拝の光景に、涼子は思わず感嘆の声を漏らした。
燐は濃茶の生地に椿の模様の振袖姿。結い上げた髪には蘭の花の髪飾りを付けていて。
陽和は真紅の生地に鳳凰の模様の振袖姿。姉と同じように結い上げた髪に百合の花飾り。
朔夜は青の羽織袴。
空凛は薔薇色の生地に梅柄の振袖姿。結い上げた髪には桜の花の髪飾り。
そして双調は紺の羽織袴だ。
「ふふ、今回はさすがに和装率多くて、和装愛好家としては嬉しい限りだね」
自身も袴姿のさくらえは、次々に参拝していく仲間達の姿を見てにこにこしている。フィニクスの仲間達も、紋付き袴姿の勇弥、赤と黄色の振袖に牡丹の花飾りを付けた涼子と和装が圧倒的に多い。生成色の長着に黒の二重マント姿の実は、やや異色だろうか。
「先輩達の和装姿、みんな素敵だな」
茜色のダッフルコートにマフラーとブーツ姿の天音は、少し浮いた格好なのを自覚しつつ、自身の参拝の順番が来ると、
(「イフリートの皆がいつまでもこの地を見守ってくれますように。それから……姉貴の事を側で支えてくれる人が一日も早くやって来ますように」)
そっと、そんなことを祈る。
最後に参拝した久良は、隣に立つ和弥と、拝殿の横で狛犬のように鎮座しているヒノコにそっと目を向けて、
(「ヒノコくんとずっと楽しく遊べるように。和弥さんと一緒に幸せに過ごせるように」)
真摯にそう願ったのだった。
●おみくじと食べ物と
参拝後、実が近くにあったベンチに腰を下ろし休憩していると、トラ柄の大柄な猫がのっそり膝の上に乗っかり『ぶみゃー』と一声上げると、膝の上でくつろぎだした。
「……」
実はそっとコートを猫の上にかぶせて風よけとし、
「……ぬくい」
その場から動けなくなってしまったのだった。
「あら、あら、桃野さんは一足先に暖を取ってるみたいね」
その様子を見ていた涼子がほのぼのと呟く。
「折角だし、温泉が湧く前に今年の運試しでおみくじもしたいな」
さくらえが思いついたようにそう言うと、
「こんな特別な機会、滅多にないんだからねっ」
天音を始めフィニクスの一同も賛同し、全員で社務所に置かれている御籤箱に向かう。
そして、順番におみくじを引いた結果――。
「やった! 大吉!」
歓声を上げたのは、天音だった。
「私は中吉。なかなかいい結果よね」
涼子も、良い結果に満足そうだ。さくらえと朔夜も同じく中吉を引いている。
以下、陽和が吉、勇弥と双調が小吉、空凛が末吉と来て、
「だ、大凶……」
おみくじに目を落としたまま固まってしまったのは、燐だった。
「だ、大丈夫よ燐姉。単なる運試しみたいなものだし」
「そうだよ燐姉。大凶以下はないんだから、後は運勢上向きになるだけだから」
陽和と朔夜に励まされつつも、動揺は隠しきれない燐。
「あ、そうだ。温泉は足湯くらいならやってもいいんじゃないー?」
さくらえが、話題を変えるようにそう提案すれば、
「そうだね、足湯、お邪魔しようか」
勇弥がすかさずそう応じる。
「さあ、燐姉さんも一緒に行きましょう」
空凛が、未だに呆然としている燐の手を引き、
「気持ちを切り替えて、ゆっくりしていきましょうか」
双調はそう言って、先導するように歩き始めたのだった。
温泉が湧き出したのは、本殿よりも更に奥の山中だった。
「ガウッ! ココデ皆デ温泉ニ浸カレバ、俺ハ大地ノ力ト合一デキルゾ」
そう言って湯が満ちるのを待つヒノコに、久良が声を掛ける。
「ヒノコくん。紹介したい人がいるんだ」
振り向いたヒノコに、久良は傍らにいる和弥を指し示し、
「彼女は和弥さん、俺の恋人だよ。和弥さん、彼がヒノコくん。俺の大事な友達だ」
「どうも彼女です初めましてモフらせて下さい」
「ガウッ!?」
挨拶も早々に毛皮をモフられて戸惑うヒノコの様子に、久良は笑みをこぼしながら、手品でそっと焼きイモを取り出し、ヒノコに差し出した。
「今日のためにいっぱい練習したんだよ。再会の印にね」
焼きイモも手品も、ヒノコと初めて会った時からの大切な思い出だ。
「ガウッ! 芋モウマイシ、オマエノ手品モウマクナッタナ」
焼きイモにがっつきながらヒノコがそう言う間も、和弥はヒノコの毛皮をワシャワシャしていて、
「イフリートさん皆して毛並み良くてほんと羨ましい」
幸せそうな顔でそんな感嘆の声を漏らしていた。
「お久しぶりです、ヒノコ殿」
ヒノコが焼きイモを食べ終わった頃を見計らって声を掛けたのは、ホテルスだった。
「ヒノコ殿には來鯉のお好み焼きをご馳走する、と約束しましたしね。其れに友として此れに立ち会わねば騎士の名が廃るというもの」
そう言って、義弟の來鯉をヒノコに紹介する。
「にーちゃんがお好み焼きをご馳走するって言ってたそうだしね。ならお好み焼き屋の店長として広島のご当地ヒーローとして、全力で作ったお好み焼きをヒノコにご馳走しない訳にはいかないよ!」
來鯉はさっそく保温容器に入れたお好み焼きをヒノコに渡した。
「ガウッ! コレハウマイゾッ!?」
「あ、他にもバームクーヘンやもみじ饅頭もあるけど?」
「ガウッ! 俺、ソレ全部食ベルゾ!」
全力で食べ始めたヒノコに、ホテルスは優雅な動作でカップを差し出す。
「ヒノコ殿、大事に挑む前に、ミルクティーを用意しておきましたので以前のように一杯先ずはいかがですかな?」
「ガウッ! チョウド喉カワイテタゾ! 俺、ソレ飲ム!」
そんな騒ぎが繰り広げられる中、毬衣や朱那は温泉周辺に怪しい人影がないか見回りを行っていた。
この大事な時間と大切な儀式を、誰にも邪魔させないために。
●温泉と大地との合一と
「わーい、ヒノコと一緒に温泉なんだよー!」
温泉が十分な湯量になったところで、水着に着替えた毬衣が真っ先に飛び込んでいく。
「ガウッ! 俺、先二入リタカッタノニ!」
一歩遅れてヒノコが続き、灼滅者達も次々と温泉に入っていった。全身浴をする者、足湯だけで済ます者といる中で法子だけは『フローター』を使って水面に立ち、決して温泉に入ろうとしない。
「その……肌、見せたくないからね」
そう呟きつつ周囲からのダークネスの襲撃を警戒していた法子だったが、
「ガウッ! オマエモ温泉入レッ!」
ヒノコがじゃれつくように水面を揺らした結果、バランスを崩して服を着たまま温泉に落下してしまったのだった。
「ふむ、中々良い湯のようで」
「あ、ラムネを用意してるけどヒノコも飲む?」
ホテルスと來鯉は寛いだ様子でヒノコと共にラムネを飲み。
「がぅーん……あまりの温かさに気持ちが緩んじゃうんだよー……」
毬衣に至っては、装着したイヤーデバイスまでへにゃっとさせて、今にも蕩けそうだ。
「ヒノコ、聞いてもいいかい?」
そんな中、海は肩まで温泉に浸かりながら、静かにヒノコに話しかけた。
「ガイオウガの尾でいるってどんな感じ? ガイオウガの知識は持っている? サイキックハーツを知ってる?」
続けざまの質問に、しかしヒノコの答えは簡潔だった。
「ガウッ、イフリートハ全テ『ガイオウガ』ノ一部。全テノイフリートガ『ガイオウガ』ソノモノダゾ」
「なら、僕達が全てのダークネスを倒したら? 僕達は未来もキミ達と一緒にいられるの?」
矢継ぎ早な問いは、きっと不安の裏返し。
「雪が落ちてこんかなあ」
そんな海の不安をかき消すように、雪化粧を楽しんでいた朱那が声を上げて空を見上げた。
「あたしはねえ、空を見てる時が一番幸せ。大地と空はまるで逆だけれど、それでも同じ夢を見る事は出来る思うンよ」
それから、ヒノコに目を向けて、そう独白する。
「ねぇヒノコ、あたし達ずっと友達でいられるよね?」
そして出たのは結局、海と同じ問いだった。
「ガウッ! 俺ハコレカラ大地ノ力ソノモノト合一スル。ソシテ、オマエタチヲ見守リ続ケル。ズット一緒ダゾ」
灼滅者の言う“一緒”とイフリートの言う“一緒”は、きっと似て非なる物なのだと、その場の全員が思い知らされる。
そして、その変化は唐突に起こった。
ヒノコの体が、まるで温泉に落ちた雪のように、ゆっくりと形を失っていく。その名の通りの無数の火の粉となって、大地に降り注いでいく。
「ヒノコくん、今度はたくさん遊ぼう」
思わず伸ばされた久良の手に、火の粉が触れた。
『ガウッ! 俺達、ズット友達ダゾ!!』
そうして無数の火の粉は、大地に吸い込まれるように消えていったのだった。
作者:J九郎 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年1月11日
難度:簡単
参加:18人
結果:成功!
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