●龍脈と呼ばれる大地の力
スサノオ勢力が滅びた事で、スサノオ大神の力が失われたと、千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)から説明があった。
「これはとても良いことなんだけど、実はちょっと問題が発生しちゃったんだ」
ガイオウガ及びスサノオ大神の力の源は、龍脈と呼ばれる大地の力だったのだと、太郎が話し始める。
龍脈の力は『フォッサマグナ』とも呼ばれ、日本を真っ二つに引き裂く程の力を秘めている。
「この力を支配した『ガイオウガ』が、旧世代の勝者となり『サイキックハーツ』を引き起こしたのは、ある意味当然だったのかもしれないね」
現在、この『龍脈』は、スサノオの姫ナミダが奪った、ブレイズゲートのエネルギーによって活性化されており、このまま、誰も制御も使用もせずに放置すれば、自然現象として暴発してしまう危険性が出てきたというのだ。
「大きな震災と、山の噴火や地震が同時に発生するほどの爆発が予想されるんだよ」
太郎の話を、灼滅者たちは神妙な面持ちで聞いていた。
「それでね。この危機に際して、武蔵坂学園で保護していた『ガイオウガの尾』が、龍脈の鎮静化と封印を行いたいって、申し出てくれたんだよ!」
また、スサノオは、龍脈たるスサノオ大神の一部である。龍脈の鎮静化が行われれば、スサノオ残党の大半も同時に消滅させる事ができるということだ。
「ただし、彼らの力だけでは封印の儀式は行えないよ。灼滅者であるみんなに、儀式を手伝って欲しいそうなんだ」
●儀式について
儀式が行われる場所は『自然が豊かな地域にある神社』となる。
日程は『1月1日~1月11日』の間で、地脈の流れをみて、適切なタイミングで行うようだ。
「ちなみに、適切なタイミングは、同行するイフリート化したガイオウガの尾が判断してくれるよ」
そう言って、太郎は協力を申し出てくれたイフリート化したガイオウガの尾を手招きした。
あっと、灼滅者の中から声が上がる。
「えっと、その前に儀式の流れは僕から説明するね」
そう断って、太郎から儀式の流れが説明された。
まず、余裕をもって神社の近くまで移動する。その際、数日近所で宿泊する可能性がある。
そして、龍脈の流れのタイミングを見計らって、神社に移動し、儀式を行う。
「儀式の内容は内容は初詣と一緒だよ。龍脈上にある神社は、もともと、大地の力を鎮護するものでもあるので、神社の作法と儀式の内容はほぼ同じみたいだね」
儀式が成功すると、神社近隣で天然温泉が湧出するらしい。これは、大地の力と繋がる為の接続端子のようなものだ。
そうなれば、イフリートと共に温泉に入って、イフリートが大地の力と合一するように補助してやる。
「あとは、一般人が迷い込まないように対処したり、大地の力を狙ったダークネスの襲撃に対して警戒したりかな」
そこまで説明して、太郎は場所をイフリート化したガイオウガの尾に譲った。
「ガイオウガノ、チカラ、ウバッタスサノオ。タオシテクレタ。カンシャスル」
そう話し始めたイフリートの姿を見て、色々な思いがある灼滅者もいるだろう。
赤々と燃えるような瞳。立派な角。そして、見知った少女の姿。イフリート化したガイオウガの尾は、あのアカハガネにそっくりだった。
「ワレラガ、タスケラレタノハ、キット、コノ、ギシキノタメ。ガンバルゾ」
アカハガネの姿をしたイフリートは両の拳を握りやる気を見せる。
「コレカラハ、ダイチノチカラ、ダークネスニ、リヨウサレナイ。ズット、オマエタチ、ミマモルノダ」
彼女は、あのころのアカハガネでは無いのかもしれない。
その他の、色々なイフリートが混ざり合った存在なのだろう。
しかし、あの時、彼女と別れたときの、あの笑顔でアカハガネは言った。
「ソノタメ、チカラヲ、カシテホシイ。ワガ、トモヨ!」
●その日、神社周辺で
その日、有城・雄哉は神社から少し離れた場所で殺気を放ち、一般人を遠ざけさせた。
そのかいあってか、一般人の姿は見えない。
雄哉自身には複雑な思いはあるけれども、神社に学園の灼滅者たちが到着したようだ。
じきに儀式が始まるだろう。
鹿島・狭霧も周辺の警備をしているようだ。
「儀式ね……面倒だけど、ま、世の中色々と手順を踏まなきゃいけないコトもあるでしょうし」
これで龍脈が落ち着くと言うのなら安いものであると。
私服にシューティンググラスを身につけ、できるだけ目立たぬ格好で歩く。
「こちらネーベル・アイン、定時報告、異常なし」
時折無線で状況を報告しながら神社の周辺をパトロールして回っていた。
●儀式の様子
アカハガネの姿を見つけ、住矢・慧樹が大きく息を呑んだ。
また会えるとは思っていなかった。もう元のアカハガネではないかもしれない。それでも、笑って未来の約束をした彼女の意志はきっとある。
「……なんか、胸いっぱいで……泣けてくるな」
しかし慧樹はすぐに首を振った。
そんな感傷的なのは自分らしくない。アカハガネはアカハガネだと。
「お帰り! 今日はよろしくな! アカハガネちゃん!」
あの時握ってやれなかった手を、今、ぎゅっと握り締めた。
「ウム。キョウハ、ヨロシク、タノム」
互いが手を上下にブンブン振って挨拶を交わす。
それを皮切りに、灼滅者たちが次々に参拝を始めた。
警戒や人払いによって、一般人や敵の姿は無い。安心して儀式を進めることができそうだ。
ヴォルフ・ヴァルトと月翅・朔耶は、真ん中を避けて参道を歩いていった。ヴォルフは平服、朔耶は緑色の着物の上に、紫色の羽織姿だ。
(「炎神も鉄の神も動物の神も、赤不浄はダメだが黒不浄はそこまで問題にしないのは知っていたが……この儀式はまさかの結果だな」)
ヴォルフは参拝する灼滅者たちを興味深く見ながら思う。
「儀式の後は神社周辺で遊びたいな」
朔耶が言うと、ヴォルフが頷いた。周辺で食べ歩きを楽しむのも良いだろう。
二人は初詣の作法通りに、参拝を済ませた。
参拝の方法が分からない者は、十六夜・朋萌に教えられながら水舎で手を洗う。
「作法に則って参拝すれば効果が高いでしょうから」
朋萌は参道の歩き方や参拝時の『二礼、二拍手、一礼』など、丁寧に説明して回った。
これにより、大きく作法を外れた者はいない様子だ。
神田・熱志も「ご当地怪人に利用されないように楽しみつつ成功させるぜ」と言う言葉通り、きちんとした作法にのっとり参拝している。
ふと思う。
「…………この儀式、ガイアチャージと理屈が同じじゃねえか?」
龍脈の放置は、間違いなくご当地怪人に奪われるなと感じた。
アカハガネの隣に白金・ジュンがやってきた。
「私は一番普通に五円にしてみました。『これからもご縁があります様に』と言う願掛けですよ」
「ゴエン、ト、ゴエン?」
さい銭を放り込むジュンの姿を、アカハガネは興味深げに見ている。
隣でも五円玉を入れる者がいた。
「今年一年も皆さんが無事に、可愛く過ごせますように……」
炎モチーフの柄の着物を着込んだ蒼焔・緋凍だ。せっかくの儀式という事で、ばっちり、可愛く、キメてきたのだ!
おさい銭の五円は、イフリートたちとの縁を、ということ。
二人の姿を見ながら、アカハガネも見よう見真似で拝礼をする。
鏡・瑠璃と灯屋・フォルケが、並んでやってきた。
瑠璃が神職っぽく語って聞かせる。
「柏手、いわゆる拍手は自分が無手であることの証明なんですよ。ホールドアップと同じですね。インターホン代わりは鈴の方です」
「鈴がインターホンで、拍手がホールドアップですか……確かに、表敬訪問でフル装備は失礼ですもんね」
なるほど、と、フォルケが笑顔で頷きながら銃を仕舞う。
作法通り拝礼し、二人軽くおじぎをして退いた。
「……意味を知ってすると、また違って楽しいものですね♪」
「まぁ、よい機会ではあるかとー」
フォルケが言うと、瑠璃が微笑んだ。
加持・陽司は振袖姿のノイン・シュヴァルツを見て言う。
「わああ……! 振袖、すごい似合ってるよ、ノイン! 髪上げてるのも可愛いな! ……っと」
そして、そっと腕を差し出した。二人で遠出して初詣に来ている事を舞い上がるほど嬉しく感じている様子だ。
「歩きにくいだろ? はい、腕に捕まって?」
「あ、ありがとう……ございます。こういうの、一度着てみたかったんです」
ノインが陽司の腕を取る。
二人並んで、これからも一緒にいることができるよう。これからも隣にいる人を大事にしようと願う。
「なあ、ノインは何をお願いしたんだ?」
「えっと……何だと思いますか? ……いつか、わかると思う。きっと、叶うから」
恋人とのお出かけを心から楽しんだ。
「明けましておめでとうございます」
と、神社前で合流し、【アルニカ】の面々が新年の挨拶を交わした。
早速、手順を守りつつ皆でお参りへと向かう。事前に確認してきた者もいたのだろう、それぞれ作法もしっかりとしていた。
瀬宮・律はクラブの皆の無事と武運を祈った。
(「俺も一層精進していく所存です。ですから、どうか皆を見守ってください」)
瀬宮・めいこも、思い同じく皆の無事を祈る。
「祈るばかりではダメと言いますし……私も皆様の力になれるよう精進します」
羽織に袴を揃えた晴れ着は蜂・敬厳だ。手順通りに参拝し、祈っている。
(「親しい皆さんの平穏のために力を尽くしますので、著しい困難に直面したときに助力をお願いします」)
「助けてもらう前に、まず自分の力で行動しないといけませんよね!」
小さく、呟いた。
皆とまたこうして穏やかな日を過ごせるようにと祈っているのは酒々井・千鶴だ。
「皆の支えになれるように今年も心身ともに鍛えていくので……どうか見守っててください」
こんな風に皆と過ごせる大切な日々を失いたくないから。
櫻庭・つぐみも皆をお守りくださいと祈る。皆とまたこうして過ごしたいから神様にも力を貸していただけたらという思いだ。
「もちろん、私も少しでも皆を守れるよう頑張らないとね」
そう言って振り返ると、皆がそれぞれの思いを確かめたように、明るい表情をしていた。
「皆もなんだか気合が入った感じですし……帰ったら鍛錬頑張りましょーか」
律が声をかける。
「今年も鍛錬、頑張らないとですね!」
めいこが頷いた。
大方の灼滅者が参拝を終えた。
獅子鳳・天摩はアカハガネを見つけ声をかけた。
「オレ達は、いや、オレは全てのダークネスを滅ぼしたいわけじゃないっす」
共存できるダークネスとは共存して行ける道を探すのを諦めたくない。
そして願わくば一般人から掌を返される日が来ない事を。一般社会とどう向き合って行くかも考えていかないと言う。
「見守っていて欲しいっす」
「マカセルガイイ。ズット、オマエタチ、ミマモルノダ」
アカハガネはしっかりと頷いた。
●温かな温泉にて
その後、近隣に温泉が湧き出した。
儀式は成功したのだ。
新城・七葉が一般人の有無を確認した。どうやら、人払いはきちんとできているようだ。
「ん、なるべくリラックス、リラックス……」
警戒しながら楽しくは少し難しいけれど、髪を結い上げてのんびりと温泉に入る。
紫乃崎・謡も入念に周辺を警戒していた。
憂いを十分除いてから温泉に浸りたいと思う。
ふと、温泉を覗き込むアカハガネの姿を見つける。
「アカハガネ、貴女に憂いのない世界の為にも、頑張るよ」
「タスカルノダ。タガイニ、ガンバロウ」
無事参拝を終えた水瀬・ゆまはアカハガネの姿を見つけ、だっと走り出す。
「ゆまさん、嬉しいのはわかるけど走ると転び……」
松原・愛莉が声をかける間も無く、ゆまは見事に滑って転んだ。
「……遅かったわ」
愛莉は天を仰ぎ、手で目を覆う。
「あっ、ゆまさんこけた! あははは! 大丈夫?」
仮夢乃・蛍姫が笑い、助けの手を差し伸べる。
「お風呂で走ったら危ないでー?」
八蘇上・乃麻の声を聞きながら、ゆまが立ち上がった。
「あうう……いたた……でも、また貴女に会えて嬉しいのです!」
そしてアカハガネの手を取り、ぶんぶんと何度も握った手を上下さす。
「ウム。アエテ、ウレシク、オモウ」
握手をしているゆまとアカハガネの姿を見て、富士川・見桜はよかったなと言う思いがじんわりと浮かんだ。
挨拶が済むと、皆で温泉に浸かった。
「はぁ、極楽極楽。温泉って心も体も休まるわね……」
「冬に温泉もええもんやなぁ」
愛莉が言うと乃麻が頷く。
「ふーっ、生き返るー」
「やっぱり温泉は良いですねぇ」
蛍姫やゆまもゆったりと温泉に浸かっている。
「次は私の友達のところに行かないとね。楽しみだな」
見桜が呟いた。
アカハガネとは面識がなかったが、友達になったイフリートもいるし、頑張ろうという気持ちだ。
末永くこの世界を守ってくれるように、ずっと友達でいられるようにと。
撫桐・娑婆蔵は、皆と温泉に浸かるアカハガネを見ていた。
アカハガネにあってアカハガネに非ず、か、と。
「それでもあれはアカハガネにゃァ相違あるめえ」
と、頷く。彼女は覚えているのだろうか。猛暑の折に、夏バテしたことを。
「湯あたりにゃ気を付けなせえよ」
「タクサン、モラッタ! アレハ、ウマカッタゾ」
アカハガネが笑う。
「アカハガネ久しぶりだな!」
淳・周ものんびり温泉に浸かっているアカハガネに声をかけた。
「ウム」
「この温泉はどんな感じだ?」
「トテモ、ヨイ」
暑いとバテるのだろうけれど、今日の温泉はちょうど良い塩梅のようだ。
アカハガネが気持ち良さそうに腕を伸ばす。
周も、それに倣い大きく伸びをした。
初対面の挨拶をした日下部・優奈は、アカハガネに聞いた。
「人間とダークネスは本当に対極の存在なのか、その確証が欲しい」
サイキックハーツに至ったというガイオウガの一部となった今だからこそ、どうしても聞いておきたいとの思いだ。
アカハガネは優奈の言葉を聞いて首を振る。
「ニンゲン、ト、ダークネス、タイキョク、チガウゾ」
人間とダークネスは対極では無いと、アカハガネは語った。
吉沢・昴に後押しされるように天宮・黒斗は語り始める。
「姿形はなくても、ツイナも居るんだろ?」
また会えて本当に良かったこと。ちょっとだけ寂しいと本音も。
「……私、温泉好きだからあちこち入るんだ。初詣もまた此処に来るよ」
その時は、見えなくても傍に居て欲しい。一緒に楽しんで欲しいと。
あの時、私達を守ってくれてありがとう。これからもずっと見守ってくれるのも、ありがとう。また会おうな、と。
黒斗の話を最後まで聞いてから、昴はアカハガネに向かって頭を下げた。
実の所、イフリートの愛嬌ある振舞いを強く警戒していたのだ。
「だが、今は感謝している」
黒斗の心に良い変化を齎してくれた事、勿論、地脈の力を抑えてくれる事も。
石の一つでも持ち帰って庭に分社を作り、祀らせて貰いたいと思う程に、と。
「スレイヤー、スサノオ。タオシテクレタ。ワレモ、カンシャスルゾ」
アカハガネが頷く。
そんなアカハガネをぼんやりと見つめているのは今井・紅葉だ。
温泉は温かくて気持ちいい。
「本当にあの時とそっくりですね……出会ったイフリートさんもその中にいるかしら?」
イフリートも温泉のように温かいのだろうか。
抱きついてみたい。
もふっと。
その目の前に、保戸島・まぐろの用意したとり天が出てきた。
「アカハガネもみんなも、とり天は食べたことがある?」
食べるときは、かぼすポン酢につけてという事だ。
せっかくの機会だしと、椎葉・武流がとり天に手を伸ばした。
「このところ激戦続きだったし、今年の冬は冷えるから嬉しいところだな」
「冷えるから甘酒用意してきたんだ。みんなもどう?」
卯月・あるなは甘酒を皆に振舞っている。
「トリ天?ナニソレ? 美味しそー!」
ローラ・トニックはプロポーションを引き立てるセクシーなビキニを着て温泉を堪能していた。
皆、とり天に甘酒を味わい、美味しいと感想を言い合う。
神無月・佐祐理も羽根を伸ばし大きく伸びをした。
「温泉、気持ちいいですね」
文字通り、背中の鷲の翼を大きく伸ばしているのだ。
そんな仲間の様子を見て、日野森・沙希がボソリと呟く。
「どうやったらそんなに育つのでしょうか」
視線はたわわな胸である。
そこへ、とり天を配り終えたまぐろがやってきた。
「ふう、あったかいわね! みんなリラックスできてるかしらね?」
彼女はマリンブルーのワンピースの水着を着用している。
沙希はぺったんまぐろの姿に心底ほっとし、とり天に手を伸ばしたのだった。
【光画部】は最後に皆で記念撮影も行った。
のんびりと幸せそうに温泉に浸かっていたアカハガネが、大きく伸びをする。
いよいよ、その時が来たのだと思う。
「合一するしか手は無いのか?」
神虎・闇沙耶がアカハガネに声をかけた。
「ウム」
「別の手を考えるのも友の役目だが、無いと言われたら引き下がろう」
闇沙耶はそう言って、大地の力に戻っていくアカハガネを見守る。
「次に会える時があるのならば、俺はその時までに世界を平和にする。アカハガネ、平和になった時、また会おう!!」
「ミマモッテイルゾ、ワガ、トモヨ」
そうして、穏やかな時、温かいこの場所で、世界を見守るため彼女は大地の力と合一していった。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年1月11日
難度:簡単
参加:39人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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