龍脈封印儀式~国境に御座す神々に燈を

    作者:朝比奈万理

    「皆、この忙しい時に集まってくれてありがとう」
     頭を下げた浅間・千星(星詠みエクスブレイン・dn0233)。隣にかなり大きな白豹を伴っている。
     白豹は橙色の炎を纏い、オレンジサファイアの瞳を輝かせて千星の話に耳を傾けはじめた。
    「スサノオ勢力が滅びた事で、スサノオ大神の力が失われたのは周知の事実であると思う。これはとても良い事。だが、少しばかり問題が発生してしまっているようでな……」
     ガイオウガ及びスサノオ大神の力の源は、『龍脈』と呼ばれる大地の力。それは一般的には『フォッサマグナ』とも呼ばれ、日本を真っ二つに引き裂く程の力を秘めている。
    「この力を支配した『ガイオウガ』が旧世代の勝者となり『サイキックハーツ』を引き起こしたのは、ある意味当然だったのだろうな」
     現在この『龍脈』は、スサノオの姫ナミダが奪ったブレイズゲートのエネルギーによって活性化されているため、このまま誰も制御も使用もせずに放置をすれば、自然現象として暴発してしまう危険性が出てきたという。
     自然現象の暴発。すなわち巨大地震や大噴火が同時に起きる可能性である。
    「この危機に際し、学園で保護している『ガイオウガの尾』が『龍脈』の鎮静化と封印を行いたいと申し出てくれたんだ」
     沈静化と封印を行うことにより、『龍脈』たるスサノオ大神の一部であるスサノオの残党の大半を消滅させることができるようだ。
    「ただ、彼らの力だけでは封印の儀式は行えないらしく、『ガイオウガの尾』は皆に儀式を手伝って欲しいそうだ」
     千星の言葉に、白豹――『ガイオウガの尾』は小さく頷いた。
    「儀式が行われる場所は、群馬県と長野県の県境に隣合いながら建つ神社。儀式を行う日にちは、1月1日から11日までの間。地脈の流れを見て適切なタイミングで行うことになる。この適切なタイミングは『ガイオウガの尾』が判断するそうだ」
     千星は続けて、儀式の流れの説明をはじめた。
     まず、余裕をもって神社の近くにまで移動。タイミング次第では数日間宿泊する可能性がある。そのタイミングを見計らって神社に移動、神社で儀式を行う。
    「儀式と言っても難しい事は無く、初詣と一緒だ。鳥居をくぐり手水舎でお清めをして、社殿前で一例二拍手一礼。もともと、『龍脈』上にある神社は大地の力を鎮護するものでもあるため、神社の作法と儀式は一緒のようだ」
     その儀式が成功すると、神社近隣で天然温泉が湧出する。その温泉に『ガイオウガの尾』と入って、彼らが大地の力と合一するように補助する。
    「ついでに、一般人が迷い込まないように対策をとったり、大地の力を狙ったダークネスの襲撃に対して警戒もお願いしたい」
     千星は説明し終えると、隣の『ガイオウガの尾』と目線を合わせた。『ガイオウガの尾』はしっかりと座りなおし、灼滅者を真っ直ぐ見つめると、恭しく頭を下げた。
    「ガイオウガノチカラヲクラッタスサノオヲ、ホロボシテクレテ、アリガトウ。ジブンタチガミンナニタスケラレタノハ、コノギシキノタメダッタンダ」
     ふわりと笑んでみせる『ガイオウガの尾』。
    「コレカラハ、ダイチノチカラガダークネスソシキニリヨウサレルコトナク、ズットミンナヲミマモッテイキタイ。ダカラ、ミンナノチカラヲカシテホシインダ」
     細まる橙の瞳がきらめくと、纏う燈も揺らめく。
     それは、やっと自分の役目を果たせる喜びの表れでもあった。


    ■リプレイ


     軽井沢の市街地にある旅館を拠点としていた灼滅者一行が、地脈の流れを感じ取った『ガイオウガの尾』――白豹と共に其の神社へと赴いたのは、1月3日の夕のこと。
     旅館を出ると同時にニコと流人が殺界を形成し、山道を快調に進んでこれた。
     神社前ではさらに嘉月と徹也、真火が殺界を重ね、穣がDSKノーズを駆使し他勢力の警戒を行う。
     二県にまたがる珍しい社とはいえ、大晦日元旦でなければよる夜中に参拝する人もおらず、宮司も峠を降りた後だった。
     鳥居の前で白豹は橙の瞳を細めてあたりを見渡した。そして一つ、安堵息をつく。
    「アリガトウ。コレデ、ニンゲンガハイリコムシンパイモ、ホカノセイリョクニジャマサレルシンパイモ、ナクナッタヨ」
     頭を下げた白豹は、県境を記す敷石をたんと蹴ると階段を一気に駆け上がった。そして門の前で踵を返すと、皆を待つかのようにちょこんと座りなおす。
     境内ではなく参道でもなく、鳥居の前にある手水舎は珍しい。
     真琴は手水舎に歩み寄ると一揖し、水盤から柄杓で水をくみ取って左手を清める。
     真冬の水はとても冷たい。だけど清らかなその柄杓一杯の水で、両手と口、手にした柄杓を清める。
     そして、第一の鳥居前に進み出ると小さく一礼し、階段の左側を上がってゆく。
     後に並んだ灼滅者たちも、彼女に倣ってゆく。
     嘉月は第一の鳥居をくぐる前、手水舎で脱帽して手と口を清めて鳥居をくぐってゆく。
    「作法を正確に行った方が儀式の成功率が上がるとのことだからな」
     と丁寧に柄杓を手に取った【下宿仲間】の徹也は、同行した仲間達が作法を見ることができるように位置取り。丁寧に手と口を清めて、灼の柄も清めて元の場所にそっと戻す。
     その美しい作法と徹也の真剣な表情を、立夏は瞳を輝かせて見つめていた。
    「ほな徹やん、わいが間違えてたら、教えたってや!」
     さっき見た作法をうまく再現する自信はなかったけど、徹也が教えてくれたことなら、心強い。
    「え、遠藤、一緒に清めないか……?」
    「う、うッす!」
     ライルと穣も並んで、徹也が見せた作法を反芻していく。
     初詣はがここまで奥が深いとは……。だけど、大切な後輩と尊敬する先輩同士の二人。一緒に初詣ができることが嬉しい。
     手水舎を前に袴姿の未知は何やら難しい顔。
    「俺、初詣に来るの実はかなり久しぶりで作法に自信がない……ニコ先生教えて!」
     縋る先は来日してから日本のことを勉強してきたニコ。当然、毎年の初詣もかかさず、神社での作法も身についていた。
    「俺のやるのを真似れば良い」
     着物の袖を抑えながら丁寧な所作で柄杓を取り、迷うことなく正確に清めていく姿に、未知は感動しきり。
     【無名の祠】の流人の丁寧で正確な手水作法に則り、結慰が手と口を清める。続いて燐も巫女服の袖を気にしながら清めを行う。
    「お参りのマナー、少し調べてきました」
     真火が柄杓を取ると隣の葉月も同じように柄杓を取り。並んで丁寧に手と口を清める。
     他の者も、前の者の作法を見習い、あるいは身に付いた作法に則り清めていった。
     参道は終始階段であり、積もった雪が踏み固められて慣れていないと転倒してしまう危険性もあるため、作法に則り左端を歩きながらも無意識のうちに手すりに摑まる。仲間同士で滑って転ばないように助け合い、階段を上り切った皆の前にそびえるのは、随神門。
     白豹は門の中を覗き込む。倣って皆も覗き込むが境内には当然何人も居らず。だが奥の方には社が三つ鎮座している。
     長野県側の本殿、中央に本宮、群馬県側の新宮。
     本殿と新宮に灯りはついていなかったが、本宮の奥からは灯りがともる。
     揺れる灯ではないことから、蝋燭ではないことが分かった。
    「ココカラハヒトクミズツ、オマイリダヨ」
     従来の初詣は並んでお参りを行う。だが、確かに、後ろに人が並んでいてば配慮からか作法も略式にしてしまいがちだし、神様への祈願事もしっかり伝えられない。
     それぞれ顔を見合わせると自然と順番を決め、一人、あるいは一組ずつお参りすることに。
     下弦へと向かう十六夜の月が、木々の隙間からやさしい光を落としていた。

    ● 
     門の前で一揖した凛凛虎は、隣に座る白豹と目を合わせた。
     彼が鶴見岳で見送ったイフリート――アケリは幼獣であったが、同じような橙の火を纏う白い豹だった。
    「久しぶりだな、アケリ」
     この個体があの『アケリ』かはわからない。だけど少しでもあの子の要素があるならば――。
     本宮へと歩を進める凛凛虎の背を、白豹は目を細めて見ていた。
     『アケリ』という名のイフリートに逢いに来た灼滅者がもう一人――見桜だ。自分が知っているあの仔よりだいぶ大きいけど、この白い躯体に橙の瞳と炎は――。
    「アケリ?」
     名を呼んでみると白豹は見桜を見た。だけどそれ以上の反応はない。
     それでも。
    「富士川・見桜。覚えてる? 今日は『友達』に逢いに来たんだよ」
     見桜はそっと手を伸ばした。
    「ここでもセンターを歩かない」
     一人境内に入った真琴は石畳の端を歩き、本宮の前へ。鈴を鳴らし賽銭を入れ。
    「二礼二拍手一礼……で良いのかしら?」
     おそらくあの小柄なエクスブレインは、参拝の仕方がよくわからない者たちのため、堅苦しいことは抜きに『二礼二拍手一礼』と伝えたのであろう。本来は、鈴を鳴らし賽銭を入れる前と一礼に『一揖』が入る。
     作法にこだわりすぎて硬くなっては、お願い事が散漫になってしまう。真琴は見聞きしたように作法に則って頭を下げて二度手を打ちお参りする。
     願うのは『龍脈』の鎮静化。
    「龍脈の鎮静化と封印……ガイオウガの尾のイフリート達も、大役を担ってくれて有り難いですね。新年一発目、しっかりと儀式を終えましょう」
     気を引き締めて門をくぐった嘉月。作法に則って本宮まで歩み出ると賽銭を入れる前に小さく頭を下げ。
     賽銭箱にお賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手。
    (「今年も一年、一般人の皆さんに被害を出すことのないよう頑張ります」)
     門を通った紫月は、あ、小さく声を上げた。
    「……そういえばココ、あの時紗夜と一緒に来た神社だ」
    「あの時、とは……」
     紫月の隣を歩く柚羽が小さく首をかしげると、
    「カノさん先輩が行方知れずになった時、ここにしーちゃん先輩と一緒に来て、カノさん先輩が早く見つかりますようにって祈願したんだよ」
     ふたりの一歩後ろをついていた紗夜が説明をした。
     その祈願も甲斐あってか、柚羽はすぐに見つかり、今こうして三人で詣でることができている。
    「だから、今回はそのお礼もしなくちゃね」
    「……そうだったんですね。その節はご心配をおかけしました」
     恭しく謝罪する柚羽と頭を上げるよう促す紫月を見、紗夜は思い出していた。
     あの時、このしーちゃん先輩は神は死んだなどと言い、相当落ち込んでいたんだよな、と。
     本宮では作法に則って手を合わせる三人。
    「(えっと、あの時は神様の存在を疑ってスミマセンでした。彼女が無事見つかり、とても感謝しています。どうかこれから、彼女の傍にずっと居られますように)」
     眉間に小さく皺をよせて強く念じる紫月の隣、柚羽は静かに手を合わせる。
    「(恙無く過ごすことができますように)」
     こう願っても、恙は立ちはだかる。
     けれど、願うことはそれを目指すこと。幸せを目指すこと。だから、また一歩を踏み出せるのだ。
     紗夜も、あの時のお礼に祈願を重ねる。
    「(願わくば――)」
     ステラとアンカーの従姉弟も、並んで本宮参拝を行う。
     説明では一揖が抜けていたようだったけど。まぁ、細かいことは……。とステラは賽銭箱にそっと賽銭を入れる。
    「(ちゃんと初詣するのは初めてかもしれない)」
     賽銭を入れ鈴を鳴らすアンカーは小さく息をついた。
     今回はダークネスの襲撃の可能性が示唆されていたため、彼女は同行していない。
     ステラも鈴を鳴らせば、二礼も二度手を打つ音も同時なのはさすがの血のつながりか。
     黙々と祈りをささげる従姉の隣で、アンカーも強く願いを込めるが。
    「おのれダークネス……」
     恨み節は口をついてしまっていた。
     続いて進み出るのは、紅詩と七葉。
    「――えっと、ここではどうしたらいいのでしょう?」
     神社参拝にも決まった作法があるなんて。と困ったように微笑む紅詩の疑問に答えるのは、七葉。
    「ん、ここは、一揖してからお賽銭、その後に鈴を鳴らして二礼二拍手一礼、最後に一揖だよ」
     実家が神職と言うこともあって、正式な作法は身についている。七葉の言うとり、二人揃えて参拝。
     最後の一揖を終え、顔を見合わせる二人。
    「これでいいんですよね? 七葉が教えてくれてよかったです」
     紅詩の笑顔に、七葉も思わず頬笑みがこぼれた。
    「境内も、真ん中は神様が歩く道だそうです」
     真火の言葉に則って。なるべく隅を歩く葉月は、彼の手をとり本宮前へ。
     二礼二拍手。二人揃って龍脈の鎮静を祈念する。
     ニコと未知も参道をゆく。折角の初詣だからと、二人揃って袴姿。
    「ニコさん、袴姿ばっちり決まっててカッコいい!」
    「……」
     けらりと笑う未知。対してニコは気恥ずかしさで言葉も出ない。冷える空気に頬が熱い。
     本宮を前に、作法に則って動作を行い、
    「お願い事がある場合は二拍手の後に心を込めて」
     ニコの声の後、息を合わせて二つ手拍子。
    「(ニコさんと二人一緒に元気に過ごせますように)」
     願いを込めた未知は深く一礼。同時にニコも一礼し、一歩下がって一揖。
     踵を返し門へ帰る道すがら。
    「……ね、ニコさんは何お願いした?」
    「……本来なら内緒にしておくべきなのだろうが、未知にならいいだろう」
     ニコは、未知以外の他の誰にも聞かれぬようにそっと耳打ち。
    「わ、俺と一緒!」
    「何!? 同じだと!!」
     【無名の祠】の三人は横に一列に並び、本宮前で一揖。
     進み出て鈴を鳴らせば、賽銭箱に流人が居れたのは大量の賽銭。
     二礼二拍手の後、静かに祈念する流人の隣、巫女服に身を包む燐の唱える祝詞は天津祝詞。
     ここまで身だしなみや作法に気を使ってきた結慰は祝詞を聞きながら、
    「(今年は面倒な年になりそうだなぁ……早く解決したいよ)」
     願いの現況を憂いて心の中で小さく息をついた。
     【下宿仲間】の四人は今し方お参りを終え、一礼一揖したところ。
     踵を返した徹也。彼のしっかりした作法のおかげでライルと穣、立夏も一通り正しい作法で参拝ができた。それぞれのタイミングで本殿に背を向ける。
    「徹やん、何お願いしたん?」
     徹也の顔を覗き込みながら問う立夏。
    「……皆が健勝で、今後も共に居られるように。と……」
     いつもより徹也の声が小さいのは、照れている証拠だ。
    「徹やん、照れとるん?」
     そう尋ねる立夏は、思わず頬を綻ばせる。
     自分の願いも、同じような事だったから。
    「先輩、何お願いしたんすか?」
     穣に尋ねられたライル。穏やかに彼を見てつぶやく。
    「一年皆、健康に過ごせるように。だな」
     特に穣は無茶をするから、彼の無事は念入りに願っておいた。というのは秘密である。
    「俺は、先輩たちの足手纏いにならねぇでカッコよく大活躍できますように。ッすよ!」
     からりと豪快に笑んだ穣は今年も無茶をしそうである。先輩の苦悩は尽きなさそうだが、これはこれで。
     杏子も参拝し、参拝を終えて門へと戻ってきた直哉は、静かに座る白豹を横目にみた。鶴見岳で自分が送った少女の面影を探したのだ。
     本当は、その面影があったら話したかったことだったのだが、自然と語り掛けていた。
     自分たちを信じてくれたこと、絆はちゃんと繋がっていたこと。そして――。
    「一つだけ聞いてもいいかな。大地と一つになる事は、アスカにとって幸せな事かい?」
     この個体にどれだけアスカが混ざっているのかはわからない。だけど直哉の目に映るのは、穏やかな瞳の白豹。
    「アスカが幸せなら、やっぱり俺も嬉しいんだ。そしてその手伝いが出来る事を、俺自身も幸せだと思う。友達として仲間として、心を共に歩んで行きたい。それは俺にとっての願いでもあるから」
     黙って聞いていた白豹。直哉はにっこりと笑んだ。
    「これからもずっと、宜しくな」


     温泉が湧き出たのは神社からほど近くにある見晴台であった。
     西には浅間山。南側は大きく開け、妙義連峰や八ヶ岳が一望できる。
     今宵は十六夜。月明りが世界を照らす。
     嘉月と杏子が殺界を形成し、入浴が整った。
    「ミンナ、オネガイシテクレテアリガトウ」
     白豹は頭を下げると、ゆっくりと温泉に入っていく。
    「しっかりと体を清めてから入りませんとね」
     嘉月は湯船から手でお湯を掬い、しっかり掛け湯をして。
     いざ湯船へ。
    「ん、ゆったりできるね」
     紅詩の影に隠れた七葉もにっこり笑顔。そんな彼女を紅詩は少し抱き寄せ。
    「今度は二人で温泉に行きましょうね」
     お湯に浸かりながらもため息のアンカー。そんな従弟を横目にふふっと笑んだステラ。
    「同伴相手が私なら、言い訳も立つでしょう。ところで私に従妹はいつできそうですか?」
     首を傾げたアンカーだったが、何のことを言っているのかすぐに理解し、
    「早くて、7年後?」
    「帰り道にご挨拶に伺っては?」
    「は、初詣の帰りは寄り道しない方がいいって話ですよお姉様!」
     天敵に防戦一方であった。
    「ふー。寒い中の温泉てめっちゃ贅沢やな」
     目を細める立夏。心地よさから思わず息が漏れる。隣の徹也も、無表情ながら心地よさに和んでいる。
     一番の贅沢は皆とこうしていること。
     徹也はこの和やかさと相棒を守りたいと誓う。
    「もこたも連れてきてやりたかったっすねー」
    「……茹ってしまわんか? でも水風呂なら入れるのだろうか」
     と話に花を咲かせる穣とライル。
     そして交し合うのは、今年も共にという誓い。
     見桜、ニコと未知、紫月と柚羽と紗夜、流人と燐と結慰、直哉もゆったりと湯に浸かる。
     ほわぁーと息をついた杏子は、隣で目を細める白豹にそっと触れ。
    「あなたの中にあたしの友達もいるのかな? ねえ、あなたのお名前は?」
     杏子が尋ねても白豹は小さく笑むだけ。ならば。
    「『ウィズ』ってどうかな? 『一緒』っていう意味よ」
     小さく目を閉じゆらりと消えていく白豹。合一が始まったのだ。
    「いつでも何処にいても、みんな一緒。忘れないでね」
     消えてゆく白豹に杏子は必死で伝えた。
    「ガイオウガの尾ともここでお別れですか……」
     寂しいがこれが一番の最良なのだろうと思う真琴は、同時に自分の力の使い方にも思いを巡らせた。
    「もし合一しても逢えるなら会おう。飯とか食いに行こうぜ。その時は人も灼滅者もダークネスも関係なく楽しもうな」
     凛凛虎と声に白豹は微かに笑んだようにも見えた。
    「これでガイオウガの尾たちの力になれたかな……?」
     葉月はつぶやき、真火は白豹が消えた湯を見つめていた。

     みんな、ありがとう。だいすきだよ。
     風がそう、啼いた気がした。

    作者:朝比奈万理 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年1月11日
    難度:簡単
    参加:24人
    結果:成功!
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