ビキニのおねーさんと極寒化状態で、我慢比べ!

    作者:芦原クロ

     寒い夜、都内某所に有る古いアパートの前で、異常な光景が繰り広げられていた。
     アパートの住人らしき一般人の男性が数人、水着姿だけで倒れている。
    『残りは、あなただけよ。全員アパートから出て行って貰うようにするのが、私の仕事。誰に頼まれたかは忘れちゃったけど……あなたで最後。我慢比べに負けたら、出て行って貰うわよ』
     キレイな女性が片手をあげると、女性と一般人の立っている場所だけにブリザード級の雪が降る。
     周囲の気温は氷点下、数十℃前後といったところだ。
    『そろそろ貴方も、水着姿になって貰うわね。我慢比べなんだから』
     美しい指をパチンっと鳴らす、ビキニ姿の女性。
     すると一般人は、水着姿になり、あまりの寒さに気が遠くなる。
    「寒さの我慢大会ですよ。気温もすごく低くなっているのです」
     羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)は周囲の気温がグンと下がっていることに気づき、連れて来た灼滅者たちに告げてから、一般人と女性との間に割り込んだ。

    『……あら? あなたもここのアパートの住人かしら。我慢比べで私に勝てたら、私がなんでもしてあげる。お金も有るわよ。でも私が勝ったら、アパートから立ち退いて貰うわよ』
     女性は陽桜の動きを観察し、吹雪を一度解除する。
     陽桜が確かめた限り、倒れている一般人は寒さで気絶しているだけで、まだ死人は出ていない。
     しかしこのまま放置してしまうと、凍死する可能性が高い。
     最後の一般人も気絶したのを確認し、一般人たちを気温が下がっていない位置まで運ぶ、陽桜。
     そんな陽桜や灼滅者たちを注意深く見ている、都市伝説の女性。
    「寒冷適応を使えるかどうか……使ったらズルだと思われてしまうのでしょうか? って、着ている服が1枚消えました! み、みなさん頑張ってください!」
     陽桜は寒さに震えながら、灼滅者たちに伝えた。


    参加者
    羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)
    幸・桃琴(桃色退魔拳士・d09437)
    異叢・流人(白烏・d13451)
    外道・黒武(お調子者なんちゃって魔法使い・d13527)
    茂多・静穂(千荊万棘・d17863)
    神原・燐(冥天・d18065)
    枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)
    佐藤・しのぶ(スポーツ少女・d30281)

    ■リプレイ


    (「熱いのも寒いのも慣れさせられたからある程度はいけるだろうが……この都市伝説はどういう経緯で生まれた存在なのだろうか?」)
     女性に疑問の眼差しを向ける、異叢・流人(白烏・d13451)。
    「都市伝説は本当に不思議です……どうして寒い時期にこんな我慢比べを行うのでしょう?」
     流人にとって妹のような存在の神原・燐(冥天・d18065)は、流人の服の袖を小さな指で軽く引っ張り、問う。
    (「鈍った体を久々に動かそうとしたら寒中我慢大会にエントリーとか何のギャグですかな?」)
     ただでさえ寒い時期なのに、もっと気温が下がりまくっているその場で、外道・黒武(お調子者なんちゃって魔法使い・d13527)は少し遠い目をする。
    「春から中学生になるんだから、これも鍛錬だと思って我慢するよっ!」
     頑張ろうと意気込む、幸・桃琴(桃色退魔拳士・d09437)。
    「寒さ我慢かぁ……昔極寒の海にわざわざ潜った事ありますが……ふふ、楽しみですね」
     ドMな茂多・静穂(千荊万棘・d17863)は、寒さによる痛みを味わう為、来たようなものだ。
    「準備した飲食物は保温バッグに入れて、冷気が届かない場所に置きますね」
     身体の内側から温かくなるものを持参した、羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)は、万が一に備えて殺界形成を展開する。
    「寒冷適応は使わないつもりよ。正々堂々、気合いで我慢するわ」
     佐藤・しのぶ(スポーツ少女・d30281)は上着を脱ぎ、下に着ていたスクール水着姿になる。
    「我慢比べで勝てたらなんでもしてあげる……と言っていたけど、そんな事言っておいて、あなたが消えちゃって、約束が全部反故になったりとしない?」
    『さあ? 消えたことなんて無いから、分からないわ』
     お金は残るのだろうかと疑問を抱きつつ尋ねる枸橘・水織(あくまでも優等生な魔法使い・d18615)に、女性はキッパリと答えた。
    『それじゃ、私も少し休憩出来たことだし……我慢比べを始めましょう。人数も多いし、我慢大会ね』
     気温を元に戻していた女性は、灼滅者たちと自分の居る場所の気温を下げ始めた。


    「我慢大会に挑戦する者が意外と多いようなので俺も参加兼、我慢大会に脱落した者がいたら救護を行おう」
     仲間たちを見回し、つねに気を配っている流人。
    「っつか、このさみぃ時期になんちゅう大会をやるんだよこの都市伝説は!?」
     寒がる黒武だが、プライドが高い為、流人だけには負けまいと耐えている。
    (「何とか長く頑張っていければと思いますが……寒いの、あんまり長く続くのは嫌です……」)
     どんどん下がってゆく気温に、燐は小さな体を震わせた。
    「がまん、がまん……!」
     桃琴は軽い足踏みや屈伸運動などをおこない、体を動かすことで体温を上げ、熱を逃がさないようにする。
    『いい方法ね。私も少し、動こうかしら』
     女性は感心し、桃琴と同じように体を動かす。
    (「これは、アレだ。寒さに耐えるのが条件ですが、ビキニ姿のおねーさんを合法で長く拝めると言う事ですよね?」)
     動くたびに豊満な胸を揺らしている女性に、黒武は目が釘付けになる。
    「……って、そんな心の余裕があれば良いですなぁん」
     更に気温が下がり寒さが強まったことで、見ている余裕も無くなってしまう黒武。
    「ふふふふふ。あぁ、今は普通の恰好の私がどんどんあられもない姿にされる上、寒さが襲ってくる……」
     瞳の奥に期待を秘め、静穂は白い息を吐く。
    「恐ろしい……でも、それはそれで好き勝手にされてる感が出て……いいかも♪」
     頬を赤く染めて、うっとりとしている静穂。
     静穂の期待を汲み取ったのか、女性は一番先に静穂の服を1枚消し、その場に雪を降らし始めた。
    「何だよこの寒さ!? 尋常じゃねぇだろうが!!」
     黒武が叫ぶようにツッコミを入れるが、雪は止まない。
    「寒中水泳……と言う訳でもないようですし……うぅん、謎です……」
    「……まぁ、水着姿の女性が相手をする時点で、そんな深い意味や願いとかは無いのかもしれないな」
     都市伝説の行動が理解出来ず、不思議がる燐に対し、流人は気にしないようにと優しく声を掛ける。
    「まだまだ我慢できるよ!」
    『あら……スタイルがいいわね、あなた』
     明るく元気に、スクール水着姿で動き回っているしのぶを見て、女性は百合ィ……な雰囲気を出して来る。
     ある意味、寒気を感じる行為だ。
    「自分じゃ分からないけど」
     しのぶはスタイルを褒められても、もともと意識していないので首をかしげるばかりだ。
    「相手は都市伝説と分かってはいましても……水着姿を見ちゃいますと、見てるだけでこっちも寒くなってきそうです……まだ終わらないのかな?」
     視覚的にも寒さを感じさせて来る女性に、燐は身震いした。
     灼滅者たちの服が、1枚、また1枚と消えてゆき、燐は露出度が高い青色の水着姿になっても、頑張って耐えている。
    「わわわっ!? タイム、タイム!!」
     服が消え、下着姿になってしまうと焦った桃琴だったが、下着が見える前に水着姿に変わった。
    「水着にされちゃった! うぅ、暑い中だと思って、我慢する~!」
    『下着は絶対さらさないわ。男女平等に、ね』
     白い水玉模様の入った赤いビキニ姿の桃琴に、女性が声を掛ける。
     男女と聞き、桃琴が仲間に視線を向ければ、流人と黒武もトランクス型の水着姿になっていた。
     水着姿になったことで、流人は全身に残る傷痕があらわになり、普段は服で隠している黒武も腹部の傷痕がハッキリ見える。
    「あぁ、くそ。手がガチガチになってきて指の感覚が麻痺してそもそも今指があるのか? と聞きたくなる程に感覚がねぇぞ……流人、ギブアップするなら今の内だぜ」
    「まだいける」
     黒武と流人はお互いに競い合い、寒さにひたすら耐えている。
    「うぅ……冷たいです……」
    「暑さ以上に命の危険を感じるので、ギブアップします!」
     震えている燐を見て、限界になる手前で陽桜は宣言し、燐を連れて少し離れたほうへと向かう。
    「ギブアップする。……燐、大丈夫か?」
     燐に甘い流人は一度離脱し、燐を気遣う。
     妹分の燐を、黒武も心配するが、黒武はその場に留まった。
    (「今回我慢大会に参加してる子達が頑張ってるのに、年長者が速攻弱音吐いてリタイアするのも何かアレだしなぁ……はぁ、もう少しだけ気張っていくか」)
     白い息を深々と吐き、黒武は決意をかためる。
    「流石にきついけど、耐えるよ! ここは温水プール前だ~! 終わったらいっぱい温泉入るんだ~!」
     桃琴は夏のことを思い出したり、暗示を掛けたりしながら、自分を奮い立たせている。
    「暖かい毛布をどうぞ。温まる飲み物と食べ物も有りますよ! こたつは別の意味で魔力高いので持って来ないことにしました!」
     持参していた物を手早く燐や流人に配ってから、陽桜は自分も毛布にくるまって暖をとる。
     見るからに暖かそうな光景に、黒武は我慢出来ず、叫んだ。
    「寒いもんは寒いんだよボケぇえ!」
     猫に変身した黒武は素早くその場を離れ、陽桜たちが居るほうへ猛ダッシュし、身を丸めて震える。
     リタイアが相次ぎ、女性は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。


    『あとは、あなた達だけね。もっと気温を下げるわよ……きゃっ!?』
     水織がどこから拾って来たのやら、バケツいっぱいに詰めた雪を女性に掛けた。
     少しでも時間稼ぎが出来るよう、可能な限りの厚着をしていた水織は、残り1枚の服装で動き回る。
    『ちょ、ちょっと何するの!?』
    「別に妨害とかしちゃ駄目って言われてなかったから……」
     積もった雪をもっと掛けながら水織がサラッと答えると、女性は怒りで肩を震わせた。
     女性は瞬時に、水織を水着姿にし、妨害のお返しをする。
     すごく恥ずかしい状態になった水織は身動き出来ず、リタイアとなった。
    「だいじょうぶ、だよ! 桃たちならやれるよ!」
    「向こうもかなり粘ってるね。持って来たアイスクリームやかき氷で、畳みかけるよ」
     桃琴が励ましの声掛けをし、しのぶは持参した冷たい物を女性に渡して、自分も食べ始める。
     極寒状態で、アイスクリームやかき氷を食べる我慢比べ。
     なんともレベルが高すぎる。
    (「できれば寒中水泳にも誘いたいけど、近くに海やプールはないからね」)
     こういう勝負が好きなしのぶは、まだまだ我慢比べが出来る様子で、冷たい物を食べ終えた。
    「おねーさんも、さすがに長時間耐えてるの辛くないですか? あたたかい飲み物、一緒に飲みませんか?」
     陽桜が飲み物を用意しながら誘って来るが、女性は弱々しく首を横に振る。
    『可愛い子からのせっかくのお誘いだけど……まだ負けるわけにはいかないの』
     アイスクリームと、かき氷を食べ終えた女性は、指を鳴らす。
     服がどんどん剥がされ、寒さをより強く実感する事に戸惑う素振りをしていた静穂は、残り1枚の服を消されてしまう。
    『!?』
    「あぁ、ついに暴かれてしまいました……♪ ちょっと特殊ですが、水着でこういうのありますし、露出度はこちらが不利なんですから、こういうのもいいですよね……?」
     ダイダロスベルトを紐水着風にして身に付け、自分を縛っているドMな静穂に、女性はぽかんと口を開けたまま、かたまる。
     小学生には刺激が強いので見せないよう、燐の目をそっと片手で覆い隠す、流人。
    『え、ちょっと待って、あなた……その姿のまま続けるの? え? ほんとに?』
     女性の戸惑いなどものともせず、静穂は寒さと縛りによる快感で意識を保ち、我慢続行。
     はたから見ると、とんでもない光景だ。
     半ば混乱状態の女性の様子に、あと少しだと判断し、流人と陽桜が戻って来る。
    「どんな形であれ、お前との我慢比べを途中で抜け出した事に変わりはない。が、流石にこんな形でギブアップして終わってしまうのは悔いが残る。故に、再度の挑戦をお前に申し込む」
    「おねーさん見てたらなんかもう一度頑張らなきゃって気になっちゃったので、もう一度挑戦してもいいですか? 今度はもうちょっと長く頑張れると思うのでお願いします!」
     流人の言葉に陽桜も続き、単純な女性はそれを承諾する。
    「うぅ、寒い……! でも、ベルトで同時に締め付けてキモチいいのとそれを皆様に見られている事で、あぁ、身体が熱寒い……!」
     ヒートアップしまくる静穂に、女性はとうとう力が抜け、地面に膝をつく。
     冷たい物を食べ終えて頭も痛むのか、片手で頭を抱えている女性に、立ち上がる気配は無い。
    『……私の負けね。いいわ、好きにして。私を始末するんでしょう』
    (「できるだけ苦しかったり痛くないようにしたいですね」)
     目的をなんとなく察したのか、覚悟を決めている女性に対し、陽桜は優しい想いを抱く。
     真珠色の鈴飾りついた翠のリボン、縁珠を射出し、霊犬のあまおとと共に戦う、陽桜。
    「もう冷たくて寒いのは嫌、です……」
     連携したメディックの燐は、仲間の状態を確認してから、攻撃に回ることを決める。
     七匹の蛇に変化させた影、冥天の従者で敵を捕らえ、ナノナノの惨禍がダメージを重ねた。
    「えぇい、これ以上寒くなるとマジで冬眠ならぬ永眠するはボケぇ! 只管殴る! 蹴る! 速攻で倒す!」
    「……まぁ、タイミングを合わせておこうか」
     猫の姿から元に戻り、決死の回転体当たりをする黒武。
     タイミングを合わせて、黒武とほぼ同時に、死角からの斬撃でダメージを与える、流人。
    「服を着るのは、アクションが終わってからね!」
     水着姿のままで、桃琴は超硬度の拳を打ち込む。
    「ふふ、見えたらそれはそれで……」
     静穂はうっとりしながら、紐水着風のダイダロスベルトを射出するが、裸体をさらすことは運良く避けられた。
    「導眠符で終わりにするわ」
     殺意や悪意のないタイプの相手を、殴ったり蹴ったりすることに気が引けるしのぶは、莫大な呪が込もった手袋、符術手袋で符を飛ばす。
     それがトドメとなり、消滅しそうな女性に、陽桜が駆け寄る。
    「お疲れ様でしたって言っても……いいですよね?」
    『……ありがとう、優しい子ね。毛布、とても……暖かいわ』
     陽桜が女性に毛布を掛けると、女性は微笑み、優しい温もりに包まれながら完全に消滅した。


    「ふやぁ、今回は大変な相手だったね~」
     消された服は元通りになり、桃琴はしっかりと着直す。
    「ふぅ……ありがとうございました♪ 満喫したー」
     満足そうに礼を言う、静穂。
    「お金も、都市伝説の持ち物……なだけに、やっぱり一緒に消えちゃった」
     まだ少し恥ずかしそうにしながら、水織は予想通りだったと1人頷く。
    「寒いから、温めて欲しいです……」
     兄に甘えるように、燐は流人に抱きつく。
    「良く頑張ったな」
     流人は燐を包み込むように抱き、片手で頭を優しく撫で、甘やかしている。
    「終わったし、炬燵でぬくぬくしてやる……!」
     そう言って帰ろうとする黒武を、しのぶが呼び止めた。
    「寒いから、皆で何か温かいものを食べに行くのは、どう?」
    「わぁ、いいですね! 行きたいです!」
     しのぶが仲間たちを誘うと、後片づけを終えた陽桜が嬉しそうに答えた。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年1月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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