Violence-Hard 鈍侍、血風帳。

    作者:空白革命

    ●辻斬り
     ひゅん、と風が鳴った。
     コンクリートブロックに血の飛沫が散り、まだらに赤黒く染めた。
    「魂の輝きは、何処にあるや……」
     地に足を付けた影が言う。
     どこかひょろ長く、夕闇の薄明かりに浮かんだ色は朱色。
     まるで全身に返り血を浴びたかのごときまだら模様の着流しに、漆を塗った鞘に納めた一本の剣。日本刀。
     一見して浪人風の、どこかふらふらとした男だった。
     彼はぼうっと、空を見上げていた。
     夕闇と彼の佇まいから、それはよく似合っていたと思うが、状況にはそぐわなかったと、言わざるを得なかろう。
     なぜならば。
    「何処を見ている」
     と、後ろから声がする。
    「今は敵の眼前ぞ」
     と、前からも声がする。
    「まさか我等を無視するつもりでは」
    「……あるまいな」
     右から、左から、四方八方円陣を組むかのように取り囲み、木刀日本刀曲刀直刀様々な武器を手に取り、男達が構えていた。
     否、構えていたなどと言う静的な状態ではない。彼らは言葉を言い終わるかと言う所で既に動き出していた。
     まるで八本の刀が一つの意思のもとに動いているかのごとき攻撃である。
     中心に立った浪人風の男はしかし、まるで回避も防御も知らぬとばかりに棒立ちのまま。
     全ての剣が彼の肉を切り裂かんとした、その一拍中。
     男の鞘から刀が抜かれ、凄まじい閃きと共に全ての刀が宙を舞った。
     いや、刀と一緒に、持ち主の手首までもが舞っていた!
    「う、うおおおおお!?」
    「貴殿の魂もまた、輝かぬか」
     一回転して、刀を納める。
     パチンと鞘に押し込まれる音がした時には、八つの刀と首が、地面に転がっていた。
     彼は、崩れゆく人々の中を、まるで興味も見せずに通り過ぎていく。
    「魂の輝きを、どうかだれか……見せてくれ」
     
    ●輝人
    「魂というものの存在を信じるか」
     大爆寺・ニトロ(高校生エクスブレイン・dn0028)は行儀悪く机に腰掛け、窓の夕焼けを眺めていた。
    「人の中に確かにある……いや、人の在る確証とでもいうべきか。とにかく、そういうものの存在を、私は信じている」
     腕を組み、振り返る。燃えるような、夕焼けのような、太陽のような目をした女だった。
    「この男も多分、そういうものを信じてるんだろう。いつでも見られるものではない……というだけだ」
     だから堕ちたのかもしれないな。
     ニトロはそう言って、一枚のスケッチ画を指差した。
     ダークネス。アンブレイカブル。
     灼滅者が束になっても倒せぬという戦闘種族。
    「こいつに魂を見せてやれ。それが、勝利のカギになる筈だ」
     
     唐太刀・刃鉄(からたち・じんてつ)。
     刀を使うアンブレイカブルである。
     彼は『魂の輝き』を求めて腕の立つ人間を次々と襲っている。
     逆に言えば、彼を満足させさえすればこの一方的な戦闘行為を止めることができるだろう。
     倒すことができなくても、止めることはできる筈だ。
    「本来ダークネスはバベルの鎖の影響で襲撃が困難だ。そのためにエクスブレインの力を必要としているんだが……今回は少しパターンが違うな。彼がこの日立ち寄るという無人道場。ここで待っていれば『居ると分かっていても』彼は乗り込んでくるだろう」
     無論、奇襲が可能というわけではない。あくまで土俵として認めたに過ぎない。
    「無論、『この調子では望み薄だ』と感じたらさっさと撤退してしまうだろう。そうなれば次の被害者を生むだけだ。止められるのは……お前達だけだぜ」


    参加者
    艶川・寵子(慾・d00025)
    スウ・トーイ(黒禁門・d00202)
    椎名・紘疾(クイックシューター・d00961)
    不動・祐一(揺るぎ無き守護者・d00978)
    犬神・夕(黑百合・d01568)
    鳴海・ミチル(紅い風の巫女・d02981)
    天瀬・空人(高校生ストリートファイター・d03118)
    四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)

    ■リプレイ

    ●魂の輝き
     ジャージの少年が両手を組んで伸びをした。
     首をぐるぐると回し、ついでに肩を左右別に回す。
     スウ・トーイ(黒禁門・d00202)は最後に帽子を被り直すと、片眉を上げて足元を見た。
     所謂畳み張りである。一般のものよりも頑丈に作られたそれは、対衝対刃に優れ古来より愛されてきたとされている。正式名称は、良く知らない。
    「ツワモノ相手ってのは慣れないもんだ……と言うか、勝たなきゃならない戦いってのは苦手だよ」
    「ふうん?」
     同じように柔軟体操をしている艶川・寵子(慾・d00025)だが、妙にボディラインを強調した反りをしていた。
     胸を反らせて見返るように身を捻じる寵子。
    「私は素敵だとおもうわよ、魂が滾るわ」
    「魂ね……」
     不動・祐一(揺るぎ無き守護者・d00978)は畳の感触を足で確かめながら呟いた。
    「俺(つくりもの)にもあるのかね。そんなもん」

     天瀬・空人(高校生ストリートファイター・d03118)は沈黙している。
     直立不動。瞑目無言。
     手をゆるく組み、呼吸だけをしていた。
    「…………」
     その沈黙は誰のものか。四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)は空人の横で同じように黙していた。
     桜色の和服に、帯を文庫の変わり結びにしている。見渡してみる限り雰囲気こそこの無人道場に近かったが、用途で言えばもっともこの場に居るべきでない恰好でもあった。
    「…………」
     いろはは目を開け、空人の横顔を覗き見た。
     彼は恐らく、魂の意味を考えているのだろう。
     魂が輝くというのは、どういう意味なのか。
     それは自分たちにもあるものなのか。
     あるとしたらそれはいつ。
     どんなかたちで。
     輝くものなのか。

    「あくまで持論なんやけど」
     鳴海・ミチル(紅い風の巫女・d02981)は傍らにとらまる(霊犬)を座らせたまま、どこからか近づいてくる気配に神経をとがらせていた。
    「魂ゆうのはつまり、意思やと思う。敵にも自分にも負けんて、全力を出そうゆうことやと思う」
    「んー、俺にはちょっと良く分かんねえな。強い奴と戦えるならそれでいいやって思うし」
     椎名・紘疾(クイックシューター・d00961)は頭の後ろで手を組んで、片足首をぷらぷらとさせていた。
    「気持ちが乗って来れば、見えてくるもんもあるんじゃねえ?」
    「…………」
     犬神・夕(黑百合・d01568)は裸足で胡坐をかいていた。
    「対等な敵がいないことが悲しいのは分かる……だったら、大人しく隠居でもいていろ」
    「『それができれば苦労はせぬ』」
     ふと何処からか、声が聞こえた。

    ●『魂輝悲願』唐太刀・刃鉄
     道場の扉が一つ。両開きの木戸が開かれた。
     開かれたと呼ぶには些か乱暴かもしれない。
     扉が斜め交差に切断され、ばらばらと崩れ落ちたのである。
     パチンと音をたて、鞘に刀を納める男。
     崩れた扉の向こうから、ややふらふらとした足取りで道場内へ踏み入った。
    「…………」
     膝を立てる夕。顎で道場の壁を差し示す。
     壁には黄ばんだ和紙で土足禁止と書かれている。
     男は踏み入った足を一度見下ろし、一歩戻り、履いていた草鞋を脱いで道場の床を踏み直した。
     ほんの僅かに頷き合う男と夕。
     男は今度こそ道場へ立ち入り、納めたままの刀を腰の辺りへ差し込むようにゆっくりと、そして流れるように構えた。
    「我は唐太刀刃鉄。実力者とお見受けする。真剣勝負、申し入れる」
    「承った」
     いつの間にか夕の手には大ぶりなナイフが握られていた。
     彼女がそれを構えるより早く、刃鉄は眼前まで急接近していた。
     刀の柄には既に手がかかっている。
     シャランと鞘走りの音がするより早く、刀が全て抜き放たれる。
     しかし刃が夕へ届くことは無かった。
    「苦手だなあ、苦手なんだよ、こういうのは」
     帽子の鍔から目が覗く。
     スウはフルに展開したシールドで刃鉄の刃を受け止めていた。
     無論ノーダメージと言うわけにはいかない。幾重にも展開したはずのシールドはほぼ切断され、スウの腕を深く切りつけていた。
    「でもまあ、これしか俺には出来ねえからさ」
     身体を押し込むようにするスウ。
     途端、横合いから紘疾が飛び掛って来た。上着をひらつかせ、身体を大きく捻って拳を繰り出す。
    「よ、っと」
     掛け声こそ軽いものの、彼の拳は雷を纏い、畳を粉砕する。
     いや、本来なら刃鉄の身体を粉砕したかったのだが、狙い違わず放たれたはずの彼の暴力は空振を起こし、畳へと炸裂されていたのだ。
     拳を支点に上下反転。素早く逆立ち蹴りを繰り出す紘疾。刃鉄は既に納刀された鞘でスニーカーを弾くと、二度目のバックステップでその場を退いた。
     だが退いたからと言って休ませる彼等ではない。
    「行くぜダークネス」
    「侮らないでくれると、嬉しいかな」
     祐一といろはは同時にカードを抜き取るとそれぞれ炎と殺気に変換。棒状に燃え上がらせると、己の剣へと変えた。
    「この炎は俺の生まれた理由で、存在理由だ。オッサン!」
     炎を纏ったままの剣を上段から叩き込む祐一。
     刃鉄は鞘でそれを受けると横へ流しながら回避。
     動いた側へ、いろはは鞘打ちをしかけた。
     刃鉄はすかさず抜刀して防御。
     攻撃は完全に相殺されたかと思いきや、いろはは流れるように抜刀。身を一転させながら刃鉄の斜後へ回り込むと背中を切りつけて離脱。再び鞘に刀を納めた。
     眉を僅かに動かす刃鉄。
     そこへミチルが真っ直ぐに突撃をかけた。
    「とらまる、仲間の回復頼むで。うちは――叩っ込む!」
     刀を抜き放ち鞘を放り投げ、ミチルはダッシュの勢いをそのまま載せた雲耀剣を繰り出した。
     素早く刀で受け止める刃鉄。
     鍔迫りを起こすがパワーは刃鉄の方が上だ。ミチルは押し返されるように壁際まで走らされるが、壁に背を付ける直前で踏ん張った。
    「うちには灼滅者魂が、歴々代々の巫女魂っちゅうもんがある! 駆け出しやけどな!」
     壁を足で蹴って刃鉄を押し返すミチル。
     僅かに開いたその隙に、寵子と空人が左右から挟むように飛び掛った。
    「そちらの願いもこちらの狙いも、双方承知の上だ。不壊の名を――この意を以って破壊する!」
     ぶわりと沸き上がったバトルオーラを拳に集め、刃鉄へと繰り出す空人。
    「乱暴ばっかりしていけないコ。今日はアリーナ席からかぶりつきさせて貰うわ!」
     同じくバトルオーラを纏った寵子は息を大きく吸い込むと、拳を連続で繰り出した。
     左右から連続で繰り出される拳を其々鞘と掌で受け止める刃鉄。
     一呼吸入ったタイミングで旋風の如く身体を捻り、周囲へ衝撃を放つと二人を彼らを弾き飛ばした。
     両腕を交差したガード態勢で衝撃をこらえ、踵で畳を抉るようにして衝撃を殺す空人。
     一方で寵子は派手に吹き飛んで畳を転がると、脚を大きく開いて片手を突き、獣のように起き上がった。上唇を舌先で舐める。汗の味がして、寵子は微笑んだ。
     交差した腕を解いて表情を硬くする空人。
    「イイでしょ」
    「良く分からん」
     空人は髪を僅かに振ると、汗の雫を散らした。

    ●飽くなき戦い
    「…………」
     唐太刀刃鉄は戦いが始まれば終始無言であった。表情も固く感情も読みづらい。
     故に、彼がどんな気持ちで戦っているのか察することは難しかった。
     しかし。
    「随分、乗って来たんじゃねえか?」
     シールドを連続で展開し続け、スウは両腕でガード態勢をとっていた。
     次々に新しいシールドを生み出し自らの周囲に展開していくスウだが、張られたそばからシールドが切り裂かれ、静電気のように霧散していく。
     スウと刃鉄の勝負は張る側と破る側、所謂盾と矛の戦いである。
     惜しむらくはスウが『最強の盾』でないことだが、少なくとも強靭な盾であることは間違いなかった。
     ニヤニヤとしていた彼の笑みが、今はどこかギラギラとした輝きを帯び、大きく開かれた目は煌々と輝いていた。
    「俺のことは構うことねぇぜ。今までもこうしてきた、多分これからもそうするつもりだ。つまるトコ――これが『俺』だ!」
     鋭く繰り出された刃鉄の突きに対し、シールドを重ねた拳を叩きつけるスウ。
     何重ものシールドを貫通し拳へ到達する刃。しかし彼の拳を数センチ刺した所で、刃鉄の剣は止まった。
     握った指と指の間を通り、掌に突き刺さったその段階で止められたのだ。
    「――!」
    「理解したぜ。これが魂だな」
    「ハイそれじゃあ私の番っ!」
     やや身を屈めていたスウの背中を駆け上がるように飛び越えてくる寵子。
     刃鉄は高い位置から繰り出された蹴りをバックステップでかわし、更に連続で繰り出される拳を鞘で次々受け止めた。
    「ちょっと、刀持ってるなら服破りくらいしなさいよ。むしろ服だけ全部斬りなさいな。お約束じゃないの、もう!」
     寵子は大きく腕を振りかぶると、内側から服を食い破って鬼神変を発動。
     防御態勢の刃鉄を防御の上からぶん殴った。意味も無いのに自らのシャツを丸ごと引き千切って捨てる。
    「今の私、輝いてる」
     衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされる刃鉄。
     空中で二回転すると体勢を整え両足で着地。そこへ夕が猛然と飛び掛って来た。
     すぐさま飛び退く刃鉄。先刻まで踏んでいた畳に掌底が叩き込まれ、床ごとぶち抜いて畳をひっくり返した。
     刃鉄は横一文字、それも下段を切り裂くように刀を繰り出す。畳が綺麗に切断され、その向こうで屈んでいるであろう夕も真っ二つに切断された……かと思いきや、先読みして飛びあがっていた夕が畳の上辺を蹴り込む。ただの蹴りではない。畳の面積をまるごと押し込む蹴りである。力点が見えなければ受け流すにも難い。刃鉄は仕方なく面防御(奇しくも寵子の時と同じである)をして軽く弾き飛ばされた。
     今度は彼が着地するまえに揃って飛び掛る紘疾。
    「お陰で目ェ覚めたわ、やっぱ強いなアンタっ」
     連続で拳を叩き込むと重力に逆らって更にジャンプ。再び百裂拳を叩き込む。
     刃鉄はその半数を受けると、鞘の先端で紘疾を突き飛ばす。
     踏み込みの効かない空中でありながら、まるでビリヤード玉のように紘疾を吹き飛ばし、天井に激突させる。
     しかし刃鉄に休息は無い。着地と同時にレーヴァテインを繰り出してきた祐一の剣を鞘で受け止める。
    「不動祐一」
    「……」
    「俺の名前だ、覚えとけよ!」
     軽く前蹴りで刃鉄との間合いを開けると、再び剣を振りかざす。
     隙だらけになった前面に向かって二十連続で刀を繰り出してくる刃鉄。
     その瞬間では分かりにくい事だが、ミチルの霊犬(とらまる)が回復に専念していなければここでリタイアしている筈のダメージである。
     歯を食いしばって剣を握り込む祐一。
     彼の胸から炎が迸り、彼岸花のように大きく花開いた。
    「これが俺の炎(たましい)だ。こういう風に作られた。こうするしかない生き物だ。アンタを――倒すぜ!」
     上段から繰り出される剣。
     それはフォームだけを見るなら序盤に打った振り込みと同じだったが、膨れ上がった炎はそれまでの数倍の勢いをもって刃鉄に襲い掛かった。
     鞘で受け止めれば良いというものではない。炎は刀で受けようがないのだ。
     それはあたかも、祐一が刃鉄の精神を押し負かしているかのようであった。
    「っだらああああっ!」
     横合いから突っ込んできたミチルの鬼神変。
     祐一に集中していた刃鉄は派手に吹き飛ばされ、畳を縦方向に転がった。
     しかしミチルは振り込み体勢からスピンをかけて叫ぶ。
    「まだや、まだ……!」
     刀を振りかぶってぶん投げた。
     回転途中、コンマのタイミングで刀を振り、弧月状の衝撃派を放つ刃鉄。
     ミチルの投げた刀と刃鉄の衝撃波が交差。
     輝く刀が刃鉄の肩に直撃、貫通。対してミチルと祐一は衝撃波を食らって吹き飛んだ。
     きりもみして飛ぶ二人の下を掻い潜って突撃する空人といろは。
     先行した空人は最低限の声で呟いた。
    「俺は俺の出来ることを、出来るままにこなしている。そんな俺でも輝くのか、魂とやらが」
     二発目に繰り出された衝撃波をギリギリ低い姿勢で掻い潜る空人。
     息もつかせぬ速度で刃鉄に密着すると、肩を掴んで思い切り放り投げる。
     投げ方向は背後。衝撃波を跳躍によってかわしていたいろは目がけてである。
     空中で屈むように身体をコンパクトに丸め鞘と柄に手をかけるいろは。腰を捻り、大きく横一文字に抜刀。
     投げ飛ばされた刃鉄も同じく縦一閃。交差した閃光が火花を散らし、二人は背を向け合ったまま着地。しかし背を向けていたのは僅かコンマ2秒。
     すぐさま軸回転して向かい合う。
    「時遡十二氏征夷東春家序列肆位四月一日伊呂波」
    「…………」
    「六六六人衆じゃないけど、キミは特別。きちんと名乗っておくね」
     鞘を腰にあて、小指から順に柄を握り込むいろは。
     刃鉄もまた、同じように柄を握り込んだ。
    「無所属無流序列無し天涯孤独、唐太刀刃鉄」
     両者、名乗りの後、沈黙。
     三秒と少しの時が過ぎ、窓より舞い込んだ紅葉の葉がひらりと、ひらりと、畳の床に触れた――刹那。
     刃鉄は、いろはは、同時に10mの距離を瞬間的に移動。二人は交差し、完全抜刀態勢のまま固まっていた。
    「……かは」
     胸から背中までをバッサリとなで斬りにされ血をふき出すいろは。
     いろははその場に崩れ落ち、手から刀を転がり落とす。
     一方で刃鉄は刀を鞘に納め、すっくと直立した。
     いろはに背を向けたまま歩き出す。
    「待――」
     彼を止めようとしたスウは、思わず足を止める。
     稽古用にあるのだろう。道場の壁際に備え付けられた鏡には、刃鉄の前面が映し出されていた。鏡面越しの彼は、頬から胸にかけてをバッサリと切り裂かれ、おびただしい血が流れていた。
    「…………またいずれ」
     そうとだけ言い、風の様に駆け出す刃鉄。
     入ってきた扉より草鞋を掴んで飛び出し、そしてすぐに姿を消した。
     正に風の如き、撤退であった。

     唐太刀刃鉄、撤退。
     灼滅者八名、生存。
     確かに灼滅には至らぬが。
     この結果を勝利として、およそ間違いがないだろう。
     そして彼らの魂が輝いたのか否かもまた。
     態々述べるまでも無い。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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