「う、頭……痛い……ぐ、ぅ」
寒空の下だった額をおさえ蹲った少女は短く呻き。
「……はぁはぁ、っ」
呼吸を荒げつつ、よろめきながらではあるものの、立ち上がり。
「これ……は、まだ残っておるのか」
額から離した掌を見つめ一瞬呆然とした顔を忌々しげに険しくする。「まあ、いい。どうすれば良いかはわかる――」
こうして何か心当たりでもあるかのように少女は歩き出し。
「唯?」
名を呼び立ちつくす友人へと少女は告げる待っておったぞと。
「先日、わらわより先に恋人を作った件、許し難いと思うておった……故にちょうど良い。今、わらわは足りぬモノがある。故に、先日の裏切りをあがのうて貰おう……そなたのぢっ」
ただ、途中で舌を噛んだ為、少女の言葉は途切れ。
「血であがなって貰おう」
若干涙目になってちょっと台無しになりつつも少女は言い直した。
「ち、ち……乳で? 唯、あなたそんな趣味が……」
「やかましい! ないわ! わらわはノーマル、ノーマルじゃ! そもそもわらわの方が胸は大きいであろうに!」
真っ赤になりつつ否定し、反らした胸で揺れる膨らみは控えめに言ってもかなり大きかった。
「と言うか、本当におっきーわよね。1メートル越えてるとかありえ」
「やかましいと言うに!」
まじまじ見る友人と喚く少女。
「ええい、もう問答無よ」
堪忍袋の緒が切れたか、実力行使に出ようとした時だった。
「困りますね」
「な」
いつの間にか現れた青年が少女を後ろから羽交い締めにしたのは。
「申し訳ありませんが、事件を起こされるのは困るのですよ。そこの方、ここは私に任せて」
「え? あ? はぁ」
促された少女の友人は流されてそのまま立ち去り。
「むぐー、むぐーっ」
「さてと、何とかなったようですね」
羽交い締めにした少女の口を塞ぎつつやれやれと嘆息した青年はそのまま少女を連れ帰るのだった。
「サイキック・リベレイター投票により、民間活動を行う事になったのはもう聞いていると思う」
これによってエクスブレインが予知を行えるようになった結果、ヴァンパイア勢力の活動が明るみに出たのだ。
「ヴァンパイアは一般人を闇堕ちさせて配下とする事で戦力の拡充を図っているらしい」
この為に一般人の闇堕ちが発生しているのだが、ヴァンパイア達はこの闇堕ちした一般人が事件を起こす前に連れ帰ることでこちら側に察知されずに戦力を増やしていたらしい。
「そこで君達には二つのチームに分かれ、事件を可決して欲しい」
と言うのが座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)の依頼なのだとか。ちなみに、情報提供者の聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654)が居るこちらは闇堕ち一般人への対処を担当する班となる。
「今回闇堕ちするのは闇堕ちしてヴァンパイアになったものの近親者なのだがね」
凛凛虎が何故探り当てたかについては、そう、あれだ。
「結構凶暴な巨乳ちゃんはいないもんかな?」
とか言ってたので、きっとたまたまどこかで見かけた闇堕ち前の少女が印象に残ってたとかそんなだろう、うん。
「話を戻そう、ヴァンパイア達は闇堕ちしてヴァンパイアになった者を通じ、闇堕ちする近親者の情報を得て回収に向かおうとしている者と思われる」
一方で闇堕ちした一般人は自分を回収しようとするヴァンパイア達の気配を感じ取ったのか、これに対処する為、完全に闇堕ちして戦闘力をあげようと動く。
「愛する者や親しい者を自分の手で殺すことでね」
件の先に恋人を作ったとか言う理由付けをしていたが、そちらは単に残っている人の意識への口実なのだろう。
「君達には件の一般人が友人の少女を襲う場へと急行し、可能なら説得、救出した上で連れ帰って欲しい」
そう、はるひは言った。もっとも救出するにしても手順があるのだが。
「知っているかも知れないがね」
前置きして語られるのは、闇堕ち一般人を闇堕ちから救う為には戦闘してKOする必要があると言うこと、つまり戦闘は避けられないと言うことだ。
「闇堕ち一般人と接触し、人の意識に呼びかけることで上手く説得出来たなら、弱体化させることも可能だ、ただし」
説得は件の少女を救出する為のモノでもある。
「少女の名は、尼村・唯(にむら・ゆい)。恋人が居ないことを気にしている様なのでね、一番効果があるのは、恋人に立候補するというモノだと思うのだよ」
ただし、どうやら恋愛的にはノーマル思考のようなので、女性がこの役をするならば男装は必須となる。
「助けたあとで正体がバレてもめると問題なので、独り身の男子が一番適役だがね」
もちろん恋人を持つ身で役を担っても問題はないが、修羅場とかになったりした場合、それは自己責任となる。告白しつつその胸にダイブしたいとかも自己責任だ。むしろその辺りは実際恋人同士になってからの方が良いのではないかとも思うけれど、それはさておき。
「助けられるなら、助けたい。私は単純にそう思うが――」
灼滅者達に実力のついてきた今、闇堕ちしたばかりのヴァンパイア相手であれば苦戦するとも思いにくい、まして説得で弱体化しているならば、なおさらだ。
「故に、『民間活動』として『周囲に被害が出ない範囲で被害者や関係者に事件を目撃させる作戦を行なう事』も可能なのだよ」
もちろん、これをしなければいけないという義務はない。
「戦場となる場所に居合わせるのは唯と狙われた友人、時間の経過でバイト帰りの若者や散歩で通りすがる老人も訪れるかも知れない」
バベルの鎖によって、都市伝説やダークネス事件は『過剰に伝播しない』という特性がある、だが直接目にした人間には鎖の効果はない。目撃者が他者に伝えても信じられないが、目撃した当人はこれを事実として受け入れてくれるのだ。
「一般人の多くが、都市伝説やダークネス事件を直接目撃する事で一般人の認識を変えていくのが『民間活動』の主軸なのでね」
民間活動を行うつもりならば、可能な範囲で目撃者を増やして行くべきだろう。
「ただし、もう一方の班が失敗した場合、君達の元に唯の回収に動いているヴァンパイアが襲撃してくることも考えられる」
考えたくはなくても可能性がある以上忠告はしないといけないのでねと続けたはるひは少女のことはよろしく頼むよと君達に頭を下げるのだった。
参加者 | |
---|---|
聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654) |
槌屋・透流(ミョルニール・d06177) |
刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866) |
イヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488) |
鑢・七火(鬼哭伐破・d30592) |
白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470) |
佐藤・一美(美獣語る・d32597) |
華上・玲子(は鏡餅を推します・d36497) |
●おまいう?
「恋人、か」
堤防沿いを歩きながら、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)は河川敷に捨てられたダンボールを見ていた。
「そう言えば2月2日はツインテールの日だったな……」
ボソッと漏れた呟きは他の誰かに拾われることもなく。
「とうとう来たぜ! 民間活動~」
誰に向けての言葉かはわからない。ただ、思いを噛み締める様にぐっと拳を握り、イヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488)は言った。
「今回は民間活動も兼ねた闇堕者の救助ですょ~♪」
まるで誰かに説明するかの様にカメラ目線で佐藤・一美(美獣語る・d32597)も口を開き、ひょっとしたらそれは民間活動のリハーサルなのか。
「正義のバトルよ♪ 頑張るね!」
華上・玲子(は鏡餅を推します・d36497)もテンション高めである。
「御互いの心情のすれ違いから起きた悲劇……」
とか小声で呟き、このまま悲劇のままに終わらせんと静かに決意を固めていた鑢・七火(鬼哭伐破・d30592)が早くも頭が痛いのポーズを取りそうになるぐらいシリアスは行方をくらましていたが、のんびりコントをやっている時間もない。回収に来るはずのヴァンパイアをもう一方の班が押さえているなら、闇堕ちしかけた少女が友人を手にかけるのを防げるのは、七火達しか居ないのだから。
「尼村さん中々良い属性。挙げれば……妾に、ドジッ娘、舌足らず、胸囲!」
指折り数えた一美はもう一本指を曲げる。
「最後ははるひ先輩のオチ予告」
「今回は、何時も請け負ってくれる和馬先輩がいないから……」
どことなく寂しげに視線を彷徨わせたイヴの言葉に何処かの自称男の子が自分を指さし顔を引きつらせる姿が空に浮かんだ辺りでもうツッコミを入れてもいい気はするが。
「ラッキースケベは誰に当た――」
結局の所、それ程誤差はなかった。不穏なことを口走りかけたイヴに嘆息した七火がお仕置きを敢行し。
「やかましい! ないわ! わらわはノーマル、ノーマルじゃ! そもそもわらわの方が胸は大きいであろうに!」
何やら喚く少女の声が周囲に響く。一同は間に合ったのだ。
「はるひ先輩すげぇ……吸血鬼なのにスケールデカイ!」
懲りなかったのか、少女の反らした胸がエクスブレインの説明通りだったからか、イヴがはしゃぎ。
「何ですか! あの強大なお餅……でなく胸は」
「胸」
衝撃を受けて立ちつくしていた玲子が目尻に涙をためる中、口にした単語の一つを反芻した槌屋・透流(ミョルニール・d06177)は何やら考え込み。
「ははっ、早速暴れてるな」
「なんじゃおぬ」
突然かけられた聖刀・凛凛虎(不死身の暴君・d02654)の声に反応しかけたところで大きな胸の、おそらく唯であろう少女は固まる。
「……アンタを、迎えに来た」
我に返った透流がある意味で端的に用件を告げるが、きっと唯は聞いていない思う。
「唯、ごめん」
私が間違ってたと口を開きいきなり謝罪したのは、唯の友人であろう少女。
「発育良すぎるね! 悔しぃなり」
そう憤る胸囲160cmの誰かを二人は凝視しており。
「ねぇ、唯。あれってツッコミ待ちなの?」
「む、むぅ、どうじゃろうな……」
友人の言葉に唸りつつ唯は腕を組む。
「この流れは想定外ですが、落ち着かれたことを鑑みれば結果的には良かったのでしょうか」
静かに成り行きを見守っていた刃渡・刀(伽藍洞の刀・d25866)は首を傾げ、友人と唯を隔離するには好機と見たか、七火が進み出る。
「失礼する」
「うん?」
そして、唯の注意が七火に逸れた直後。
「悔し、あっ……」
「のわっ?!」
後ろからぶちかまされた柔らかい何かに吹っ飛ばされ、上体の泳いだ七火は堪えきれずに倒れ込んだ。
●ハプニングからの
「きゃあああっ」
(「はうあ! 勢いで鑢先輩見事に唯ちゃんを押倒したなり」)
胸にダイブされたあげく押し倒される少女の悲鳴を聞きながら、心の声で状況を説明する玲子が涙目なのは、間違ってぶつかった誰かからの今後行われるであろうおしおきに恐怖したのか、別の理由でか。
「なに゛っ」
「やっぱこうなったか。はるひ先輩のもしも自己責任ケースはよく当たるから!」
おそらく、何をするのじゃと言う怒声の途中で噛んでしまったであろう唯の言葉と誰かが頬を叩かれる乾いた音を聞きつつイヴはうんうんと頷いた。わざわざ良く当たるからと二回言う前に当たってしまった訳だが、それはそれ。
「とりあえず、こっちにくるよ」
「え? あ? はぁ」
「うん、今日も寒いなり。帰ったらお汁粉食べたい」
半ば逃げ出す様に唯の友人の手を引いた玲子は、何処か遠くを見て自身も現実から逃避する。イヴもこれについて行き。
「……大きいのは大きいので大へ――ではなくて、あちらは任せればいいか」
横目で恩人を含む二人が被害者になり得た少女を避難させるのを見た透流は災難に見舞われた別の恩人を助けるべく歩き出す。
「そういった軽はずみに暴力に訴えようとする行為は殿方からも引かれると思いますよ。まずは落ち着かれてはいかがでしょうか?」
丁度刀が唯を宥めているところであった。
「ふむ、そういうも……って、いやいや、今のは叩いて当然であろう!」
一瞬納得しかけてから反論したのは、恋人が居ないことを気にしているからなのか。
「と言うか、おぬしも何をしておる?!」
気づけばお姫様抱っこされていた少女は七火の腕の中で顔を赤くしつつジタバタし。
「俺とお前、ちと違うが似た者同士だな」
暴れる少女を眺めつつ凛凛虎がポツリと漏らす。
「あれは、突き飛ばされての事故だったようですし、一歩引いて仕草に殿方は惹かれるとも聞きますので」
「故意ではなかったと? ならば済まぬこ」
済まぬ事をした、きっとそう言いかけた唯はハッと顔を上げる。
「だからといってわらわの胸に顔を埋めた事実は変わらぬ! ここで謝っては埋まられ損ではないか!」
被害にあった自分の立場はと問う少女の言葉は一応正論ではあった。
「そうそう、その調子ですよぉ」
故にと言う訳ではないだろうが、一美は反論せず、首を縦に振りつつ続ける愚痴なら聞くし相談にものりますよと。
「そうか、ならば聞くが良い」
話を振られたことで少女も語り出し。
「ハプニング……か。いや、それじゃ前みたいに鼻血の海に」
何事か考えていた明日香は頭を振る。と言うか、別の案件で悩んでませんか、貴女。
「年頃な悩みだな……」
とりあえず、話を聞き終えた七火は思案顔で口を開き。
「唯姉ちゃんツンツンしてても凄く女の子らしいじゃねえか? 素直になれば恋人出来るぜ」
「なっ」
「唯殿が悩むなら、俺が惚れて良いか?」
イヴに褒められ顔を赤くした唯へ真剣な顔で切り出した。
「な」
「唐突で混乱する気持ちは分かる。しかしだな……」
そして、自分から一歩踏み出せなければ何も変わらんぞと面を食らう少女を優しく諭す。
「先とか後とかは関係ないさ。お前も恋人を作ってしまえばいいのだからな。しかもお誂え向きにその機会が来てるんだぜ」
明日香がこれを援護射撃し。
「一つだけ俺が言えるのは、唯。お前を真剣に見つめてくれる奴にしな。恋も、生涯の伴侶もな」
背を向けた凛凛虎は一瞥と共に言葉をぶつけ。「わらわに惚れる? うぐっ、そん……そんなことあってはならん゛」
愕然としていた少女は急に頭を押さえると否定しようとして噛んだ。
●救済の為の
「そんなことがあってはならん! それでは力を更なる力を得るどこ……ハッ」
何事もなかったかのように言い直しかけ、その途中で唯は急に振り返る。
「……苦しいか? 私は……その辛さと同じじゃないだろうが、似たものを知ってる。だから、アンタを助けたい」
「なん……まさか、そなたら」
語りかける透流へ少女、いや少女の中のダークネスは漸く透流達の狙いを察したらしい。
「恋人が欲しいんだろ? だったら、闇に勝たないとな」
「うぐっ、わらわの、最初からわらわの邪魔が目て」
雷を拳に纏わせる凛凛虎を見て少女が顔を歪めた直後。
「……五刀流、参ります」
刀が静かに獲物を抜く。
「さぁ、暴君が貴様に世界をみせてやる!!」
凛凛虎も地を蹴る。
「くっ、おのれっ」
険しい顔で身構え迎撃の姿勢を取ろうとする唯へ最初に襲いかかったのは、ビハインドである村正・千鳥の霊障破だった。
「ぐっ」
衝撃を殺しきれずたたらを踏む少女の視界にちらりと映ったのは、刀がスタイルチェンジさせた黄色の交通標識。もっとも、そんな視界内のささやかな変化に構っている余裕はなかった。この時、眼前では肉迫した凛凛虎がしゃがみ込み、アッパーを繰り出す姿勢を作っていたのだから。
「こ、ぶっ」
顎をかちあげられた少女の身体が浮き上がり、短い浮遊と落下に伴って豊かな膨らみが大きく弾み。
「おのれぇっ」
着地と同時に唯は鋭く延ばした爪へ緋色のオーラを宿し振るう。
「っ」
ぽたりと地に落ちた血が花を咲かせる。口の中を切ったらしい唯自身のものと爪が傷つけた灼滅者のものと、双方が。
「へっ、良い攻撃だな」
口では攻撃の賞賛をしつつ、凛凛虎がただ見るのは、唯の胸。ちょっと戻ってきた気がしたシリアスさんはまた何処かに立ち去りそうである。
「どっ、どこを見――」
だが、そのせいもあり、少女は一瞬忘れた。今が戦闘中であったことを。
「大丈夫、それは打ち勝つ事ができるものだ」
「はっ、しま」
かけられる説得の言葉で指輪を向ける透流へ漸く気づいたが、透流は凛凛虎の動きを認識し、意図して合わせていた。
「私達は、その苦しみを受け止めて、支える為に来た。だから」
ぶち抜くと続けた言葉と共に放たれた魔法弾が少女の身体へ命中し。
「我慢してくれな……必ず助ける。七火兄ちゃんもばか真面目だけど、あんたを助けたい気持ちは同じだ!」
プリンセスモードを行使し、少女へ呼びかけながらシールドを広げるイヴの姿に足を止める者が居た。
「なん、すげぇ……」
目が離せなくなっているのは、事前情報の通りならばバイト帰りの若者なのだろう。
「ギャラリーが現れたのは丁度いいかもな」
明日香も現れた一般人を一瞥するとゴージャスモードへ変わりつつ唯の死角へ回り込み。
「さて、尼村さん気張りや。助けるからな」
「くっ……負けないなり」
変身せず、一般人の意識に声援を送る一美を挟んで玲子もアルティメットモードへ突入する。
「ぐ……な、何故唐突に姿を……あ」
影や明日香の手にした不死者殺しクルースニクで斬られつつも怪訝な様子で周囲を見回した少女はギャラリーの存在へ気付き。
「おのれ、これでは見せ物のよ」
「唯……必ず助ける。もう少し我慢してくれ」
玲子の展開した夜霧が仲間の正体を虚ろにする中、少女に呼びかけた七火が破邪の白光を放ちながら斬りかかった。
「ぎっ、う、あ?」
斬られ顔を歪ませた唯はふいに視線を斬られた場所以外にやり、目撃する。影に斬られて服が破れ肌が露出している箇所があるのを。
「うにゅああああああっ」
慌ててぺろんとめくれた場所を押さえる少女。
「服破り効果的みたいよ」
「ナノナノ」
何だか後に続かんとバルトライザーを手にした主を見てナノナノの白餅さんはどことなく呆れた様に鳴いた。
●民間活動+
「おのれっ、斯様な辱めを」
戦いは続いた。何故か助けると言いつつ服破ろうとする誰かによって唯の露出度は上がり。
「最近の若者は過激じゃのぅ」
「あれでは否定出来んか……それはさておき、私達は人を護るために戦っている」
新たに現れた散歩の途中で立ち寄ったらしい老人を含む一般人へと七火が語り。
「唯が暴れだしたのは、心の暗い部分が表に出てくる『闇堕ち』ってのが原因だ」
凛凛虎が補足する。
「今回の件もあの少女を救う為で」
「救うじゃと? お主等は唯と何の関係もなかろう! 何故わらわの邪魔をっ」
再び口を開いた自身の言葉を遮り唯の出現させた逆十字に引き裂かれつつ七火は叫んだ。
「惚れた相手を助けるは当たり前だ!」
「な」
愕然と立ちつくす少女、目に見えて減退する威圧感。
「恋人が欲しいんだろ? だったら、闇に勝たないとな」
棒立ちの相手を見逃す程灼滅者達は甘くない。
「まだ姿を見せないと言うことは、新手が回収に来る事はないようですね、ならば」
ちらりと千鳥を見てから刀は上段の構えをとるや少女へと斬りかかる。
「はよ嫁さんとりなさい!」
「待て、それは明らかに唯への説」
明らかに少女以外に向けた言葉も混じっては居たが、混沌は今更である。
「これが暴君の世界だ。少しはわかっただろ?」
「どういう世界じゃ! うぐっ」
袋叩きにされて痛みに顔を歪ませつつも唯はツッコミを入れ、気の逸れた少女へ肉迫した七火が服を掴む。
「しま」
「お前に惚れるのは嘘ではない。今は安心して休め……」
豪快に投げ飛ばしたことで唯を沈黙させると、膝を枕に身体を横たわらせ。
「今世界は彼らに支配されている」
戦いが終わったのを見届けた明日香は残っていた一般人に歩み寄るとダークネスの存在についてから順に説明し始める。そはこの後に起こりうる展開を予測したからか。
「先の言葉、その、嘘ではなかろうな?」
「ああ、消して離れない」
膝枕する者とされる者同士の会話。
「唯姉ちゃんの年齢や好きなもの。スリーサイズ聞いておくの忘れるなよ」
意識を取り戻した少女がまんざらでもなさそうに恩人の一人を見る様を眺めつつ助言したつもりのイヴがお仕置きされることになるのは無理もないことか。ちなみに高校生で好物は葡萄を使ったスイーツとジュースだそうです。ただ、スリーサイズはこんな大勢の前で公言出来ぬとか何とか顔を赤らめ。
(「あんなことになったのにナゼナリ~」)
同じ光景を見た玲子が心の中で絶叫する。
「恋ばな……恋ばな……何処かに落ちてない?」
当てられたのか地面を見回す一美が学園への勧誘を思い出すのはもう少し先のこと。
「今回の様な事件に遭遇したら連絡をしてくれ。また、同じような事件に遭遇した際は調査に協力してくれよな?」
透流が周辺の警戒を続ける中、明日香は説明を続けつつちらりと振り返る。誕生したであろうカップルを羨ましげに見たのはホンの一瞬。同じ事を誰かとしたなら鼻血の海が出来てしまうのを知っていたから。
「俺の幸せは遠いな、こりゃ」
同じ光景を一瞥だけした凛凛虎は背を向ける。膝枕している誰か程の事は出来ないと思ったのか、それとも。ともあれ一人の少女が救出され、事件は幕を閉じたのだった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年2月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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