民間活動~つくばご当地博士、現る!

    作者:るう

    ●茨城県つくば市、秘密研究所
    「できた……ついに完成じゃ!」
     悪の科学者といった風体の老人が、雷を背景に高笑いする。
     ラボの中央に鎮座するのは、奇妙なリングやら金属箱やらを無闇に取りつけた謎機械。老人はそれを愛おしそうに手にとって、うっとりとした表情で独白し始める。
    「このつくば市は研究学園都市……すなわち、儂のようなマッドサイエンティストのためにある街じゃ」
     もちろんそんな事実はない。しかし老人は、奇妙で危険な発明で人々をあっと驚かせることこそがこの街を愛する者の義務だと信じて疑っていない!
    「ようやく儂は、偉大なるつくばの科学力を愚民どもに見せつけることができるんじゃ……ご照覧あれグローバル・ジャスティス様! 儂は、この『ハイパーツクバネティックビームキャノン』を駅前に展示し、その魅力で世界を手に入れてみせましょうぞ!!」

    ●武蔵坂学園、教室
    「サイキック・リベレイター投票により民間活動を行なうことになった結果……俺たちエクスブレインは、以前のように広い範囲で未来予測ができるようになった……」
     そう語るのは神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)。そうして彼が得た未来予測とは、とあるご当地怪人の動向だった!
    「『マッド・ツクバー』……それは邪悪な発明品を生みだし人々を支配せんとする、恐るべき博士風ご当地怪人の名だ! その老人は彼の必殺兵器をつくば駅近くの路上に持ちこみ、人々を悪へと誘わんとしている!!」
     もっとも……大抵の人はそのごちゃごちゃとパーツを取りつけた物体を前衛芸術としか認識できないだろうから、その試みがどれだけ有効であるかは未知数であるが。
     まあ、そんな感じのちょっとおかしな敵なので、多数のダークネス組織を壊滅させてきた灼滅者にとっては、正直、雑魚も同然だろう。彼は戦闘員兼雑務要員として6体のペナント怪人を連れてきているが……そちらも、数の割には敵ではない。
    「そこで、その余裕を民間活動に当てる……それが、お前たち自身が導きだした、灼滅者と人類の生存経路だ!」
     博士らが無理矢理人々を集め、誰も聞きたくない発明品自慢をしているところに割りこめば、人々の目には灼滅者はさぞかしヒーローに映ることだろう。一方、邪魔されて怒った博士らはサイキック攻撃を仕掛けてくるだろうから、人々にダークネスの脅威と灼滅者の活動を印象づけるのは簡単なことだ。
    「……とはいえ、一歩間違えたなら、お前たちまで人々の恐怖の対象にならないとも限らない……つまり、いかにそうならないよう戦い、あるいは説明をするかが、この活動の鍵となる!」


    参加者
    風真・和弥(仇討刀・d03497)
    焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)
    冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)
    中崎・翔汰(赤き腕の守護者・d08853)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)
    神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654)
    ソラリス・マシェフスキー(中学生エクソシスト・d37696)

    ■リプレイ

    ●不安と意志
    「おや、人懐っこい犬ですね」
    「賢ーい! まるで人間の言葉がわかってるみたい!」
    「くぅ~ん♪」
     わんこが気前よく足にすりつけば、人々は思わず足を止める。その隙を逃さず渡されるのは、アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)の宣伝ビラ。
    「へぇ、ワンちゃんと一緒にイベントの宣伝ですか?」
     そうだ……と答えはしたものの、アトシュは気が気ではなかった。
     この『イベント』に成功すれば、確かに人と灼滅者の関係は変わる。けれども、失敗すれば何が起こるのか?
     彼自身にとってはどうでもいい。だが、この一手に期待を込めている学園の皆は……。
     一瞬、ビラを差しだす手が止まったその時、彼の足元に暖かいものが触れた。
     彼の犬――いや、姿を変えた冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)だ。アトシュを見あげる翼は言っているのだろう……だとしても、動いてみた方がずっと上手くいくはずと。
    (「確かに、何もかもが大変さ」)
     翼だってそうは思う。でも、風真・和弥(仇討刀・d03497)のほうを見る。
    (「けど、それでもどうにかなる。そうだろ団長?」)
     ダークネスや灼滅者。決して歯の立たぬ隣人を人々が全く排斥しようとしない未来など、和弥にだって想像は難しかった。それはソラリス・マシェフスキー(中学生エクソシスト・d37696)も同じで……もしも武蔵坂学園の存在を教えた結果、恐怖に駆られた人々が暴徒となって襲ってきたら、彼女はどうすればいいのだろう? 彼らをおい返すだけなら簡単で、片っ端から殲滅するのはもっと容易いけれど……それは、絶望の底で彼女を手招きする闇とひとつになる行為なのだから。
    「が……百の言葉で伝わらなければ、一の行動で伝えればいい」
     奇妙なオブジェを凝視する和弥。あの近くには怪人がいて、まさに今、百の言葉を通行人にぶつけて薄い反応を返されているところ。
     彼らも行動に出るというのなら……和弥は、行動でそれを止めてみせる。そして、人々に受けいれられてみせる。
     愛用の真紅のバンダナと、背負った『風の団』の紋章にかけて。

    ●変身、灼滅者!
    「このキャノンは筑波山よりガイアパワーの供給を受けて……」
     昼の駅前の人の流れが、丸く穴開くように乱されていた。白衣の老人の説明を、足を止めて聞くのは犬っころくらい。
    「……ええい、どいつもこいつも聞いとるのかっ!」
     老人は地団駄を踏むものの、状況が好転するわけもなく。苛立つ老人が命じたならば、ペナント頭の6人が、人々をとり囲まんと動き出す!
     ……が。
    「……人々を、悪に誘う、か……。見過ごせんな……」
     サラリーマンの背を掴もうとしたペナント怪人の手を別の腕が掴み、あらぬ方へとねじ曲げた。
    「貴様は……灼滅者!」
     怪人が腕をふり払って跳びのけば、詰めるように一歩踏みだす神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654)!
    「一体どこに潜んでいた!?」
    「……小さな聴衆がいたのに……気づいていなかったか?」
    「!! あの犬か!」
     もう一歩。その時には彼だけでなく、他の灼滅者たちも博士一味をとり囲んでいる!
    「起動(イグニッション)!」
     和弥が天にスレイヤーカードを掲げて叫ぶのと同時、辺りは光で包まれた。
    「ダークネス『マッド・ツクバー』! 貴方たちの狼藉もここまでです!」
     パステルカラーの光の中で祈りを捧げる白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)が、虹色の輝きに覆われる。シルエットだけになったジュンの足が、腕が、体が、髪が、次々に白を基調としたコスチュームを生んでゆく。
    「希望の戦士、ピュア・ホワイト! みんなの平和を守ります!」
    「ガイアパワーを世界征服に転用するなんてお前たちの野望は、俺たち灼滅者が必ず阻止する!」
     中崎・翔汰(赤き腕の守護者・d08853)のジャケットが、赤い灼滅の意志へと染まる。どこからともなく現れたトレードマークのマフラーが、冬風に吹かれて激しくなびく!
    「つくばの力はそんなことには使わせない! オレたちが相手になってやるぜ!」
     焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)の周囲に噴きあがるのは炎! いや、激しく燃えるヒーロー魂が、オーラとなってたち昇ったものだ。オーラは抜いた直剣にも移り、輝きを人々の目に焼きつける。
    「灼滅者ども……儂の偉大にして崇高なる計画をも邪魔を……」
     パチパチパチパチ……!
     博士が何か言おうとしたが、それは集まった人々の拍手にかき消された。
    「今のすごくない?」
    「プロジェクションマッピング……か何かかな?」
     次々に写真や動画を撮りはじめる野次馬たち。うち幾人かはSNSなどにそれを流すだろうが、だとすれば後々『バベルの鎖』の説明に使えそうだから好都合。
     一方のマッド・ツクバーのほうも、最初こそ邪魔された苛立ちを隠さなかったものの、すぐにこれを好機と捉えなおしたようだった。
    「ならば人よ、その目で見るのじゃ! つくばの科学力をもってすれば、灼滅者どもなど容易く蹴散らせることを証明してみせるわい! ゆけ! ペナント怪人たちよ!」
    「「「「「「ペナーッ!」」」」」」

    ●灼滅ヒーローショー
    「さっそく出たぁ~! 届け秋葉原ぁ、エックスプレスビーンむぎゃ~!?」
     ヒマワリ着ぐるみで実況中に流れ弾が飛び、コミカルにころころ転がってゆくミカエラ・アプリコット。今のは一体なんだろう……人々のどよめきを隠すかのように、ニコ・ベルクシュタインの声が辺りに響く!
    「今あの胡散臭い博士の手によって、つくばの平和が乱されようとしています! それを阻止しに現れたのは『武蔵坂学園の灼滅者』、皆さんの味方です!!」
     ヒーローショーの告知はあれども呆気にとられる人々の間で、ソラリスはひざまずくと祈りを捧げた。
     誰も、傷つくことがないように。
     そしてこの『興行』と灼滅者の存在が、人々に受け容れてもらえるように。
     平和を祈る姫君のような振るまいと、一方でカンペ的に掲げられる黄色い標識は皆をどっと沸かせて、彼らと灼滅者たちとの心の距離を近づける。
     けれども近づけるのは心理的距離だけだ。
    「これより先は、ショーの邪魔になるので入らないでくださ~い!」
     人々の目の前で別のビームを受けとめてみせつつ、人懐っこい笑みでお願いしながら、人の壁を少しずつ押しひろげてゆく月影・木乃葉。
     よし……これなら全力を出しても大丈夫だろう。
    「皆、準備はもういいな? なら……今度はオレたちの番だ!」
     愛機『エイティエイト』に跨ると、勇真は剣を高らかにペナント怪人へ!
    「みんなは片手運転なんて真似しないようにな!」
     フルスロットルからの機銃を浴びながら、怪人は勇真の剣にはじき飛ばされた。すると、ぼてっと頭から着地した1体を庇うかのように、わらわらと他のペナント怪人たちがたち向かってくる!
    「マジピュア・タイフーン!」
     ジュン……もといピュア・ホワイトが可憐にステッキを振れば、彼らは勇真に触れることも叶わずに、次々に風の渦に囚われ空へと舞いあがっていった。どうやって風を起こしているのだろうか、あんなに空中に飛ばされたアクターたちは大丈夫なのか、人々の間にざわめきが起こる。
     だが……その飛ばされた怪人らのうちの一人を見れば、そこに苦しげな翔汰の顔もある。しっかりと両腕を固められ、受身も取れぬ姿勢のままで……。
    「人々にカッコいいところを見せようとして墓穴を掘ったペナ! お前たちは、我らが愛するつくば市民の前で無様に殺されるペナ……筑波山ダイナミーック!」
    「キャーッ!?」
    「こんな危険なのはショーじゃないぞ!!」
     人々が悲鳴を上げて目を覆う! けれども……そんな中でも翔汰は不敵に笑んで、怪人を自由な足で蹴りとばす。
    「マ……マッド・ツクバー様、申し訳ありませんペナ!」
     誰もが大事故を確信した瞬間、怪人は爆炎へと変化した。その煙が晴れたなら……そこには、予想された惨事の形跡はおろか、怪人の姿も残っていない。無論、翔汰も何事もなく着地済みだ。
    「お……おたつ石ペナント怪人がやられたペナ! この白雲橋ペナント怪人が仇を取ってやるペナ!」
     別の怪人が息巻いた……直後。その鼻先で、和弥の真紅のバンダナがなびく。
    「そう上手くゆくとは思わないことだな」
     そしてX字を刻む『風牙』と『一閃』。再び爆発が起こった後には……やはり怪人の姿は残っていない!
    「俺も団長には負けられないよな!」
     ある時は人懐っこいわんこ、ある時は悪に苛烈な灼滅ヒーロー! 翼が学園周辺のグルメ知識を披露してやれば、怪人らも負けじとつくばの名食堂の名を挙げる! ……あれ?
    「馬鹿者どもめ! 筑波山の登山コースの名を冠したお主らが、彼奴らのペースに嵌まってどうするんじゃ!」
    「……遅い」
     ひとりの怪人がはたと正気に戻った時には、彼の薬王院ペナントは隅也に切りきざまれていた。
    「……終わりだ……このペナントは、お前のような輩がつけていていいものじゃない……」
     とどめに鎧に覆われた腕で背を打てば、3体めの怪人も爆発四散。呆気に取られた御幸ケ原ペナント怪人にも、アトシュの『alba Mistilteinn』の斬撃の軌跡が、美しい演舞のように迫りゆく!
    「斬った!?」
    「いやマジックだろほら」
     斬撃は、人々の恐れたような血塗れた光景は作らなかった。が……怪人は魂だけは既に両断されており爆発。
     スタントと手品の見事な協演。
     皆、いくつかの異常な光景に気づきながらも、それを『ショー』の興奮の裏へと追いやって、そうなのだと思いこもうとしていたことだろう。
     けれど……。
    「ぐぬぬ……これではつくば市民に儂の力を見せつけるどころか、無様な姿を見せてしまうわい!」
     マッド・ツクバーがタダでさえ悪い顔色を真っ赤に染めて、さらに真っ青に変えた時、それはショーではなくならんとしていた。思うままにゆかぬ苛立ちが最高潮へと達したその時、博士は飾っていたキャノンに手をかける!
    「この際、背に腹は変えられんというものじゃ! ハイパーツクバネティックビームキャノン、リミッター完全解除! つくばの偉大なる科学力を目に焼きつけよ――」

    ●恐怖と勇気
     ――直後、つんざく爆音が辺りを支配する。
     目を閉じ、耳を塞ぐ市民たち。その上を、ひとりの少女の体が舞ってゆく。
    「おい……部長?」
     呆気に取られて見送る翔汰。撃った砲が壊れるほどの強烈なビームの前に身を投げだしたのは、紛うことなき彼の部の部長、山田・透流だ。その体が離れた場所にどさりと落ちるのを見て、人々はこれが本当にショーなのか、それともショーの形をとった殺人劇なのか、困惑の表情を浮かべはじめる。
    「フン……最初からこうしておればよかったんじゃ。この力を目の当たりにすれば、どんなに愚かな人間であっても、儂らご当地怪人にひれ伏すじゃろうて……」
    「……いいや、そんなことはないさ」
     それでも翔汰は希望を目指す。人々に困惑と恐怖が広がる今だからこそ、踏んばらなければいけないのだ。
    (「幸いにも、ツクバーのやり口は『ベタ』だ。なら俺たちも……『ベタ』で返せばいけるはず!」)
    「うおお! 博士の邪魔はさせんペナ!」
     闇雲に向かってくる深峰歩道ペナント怪人を、隅也は半歩避けただけで躱してみせた。そのステップを地にかかとを擦りつける動きへと滑らかに繋いだならば、隅也は燃えさかる白磁色の靴を敵へと打ちつける!
    「……終わりだ……」
     地に倒れた敵に視線を遣ることもなく次の敵へと向かった隅也はカッコよく。
    「マジピュア・オーラブリッド!」
     今こそチャンスと不意打ちを企てた怪人を、ポーズとともに光弾を放って爆発させるピュア・ホワイトは可愛らしく。
     彼らの招待は何者で、いかな想いを抱いているのか。博士の邪悪な目的は何か。そして世界の秘められた真実はどのようなもので、人々は何をすればよいのか。加持・陽司が語り、新たなビラを撒いてゆく中で、戦いは佳境へと近づいてゆく。
    「大丈夫よ、私たちが皆を守ってみせるわ」
     アメリア・イアハッターが人々に輝かんばかりの笑顔をふり撒いて安心させたなら、ピュア・ホワイトはいちど怪人たちから人々に顔を向けなおし、大きく両手を振ってみせた。
    「今だ……皆、声援をしてほしい。灼滅者が戦うのは悪を倒すためだけではなく、皆を助けたいからなんだ。皆がそれに賛同してくれるなら、彼らが皆を裏切ることはないだろう」
     応援するアメリアに続くよう、志賀野・友衛も人々に呼びかける。
    「お願い! あたしたちに力を貸して! 皆の声援が、あたしたちの強さになるのっ!」
     久成・杏子の歌う元気なマーチが、この戦いの意義を人々に伝えると同時、それが今やクライマックスに入ったことを演出する!
    「がんばれー! ピュア・ホワイト! がんばれー! 灼滅者!」
     どこまでが人々が本当に信じたもので、どこからがただのその場のノリだったかは判らない。それでも、声援は次第に大きくなってゆく。
    「……っと、痛ってぇ! けど、これでお前の動きは止めたぜ」
     重力加速度やら空気抵抗やらを計算しつくした(と主張する)最強のはずの敵のキックを受けとめながら、翼は和弥の名を呼んだ。
    「だからこの辺でもう一発、いいとこ見せてくれよな和弥!」
    「ああ、任せてくれ」
     和弥が双剣を十字に構えると、背中の紋章がアルティメットに輝きはじめた。銀色の風が彼の周囲を渦まきはじめ、次の瞬間、彼自身が風となる!
    「さらば、自然研究路ペナント怪人……。マッド・ツクバー、どうやら、残るはお前だけになったようだな」
     天高く撃ちあげられたソラリスの矢が、翼の首筋に向かって落ちてきた。
     当たると何が起こるのか、固唾を呑んで見守る人々。けれども矢が翼の体に吸収されると同時、光の波紋が広がるのを見れば、それが仲間を傷つける意図で放ったものでなく、力を注ぎこむためのものであるのは一目瞭然。
    「ぐぬぅ……儂の野望は、こんなところで終わっていいものではないんじゃ……」
    「そうはいかんな。貴様の悪事は俺たちが、必ずここでくい止める!」
     アトシュの『ティルフィング』が天を衝く! ただでさえ死の色濃い名の大剣は、さらに不気味な色に覆われる!
     振りおろされる剣。白衣がざっくりと裂けた後、ツクバーはやぶれかぶれのビームで反撃する……が。
    「何度だってオレたちは止めてみせるさ!」
     勇真の剣が真っ赤に燃えた。
    「だって……オレたちをこうやって応援してくれる人たちがいるんだからな」
     そう胸を張った勇真の表情は、嬉しさの中に少しだけ照れや恥ずかしさがいり混じったもので。
     でも、他の灼滅者たちだってきっと同じ気持ちのはずだ。ならば、皆の心をひとつにまとめ……。
    「こ……この儂が、こんな小童どもに敗れるとは――!?」
     最後のひときわ大きな爆発は、この場にいる皆で勝ちとったものだ。

    ●世界の秘密
    (「俺たちが見せるべき行動は全て見せた」)
     和弥の変身が静かに解けた。だが……これで十分だったかは、人々の反応を見るまでわからない。
     ちらり、と皆の方を見る。翔汰もしきりに辺りを見回すあたり、心配なのは恐らく同じ。
     翔汰は、試しに声を上げてみた。
    「俺たちは、こういう戦いをずっと行なってきたんだ!」
    「皆さんが今まで知らないのも当然だと思います……何故ならダークネスとの戦いは、『バベルの鎖』という力で当事者以外に伝わらないからです」
     ピュア・ホワイトが人々へと語る。だけどそれは目撃した超常的な戦いと違い、どうして信じられようか?
     ……でも。
    「既に、戦いの様子をSNSに投稿した者もいるだろう……ならば、今どうなっているか確認してみるといい」
     ぶっきらぼうに促す隅也。すると……。
     0、0、0。いかに数分ばかりの出来事とはいえ、明らかに少ない拡散数や評価数!
    「試しに、俺のことも撮影してみてくれ」
     呼びかけるとアトシュは兎に変化した。ロップイヤーのもこもこは、通常は確実に評価されるはずのコンテンツ。
    「ウチだって、変身できるんよぉ……」
     そう言って雲・丹も衆目を集めたら……人造灼滅者としての姿を披露する。
     彼女の場合はウニ。そう、箒で空を飛ぶ巨大ウニ……正確にはウニのようなソロモンの悪魔だけど。
     下らないトリックと考えて、既にこの場を離れた人も多いはずだ。でも、今も残っている人たちは、少しは信じる気になった人だろう。
    「だとしたら、ありがとな!」
     カラッとした表情を人々に向ける翼。
    「直接見た貴方たちだけでも信じてくれるなら、俺たちは闇と戦い続けられるんだ」
     だから気持ちの上だけでも一緒に戦ってほしいと、木元・明莉は胸に手を当てる。是非とも、世界の真実を忘れないでくれ。
    「そして、もしも今日のような、ダークネスが生んだと疑われる不可思議な事件が起きたときは、私たち、武蔵坂学園にご連絡ください」
     椎那・紗里亜が人々へと呼びかけたなら、いまだ半信半疑で学園のことをどう考えているのか判らぬ人たちへは、ソラリスが自分の連絡先を渡して回る。彼らが、万が一逆の方向に動いても大丈夫なように。
     でも……まだ残っている人たちは、皆、ある程度彼らを応援してくれている。
    「やっぱり、ありがとうって言われるのはくすぐったいな」
     そう呟いて、勇真は自分が灼滅者であることを誇るのだった。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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