民間活動~七不思議『紅い楓の木』

    作者:佐和

    「あっ……いけない。忘れ物しちゃった」
    「ドジね、マスミは」
    「どこ? 部室?」
    「ううん。教室。ちょっと取って来る」
    「仕方ない。待っててあげよう」
    「マリカってば、またそんな言い方して。
     でも、ここからなら中庭通ればすぐだし、待ってるね」
     部活終わりの夕暮れ時。
     女子中学生はそんな会話をして、2人と1人に分かれようとする。
     その時。
    「中庭を通るなら気を付けてね」
     通りがかった長い黒髪の少女がそう声をかけた。
     同じ中学制服を着ているけれども、見覚えのない生徒。
     他の学年の子だろうか?
     顔を見合わせる3人に、少女はくすりと笑いかける。
    「あそこには『紅い楓の木』があるから」
     それは3人も聞いたことがある、この中学校の七不思議の1つだった。
     中庭の真ん中にある、大きな古い楓の木。
     その楓が、秋に綺麗な紅葉を見せるのには理由がある。
     空が紅く染まる時、近くを通った生徒を取り込んでいるから。
     楓の葉は、夕焼け空と生徒の血で紅く綺麗に染まっている。
    「でもさ、マイ。七不思議って、ただの噂……でしょ?」
    「そうよ。ほら、マスミも気にしないで大丈夫だってば」
    「う、うん……じゃあ、急いで行ってくるね」
    「急がないでいいよ。ちゃんと待ってるから」
    「慌てて転ばないようにねー」
     そして1人は中庭へ走り出し。
     2人はその背を見送って。
     気付くと黒髪の少女はもう帰ったのかいなくなっていた。

    「それで、忘れ物を取りに行った1人が帰ってこなくて。
     心配して後を追った2人も帰らぬ人に……だって」
     のんびりスマホをいじりながら、六合・薫(この囚われない者を捕らえよ・d00602)が、ゆるい口調で説明する。
    「楓の木の都市伝説……あるかな、とは思ってたけど」
     尚、それを予知で見た八鳩・秋羽(中学生エクスブレイン・dn0089)は、もみじ饅頭を箱で抱え、次々と口に運ぶのに忙しそうです。
     タタリガミは、エクスブレインの予知が自分達から外れていたことを利用して、学校の七不思議の都市伝説化を推し進めていたようで。
     サイキック・リベレイターを使用しなかった今回、その活動が明らかになったものの、既にかなりの数の七不思議が生み出されてしまっていたらしい。
     その1つが、この中学校の楓の木の話なのだという。
    「えーと……楓は、夕暮れに1人で通りかかった生徒を襲うから。
     いつもなら、人払いして囮を立てる感じ、だけど」
     楓は、木であるがゆえにその場から動けず、大した敵ではない。
     ゆえに、周囲に被害が出ない範囲で『より多くの一般人に事件を目撃させる』ことができる相手なのだ。
     都市伝説の事件は、バベルの鎖によって過剰に伝播しない特性があるが、直接目にした人間にはその効果は及ばない。
     目撃者を増やし、一般人の認識を変えていく。
     それが『民間活動』の主軸となるから。
    「巻き込まれる3人の他に、中庭に面した校舎内にもまだ生徒がいるみたい」
     そのために必要な目撃者候補の情報も付け加えて。
     しかし薫は、気だるげにスマホをいじる。
    「まあ、いつも通りのやり方で、さくっと倒しても大丈夫。
     タタリガミへの対応としては、七不思議の都市伝説を倒せればいいから」
     告げて振り向くと、目が合った秋羽が、もみじ饅頭を頬張ったまま頷いた。
     『民間活動』の実施具合は皆に任せるということらしい。
     薫は、次のもみじ饅頭を手にもぐもぐする秋羽から灼滅者達に視線を戻して。
    「てことで、よろしくー」
     のんびりした声で、言った。


    参加者
    六合・薫(この囚われない者を捕らえよ・d00602)
    志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)
    ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)
    壱越・双調(倭建命・d14063)
    久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    師走崎・徒(流星ランナー・d25006)
    石宮・勇司(果てなき空の下・d38358)

    ■リプレイ

    ●七不思議のある中学校
     校舎内に足を踏み入れたジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)は、廊下から中庭を眺めた。
     校舎と校舎に挟まれた、冬ゆえに緑が少なめのスペース。
     その中央には、枝ばかりの大きな木が立っている。
     この中学校と同じ年月を過ごしてきたと思しき老木は、楓。
    「ともすればもっと艶っぽい伝説もいけたでしょうに。
     怪談の方がすり寄ってしまったとは気の毒に……」
     木なだけに、と要らぬ一言もつけて呟けば、その後ろを歩いていた久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)も足を止め、窓に顔を近づける。
    「紅い楓の木……とっても綺麗で、切なくて、好きなの。
     灼滅したら、失くなっちゃうのかなあ?」
     楓に向けられた少し哀し気な瞳に、ジンザもふっと青瞳を細めて。
     廊下の向こうから近づいてくる男子生徒に気付いて視線を反らす。
     生徒は、ジンザだけに少し好奇の目を向けるも、そのまますれ違っていった。
    「しかし、制服の効果はプラチナチケット以上かもしれませんね」
     苦笑して再び視線を向けた先で、にっこり微笑む杏子。
     その服装は、この中学校の女子制服だ。
     とはいえ、大学生の自分はその恩恵に預かれないかと思い至り。
     気を取り直すと、ジンザは歩みを再開する。
     杏子も別方向へと歩き出した。
     探すのは、人数が多くて教師もいる教室。
     そしてジンザは、プラチナチケットを確かめながら、若い教師を呼び止める。
    「ども、機材点検のモノです。放送室開けて頂けますか?」
     その頃、校舎の外では、師走崎・徒(流星ランナー・d25006)と石宮・勇司(果てなき空の下・d38358)が待機していた。
     タイミングを待ちつつも、外観から校舎の造りを確認して。
    「やっぱり二手に分かれた方が効率がいいかな」
     中庭を挟む2棟の校舎に、それじゃあ僕は向こうを、と徒は位置を調整する。
     その背中を見送った勇司は、そのまま周囲を見渡して。
     予知に聞いた3人の女子生徒に気付く。
    (「生きてることって、結構危うい偶然の上にある気がする」)
     思うのは、予知で聞いた彼女達の未来。
     でも、今回はそれを止められるのだから、と勇司に静かなやる気が満ちる。
    (「たとえ出来ないことだらけだとしても、出来ることがあるなら上々だろ」)
     校舎の影から勇司が見つめるその先で、3人に黒髪の少女が話しかけ離れ。
    「ほら、マスミも気にしないで大丈夫だってば」
    「う、うん……」
     1人と2人に分かれようとしたところで。
    「こんにちは。突然すまない」
     志賀野・友衛(大学生人狼・d03990)が声をかけた。
    「私もその噂に興味があったんだ。
     でももし本当なら怖いし、一緒に行かないか?」
     提案に3人は戸惑うように顔を見合わせる。
     プラチナチケットを使っているからか、3人から不信感や拒絶は感じない。
    「あの、先輩……?」
     どうやら友衛を卒業生と思ってくれたらしい。
     答えたのは、だが困ったような表情のマイだった。
    「私達、別に中庭に行きたいわけじゃないんで……」
     マスミが行こうとしていた場所は、忘れ物をした教室で、中庭は通り道に過ぎない。
     そこに、中庭の噂に関しての同行を申し入れたのだから、困惑は当然だろう。
     むしろ七不思議を信じているらしき友衛の登場にマスミは怯えを強くしたようで、マリカの袖にぎゅっとしがみついている。
     それを見たマスミは、マリカと頷き合い。
    「すいません。やっぱり私達、こっちから行きます」
     中庭を通らないようにだろう、3人で校舎の中へと向かって歩き出した。
     離れていく後ろ姿を見送る友衛に、鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)がそっと歩み寄る。
    「すまない。フォローできなかった」
     手助けが必要になったらと、この中学の制服を着て様子を見ていた脇差だったが、想定していたのは3人が2手に分かれた場合の対応で。
     それに、見知らぬ生徒が何を言っても、逆にマスミを怯えさせ、益々中庭から遠ざけてしまう結果になっただろうと思う。
     とはいえ。
    「彼女達が被害に遭うのを食い止められた、と思えば失敗ではないさ」
     1番の目的は果たせたのだと伝えると、振り返った友衛が苦笑しながら頷いた。
     それぞれの事前準備が進む中。
     当の中庭の入り口で、壱越・双調(倭建命・d14063)は周囲を見渡した。
     生徒も教師も、誰も近づいてこないことを確認して。
     お気をつけて、と六合・薫(この囚われない者を捕らえよ・d00602)に道を示す。
     都市伝説を出現させるためには、誰かが中庭に1人で行かなければならないから。
     夕暮れの訪れた空を見上げながら、薫は1人、中庭を歩く。
     七不思議使いとして、そしてこの噂を探していた者として、興味も含めて楓に近づくと。
     ざわり、と紅い空に伸びる枝が騒めいた。

    ●紅い楓の木
     風のせいではありえない枝の動きに薫は都市伝説の出現を確信する。
     蔓ほど柔らかくはない枝のしなりが、硬く薫に狙いを定めるように蠢いて。
     それを注視していた薫の足に、地面から伸びた根が絡みついてきた。
    「お?」
     想定外という程ではないが多少は驚き視線を足元に向けたところで。
     枝が伸び、しなり、薫の手を絡めとる。
    「うぅぅ、これは一般人が巻き込まれたら、たまったものじゃないかも」
     ぐいっと楓に引き寄せられていく自身をどこか客観的に見ながら、薫は手にしていた防犯ブザーを引いた。
     けたたましい音が響く中で、枝が、根が、薫の身体を覆い、楓の隣にもう1本樹が生えているかのように見えてくる。
    「これは、いよいよまずいかも……」
     このまま樹木化するわけにはいかないか、と静かに思った、そこに。
     もう1つの防犯ブザーの音が重なり響いた。
     片腕を異形巨大化させて駆け込んできた双調が楓へ殴り掛かり、薫を解放する。
    「大丈夫ですか?」
    「ん」
     短く頷いた薫がシャウトで回復をかけるのを見て、双調は微笑み、再び楓に向き直った。
     その視線がちらりと向いた校舎の中では。
    「みんなこっちの窓を見て! 中庭が大変な事になってる! 先生、早く!」
     防犯ブザーを聞いてすぐ、杏子は、目星をつけていた3階の教室へ駆け込んでいた。
     教室の中央で話し合う9人の生徒を眺めていた教師が、その声に驚いて立ち上がる。
    「先生!」
    「あ、ああ」
     急かす杏子に教師は慌てて廊下に出た。
     続いて興味津々の生徒達も教室を飛び出す。
     監督役の教師が行くなら怒られることもない、といったところか。
     そして10人は窓越しに中庭を見下ろして。
    「何だ、あれは……」
    「あの楓……七不思議のじゃない?」
    「嘘! だってあれ、ただの噂でしょ!?」
    「でも、誰か捕まってる!」
     驚きが、恐怖が、広がっていく。
     その頃、1階では勇司が廊下を走り出していた。
    「廊下の窓の外を見ろ、中庭に危険なヤツがいる。
     見るなとは言わないけど、中庭には行かない方がいい」
     声をかけつつ端まで辿り着くと階段を上り、2階でまた同じように騒いでいく。
     向かいの校舎で声を張り上げるのは、徒。
    「中庭は危険だぞ!」
     流星をあしらったエアシューズで、廊下を端から端まで走り抜け。
    「近づくんじゃないぞー!」
     勇司と同じく、1階から順に上へ上へと駆け上る。
     少しずつ、確実に広がっていく階下からの騒ぎを確認して。
     杏子は、戸惑う教師を真っ直ぐ見据えた。
    「先生、中庭にみんなを近付かせないでね」
     お願いするその傍らに、姿を現すウィングキャットのねこさん。
     さらなる驚きの声を背にしながら、杏子はエアライドで中庭に飛び降りる。
     そこに、校内放送が流れた。
    『えー、緊急放送。ただいま中庭で非常に危険な作業中です』
     響くのは放送室からのジンザの声。
    『決して中庭には出ないように。見る事もお薦めしませんよ』
     穏やかながらも不可解な内容の放送。
     そして、今、3階から中庭に普通に降り立った杏子の姿。
     何より、あり得ない姿を見せる楓の木。
     動揺が広がる最中に、勇司が到着して。
     その手に箒が現れたかと思うと、おもむろに開けた窓から飛び出した。
     言葉もなく見送る生徒達の前で、ふわりと風を纏い、勇司は空を舞う。
     向かいの校舎からも、徒がためらいなく窓から飛び降り、綺麗な着地を見せていた。
     次々と灼滅者達が集っていく中庭では。
    「来い都市伝説、俺達が相手だ!」
     大きく叫ぶ脇差が、ヘマタイトの煌めく大太刀を振るい。
     友衛がシールドで殴りかかる。
     薫の杖が魔力と共に叩き込まれ、双調の聖剣【明鏡志水】は傷を残さず楓を斬った。
     杏子は、夕方の朱色に黄色を混ぜるように標識を振るい。
     優しくレクイエムを歌い上げていく。
     楓に魂があるのなら、鎮まってほしいと祈りながら。
    「本当は、ここで学校のみんなを見守る、そんな存在だったんじゃあ、ないかなあ」
     七不思議になる前の楓に思いを寄せながら、回復の旋律で皆を守っていく。
     しかし、楓の枝は尚も鋭く、杏子に向けて伸ばされて。
     そこに割り込んだ徒が、展開したエネルギー障壁で、見た目も分かりやすく弾き防ぐ。
     勇司も、魔法のイメージを作るように低い声で詠唱しつつ合流し、指差した先へと魔力の矢が生まれ放たれていった。
     枝や根が蠢いているとはいえ、本体は動かない樹木。
     攻撃は容易く楓に命中し、幾つもの傷を刻んでいく。
     そして最後にジンザが、箒で中庭に降り立った。
    「お待たせです。あんな感じでOKでした?」
     肩を竦めて問いかけると、双調が微笑み頷いて見せる。
     口の端を緩めて笑い返すと、ジンザはB-q.Riotを構えて楓を見据えた。
     生徒達の注意を引いた次は、都市伝説というものを実際に見てもらう段階。
     できるだけ多くの人に見てもらうためにも、戦闘は引き延ばした方がいいと思っていたのだが、これまでの攻撃で既に楓は弱々しく。
     枝の動きも精彩を欠き、終わりが近いのは誰の目にも明らかだった。
    (「もう少し早くに合流できていたら、違ったでしょうかね」)
     ジンザは思うけれども、防音のきいた放送室からは外の喧騒が分かり辛く、直接の連絡もなければ初動が遅れたのは致し方ないところ。
     万が一の被害を考えれば、皆がいつも通りに攻撃を重ねたのも間違ってはいない。
     それに、できるだけ目を惹くようにと、徒の蹴りは箒星の如き軌道を鮮やかに刻み。
     大仰に腕を振り、地面で蠢く影業を注視させる勇司の動きも、観客の目を意識したもの。
     魅せる戦い。
     でもそれはほどなく、双調の放った風の刃で終焉を迎え。
    「こういうノーマルなのも1つぐらいあったほうがいいよね、っと」
     七不思議使いの薫が、新たな話を得て、頷く。
    「血を吸い赤くなる。ヴァンパイアってところかな?」
     顔を上げて改めて見上げた楓は、夕暮れの空を背負い、静かに佇んでいた。

    ●知らずを知る
     楓が元通りに残ったことに杏子が安堵の息を吐き。
     戦いの終わりを確認したジンザは、さて、と校舎を見渡した。
     窓からこちらを見ている生徒達の視線に、大丈夫と言うようにまずは笑って見せて。
    「騒がせて済まない。だが大事な事なので聞いて欲しい」
    「僕たちは武蔵坂学園。闇の力から人々を護るために戦っているんだ」
     脇差が、続けて徒が、声を張り上げて語りかけた。
    「俺もつい最近まで全く知らなかったけど、危険な存在がいる。
     存在を知られないように隠しているものがあるんだ」
     騒めきの気配を感じながら、勇司も重ねて声を飛ばし。
     ふと、気配に気づいて振り向けば、校舎から出て近寄ってくる人達がいた。
    「どういう、ことだ?」
     その先頭にいたのは教師。
     戸惑いながらも見つめる先には、杏子の姿があった。
     声をかけた教室に居た人達だと認識し、杏子は改めて説明を始める。
     ダークネスという存在。そして自分達灼滅者のこと。
     先ほどの楓は、タタリガミが実体化させた七不思議だということも。
    「その事実を知らずに近付く方が、知るよりもっと危険。
     だからあたし達は、今は1人でも多くの人に、見て、知ってもらうように活動してるの」
     信じ難い話ではあるだろう。
     だが、灼滅者達を囲む人達は、先ほどの楓の木の異変を見ていた。
     目の前で今も浮かんでいるねこさんも。
    「実は、私も狼なんだ」
     そして友衛も進み出て、耳と尻尾を出して見せる。
     先ほど見せましたが、とジンザは箒にまたがり宙に浮き。
     勇司の紡ぐ言霊に小鬼が現れると。
     双調も祭霊光を向けて、薫の腕の怪我が癒され消えていく。
     生徒達からスマホを向けられ、シャッター音が響くけれども。
    「お化けは写真では伝わらないんだよ。写っていても気づかない」
     勇司の言葉に生徒達は顔を見合わせる。
     拡散してみるといい、と徒がSNSの利用を促せば。
     全くと言っていい程の無反応に、驚きの声がまた上がった。
    「伝わらないのは俺達のことだけじゃない。
     あの楓と同様の事件は多数発生しているが、直接見てない者に情報は伝わらない」
     続ける脇差に、楓が薫を襲う画像を投稿した生徒から、説明を裏付ける証言が挙がり。
    「こうして皆に見て貰う事で、少しでも危険に備える体制を広げられたらと思っている」
    「何か不思議な事件に遭ったら連絡してくれないかな」
     脇差の横から徒がひょいと自作の説明チラシを配り始めた。
    「武蔵坂学園、ってことは学校なの?」
    「ええ。小学校から中学、高校、大学とありますよ。
     私達灼滅者が通う、学校という形を取った互助組織です」
     双調も、挙がる疑問に快く答えていく。
    「楓の木は悪い存在に少し歪められてただけだから。
     どうか、嫌いにならないで欲しいな」
    「悪いのは私が貰ったから。もう大丈夫だから」
     優しい杏子の願いと薫の頷きに、女子生徒を中心に笑顔が零れ。
     友衛やねこさんは、触っていいと許可を出せば大人気。
     くすぐったいのを堪えるのに少し大変そうな様子も見える。
     そんなマスコット的なもふもふの存在や、誠意を見せた説明、そして何より実際に楓と戦った様子から、灼滅者達の存在は好意的に受け入れられているようだった。
     和やかになってきた雰囲気を、ジンザは箒の上から見下ろす。
     その人数は30人程。
     ふと顔を上げ、校舎を見れば、窓越しに廊下からこちらをちらりと見て、そのまま去っていく生徒の姿があった。
     校舎内全ての生徒を集めるには至らなかったか、と思い。
     だが、仲間達を囲む人達には充分に伝えられたはずだと確信して。
    「成功、でしょうね」
     ジンザは小さく微笑んだ。
    「今後同様の事件に遭遇した際は、俺達へ知らせてくれ」
    「噂を聞いた、だけでもいいの。あたし達に必ず連絡してね」
     宜しく頼む、と脇差や杏子がお願いを重ね、薫も連絡先を伝えていく中で。
     友衛は、中庭の人だかりを遠目に見ながら、こちらへ近寄ることなく、無事に帰っていくマスミ達3人の姿を遠くに見つけていた。

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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