都市伝説再び

    作者:紫村雪乃


    「都市伝説が事件を起こしているらしいのです」
     鮮やかな銀糸の髪と透けるような白い肌。冷然とした美しい娘が口を開いた。名を東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)という。
     触手に襲われ、快楽地獄に堕とされる。そのような淫靡な恐怖がいつしか現し世に現れた。
     それはプールに潜み、女性を狙っている。それも若い女性を。その方が新鮮な精気を得られるからであった。
    「本体は蛸のような姿をしています。無数の触手をのばし、獲物を襲うというのがそれのやり方」
     一度言葉を切ると、蓮華は続けた。都市伝説の具体的な襲撃方法を。
    「都市伝説は獲物に快感を与えようとします。おそらくは性エネルギーを高めるため。その絶頂において都市伝説は獲物を殺し、精気を奪います」
     蓮華はいった。注意してください、と。
     現在確認している敵の戦闘能力は、と蓮華は続けた。
    「都市伝説の武器は触手のみ。鞭のように打ったり、絡ませたりします。強力ですが、灼滅者にとってはそれほどの脅威ではありません。問題なのは、それよりもむしろ都市伝説が与える快感です。それは催淫効果をもっているらしくて、灼滅者ですら耐えるのは困難らしいのです」
     あらためて蓮華は灼滅者たちを見回した。
    「被害者が出ないうちに、都市伝説を灼滅しなければなりません」


    参加者
    銀・ゆのか(銀屋の若女将・d04387)
    黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)
    パニーニャ・バルテッサ(せめて心に花の輪を・d11070)
    天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)
    東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)
    東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)
    白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)
    一条・京(爽涼雅遊・d27844)

    ■リプレイ


     そこは東京近郊にある屋内プールであった。
     水着を着た女性の姿が見える。数は八。
     一人はプールサイドに腰掛けていた。艶やかな黒髪をツインテールにした娘だ。大人びた雰囲気をもってはいるが、顔立ちは大きな目が特徴的で可愛い。
     名は銀・ゆのか(銀屋の若女将・d04387)。老舗温泉旅館『銀屋』の一人娘にして若女将であった。
    「女性狙いのタコ都市伝説……葛飾北斎の作品的な都市伝説とか、そんな感じなのでしょうかね…?」
     ゆのかは小首を傾げた。
    「ともあれ、この都市伝説にかかわって恥ずかしい思いをする人が出ちゃう前に、ささっと退治しちゃいましょう! ……長引いたらいちごちゃんの体質が暴発しかねないですしっ」
     つぶやくと、ゆのかはプールサイドに立つ少女に目をむけた。青い髪をすらりと背に流した美少女である。華奢な肉体を水色のビキニで包んでいるのだが、少し股間が膨らんで見えるのは見間違いであろうか。
     いや、見間違いではない。美少女――黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)は驚くべきことに男なのであった。股間が膨らんでいるのも無理はない。
     ゆのかの視線に気づき、いちごは微笑んだ。するとゆのかは目をそらせた。頬が少し赤らんでいる。
     ゆのかは競泳用の水着を身につけていた。胸がきつく、いちごの視線が気になるのだ。
     ゆのかはちらりといちごを盗み見た。
    「こうしてみるとやっぱり男の……人には見えないのわね、うん」
     感心したものの、内心は複雑だ。いちごはやはり男なのである。
     そのゆのかの前、同じ年頃の娘がいた。ゴーグルをつけているが、それでもやや気の強そうな美形の持ち主であることが良くわかる。浅黒い肌は瑞々しく、胸ははちきれそうなほど大きい。
    「覚悟はしてる、してるんだけど……」
     娘――パニーニャ・バルテッサ(せめて心に花の輪を・d11070)は困惑したように美しい顔をしかめた。
    「冬場にもかかわらずどうしてこんな都市伝説が出てるのよ~!? あれなの? 日本の男の妄想って、年中無休なの!? ……ひどい目に遭いすぎる前に、さっさと片付けちゃうわよ、ええ!」
    「そうね」
     一条・京(爽涼雅遊・d27844)はうなずいた。
     整った顔立ちの美人。京という娘に特に変わったところは見受けられない。
     が、この娘、実は殺人鬼であった。すでに何人もの人間を殺している。それに対し、罪悪感ももたぬ真性の殺人鬼なのであった。
    「けれど……また、こういう依頼なのね。多分この面子だと色々なことは起こるだろうし覚悟は決めるよ。ただ、乙女の尊厳傷つけたら覚悟しなさいね」
     ちらといちごを京は睨みつけた。
    「楽しみ過ぎないようにね。特にいちごさん!」
    「わ。私は楽しんでなんかいませんからね?!」
     慌てていちごは否定した。嘘ではない。彼はいつも巻き込まれているだけなのだ。
    「囮上等!」
     はしゃいだ声を、その少女はあげた。豊満な肉体をビキニでつつんだ溌剌とした美少女である。
     天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)という名のその美少女は、恐れるどころかむしろ挑むようにいった。
    「たこ焼きにしてあげましょうか、美味しそう!」

    「あたしもあまり人のことは言えないけど、蓮華ちょっとこういうのに好かれすぎじゃない?」
     他の灼滅者から少し離れたところ。東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)という名の娘が悪戯っぽく蓮華と呼んだ娘を睨みつけた。
     この娘、桜花と名らしく綺麗な薄紅色の髪をしている。可愛らしい顔をしているのだが、その顔に似合わず肉体は官能的で凶悪であった。
     対する蓮華と呼ばれた娘。名は東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)というのだが、この娘もまたむっちりとした肉体をしている。彫りの深い冷然たる美少女であった。
    「毎回毎回なんでこんな都市伝説を見つけるのかわからないです…私こういうの嫌いなのに……。ともかく見つけてしまった以上退治しないと、主に女性が被害にあってしまいますからね」
    「そうだね。ともあれひどい目に合う前に何とかしないとね」
     桜花はうなずいた。


    「うん?」
     異変を発見したのはパニーニャであった。水中に揺らめくものを見出したのであある。
    「ミヤコ、見つけたっ…こっちにっ…」
    「了解」
     京はパニーニャの指し示す方向に近寄っていった。
     刹那である。京の足に何かが巻き付いた。
    「逃がさないからね」
     この場合、むしろ京は何か――触手を掴んだ。粘液のためだろうか。手がヌルヌルする。
    「ここはわたしに任せて、他の人を呼んで」
     京は叫んだ。が、遅い。すでにパニーニャも触手に巻き付かれていた。
     いや、襲われたのはパニーニャだけではない。ゆいなもまた触手に巻き付かれている。まあ、この娘の場合はわざとであったが。
    「負けませんよ」
     冷たく京は告げた。すると、その言葉が聞こえたかのように触手が蠢いた。動きやすさで京が選んだ競泳用の水着の中にすべり込ませる。
    「くうん」
     痺れるような快感に京は顔をしかめた。触手の先端が乳首を嬲っているのだ。のみならず股間の辺りも。
     どのみち囮なのだ。快楽は貪らねば損である。
     快楽に溺れた思考。淫蕩な笑みすらうかべ、京は触手をつかみ、自らの濡れたところに導いた。
    「あっ……限界まで……はあん……愉しみましょう」

     この時、京の近くにいるパニーニャもまた自ら触手に身をゆだねていた。
    「皆が来るまではなるべく我慢……捕まれど好き勝手にはさせないんだから…ひぁ!?」
     パニーニャの口から悲鳴に似た声がもれた。触手がすばやく彼女の水着の中に滑り込んだからだ。
    「や、この触手、潜り込むの早っ…ふあぁ!?」
     身悶え、パニーニャは唇を噛んだ。触手が彼女のはずむ乳房を揉みしだいたからだ。のみならず秘所にも入り込んでいる。ずりゅすりゅといやらしい音が響いた。
    「そ、そんな所 激しく擦りつけるなんてぇ。だめぇー。皆、早くきてぇっ!?」
     パニーニャは身を激しく痙攣させた。身体をとてもない快感がはしっている。シャウトではねつけることは不可能であった。
     そのパニーニャの様子に、京が気づいた。
    「助け呼ばなかったの? それなら……」
     触手に貫かれたまま、京はパニーニャに近寄っていった。そしていやらしく笑むと、パニーニャの口に自らのそれを重ねた。唇を割、舌を差し入れ、口腔内を舐めまわす。
    「ああん。一緒にぃ、気持ちよく……あん……なろう」
    「だめぇ。ああん。だめなのにぃ、舌がぬるぬるしい気持ちいいのぉ」
     パニーニャは小さく声をあげた。そして京の尻に手をのばした。優しく揉む。一緒に気持ちよくなりたかった。


    「触手プレイとか、そんな美味しそうな絵面、簡単に提供すると思ったら大間違いです。あひいぃぃ!?」
     涙を零しつつ、ゆいなは喘いだ。ビキニがずれ、その豊かな肉体はもはや全裸といっていい。
     触手のからみついて大きな乳房はぶるんと揺れ、扇情的であった。広げられたゆいなの中は別の触手が蠢き、感触を味わっている。のみならず彼女の後ろのすぼまりすら都市伝説のものとなっていた。
     ゆいなは触手を蹴って逃れようと試みた。が、力がはいらない。
    「さ、触らないで。離してぇ、や、やめ……! あ、そこぉ。前だけでなく後ろもなんてぇ。やあん。へん、なるぅ……。あぁ……」
     知らず、ゆいなは自ら尻を振り始めた。
    「ゆいなさん!」
     慌ててプールに飛び込むと、ゆいなに絡みつく触手にいちごは手をのばした。掴み、引き剥がそうとする。が、ぬるりといちごの手が滑った。
    「やっ、いちごくぅん、何を……」
     ゆいなが身悶えた。触手に巻き込まれ、いちごの手がゆいなの乳房を掴んだからだ。
    「ち、ちが……」
     慌てていちごは手を引き抜こうとした。が、これが間違いであった。いちごの手に引っかかり、ゆいなの水着が引きちぎられた。
    「あ、ああ」
     動揺するいちご。その時、触手がいちごに巻き付いた。
    「ちょ、顔、っていうか口、離しっ、やあん」
     ゆいなが喘いだ。いちごの顔が彼女の乳房に押し付けられたからだ。
    「ご、ごめ――」
    「やあん、喋っちゃあ。おっぱいに響くぅ」
     いやいやするように首を振りながら、しかしゆいなの手はいちごの顔を抱きしめていた。
    「ゆ、ないなさん、何を――」
     もがくいちごであるが、すぐにその目がとろんと潤んだ。触手の催淫効果だ。
    「も、もう我慢できません」
     いちごはゆいなの乳首を舐め回した。それからこりこりと甘噛みする。左手は、他方の乳房を揉みしだいた。
    「ちょうだい、いちごくんの」
     ゆいなが手をのばした。そして、いちごを握った。
     刹那である。触手がいちごを引き剥がした。いちごが男であると気づいたからだ。
    「くっ」
     いちごは呻いた。触手が締め付けたからだ。が、催淫効果のために逃れることはかなわないのだった。


    「やはり囮って碌な事にならないのですね」
     ごちる蓮華の腕がミシミシと音をたて巨大化した。獣のような爪を生やしたそれは。まるで鬼のもののようだ。
     プールに飛び込むと、蓮華は蛸に似た都市伝説の本体を殴りつけた。岩すら砕く巨腕の一撃に都市伝説が怯む。が、逃走する気配はなかった。囮の生体エネルギーを吸い尽くすつもりなのだ。
     その時だ。触手が襲った。咄嗟に蓮華は水を分けて後退する。
    「危ない蓮華っ!」
     蓮華の前に女が飛び出した。桜花である。すると触手が桜花に巻き付いた。
    「にゃあぁああぁぁぁぁぁ?! やめ、ちょっ、水着ずれちゃう、胸こぼれちゃうぅぅ?!」
     触手が桜花の水着をずらした。ぷるん大きな桜花の弾けでる。柔らかそうでありながら、弾力に富んだ乳房である。薄紅色の乳首がぴんと勃っていた。
    「ああん」
     桜花の口から喘ぎ声がもれた。雌の声だ。さらされた彼女の胸の先端と股間を触手が弄っている。
    「あ、ダメ、この触手、催眠効果ある、んだ…頭が、ぽーっとしてきて…」
     抵抗しようとする桜花の全身から力が抜け落ちていった。ゆるんだ口元から涎が滴り落ちる。
    「桜花さん!」
     叫び、蓮華が助けにいこうと水をかいた。
    「待って」
     蓮華を呼び止める声が響いた。慌てて足をとめ、蓮華が振り返る。その視線の先、一人の少女の姿があった。
     煌く銀髪。澄んだ青の瞳。透けるような白い肌。胸と尻はむっちりと大きく、腰はきゅっとしまっている。小柄ではあるが、競泳用水着に包まれた肉体はモデル並みの体型であった。
     名は白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)。八人めの灼滅者であった。
    「迂闊に近寄っちゃだめだよ」
     早苗はいった。すでに五人の灼滅者が都市伝説にとらわれている。これ以上都市伝説の餌食となった場合、攻撃手が足りなくなってしまうだろう。そうなれば灼滅者は全滅だ。
    「でも……」
     蓮華は桜花に視線を投げた。そして辛そうに顔をしかめる。
     すでに桜花は全裸となっていた。都市伝説に水着を脱がされたのである。水だか粘液だかに濡れ、股間の翳りはべったりと肌に張り付いていた。中で触手が蠢いているようだ。
    「いやあ。そこに入れていいのは蓮華だけなの。許してぇ」
     桜花は泣きながら懇願した。が、都市伝説が許すはずもない。桜花の穴すべてを責め立てた。
     そこまでが限界。ものすごい快感に桜花の理性は溶け崩れた。
    「いい。触手、いい。いやなのに、口もお尻もそこのみんないいのぉ」
     触手を嬉しそうにしゃぶりながら、桜花は尻を振り始めた。


    「くっ」
     悔しげに蓮華は唇を噛んだ。確かに早苗のいうとおりだ。自分までつかまるわけにはいかなかった。
    「蛸……、って浮世絵じゃないんだから……」
     仲間の痴態を見つめ、さすがに早苗は息を飲んだ。そして不安をおぼえた。
     かつて彼女は淫魔であった。今は抑えているが、その淫魔が何時目覚めるかわからず、怖くてたまらないのだ。
    「悪い蛸は、たこ焼きにするよ……!」
     早苗は巨大十字架型の戦闘用碑文をかまえた。全砲門を開放。一切罪業を焼き払う光線を乱れ放った。
    「しゃあ」
     都市伝説の咆哮。いくつかの触手が消滅した。衝撃に都市伝説は身体を震わせ、動きをとめる。
    「まったく毎回ひどいことになってしまうんですから」
     ゆのかもまた仲間の痴態を眺め、悲嘆した。しかし、すぐにその瞳に怒りの炎を燃えあがらせた。
    「先ずは縛霊撃でタコさんの足止めを! ぬるぬるして捕まえにくいですがっ……こうして足を縛っちゃえばぁっ…!」
     ゆのかは都市伝説を殴りつけた。縛霊手――巨大な腕型の祭壇兼武器を触手に叩きつける。
     刹那、縛霊手から網状の霊力が噴出。触手を縛り付けた。
    「桜花さんから離れてください」
     蓮華もまた襲った。瞬時にして彼女の腕は変化している。ミシミシと音をたてて巨大化。異形のものと化したそれはまさに鬼の腕だ。
     渾身の力を込めて蓮華は鬼腕で都市伝説を引きちぎった。おそるべき膂力である。
    「ぎぃ」
     都市伝説の触手が舞った。ものすごい速さで。常人には躱すことなど不可能であろう。
     が、灼滅者は常人ではなかった。超人ともいっていい存在だ。常人など視認すら不可能な速度で疾る触手をすべて彼女たちは躱してのけた。
    「まだです」
     触手の乱舞をくぐり抜け、再び蓮華は襲った。鬼腕をふるい、都市伝説を引きちぎる。
    「うっ」
     呻く声はしかし、蓮華の口からもれた。殴るのはいいが、それは都市伝説に接触しているということだ。
    「くっ、触手を殴るだけでも妙な気分になるとは……」
     もじもじしつつ、蓮華は跳び退った。濡れている。触手が欲しくなっていることを蓮華は自覚した。
    「直接触れるとまずいようですね」
     ゆのかもまた跳び退った。そして、その身にカミを降ろす。
     圧倒的な霊力がゆのかの身に満ちた。抑えきれぬ霊力のために髪がふわりと逆立ち、周囲に旋風が吹く。
     ゆのかは手を振った。すると風はさらに激しく渦巻き、疾った。生み出したのは真空の刃だ。都市伝説が切り刻まれる。
    「なかなかしぶといんだね」
     早苗の目が虚無を映した。
     月の瞬間だ。彼女は漆黒の弾丸を放った。ただの弾丸ではない。早苗自身の心の深淵に潜む暗き想念を凝縮したものだ。いわば指向性を与えられた暗黒の意志だ。
     漆黒の弾丸は空間を噛み裂きながら疾った。都市伝説の核を貫く。
     そして幾ばくか。都市伝説は粘液をばらまきながら爆裂した。


     戦いは終わった。都市伝説を斃すと催淫効果もすぐに消滅したようである。
     蓮華は桜花を抱きとめた。気がついた桜花は恥ずかしげに顔を伏せる。
    「悪は滅びた……!」
     ゆいなは立ち上がった。全裸に近い状態であるが、気にしてはいない様子である。
    「そうですねっ、軽く泳いでいきましょうか! はしゃいで楽しくヤなこと忘れちゃいましょう!」
     ゆいなが促した。するとゆのかは大きくうなずいた。
    「ぬるぬるとる意味合いでも……ゆっくり泳ぎたいです、ね?」

    作者:紫村雪乃 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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