願掛けついでに寒中水泳していかねえか

    作者:六堂ぱるな

    ●着衣厳禁
     それは小雪のちらつく晴れた午前中。砂浜で走り込みをしていた赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)がひと息ついていた、千葉のとある砂浜でのこと。
    「そおおおれい!」
    「ぎゃあああお!」
     掛け声と悲鳴と派手な水音が同時に響き渡る。
     そちらを向くと、冬の海であっぷあっぷする男と、この寒空で何故か上半身は裸、下半身は赤いふんどし一丁で仁王立ちしているマッチョが見えた。よく見るとふんどし男は競泳用の帽子を頭ではなく顔全体を隠すように被り、ついでにゴーグルもしている。
     もう関わってはならない感満載だが、二人のやりとりが聞こえてしまった。
    「この野郎、なに、しやがる!」
    「我が名は願掛け寒中水泳怪人! 寒中水泳を行う全ての浜辺を愛するものだ!!」
     とっても節操のない発言だったが、それもおいといて。
    「どーでも、いいから、助けろや!」
    「何を言っておる。まずは願掛けと寒中水泳を済ませろ」
    「アニキになんて危ない真似しやがる! ケーサツと救急車と……」
    「いやケーサツはやばくね?!」
     ふんどし男もといご当地怪人の後ろで、派手な柄シャツの男が二人右往左往していた。アニキとやらが目を血走らせて怒鳴り散らす。
    「願掛け、なんざ、しねえよ!」
    「野望の一つや二つや三つや四つはあろう。そう、人々の心身を鍛え充実した生活の指導をすれば、信を得、自ずと世界も我が手に落ちよう」
     当然みたいに怪人が語ったが、なんでそうなるのか全く理解不能だ。
     すごく見なかったことにしたいがそうもいかず。あずさは走り込みを切りあげ、仲間がいる護岸へ戻ることにした。

    ●強制禁止
    「というわけでね」
     ジャージ姿のあずさの傍らではバッドボーイが日光浴中。アニキはまだ頑張って泳いでいた。なに、彼女が水着に見える? それは幻覚だ。
    「どうもあの怪人は願掛けの寒中水泳をさせて、心身を鍛えるよさを広めて世界を征服しようって思ってるみたいなんだけど……どう考えても無理よね!」
     何故世界征服できると思ってしまったのか。
     あっぷあっぷしているどっかのアニキを放っておけない。有志で怪人の気を引いている間に救助するか、救助は柄シャツの舎弟に任せ、全員で怪人をどこかへ連れて行くかだ。
    「気をひくって言っても、寒中水泳怪人ですもの。寒中水泳するしかないわね、きっと」
     それ自体は海に入って願い事を言って、ちょろっと泳いでやれば納得するだろう。問題は彼の戦闘能力だ。ご当地ヒーロー系の能力はデフォルトで有るとして。
    「……あのふんどし、風とは無関係に動いてるから、きっと彼のサイキックよね……」
     頭が全力で想像を拒否する話だ。あずさは拳をぎゅーして落ちたテンションをなんとか奮い立たせた。
    「これ以上被害が出てもいけないもの。ぱぱっとノックアウトしちゃって、炙り海鮮丼でも食べて帰りましょ!」
     帰りのことでも考えながら手早く片づけるに限る。
     なにぶん見れば見るほど疲れる相手なのだから。


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981)
    茂多・静穂(千荊万棘・d17863)
    莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)
    灰慈・バール(慈雨と嵐の物語・d26901)
    押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)
    赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)

    ■リプレイ

    ●安定の不穏なご当地怪人
     冬の海、水温は14度あたりか。強い海風がやる気をがりがり削いでくる。が。
    「願掛け寒中水泳ってなんですか?!」
     願掛け寒中水泳怪人に本気で食いついたのは穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981)である。面食らいもせずに願掛け寒中水泳怪人が応じた。
    「寒中水泳とは己を鍛えるものだが、ここに願掛けを加えることで己を高めるための目標と推進力を――」
    「つまり強く美しくあるために必要なんですか?!」
    「然様!!」
    「言いきったよコイツ」
     ツッコまずにはいられない鏡・剣(喧嘩上等・d00006)、寒風にぶるっと震えつつ、つい本音がこぼれた。
    「このくそさみーのにわざわざ冷たい海に入る気なんて起きるわけねーだろうに、面倒な奴もいたもんだな」
    「都市伝説……? ああご当地……心身鍛えるのはいいけども強要は駄目っすよね。正しい寒中水泳の為にも倒さないとっす! ……しかしこの怪人自身は泳がないんすかね?」
     押出・ハリマ(気は優しくて力持ち・d31336)の疑問も当然で、人にやらせるだけならタチが悪い。
    「寒中水泳は流行りなのか?」
    「うむ、健康維持にもよいのでな」
     流行っている気配はないが、灰慈・バール(慈雨と嵐の物語・d26901)の問いに即答した怪人の中では絶賛流行中なのであろう。
    「うーん、民間療法の中でも色々あるけど、寒中水泳って今時流行らないのでは? 風邪引くし最悪多分死にますし」
     きょとんと首を傾げた莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)の意見を、願掛け寒中水泳怪人は自信満々に否定した。
    「日本各地で寒中水泳が行われている点でも流行っているのは明らかだ。今回ここは荒天を理由に中止されたが、全く嘆かわしい。甘えは禁物なのだが」
     一般人を海に放りこむ怪人の言をまともに聞いても仕方ない。想々は午後の予定へ想いを馳せてから、目の前の現実へ戻ってきた。
    「海鮮丼……食べたいなぁ……こんな寒い日にわざわざ海に入る必要性を説くのって……うーん、無意味?」
    「……見た目は十分暑苦しいケド現実寒いからね。そして流行ってたとしても死ぬからね、無闇にしたら死ぬからね」
     ぶつぶつと小声で呟く堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)である。スムーズに寒中水泳へ持っていくため、ストレッチしつつイイ笑顔でハリマが同意した。
    「どんな願い事も大抵の基盤となるのは健康な身体、それを築くのに寒中水泳はいい手段だと思うっす!」
    「ああうん、心身鍛えるの大事よな、寒中水泳うってつけ!」
     話を合わせる朱那を気の毒げに眺めた赤松・あずさ(武蔵坂の暴れん坊ガール・d34365)は、ふと辺りを見回した。
    「あら? どこ行っちゃったのかしら」
     不思議に思ったのも一瞬。ざばあと音をたて、波の中からぴっちり密着タイプのウェットスーツ水着をまとった茂多・静穂(千荊万棘・d17863)が立ち上がった。びっくりしたのはあずさである。
    「茂多さん唇すっごく紫色だけど大丈夫?!」
     ご心配には及ばない。静穂の胸中をちょっとライブでお届けしてみよう。
    (「ふふふふ、この前水着で寒さ我慢をしてきましたが、今回は寒中水泳ですか。懐かしいですね……待ち伏せをかねて冬の海に潜んでいたあの頃を……」)
     そう、彼女はドMだ。プロのドMは2月に寒中水泳する時も寒冷適応なんていらない。
    「く、やはりいくら全身水着とはいえきついですね……! ですが、寒冷適応など私には不要! この身も凍るような痛み、全身を波で攻められる感覚! ……あ、危うく水泳要素が頭から消える所でした」
    「おお、話がわかる奴だな!」
     ふんどしを翻して豪快に笑う怪人から目を逸らし、疲れ切った声を漏らす朱那だった。
    「早よ片して炙り海鮮丼食べいこうなあ……」

    ●頼んでもない寒中水泳開幕
     アニキがそろそろ限界っぽいので作戦開始だ。皆でカードを解放し、水着姿になると怪人を挑発にかかる。
    「さぁ、寒中水泳勝負だ!!」
    「なんの遅れは取らん!」
     海に飛び込みながらバールが叫ぶと、怪人の言葉を真に受けて『より強く美しくなること』を願う海も冬の海面へ身を投げた。
    「ぎゃあああ水冷てぇ?!」
    「ああああああ!!!」
    「だぉぁあ!? やっぱり寒いなぁ!? だが、平和を願う者は寒さに挫けない!」
     水の冷たさに海が、二人の後に続いた剣が続いて叫んだ。でも悲鳴はあげてもバールの心は挫けない。
    「あたしは! おいしー炙り海鮮丼が! 食べたいデス!」
     朱那もラッシュガードを脱ぎ捨て潔く海へ飛び込んだ。
     カードを解放したあずさは一見いつものカウガール衣装だが、ショートパンツなしの水着風姿だった。走り込みをしていたから準備運動は充分、願掛けは『もっとプロレスが上手になりますように』。
    「これでいいかしら」
    「挑戦するっすよ!」
     ハリマの願い事は『一年の健康』。続いてニューファンドランドによく似た相棒の円も飛び込んでくる。早速静穂が見事な身ごなしで泳ぎ始めながら怪人を挑発した。
    「さあ怪人! 私の水泳と果たしてどちらが上ですかね! そぉれクロールー」
    「寒中水泳の手本を見せてやろう!」
     乗せられた怪人は沖へ向かって泳ぎ出した。灼滅者たちが続く間に、あっぷあっぷしてるアニキへ想々が見事なクロールで近付いていく。
    「た、助けてくれ! おぼっ、溺れ……!」
    「落ち着いて私に掴まって下さい。必ず助けますから」
    「ぶはっ! ふ、ふざけんな何だあの野郎ボコボコにしてやる! なんで炙り海鮮丼食いに来ただけで俺様がこんな目に遭わなきゃなら」
    「物理でいいですね。えい」
     どう見てもカタギではないアニキの首に想々は無造作に手刀を入れた。だらんとしたところでざぶざぶと岸へ引っ張っていく。
    「大丈夫です死にません死にません」
     まもなく彼は半泣きの舎弟たちに背負われて、ダッシュで海岸を離れていった。

    ●変態千葉の浜に散る
     想々がアニキを砂浜に引き揚げたのを確認すると一行はすぐさま浜へとって返した。結構な距離を泳ぎきった海は、浜に上がるなり爛々とした目で怪人を振り返る。
    「おれはこの世で誰よりも強く……そして美しい!」
     人が変わったみたいだが心配はいらない。ちょっと寒さと過重ストレスで美と強さ以外にピントが合わないだけだ。
    「素晴らしい! まさに心身を鍛え全てが充実した証であろう!!」
    「きさまを倒してそれを証明してくれるわ!」
    「おっと?」
     海の論理展開についていけていない怪人を追い、身震いしながら海中からあがったあずさも相棒へ声をかけた。
    「バッドボーイ! 全力で怪人……ええい、変態をとっちめるわよ!」
    「いざ、真剣に勝負!」
     うにゃ。とバッドボーイがあずさに応じればバールも怪人へ啖呵をきる。
    「さては貴様ら、我が覇道の邪魔をしに?!」
    「あーくそ寒い!」
     海面から飛び上がりついでに剣が雷をまとった拳撃で怪人をぶっ飛ばす。放物線を描いた怪人は咄嗟に動く赤いふんどしを疾らせた。攻撃手を庇ってハリマと共に動きを縛められ、あずさが不屈の精神を見せる。
    「ふざけた攻撃でも、受けきって……不本意だけど! 受けきって勝つわ!」
    「はーい、なんや見たくも考えたくもない攻撃はシューナちゃんの回復でササッと消し去りますよー」
     朱那が力強いビートで仲間の傷を塞いだ。受け身をとって跳ね起きる怪人の眼前には、既に緋色のオーラを宿した手刀を構えた海が踏み込んでいる。
    「強さと美に目覚めたおまえの顔が、何故劇画調なのだ?!」
    「紅蓮斬奥義……裂鮮嘴!」
     問答無用。海の手刀は怪人の体に突き刺さり、ざっくりと大きく引き裂いた。よろける後頭部に想々の振りかぶった標識が命中。宿る赤い輝きが麻痺を誘う。
    「回復は間に合うてるよー」
    「じゃあ攻撃するっす!」
     朱那と回復連携をするハリマは笑顔で頷き、円と呼吸をあわせた。円の六文銭で向き直った怪人の膝の裏にハリマ蹴たぐりをかますと、無骨な鉄塊にも見えるバールの無敵斬艦刀も襲いかかった。
    「まともに付き合うと疲れるような相手だから、ぱぱっとやっつけて炙り海鮮丼を味わいましょ!」
     バッドボーイに前衛の傷を癒して貰いつつ、身軽に跳ねたあずさはフライング・ボディ・プレス。ウェットスーツ水着にダイダロスベルトを巻いた静穂も、狼のものと化した腕に銀の爪をきらめかせ参戦した。

    ●変態千葉の浜に散る
     一行はてきぱきと怪人を追い詰めた。戦いでヒャッハーする剣やテンション高い海、いろいろ限界のバールの圧がすごい。
    「心身極まった我が力、受けてみろ!」
     相変わらず一人劇画調の海の紅いオーラの逆十字は、怪人の精神自体を引き裂いた。
    「いいぞ、心身を鍛えれば我が肉体にすら傷がつくほどに、って痛い痛い。身に偏りすぎだ。心を澄ましてだな」
    「心を澄ましても寒いものは寒いんだ! てか、焚き火位用意しろ!?」
     死の光線を怪人めがけて撃ち込みながらバールが叫ぶ。距離を詰め狼の銀の爪で顔面を引っ掻きながら静穂がてれっと告白した。
    「いえ、私は痛いほど寒いとか、周囲の目が冷たいとかはやぶさかではないのですが」
    「ないんか?!」
     仰天する朱那もAir Riderに炎を纏わせて蹴り飛ばす。反射的に怪人が放ったふんどしは後衛をまとめて狙った、が。
    「やめてくださいセクハラで訴えますよ」
    「せくはら?!」
     想々にさらりと避けられ蔑みの眼で見られたついでに、i my meの非物質化した刃で斬りつけられた怪人は我に返ったような顔になった。
    「なるほど、焚火を用意したら参加者が倍になるかもしれんな!」
    「いやこのくそ寒い時に海で泳がせるんじゃねえよ!! やるなら夏場にしやがれ!!」
     剣が鍛え上げた拳で抉るように打ちあげた。速攻で静穂の断斬鋏が傷口から狂気をもたらす錆を送りこみ、前へ出た海の拳が骨まで擦り潰すような連撃を食らわせる。
    「夏場にやったら寒中水泳ではない! ぐああっ!!」
     すかさずバールが斬艦刀を振りあげ、渾身のダメージを怪人へ叩きこむ。既にだいぶ足にきている怪人の攻撃は空振りとなり、円の斬撃でつんのめった彼の頭をハリマががっしと掴んだ。
    「世界征服って願いの為にあんたも寒中水泳、行ってみればいいっす!」
     縦回転をかけながら投げを極めた。怪人の背中にバックドロップを見舞ったあずさは、敵がバッドボーイの肉球パンチで砂浜に倒れ伏したのを見て態勢を立て直す。
    「こいつで、ぶっとばーーーす!!」
     怪人が砂浜でバウンドした瞬間、あずさの連続チョップが追い討ちに叩きこまれた。一撃一撃が重い手刀は骨すら砕き、遂に限界の向こうへ追いこむ。
    「グローバル、ジャスティスに……栄光あれー!」
     ちゅどーん。
     ついぞ話が噛み合うことはなく、怪人は派手な爆発を起こして吹き飛んだ。

     この日ほど撤収準備が早かったこともそうはなかろう。皆で風邪防止の為にしっかり身体を拭いて身支度を整える。息をついたバールがきりっと言った。
    「終わったし、ご飯食べようか」
    「名物の炙り海鮮丼っすね。食べに行って温まるっす!」
     めっちゃ力の入ったハリマの言葉に全員が首肯する。

    ●美味しいご飯は明日の力
     戦い終えた灼滅者たちは館山市内のお店へ入った。
    「炙り海鮮丼パーティーだな!」
     滑り込みで人数分を確保したバールが歓声をあげ、朱那もテンションあげていく。
    「お腹いっぱい食べてヤな事は忘れちゃおー!」
     炙り海鮮丼は特製の三段重ねの丼で、上から順に炙り海鮮、刺身、花ちらし寿司。炙り海鮮は串に刺した海鮮を、自分で焼き網の上でさっと火を通して食べる。
    「動いた後はやっぱり格別よねー♪」
     炙った伊勢海老をあずさがほくほく顔で頬張った。海鮮のつけダレは醤油ベースに味わい深い隠し味がある。さんが焼きや肉厚のイカ、サザエのつぼ焼きもいいが、人には好みもあって。
    「やっぱサーモンだろ」
     剣は脂ののったサーモンをさっと炙ってタレをつけた。丼の魚も季節で変わるらしいが、今は中段の刺身にもとろサーモンがあるので二倍楽しめそうだ。噛みしめるとさっぱりとした甘い脂が口いっぱいに広がる。
    「うまー!」
    「冷えた体に温かいご飯は、染みるなぁ」
     バールがしみじみと花ちらし寿司を味わった。花型にあしらわれたレンコンやニンジン、レタスを配した雅さもいいが、何より味と温度。温かいご飯の包容力は絶大だ。
     ご飯を堪能しているのはハリマもだった。鯛やメジナも大切だが、たっぷりの錦糸卵と刻み人参、海苔の真ん中に温泉卵が鎮座するご飯は目にも美しく美味しく、何よりカロリーがある。
    「いやーあったまるっすね!」
     炙ったカンパチマグロにタレをつけてちらし寿司の上に乗せる。タレのしみたあったかいご飯を頬張った想々が息をついた。
    「美味しいなぁ……おなか、あったまるなぁ」
     魚はいずれも脂もちょうどよくてさっぱりしている。一口が小さな彼女の向かいで、朱那がこくりと首を傾げた。
    「そそちゃん、もっと一杯食べんと元気でぇへんよー」
    「う、私あんまり食べれんよ。小食やから……でもおいしい」
     幸せそうな表情になる想々を眺めていると、朱那もつい嬉しい顔になる。
    「ふふー、美味しく食べてる姿は幸せの元やしなー」
    「幸せの元かぁ……じゃあできるだけ、沢山食べます。私が食べてる姿で朱那さんが幸せになるげんもん」
     にへ、とふたりは微笑みあった。横でもきゅもきゅと栄養補給に勤しむ静穂、海でのテンションと違いすぎて心配になるが、美味しいものをゆっくり楽しむこともする。
    「ほう……ふむふむ」
     炙りのブリをつけダレとはばのりの塩と、真顔で食べ比べていた。
     テンションが違うといえば海もだが、彼も何事もなかったように炙り海鮮丼を味わっている。ストレスが去ったので元通りに戻っていた。味もさることながら、計算された三段重ねの丼の機能美や盛りつけの美しさも堪能したようだ。
    「見た目も味も最高級とは素晴らしいね。水着の幻覚を見た甲斐があったよ」
    「そうね。幻覚だけど、でも幻覚だけじゃなかったかもね?」
     ご馳走さまの手を合わせながら、あずさが悪戯っぽく海に微笑んでみせる。
     デザートのプリンまで満喫した一行は、心も身体も温まって帰途についた。

     終わりよければすべてよし。
     美味しいものでリフレッシュしつつ、灼滅者は今日も力を尽くし戦うのであった。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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