魔犬伝説

    作者:紫村雪乃


    「ラジオウェーブのラジオ放送が確認されました」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)はいった。
    「このままではラジオ電波が生み出した都市伝説により、ラジオ放送と同様の事件が発生してしまいます。その放送内容は、以下のようなもの。聞いてください」
     姫子は放送内容を口にした。

     深夜。
     歩いていた女性は突如足をとめた。背後に足音がしたからである。
     驚いて振り向いた彼女は、しかしすぐに胸をなでおろした。足音の主は犬だったからだ。
     女性は微笑んだ。その時だ。犬の口がくわっと開いた。
     次の瞬間である。口から幾つも舌が噴出した。それは鞭のようにしなり、女性に巻き付いた。
    「きゃあ」
     女性は悲鳴をあげた。が、それはすぐに甘い喘ぎ声に変わった。舌には催淫効果があり、彼女の肉体を嬲り始めたからだ。
     そして幾ばくか。地にはミイラのようになった女性の死体が転がっていた。


    「赤槻・布都乃(悪態憑き・d01959)さんの調査によって都市伝説を発生させるラジオ放送を突き止めることができました。おかげで電波の影響によって都市伝説が発生する前に情報を得る事ができるようになったのです」
     姫子はいった。
    「都市伝説の武器は舌。鞭のようにうなり、打ちます。威力は絶大。まともに受ければ灼滅者でもただではすまないでしょう。けれど本当に恐ろしいのは舌のもつ催淫効果です」
     姫子はいった。灼滅者ですら耐えるのは難しい、と。
     姫子は灼滅者たちを見回した。
    「今夜、都市伝説は現れます。急いでください。犠牲者がでる前に」


    参加者
    九条・泰河(祭祀の炎華・d03676)
    龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)
    ハノン・ミラー(蒼炎・d17118)
    豊穣・有紗(神凪・d19038)
    黒板・白亜(天然系ギャル・d30727)
    ルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246)
    パオラ・ストラヴィンスキー(高校生シャドウハンター・d38255)

    ■リプレイ


    「犬いいですね。かわいいしあったかいし。ペロペロ舐めるのも犬のお仕事……って、精気を吸ったりするんですか!?」
     愕然としてパオラ・ストラヴィンスキー(高校生シャドウハンター・d38255)は息をひいた。東欧の生まれらしく透けるような白い肌をしている。痩せているのは栄養状態が良くないからだ。
    「そんな、これ以上痩せたら死んじゃいます。可及的速やかに助けて下さいね」
    「大丈夫だよ」
     黒板・白亜(天然系ギャル・d30727)は余裕の滲む笑みをうかべた。ちらりとパオラが見た白亜の姿は扇情的だ。胸元を開いて制服を着崩しているので、むっちりと大きい乳房が露わとなっている。スカートの丈も短く、小麦色の太ももも付け根近くまで覗いていた。
    「ワンちゃんを屈服させる事位どうって事無いでしょ! アタシだって鍛えられているしっ。逆に調教してるトコ撮っちゃうんだからっ」
     自信に満ちた語調で白亜はいった。実はである。白亜は成人向けビデオの女優としてデビューしていた。故にその自信があっても無理ないといえる。
    「そう簡単にいけばいいけどね」
     薄く、その少年は笑った。端正な顔立ちは中性的だ。美少年といっていい。名は九条・泰河(祭祀の炎華・d03676)。
    「中々素敵だけど実際に殺してしまうなら其れなりに気を付けないといけないね」
    「ああ」
     結った長い銀髪を背に流した男がうなずいた。秀麗な美青年であるが、どこか剣呑な雰囲気がある。
     美青年――龍統・光明(千変万化の九頭龍神・d07159)は静かな声音で続けた。
    「傍迷惑な現象だな……さっさと消えて貰うとしよう」
    「犬によくないイメージを植え付けようものならラジオウェーブ許すまじ。魔犬許すまじ」
     くすんだ灰色の髪の少女が唸った。
     名はハノン・ミラー(蒼炎・d17118)。かつて生物兵器製作所の実験体だった少女である。発見された時、ハノンは研究者の死体の中で過ごしていたという。
    「魔犬っていうより、バター……いや、何も言うまいっ」
     慌てて豊穣・有紗(神凪・d19038)は口を閉ざした。彼女のその都市伝説に良く似た話を知っている。
     闇にあってもわかるほど可愛らしい美少女であることが有紗にとって災いした。男たちに連れ去られ、色々と仕込まれた挙句に無理やり客の相手をさせられているのである。その客の何人かから彼女はそのような話を聞いたことがあったのだった。もしかすると、そのような噂から都市伝説は生まれたのかもしれなかった。
     と――。
     ひたひたと地を蹴る音が響いた。


     はじかれたように八人の灼滅者たちはふりむいた。
     闇を切り裂くライトの光に浮かび上がったものがある。犬だ。
    「おでましだね」
     ボーイッシュな娘がふふんと鼻を鳴らした。ルイセ・オヴェリス(白銀のトルバドール・d35246)。ととのった顔立ちのボーイッシュな娘であった。
    「やれやれ、今度は何枚舌か数えたくもない都市伝説か。外見に惑わされず、確実に仕留めていこう」
     ルイセがいった。その時だ。くわっと犬が口を開いた。
     ひゅるる。
     開いた犬の口から何かが噴出した。常人には見とめられぬ速さで疾る。が、灼滅者は見とめた。それはいくつもの舌であった。
     咄嗟に四人の灼滅者か跳び退った。泰河、光明、ハノン、ルイセの四人だ。
     都市伝説の舌は空をうった。が、鞭のように巻き付いたもの者もいる。囮役の四人の灼滅者たちであった。
    「あっ」
     有紗を庇った少女の腕に舌がからみついた。フィヒティミト・メーベルナッハ(媚熱煽姫・d16950)。西洋人らしい端正な顔立ちの持ち主だ。大人しそうに見えるのだが、甘い淫蕩な花の香りのようなものを漂わせている。
    「やめ――」
     舌を振り払おうとフィヒティミトはもがいた。が、すぐにその身から力が抜け落ちた。巻き付いた舌の先端がチロチロと彼女の腕を舐めたからだ。
    「あうっ」
     フィヒティミトは電流を流し込まれたように身を痙攣させた。快感がはしりぬけたりのだ。
     恐るべき舌の催淫効果であった。すでにフィヒティミトは感じ始めている。
    「ああん。どうしよう。気持ちいい。えっちな気分で頭がいっぱいになっちゃって……ああ、我慢できないよお」
     フィヒティミトは自らの衣服に手をかけた。一気にはだける。大人しそうな外見には似合わぬ凶猛な乳房がぼろんとこぼれでた。
     すると舌がするするとのび、今度は乳首をてろてろと舐めた。
    「ああん」
     フィヒティミトは身を仰け反らせた。先ほどより強い快感が走り抜けたからだ。
     それが限界であった。四つん這いになる。犬と同じ格好だ。フィヒティミトは自ら雌犬と堕したのだった。
    「せめて注意をひきつけないと……ああ」
     下着をずらし、濡れた箇所をフィヒティミトは見せつけた。もう囮役などどうでもよくなっている。もっといやらしいことがしたかった。
    「して……もっと凄いコトして」
     催促するようにフィヒティミトは尻をくねらせた。
    「舌じゃなくて、もっと硬いモノ入れて……あんっ」
     フィヒティミトの口から悲鳴に似た声が発せられた。舌が彼女の中に侵入したのである。
     それはある程度形状変化ができるらしい。フィヒティミトの望み通り、それはより太く硬く熱くなった。
    「ああん、いい。たくまして、いいの」
     夢中になってフィヒティミトは尻を振った。

     一度は難を逃れたものの、またもや有紗は舌に襲われていた。いや、むしろ囮として望んで舌に襲われたといった方が正確かもしれない。
    「まぁ、濡事が日常茶飯事のボクにとって、毎日されてることに比べたら今更犬に舐められた所で余裕余裕~」
     余裕の笑みすらうかべ、有紗は舌が身体を這うに任せた。彼女の真っ白な太ももに汚れた染みが広がっていく。
     舌が有紗の下着の中に滑り込んだ。別のそれは尻のすぼまりの皺を丹念に舐めている。
     マーキングされてるんだ。そう悟った時が限界であった。普段から多くの男たちの性欲のはけ口として使われているため、有紗は快感に弱い。
    「……嘘です、ごめんなさいっ! そんなにされたら耐えられるわけっ……ああん」
     喘ぐと、有紗は舌に身を任せた。もう逆らう気はない。口に入り込んできた舌に自らのそれをからめた。そして犬の唾を飲み干す。臭い犬の唾液が美味しかった。
    「こんなの覚えさせられたら、ボク、犬にまで逆らえなくなっちゃうぅ……」
     背徳の快感に酔い痴れながら、有紗は喘いだ。が、その声はぬちゃぬちゃという舌と有紗の濡れた箇所の擦れ合う音にかき消された。


     白亜もまた余裕の態度で都市伝説の舌を迎えた。光景を撮るべくスマートフォンまで用意している始末である。が――。
     泰然自若たる態度は舌がからみつくまでであった。幾つも舌が白亜の豊満に肉体を這い回ると、すぐに彼女は蕩けた顔になり、可愛らしい喘ぎ声をもらし始めたのである。
     その時、舌が白亜の衣服を引きちぎった。小麦色の熟れかけた肉体が露わとなる。
     と、よろけた白亜が手をついた。フィヒティミトと同じ四つん這いの格好だ。
    「あっ」
     白亜の口から悲鳴がもれた。舌が彼女の股間を舐め上げたからだ。そこはすでに濡れており、翳りがべたりとはりついていた。
    「犬なんかに……アタシの大切な処……舐められちゃってる!? でも……気持ちいいよぉ……」
     白亜は身悶えた。獣にされているという事実に被虐的な喜びをおぼているのである。
     その時だ。舌の尖端が白亜の中に浅くもぐった。
    「いや。いれちゃ……ああん」
     白亜の必死になって尻を振った。
    「いやん……犬が初めての相手なんて……駄目ぇ!」
     片手で自らを支え、もう一方の手で白亜は大切な部分をおさえた。すると、舌はガードされていない尻のすぼまりに尖端を押し付けた。
    「そこは違う――駄目、そんなたくましい舌なんて入らな……ああん」
     ずるりと舌が入り込み、白亜は身を仰け反らせた。
     犬に尻を汚されている。その屈辱感がなおさら白亜の情欲を誘った。いつしか白亜は舌にあわせて動き始めている。
    「お尻がこんなにいいなんて。いいよ、お尻、いいよぉ」

     舌が手足を這っている。
     その時、パオラはまだ他の者と同じように余裕があった。
    「これでも、まあ……生きるためにそれなりの経験はしてますし、ワンタッチで腰砕けになったりはしないでしょうから」
     パオラは嘯いた。が、すぐに慌てた。舌が衣服の中に入り込んだからだ。
    「って、服に潜り込むな!  服が破れたら、帰りこの格好で帰ることになると最悪じゃないですか!」
     パオラはもがいた。この娘の場合、肉体よりも衣服の方が大事なようであった。
     なんといってもその衣服は新品であったから。どうやって得たのかは……女としての武器を使ったというしかない。若い娘が手っ取り早く報酬を得る手段は古今東西同じであった。
    「でも……なにこれ!?」
     あらためてパオラは戦慄した。都市伝説の舌に対してである。
     それは想像したものとは違った。舌というより肉茎に近い。硬くて太かった。
     舌がパオラのピンク色の乳首を転がした。金色の翳りが覆う股間をこする。さらにパオラの薄紅色の唇を舐め上げた。
    「あっ、気持ちいい。犬が相手なんて嫌なのに……頭の中がおかしくなっちゃいそう。こんなのが入って来たら、大変なことになっちゃう。きっと五秒ともたない」
     そうパオラが思った時だ。触手が彼女の秘肉をわけて入り込んできた。
    「ああん。舌が中を舐めてる。私、犬に食べられちゃってるんだ」
     絶頂感はすぐにきた。元々感じやすい肉体だったのである。が、都市伝説は放してくれなかった。
    「つ、続けてなんか嫌。す、少し休ませて」
     パオラは懇願した。が、都市伝説は彼女の中で蠢き続けた。徹底的に貪るつもりのようである。
    「お願い。もう許してぇ」
     乳房をゆらし、尻を振り、パオラは悲鳴をあげた。


    「殺界形成で一般人は来ないだろうけど……そろそろやろうか」
     泰河はいった。囮役たちの痴態を十分楽しんだ後のことである。
     その時だ。魔犬の背後からハノンが襲いかかった。獣の襲撃速度すら超える速さで。さすがの魔犬も躱せない。
     ハノンの腕が変化した。寄生体による細胞レベルでの組織変化である。
     剣と化した腕でハノンは切りつけた。単分子ナイフの鋭さをもった刃が魔犬の背を裂く。
    「ガウッ」
     吼える魔犬が舌を吐いた。鞭のようにしなるそれがハノンを打ちすえる。地に叩きつけられ、ハノンは呻いた。
    「くっ。仲間の有様を見るだけでわかるヤバさ。脳みそダメになってそう。舌の威力自体もヤバいけどね」
     ハノンが顔をあげた。その目は翻って迫る舌をとらえている。
     と、横からのびた手が舌を掴んだ。剛毛を生やした異形の巨腕が。
    「いけないね。舌でそういうことするの」
     無造作に泰河は舌を引きちぎった。
    「やるな」
     光明は槍をかまえた。凄愴の鬼気が込められた槍――絶【布津御魂】を。
     すると舌が光明を襲った。光明は跳び退り――次の瞬間、空を舞って魔犬に迫った。
     龍気術『九頭龍』と古武術を殺戮技巧まで昇華させた『千変万化』。驚くべきことに体重移動と筋肉の働きにより、空気のみを足場として光明は空を舞うことが可能なのだった。
    「穿ち斬る、閃刃流・突餓流転」
     光明は絶【布津御魂】を繰り出した。ドリルのように回転する槍が魔犬の肉をえぐる。
    「まだまだボクたちは強くなるよ」
     ルイセは、彼女の背丈よりも大きな黄色標識を軽々と振り回した。放たれた光が仲間に降り注ぐ。
     と、霊犬夜叉丸が跳んだ。口に咥えた刃で魔犬を切り裂く。が、魔犬がたじろぐことはなかった。舌を鞭のようにしならせ、夜叉丸を打ちすえる。のみならず舌でからめとった。
     その時だ。舌がはねた。気づかれぬように蛇のように地を這わせていたのだ。
     狙われたのはハノンである。とっさのことに身動きもならなかった。が――。
     ぽたりと舌が地に落ちた。疾った刃が切断したのである。刃はルイセの影からのびていた。
    「大事な舌を噛み切られたら……ペロペロできなくなっちゃうよ?」
     嘲弄するようにルイセは笑った。
     刹那である。ハノンが跳んだ。飛鳥のように軽々と舞うと、魔犬の頭上からマテリアルロッドを叩きつけた。瞬間――。
     ハノンはマテリアルロッドを通じて膨大な魔力を流し込んだ。魔犬の内部構造が爆裂する。
    「ぎゃん」
     吼えると、魔犬は後退った。が、すぐにその動きがとまった。
     舌がピンと綱のようにはられている。その先端は泰河の縛霊手の霊的網にとらわれていた。
    「とらえるのはお前のだけの業じゃない。逃がさないよ」
    「終わりだ」
     光明の脚がはねあがった。さらに旋転しつつ、他方の脚をはねあげる。
     続けざまの蹴撃。唸りとんだのはオーラだ。それは巨龍と変じ、魔犬めがけて疾った。
     反射的に魔犬は舌を舞わせた。が、防ぎきれるものではない。圧倒的な破壊力をはらんだ巨龍が魔犬を飲み込んだ。
    「おおん」
     闇に魔犬の断末魔の咆哮が轟いた。


     都市伝説は灼滅され、地に冷たい静寂がもどった。が、囮となった者たちにはいまだ肉欲の疼きが残っているようである。
     悶えつつ、白亜はフィヒティミトににじり寄っていった。
    「んっ…ちゅっ…こんな野外なのに…これじゃアタシ達が犬みたい…けど、したいよぉ」
     白亜は喘いだ。誰でもいいから肉体の疼きをしずめてもらいたかったのである。
     と、フィヒティミトの乳房を後ろからむんずと掴んだ者がいた。泰河だ。
    「もう我慢できないや…だって…素敵すぎる姿なんだよ」
     フィヒティミトの乳房を揉みしだいた。ああん、フィヒティミトが身悶えする。
    「もっとして。泰河さんのものにして」
    「いいよ」
     泰河は彼女の髪に顔を埋め――ぐいと引かれた。ルイセだ。
    「囮のみなさんには服を着てもらおうかな。こんなところを見られたら大変だし、こんな時間にお会いする相手は……招かれざる客も多いものさ。お楽しみは場所を変えておいた方がいいだろう」
     ルイセはいった。道理だ。仕方なく囮となった者たちは衣服を身につけはじめた。
    「さて、ボクはコンビニで夜食でも買って帰ろうかな」
    「コンビニおでん食べたら元気になるかも」
     ルイセを追って、パオラは駆け出した。
    「お疲れ様」
     泰河たちに声をかけ、光明は背を返した。衣服の裾が寒風に翻る。それは闇に還る死神の姿を思わせた。

    作者:紫村雪乃 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年2月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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