ソウルボードの異変～そいつを今からへし折ってやる

■リプレイ

●そいつを今からへし折ってやる
　聳え立つ塔。えもいえぬ世界。八人の灼滅者が横並びに、それぞれのカードを掲げていた。
　全身を黒一色の装備へと変化させる黒乃・璃羽（ただそこに在る影・d03447）。
「ソウルボードの異変は見逃せませんね。それ以前に、あんな異物は取り除きたい所です」
　不可思議な塔をにらむ璃羽。
　そんな塔を守るように、五色のニノキン像が本を開いたままゆっくりと歩み寄ってくる。
「こんな時にアレなんだけど……やっぱり色が違うとキャラも違うのかな。イエローはカレー好き、みたいな」
　彩瑠・さくらえ（幾望桜・d02131）は装備を展開しながらじーっとイエローニノミヤをガン見していた。
　その横で同じように装備を展開していく城・漣香（焔心リプルス・d03598）と立花・環（グリーンティアーズ・d34526）。
「それよりオレずっと気になってるんだけど、ピンクニノミヤのあれ……ねえ、あれだよね？」
「スカートですね」
「だよね！？」
「全体的にニノミヤなだけあってスカートだけ嫌に浮きますね。石像だけに翻らないみたいですが」
「翻ったら困る」
　灼滅者のマイペースっぷりは相変わらずだ。
　いや、世界が終わろうとも自分らしくいられることは、もしかしたら何より強いことなのかもしれない。
　椎葉・武流（ファイアフォージャー・d08137）が炎を全身に纏わせバトルフォームへ変身していく。
「油断は禁物だぜ。あいつあの見た目で結構厄介なんだ。俺は知ってるんだ」
　経験者ならでは（？）の目をしてレッドニノミヤをにらみ付ける武流。
「『全て無へ、その生を罰と知れ』」
　敵がなんであれやるべきことは変わらない。ロイド・テスタメント（無に帰す元暗殺者・d09213）はそうとでも言うかのように解除コードを述べた。
「バトラー、参ります」
　アプリコーゼ・トルテ（三下わんこ純情派・d00684）と白金・ジュン（魔法少女少年・d11361）が顔を見合わせ、カードからステッキをまず取り出し、ヒュンと振った。
　戦場はここだけじゃない。
　自分たちにも十数チームの灼滅者たちが、それぞれの都市伝説へとぶつかっていく。巨大な戦いが今、始まろうとしている。
「さあ、始めるっすよ！」
「マジピュア・ウェイクアップ！」
　二人は星の光に包まれて、魔法少女フォームへと変身した。
「希望の戦士ピュア・ホワイト――みんなの夢を守ります！」
「ああっ、一番おいしいところ！　あっしも言いたかった！」
　相も変わらぬマイペース。されど全力。魔法の光を推進力に、都市伝説集団ニノミヤ・カラーバリエーションたちへと突撃していった。

●力あるものたち
　時間は進んでいない。ニノミヤ・カラーバリエーションの五体は×印を描くような三列陣形を組みながらこちらへと猛スピードで突っ込んでくる。
　灼滅者たちは対抗するように全速力で突っ込んでいく。
　両者の衝突。先制したのはジュンだった。
「マジピュア・プリズムシャイン！」
　天に掲げた手から無数の星があふれ出し、プリズム十字を作り出す。輝く光がニノミヤたちの先頭集団へと浴びせられた。
　光を突き抜けるように飛び出すハモ。もとい環のハモボロスブレイド。
　咄嗟に飛び退こうとしたニノミヤレッドに食らいつくと、横にいたニノミヤピンクに無理矢理叩き付ける。
　後ろからニノミヤブルーとイエローが跳躍。石の薪を大量に宙へ浮かべると次々に発射してきた。
　環への反撃だ。身構える環――の眼前に飛び出した璃羽が黒いカーテンを展開。カウンターヒールを仕掛けると、そのままカーテンを環へ外套のようにかぶせていく。ちょんと裾をつまみあげる環。
「どうもどうも」
「いえいえ。さて、この調子で」
　次々にベルトやコートを作っては仲間へかぶせていく璃羽。
　黒いリストバンドやベルトを巻いた武流とアプリコーゼ。
　二人はニノミヤグリーンから大量に浴びせられる薪を蹴りやロッドでたたき落とすと、互いにタイミングをあえてあわせずに連続攻撃を仕掛けにいった。
「まずはこいつをくらうっす！」
　毒の魔術を展開すると、ロッドをライフルのように構えて発射。
　直撃し軽くのけぞるグリーンニノミヤ。その隙に武流は剣を取り出し、握り込む。
　刀身がまるで炎のようにふくれあがり、横一文字斬りひとつでニノミヤレッドたちを巻き込んでいく。
「今っす！」
　時間差で雷魔術をサブマシンガンのように乱射していくアプリコーゼ。
　弾幕に晒されるニノミヤグリーン。弾幕に紛れるようにして相手に距離を詰めた武流はブルーとイエローたちの所まで駆け抜けると、再びの回転斬りを繰り出した。炎状のエネルギーが激しい上昇気流となってブルーたちを吹き飛ばす。
　たん、と足踏みをするさくらえ。
　武流を背後から蹴りつけようとしていたニノミヤグリーンへ狙いをつけて跳躍すると、炎の奇跡を引きながら回し蹴りを繰り出した。
　咄嗟に振り返ってニノミヤキックを繰り出すグリーン。
　桜花の幻影が遅れて現われ、火花のように散っていく。
　さくらえは至近距離で銃を突きつけニノミヤの額めがけて銃弾を撃ちまくった。
「あの塔は壊さないといけないモノですから……」
　ロイドは自分に、そして皆に語るように言うと、ワイヤーやベルトといった様々な武装を一斉展開した。人が変わったように敵をにらみ付け、クロスグレイブを炎上させる。
　対抗したニノミヤレッドのタックルに正面から対抗する――と見せかけて、至近距離でキャノンモードに変形させて黙示録砲を叩き込んだ。
　思わず吹き飛ぶニノミヤレッド。
　ピンクが間に割り込み、薪を大量に空中へ浮かべる。
「それはもう見た！　――泰流！」
　漣香がカウンターで霧を展開。
　薪のダメージをひっぺがすと、霧に紛れて飛び込んだ泰流（ビハインド）が強烈な霊撃を叩き込んだ。
　吹き飛んでいくニノミヤピンク。
　漣香もまた泰流を追って飛び込むと、霧の向こうに電波塔が見えた。
「あれをへし折りたいかって言えば、イエスだ。けど――今日のオレは大事な裏方！」
「その通り、うまくあわせろよ！」
「そっちもな！」
　武流と漣香はガツンと拳を打ち合わせ、炎のようなエネルギーを吹き上げさせた。

●激化そして激化
　灼滅者たちの想定通りに三列ポジションを組んだニノミヤ・カラーバリエーション。
　敵たちは灼滅者の前衛にひたすら薪を打ち込みつつたまに自己回復といったシンプルな攻め方をしてきた。
　二列ポジションの灼滅者たちはこれにえらく苦戦した。璃羽や漣香の回復でも間に合わない分はアプリコーゼ、武流、さくらえの自己回復で何とかしのぐようにしていたがその分ダメージの蓄積に困ることになった。
　とはいっても文字通り百戦錬磨の灼滅者たちである。
　環やジュンの豪快な削りとロイドの繊細な削りをあわせ、なんとか相手を削る方向へ持って行くことができた。
「ちょっと体力的にキツいけど……なんとか同時撃破はできそうだ。みんな、時間だ！　準備はオッケー！？」
　頬の傷からぶわりと炎をあげ、漣香は燃えるように笑った。
「私は行けます。では手はず通りに」
　璃羽は肩に真っ黒い大砲を担ぐと、レバーを引っ張りながら敵陣へと突撃した。
　大砲から開いた無数の砲塔があちこちへと乱射を始める。
　そうはさせるかと飛びかかるニノミヤグリーン。
　フライングヘッドミサイルが炸裂せんとしたその寸前、明後日の方向から飛んできたハモがそれを打ち落とした。
　他にはいまい。環である。
「さて、その天を衝きそそり立つ電波塔をへし折ってやんぜ！　先生がな！　……ってことで先生、こいつらを一発ぎゃふんといわせて、この電波塔をご当地アイドル（自称）の毒電波垂れ流し基地局にしちまってくださいよ！」
　ビッと親指を立てる環。
　ビッと親指を立て返す璃羽。
　それを阻もうと薪を大量に浮かべるニノミヤブルーとイエロー。
「おっと、そうはさせないっすよ！」
「ここはまかせて先に行け……ってね」
　ロッドを構えたアプリコーゼと銃を構えたさくらえが立ち塞がる。
　二人を押しのけようと薪ガトリングを打ち込んでくるニノミヤ。
　対抗して銃を連射するさくらえとロッドからアサルトライフルさながらの空圧弾を乱射するアプリコーゼ。
　二人は相手にひるむこと無く突撃し、ニノミヤの頭をぼろぼろに崩壊させていった。
　大量の薪が一つにあつまり、二人へと突っ込んでいく。
　それでも尚引くこと無く、二人は最大火力を叩き込んだ。
　至近距離まで近づき、半壊したニノミヤをがしりと掴む。
「こうなったら」
「道連れっす！」
　ずどんと落下する巨大な薪。
　一方でニノミヤの守りを突破しようと走り続ける璃羽。
　彼女を囲むようにグリーン、レッド、ピンクがそれぞれ併走を始めた。
「漣香ァ！」
「分かってる！」
　武流が炎を纏って跳躍。剣の刀身を巨大な炎に変えた。
「十・文・字・斬！　クロスクルセイダー！」
　強烈な横切り。
　更に頭上からのまっすぐな上段斬り……の途中で、ニノミヤは翳した本でガードした。
　だがそれで構わない。
　漣香が桜模様の巨大なライフルを泰流と共に担いでいた。
　漣香の炎のごときエネルギーと泰流の霊力が集まり、巨大なビームとなって発射される。
　ガード姿勢にあったニノミヤに直撃。胴体をぶち抜いて彼方の空へ光線が消えていく。
　そうして武流は剣を振り抜き、ニノミヤを完全に破壊した。
「っしゃ、もう一息！」
　見ればレッドとピンクが璃羽を狙ってコンビネーションアタックを仕掛けようとしているようだ。
　ギリギリで動けるのはジュンと、そしてロイドだけだ。
「ロイド！　お前の攻撃が必要だ！　頼む！」
「……」
　ロイドは小さく頷くと、ジュンと即席のコンビを組んだ。
　跳躍し、ニノミヤシンクロキックを繰り出すレッドとピンク。
「マジピュア・リアクティブスター！」
　ジュンが放った星形の魔術護符が五角形を組み、ニノミヤたちへとぶつかっていく。
　空中でぶつかり合い、エネルギーの爆発が起きる。
　爆発を抜け、レッドが突き抜けてくる。
　狙いは勿論璃羽だが――。
「どこを見ている」
　ヒュンと走ったワイヤーがレッドへと巻き付いていく。
　ロイドはワイヤーを激しく炎上させると、次々と小爆発を起こさせた。
　砕け散っていくレッド。
　璃羽はその間を駆け抜け、仲間たちを振り返った。
「大丈夫です。絶対に、あの塔を破壊できます」
　ロイドは璃羽に塔への攻撃を託すと、再び武装を展開してくるりと後ろへ向き直った。
　都市伝説はやがて復活するだろう。残るメンバーでそれを迎撃しなければならない。
　傷だらけのアプリコーゼとさくらえが互いに肩を貸しながらゆらりと立ち上がる。
　ファイティングポーズをとる漣香。
　剣をしっかりと握り込む武流。
　二人の傷口から燃え上がる炎がひとつになって空へと登っていく。
　ジュンは星型のエネルギー体を身体の周りで巡回させ、毅然と構えた。
　マグロランチャーを肩に担いでグッと顎を上げてみせる環。
「ここからが大変ですが……」
「やってやんぜ」
　彼女たちの迎撃戦が、始まろうとしている。

作者：空白革命	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2018年3月6日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 2／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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