ソウルボードの異変～奇怪な電波塔

■リプレイ

●いざソウルボードへ
　先んじてソウルボード内の調査をした灼滅者達の報告通り、ソウルボードの中に降り立つと、そこには『ラジオウェーブの電波塔』が出現していた。
「電波塔があるとは思っていたけど、まさかソウルボード内にあるとはね。
　ラジオウェーブが何を企んでいようと、やるべきことは変わらない。いつも通り片付けるとしようか」
「電波にラジオ、かぁ。ラジオウェーブって、案外その名の通りラジオ電波そのものとかだったりするのかな？ふわふわその辺漂ってたりして……」
　比良坂・柩（がしゃどくろ・d27049）に、祟部・彦麻呂（快刀乱麻・d14003）が見上げた電波塔は、頭部のアンテナから絶え間なく電波を発し続けている。
　そんな塔を護る都市伝説を撃破するため、ソウルボード内には他チームの灼滅者達も集まって来ていた。
　彼らと戦闘開始タイミングを合わせるため、月夜・玲（過去は投げ捨てるもの・d12030）は不用意に電波塔に近づかず、様子を見守る。
　四月一日・いろは（百魔絢爛・d03805）は注意深く望遠鏡をのぞき込み、電波塔と戦場の位置関係を確認。都市伝説撃破後の行動に活かせる事だろう。
　ソウルボード内で確かに感じる『灼滅者達に好意的な意志』。それは学園の皆が積み重ねてきた民間活動の賜物だ。
「灼滅者への感情がこの機会を与えてくれたなら、無論、応えぬ訳にはいかないだろう。手早く壊してしまうまでさ」
　紫乃崎・謡（紫鬼・d02208）はその想いを胸に、
　戒道・蔵乃祐（逆戟・d06549）も、
　民間活動に尽力した仲間の苦労に報いる為に、灼滅者の呼び掛けに応えてくれた一般人の意思を守る為にラジオ放送の悪影響は此処で断ち切ると決意をみせる。
「違法建築物は撤去させてもらうさ」
　電波塔へ近づこうと踏み出すと、ラジオ放送によって周囲のソウルボードが都市伝説に変化してゆく。
　灼滅者達の前に、行く手を阻む３体の都市伝説が現れたのだった。

●音楽室の怪談達
　民間活動で、灼滅者達が撃破してきた学校の怪談にまつわる都市伝説達。
　目の前に現れたベートーベンの肖像画、お化けピアノ、お化けドラムセットもまた、それを連想させる音楽室の怪談達だった。
　ドラムセットに狙いを定め、先手を取ったのは蔵乃祐。炎を纏った激しい蹴りを見舞ったのを見届けて、
　かいどー先輩に続けと、玲も踏み出す。
「行くよネコサシミ」
　彼女の狙いはベートーベンの肖像画。
　ウィングキャットの『ネコサシミ』は羽ばたいて猫魔法を放ち、玲が続いて肖像画をシールドを思い切り叩きつけた。
　地面にべしゃりと落ちた肖像画は再び起き上がると、怒りの形相で玲を睨み付る。
「くっ……」
　ベートーベンの威圧を受けながらも、狙い通り注意を惹きつけたのだった。
　一方、謡と柩は消耗度少ないピアノへロックオン。
　【紫苑十字】の銃口が開く。
　謡は躊躇なく砲弾を放ち、柩の振るう【死者の杖】からは雷が迸りピアノへ襲い掛かった。
　そして間髪入れず、クロスグレイブを構える黒嬢・白雛（天翔黒凰シロビナ・d26809）。
　燻るピアノ、そしてドラムに向けて十字架の全砲門を開放、矢継ぎ早に乱射した光線が２体へ降りかかる。
　ピアノは自身の鍵盤でメロディを奏で出したが、上手く奏で続ける事が出来なかった。
　向かい来る３体の都市伝説に対して、すぐに倒してしまわないように灼滅者達は連携を取り合い、攻撃対象を分散させていた。
　まだまだ戦闘は序盤である。
　いろはの掲げた黄色の交通標識が、前衛陣に耐性を与え。
　２体の大きな楽器の後ろで浮遊するベートーベンの肖像画の元へーー。
「油断してた？」
　彦麻呂はバベルブレイカーのジェット噴射で飛び込み、肖像画の胸元を貫いた。
　一方、前衛を張っていたドラムセットがぐわっと巨体を持ち上げ、目前のレオン・ヴァーミリオン（鉛の亡霊・d24267）へのしかかった。
「ぐっ……」
　かなりの重量を掛けた、のしかかりから逃れると、体勢を立て直して【Iron-Blood】を構える。
「今のは堪えたよ」
　と言いつつ笑みを浮かべて、ドラムセットへ螺穿槍を見舞えば、幾つものハイハットシンバルが悲鳴のように金属音を立てた。
　２ターン、３ターンと戦況が進んでいく。
「まだ余裕そうですわね？」
　都市伝説達の様子から、倒し切ってしまう心配はないと判断して躊躇なく、
　白雛は足元から伸びた影の先端を刃に変え、肖像画へ差し向けたが。
　ずいっと間に入ったピアノが庇い、代わりに斬影刃を受けたのだった。
　すぐにベートーベンの肖像画は、ピアノへ癒しを与える。
「連携をみせて来るとはね」
　少々感心しつつ、回復したばかりのピアノへと柩はジャッジメントレイを放ち、
　謡が体中に巻きつけた包帯をはためかせながら、赤い瞳でピアノを見据えながら十字架戦闘術を畳みかけた。
　そしてピアノとドラムセットへと、龍砕斧を構えた蔵乃祐が向かい薙ぎ払うと、
　怒り狂ったドラムセットが蔵乃祐に向かってシンバルやスネアドラムやを飛ばして来たのだった。
「良いリアクションだね」
　それを払いのけつつ、いくつかは当たってしまうが、いろはが回復にあたる。
「無茶しないでね」
　ダイタロスベルトを蔵乃祐に放出して手当てする一方で、
　彦麻呂が構えたクロスグレイブの銃口から、ドラムセットへ光の砲弾が撃ち込まれた。
　都市伝説達との攻防が続く。
　レオンは経過時間を気にしつつ、
「肖像画が手薄になっているよ」
　声掛けを心掛けながらも、レイザースラストでベートーベンの肖像画を貫いた。
「私も行くよー」
　断斬鋏を手に、玲も肖像画へ距離を詰める。
　切り裂いた肖像画の破れに、じわりと鋏の錆が滲んだ。

●中盤戦へ
　謡の用意したタイマーが鳴った。
「６ターン目だよ」
　攻撃の手を休めて様子を見ると、都市伝説達は弱り始めているようだ。
「まだ倒したらいけないね。温存させないと」
　小休止。謡は自身にブラックフォームを掛け、蔵乃祐も白炎蜃気楼を放出して自身を癒す。
　他班も、都市伝説達を倒してしまわないよう調整しているようだ。
「持久戦だね。まだまだ遊んでもらわないと」
　柩と彦麻呂もシャウトで自己回復し、後半の戦いに備えるのだった。
　という事情は都市伝説側には関係の無い事でーー。
　お化けピアノが鋭く鍵盤を飛ばした、狙いの先に居たのは柩。
「……！」
　しかし、蔵乃祐が身を挺して庇い、白と黒の鍵盤がバチバチと彼に叩きつけられた。
「ありがとう蔵乃祐」
「どうってことないさ」
　気丈に笑って、ポジションに戻ってゆく。
　そして都市伝説の消耗具合をみながら攻撃を再開し、手順が巡る内にレオンのデジタル式タイマーが鳴り響いた。
「８ターン目だね」
　戦いは終盤に向かっていた。
　玲は肖像画に狙いを定め、ネコサシミを連れて攻撃に出る。
「鋏の餌食になりなよ！」
「にゃっ！」
　蒐執鋏に切り裂かれたベートーベンの顔に、さらに肉球パンチが見舞われる。
　玲を憎々しい表情で睨み付けるが、ネコサシミがひらりと割って入り、それを受けたのだった。
　４０メートルもの、異様な存在感を放つ電波塔の傍らで続く都市伝説との攻防の末。
「１０ターン目だよ、都市伝説を倒してしまって構わない」
　タイマーのアラームを止めて謡が告げる。
　彦麻呂は他班の様子を確認しつつ、エアシューズでピアノの前に進み出た。
　流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダーンと音を立てて身動き取れなくなったピアノへ。
「今だよ！」
「さぁ……断罪の時間ですの！」
　白雛は体から迸る白黒の炎を大鎌に宿し、鎌の切っ先を向けた。
　手加減は要らない。存分にダークネスへの敵愾心を顕わにし、燃え盛る白黒の炎をピアノへ叩きつけた。
　ピアノは豪快に燃え上がり、ただの大きな木材の塊になり果てて、動かなくなった。
　そして、ドラムセットへ影で作った触手を放つ謡。
「手早く壊してしまうまでさ」
　時間調整の手加減が要らない今。決断躊躇なく敵に影を這わせて絡めとってゆく。
　ギチギチと黒い影に締め上げられたドラムに向けて、柩は激しく渦巻く風の刃を生み出し差し向ける。
　渦巻く風にぶわりと長い髪を靡かせて、思い切り中心を斬り裂けば、バスドラムがグシャリとひしゃげた。
「楽にしてあげるよ」
　蔵乃祐が思い切りシールドバッシュを叩きつけると、派手に音を立ててドラムセットを構成する各楽器が散らばり、
　ピクリとも動かなくなった。
「残りは君だけだね？」
　着物をはためかせ、いろははエアシューズで肖像画に接近。
　目を見開いたベートーベンの顔面に、火花散るグラインドファイアを見舞った。
　そして。マテリアルロッドの【call of Siren】を構えたレオンがいろはに替わって立ちはだかる。
「これで終わりだよ」
　殴りつけられ、魔力を注ぎ込まれた肖像画は派手に爆発し、バラバラに散って消え去ったのだった。

●電波塔へ
　３体の都市伝説を撃破した１０ターン目、時を同じくして他チームの都市伝説も灼滅が確認された。
「無限に復活し続けるなんて厄介だよね」
「何度も復活する都市伝説とか超クソゲーじゃん」
　いろはや玲の言うように、数分もすればラジオ放送によって再構成された都市伝説が再び襲ってくる事だろう。
　放送に警戒しつつ謡は、電波塔を背に２人を護る盾となって送り出す。
「迎撃は任せて。存分に奮うと良い」
「２人とも大怪我くらいはいいけど、生きて帰ってくるんだよ？　此処で待ってるからさ」
　レオンはいろはを内心心配しつつ、笑みを浮かべて２人を送り出す。
「うん、それじゃあ行ってくるから吉報を待っててね」
「仮にも七不思議使いの端くれですし？
　タタリガミが相手となれば少しくらい頑張らせて貰いますよ、っと！」
　別に個人的な恨みとかは全然無いんですけどねと思いつつ、行ってくるよと気合を入れ直して、彦麻呂はいろはと共に電波塔へ向かう。
「諸々任せた！　頑張ってね！」
　駆け出す２人の背面を援護する蔵乃祐に白雛。残留組の前に、再び３体の都市伝説が再構築されてゆく……。
「テメェらの相手は此方だド阿呆！」
　突破組２人に追いすがろうとする敵へ、殴り掛かるレオン。
　電波塔の撃破を託して、残留組は再び襲い来る都市伝説を迎え撃つのだった。

作者：ｋｏｇｕｍａ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2018年3月6日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 4／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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