決戦巨大七不思議~秒速100mのたかし君

    作者:るう

    ●静岡県湖西市、鷲津駅前
    「たかしくんは最初、3つの都市伝説を持っていました」
     駅前ロータリーに立った小学生くらいの少年が突然言いだした。
    「それから3つの都市伝説を吸収し、1つ捨て、さらに2つの吸収しました。ラジオウェーブさんがソウルボードに拠点を作る作戦に失敗した時、たかしくんは何をすればいいでしょうか! こたえ……巨大七不思議で町を恐怖に陥れればいい!」
     そう叫ぶとむくむくと巨大化しはじめた彼が、算数ドリルらしき本を広げると……中からボトボトと少年少女たちが落ちてくる! そして……同じように巨大化しはじめる!
    「みんな、揃ったね? じゃあ、みんなは市内の6つの小学校に遊びにいこう! ぼくは市役所のほうに行ってみるね!」

    ●武蔵坂学園、教室
    「俺たちは先日の民間活動に関する投票の結果、『ソウルボードを利用した民間活動を試みる』ことになった……のだが!」
     神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)の話によれば、折りしもタタリガミの首魁『ラジオウェーブ』が、それを妨害するかのような作戦を企てているのだという。
    「ラジオウェーブはお前たちの活躍により、ソウルボード内の拠点である電波塔を喪った。が……その失点を挽回するために、配下の精鋭タタリガミに地方都市を襲わせることで都市伝説の存在を強制認知させんとしている! このタタリガミを灼滅しラジオウェーブの思惑を挫き……可能であればタタリガミのソウルボード利用の秘密を暴くのが、お前たち灼滅者の宿命だ!」

     静岡県湖西市に現れるタタリガミと6体の都市伝説は、いずれも身長7mほどの小学生の姿をしている。タタリガミは全員で当たらねば倒せぬ敵だが、都市伝説は2~3名で十分灼滅可能な強さだ。
     彼らの狙いは人々に恐怖を与えることであり、人をいたぶることこそすれ殺そうとは思っていないようだが……巻きこまれたり、驚いて事故を起こしたりといった形での犠牲者が全く出ないとは言いきれない。
    「危険ではある……が、タタリガミさえ灼滅できれば、都市伝説は皆消滅すると、俺の全能計算域(エクスマトリックス)が囁いている! ……わけではあるが」
    「あえて都市伝説との戦いを一般人に見せつけることで、一般人に灼滅者の活動を知らしめる『民間活動』を兼ねることもできる……と、そう言いたいのだろう?」
     白鷺・鴉(大学生七不思議使い・dn0227)がそう問うと、ヤマトはそうだと頷いた。
    「もちろん、都市伝説との戦いで時間を取られれば、犠牲は増えるかもしれない……今後の活動のための布石とどちらを取るかの背反が、お前たちを苦しめるだろう」
     が、その苦しみを知って行なうからこそ、その選択は意義を持つ……きっと、そうであるはずだ。


    参加者
    藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)
    焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)
    刃渡・刀(魔剣・d25866)
    饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)
    木津・実季(狩狼・d31826)
    チセ・ネニュファール(星彩睡蓮・d38509)

    ■リプレイ

    ●学問の価値
     古来より人類は、学問というものを尊んできた。
     対してダークネスは学問を利用し、時にはねじ曲げ、人類管理の一助としてきた。
     それは知識というものが、それだけの力を持つからに他なるまい……そして静岡県最西端のこの町にやってきた灼滅者たちは、そのことをよく知る者たちであったに違いない。

    「ふははははー、出たね都市伝説どもー! 小江戸の緋色がサクッと灼滅してやるのだ!」
     街路樹へと斧を振るう巨大少年の前に、地図アプリから目を離した赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)が立ちはだかる。

    「被害を最小限に抑えるためにも……私たちは素早く都市伝説さんたちを倒す」
     無邪気に町を塗りつぶさんとする別の巨大少年を止めるため、ルートを目に焼きつけた山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)の拳が握られる。

     取るべき道を書きこんだ地図を手に、饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)はその花を見る。巨大な少女が歌を口ずさんで植える、禍々しい赤の毒の花を。

     それぞれ立つ場所こそ違えども、なすべきことも想いも同じ。
    「タタリガミ退治、がんばろー!」
     呼びかけた樹斉の姿が黄金の毛並みに覆われた時、地理を活用し邪悪なる算数の使い手たちを倒さんとする灼滅者たちの戦いは始まったのだ。

    ●A班:北ルート
    「80m続く道路に♪ 5mおきに毒花が咲けば♪」
     浜名湖北西の松見ヶ浦を望む一帯に、花子さんの歌声とともに毒花粉が舞う。だから窓を閉めろと呼びかけるくらい、木津・実季(狩狼・d31826)にも簡単にできるのだけれど、そこに灼滅者の存在の流布まで行なうとなると、咄嗟には彼女の口からは出てこない。
     でも……第一はそこじゃない。速やかに花子さんを灼滅して次に向かい、人を救うことこそ彼女の役目。実季の狼の血が滾り、刃が花ごと敵をきり刻んでゆく。
    「あんなでかいだけの小学生には負けませんよ!」
    「そうよ……算数は怖くないの。怖いと苦手は違うんです……だって私、昔から算数は苦手だけれど怖いなんて想ってないもの」
     チセ・ネニュファール(星彩睡蓮・d38509)の魔術の追撃も呼応して、花を植えんとする手を貫いた。驚き逃げる人々の中に、算数嫌いの子はいるのだろうか……でも、もしもそういった子が怯えていても、チセはその恐怖を払ってやれると信じて!
     そう。敵は、怖いと思うから怖いのだ。
    「毒花の数は全部で何本♪ 苦しむ人はいったい何人♪」
     そんな花子さんの歌声は、力ある別の歌によりかき消された。
     歌声の主は、金色の毛並持つ獣人。樹斉が、封じられた『歌』を解放するための姿だ。
     彼の甘美なる歌声は災いを招く……ただし、毒花を枯らし花子さんを消滅せしめるという形で。

    ●B班:南東ルート
     かつて新居宿と呼ばれたこの一帯には、今も住宅地が広がっている。
    「殺戮の予定はないとの予測ではあるが」
     藤谷・徹也(大学生殺人機械・d01892)の頭脳は計算する。それは、もしも太郎君が望むなら、いつでも甚大な被害を生みだせることだと。
    「人命が最優先であると認識している」
     徹也が確認の言葉を発したならば、もちろんだと頷くのは焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)。
    「それに……木の命もな! 大切に育ててきた人たちの思い、切らせるわけにはいかないもんな!」
    「非論理的だ」
     そう異論を挟みながらも、徹也は太郎君の全身を影にて縛めていた。
    「だが、物的損壊の回避も優先項目ではある」
    「それで十分だ!」
     愛機の掃射に合わせるように、勇真の炎剣が火の粉を散らす。敵が恐怖というマイナスを広めんるならば、オレたちがそれをプラスに変えてやる!
     けれども太郎君は怒った様子で、斧を大きく振りあげた。
    「木を5分に1本切ったなら、2時間で切れるのは何本ー!」
    「しってる! 算数の教科書に出てくるやつだよね! こんな無理っぽいのなかった気がするけど」
     そこへと飛びこんだのは緋色。でも……物理で解けるなら怖くない! 7分で全快するドレイン技と、どっちが強いか勝負してみよう!
    「みんな……安心してくれ! こいつはオレたち武蔵坂学園が倒す!」
     とどめの光輪を放った勇真の姿は、目撃者たちの目に焼きついたろう。が、灼滅者たちは今は、この場で巨人の正体について説明しているわけにもいかない。
    「次のポイントに向かう」
     徹也がそう宣言するのと同時、彼らは北西を目ざしてたち去ったのだった。

    ●C班:南西ルート
     一方、愛知との県境にほど近い市の南西部――。
    (「弱い都市伝説さんだとはいえ、私たちは2人」)
     透流が唾を飲んだのが、刃渡・刀(魔剣・d25866)にも伝わった。
     他が3人に対してこの班は2人。どうしても不利は否めない……けれど、だからって遅れをとるつもりはどちらにもない。刀には、自身の二刀、ビハインドの千鳥の二刀、そして影の一刀を操る『五刀流』がある。そして透流もトレードマークの籠手を捨ててでも、不利を覆す覚悟がある!
    「参ります。……魔剣――――無銘」
     まずは一刀。次郎君のはけが半ばまで割れる。
     次に二刀。次郎君はペンキをばら撒くが、刀はその飛沫を切りすてる。
     三刀め――は、振るうまでもなく終わっていた。
     透流の槍が次郎君を貫いている。
    「7mって、巨大っていうほどでもないし見つけにくいかと思ったけど、高い建物が少なくてよかった……」
     そして2人は先へと急ぐ……。

     地理を制する者は戦いを制す。地図の価値を正しくを活用した灼滅者たちは、それぞれが目的の場所に向かって、最短経路で都市伝説灼滅の旅を続けてゆく。
     しかし、強いて言うのであれば……そんな彼らももう少しだけ地図を活用できたかもしれない。

    ●災害対策
     再びA班。
    「これで、2体めも灼滅完了ですか……パンチ力ばかり強かったところで、私たちを恐れさせることなどできやしませんよ」
     校舎を殴るのも飽きたのか、そのまま住宅地まで南下していたゆうき君の姿は、実季に両断されたのを最後にかき消えていった。
     そのことにほっと溜め息を吐きつつも、辺りの被害の痕跡を一望しながら推理してみるチセ。この状況、思考に使える時間はそう長くない。だがそれでも……何かの参考にはできるはず!
    「小学校にたどり着いた後、たくさんの人に目撃される場所を探して移動していた……?」
     その推理が正しかったなら、他班も同様の都市伝説の行動を目撃してるはず。タタリガミ――たかし君の目的を鑑みたならば、襲った場所に留まり続けるよりも、すぐに別の場所に移動する方がいいはずなのだから!
    「わかった! 他の人たちにもすぐに連絡してみるねー!」
     魔性を封じた狐耳狐尻尾だけの姿に戻ると、すぐに他の2班に電話して伝える樹斉。それから、皆で再び南へと走り出す……すると、まず連絡があったのはC班の刀からだった。

    「確かに、都市伝説は隣接する商業施設に興味を移していたようです――既に斬り捨てておりますが」
     何事もなかったかのように告げる刀。戦力上、決して楽勝であるとは言えぬはずなのに、彼女は刃のような口調を崩さない。

     けれどもその後しばらく待っても、徹也らからの連絡は来なかった。
    「どうしようねー……こっちはもう市役所に着いちゃったのに。……あ、山田センパイたちも来た! おーい!」

     辺りにはたかし君の生んだ風によるものと思われる、嵐が過ぎた後のような光景が広がっている。なり響く同報無線はしきりに、市民に外に出ず窓際から離れておくよう呼びかけている……もしかしたら白鷺・鴉(大学生七不思議使い・dn0227)か誰かが、役所に働きかけた結果かもしれない。
     が……肝心のたかし君の姿は見あたらなかった。カーリー・エルミール(d34266)によればたかし君は被害を広めるために、周辺を行ったりきたりしているらしい。
    「ボクは一般人の避難と怪我人の治療を続けてくるよ」
     そう言いのこしてカーリーが去ってゆくのといれ替わりに、市役所前を通りすぎてゆくたかし君。B班から連絡が届いたのは、その直後だった。
    「花子さん、無事に灼滅あーんど学園の宣伝完了なのだー! りんごもけっこー美味しかった!」
    「予想的中だったぜ! 新所原の市街地に引きつけられてたけど、被害は……一帯が甘い匂いになってたくらいだな」
     緋色と勇真の声色を聞けば、3人が見事な仕事をしたことに疑いようはない。だが……今その報告が届くということは、彼らが新所原~市役所間の約4kmを移動する間、灼滅者たちはタタリガミとの対決ができないということでもある。
    「これは、俺の計算ミスだ。B班とC班の1箇所めを逆にしておくのが最適解だった」
     各自の希望を叶えようとした結果、より良い解を見落とすなどとは。武蔵坂に来る前の徹也であれば考えられぬことだ……果たして彼はこの学園に来て、いかなる変化をしてしまったのだろう?
     一方で、そのミスが誤差にすぎないこともまた事実ではあった。いや、それどころか有益な部分すらあった。
     合流までの短くて長い時間を、灼滅者たちは避難誘導に充てられる。それは後手に回った行動ではあるが、民間活動として大きな価値を持つ。そもそも被害を減らすことを最重要と思うなら、長期的な視点など脇に置き、最初からたかし君だけを狙えばよかったのだから!

     再び、たかし君が通過した。彼がすでに何度も駆けぬけた場所をさらに走るのは、災害対策拠点機能を兼ねるこの場所に、確実に恐怖を刻みこむためだろう。
     だが……役所の内部ではすでに、恐怖を克服するための活動が始まっている。牧原・みんと(d31313)が市民に配るため作ってきた、ダークネスについての情報や対抗戦力としての灼滅者についてをまとめたチラシを元に、市民にできる説明と事後の対応についての検討会議も準備中だ。市内各地から届いた事件の報告も、実際に同じ事件を目撃した担当者が受けとったならば、バベルの鎖に抗い伝わることができる。
     こうなればもう、あとはたかし君の灼滅を待つだけだった。そしてようやくB班がたどり着く……かくして、唾棄すべき算数存在の灼滅は開始する。

    ●タタリガミの力
     誰も通る者のいなくなった市役所前へと、またもやたかし君は差しかかる。同じように同じ場所を通りすぎ、同じようにそのまま去ってゆく……無邪気な少年の姿を模した巨大タタリガミは、きっとそう信じていたに違いない。
     ……が、そうはならなかった。
    「こんなに巨大な敵だから、いつもと勝手が違ったけれど……ようやく解ってきたことがある」
     軌道に仁王立った透流が拳をつき出せば、その高さはちょうど敵の脛!
    「その分、攻撃を狙いやすい……!」
    「うわ~~~!?」
     右足だけを急減速させられた巨大少年は、左手を地面につく形で前のめりになった。辺りに血煙が広がって、少年の左手が激しく削れゆく!
     無論、透流もタダで済みはしなかった。拳にチセの防護符を貼りつけていなければ、彼女は拳を砕かれて、戦いから脱落することになっていたとしてもおかしくはない。
     一方のたかし君も立ちあがる。そして表情に怒りと憎しみを湛え、灼滅者らへ向かって再度の突進!
    「たかし君の前に灼滅者が8人います! たかし君が12kmを2分で走る時、倒れる灼滅者は何人でしょう! 答えは……」
    「0……だ」
     徹也がそう答えた瞬間、たかし君は再びその場で転倒した。
    「確かにお前たちは、算数において重要な存在だ」
     が……徹也は今度こそ、敵の計算をうわ回ってみせる。たとえ敵の転倒の余波を受け、その肉体を損傷しようとも!
    「私たちの活躍を広報誌に載せて貰うんですから、あまり血みどろになるのはやめてくださいよ」
     そんな軽口を叩く実季自身も、すぐにまた駆けだしたたかし君にはじき飛ばされた傷と、そんな彼に与えた傷の返り血で、至るところが真っ赤に染まっていた。
    「重いですね……けれど、ここはチセさんに任せて私は攻めつづけますか!」
    「本当にいいのか?」
     訊く勇真。どう考えても実季が受けている傷は、今すぐ治療が必要だろう。が……彼女がチセを信じると言うのなら、勇真も信じぬわけにはいかぬ!
    「市内のみんな、聞いてくれ! どんなに強大なダークネスが敵でも、オレたちは絶対に倒してみせる! だって……皆がオレたちの呼びかけを信じて、すばやく避難してくれたんだからな!」
     その言葉と雄姿を見守ってくれているだろう誰かのために、勇真の炎は闇を裂いた。……さらに。
    「――五刀め」
     都市伝説ごとき相手は見せるまでもなく滅ぼしてしまった刀の剣技の真骨頂が、巨大少年の周囲で華麗に舞う。刀が鞘へと納まると同時……少年の全身に無数の傷に刻まれる!
     不可視にして無数。それが彼女の剣術だ。
     しかし、相手はあの図体。いまだ、再び走りだせるほどの力を残している。
    「この刃に耐えるとは……流石は巨体だけあります――ですが」
    「いっくよー! ……ひっさつ!」
     チセの蝋燭から広がった、たかし君の衝撃波を吸収する黒煙の中からとび出した緋色が、鋏や注射器、その他もろもろを思いっきりたかし君へとぶち撒ける! もちろん、時おりちらりと市庁舎のほうをふり向いて、ラブフェロモンを振りまきながら「任せて!」アピールするのも怠らない。

    ●さようなら、たかし君
    「んもー、痛すぎるじゃないかー!」
     白昼堂々現れるタタリガミというものも、人目もはばからず地団駄を踏んでいるたかし君の姿も、樹斉には、本来のタタリガミのイメージとは大きくかけ離れているように見えた。
    「こんな強引な手段をとってきたってことは、切れる手札も減ってるんだろうけど、なーんかなー……」
     そんな思いを口に出したなら、再び魔性を発現する樹斉。言葉操る闇を苛むものは、彼の持つ、歌を操る闇の力。
     それを止めんと走りだす、たかし君の蹂躙は、いまだチセの黒煙により妨げられたまま。もっとも、その煙もそろそろ晴れんとしているが……かといって今や、蝋燭を追加で焚く必要はない。
    「次の攻撃が来る前に、確実にここで終わらせましょう」
     黒煙の最後の一筋を貫いて、魔法の光矢をとき放つチセ。そしてその光を追うように、勇真の炎が絡みつく。
     それでも、たかし君はいまだ倒れない。いちど道の向こうまで通りぬけ、そこから反転してくる彼を止めきることは……刀の剣技のみでは叶わない!
    「随分としぶといですが……」
    「……問題はない」
     そう言って、たかし君に正面から衝突したのは徹也だった。その姿はまるで建設重機。けれども、その身が肉であることには変わりない……!
     ……が、その身は滅びなかった。
     気づけば少年の姿は消えて、辺りにはなんでもない春風だけが吹いている。
     真正面に突きだされた透流の拳に、干からびたミイラのような何かがこびりついていた。
    「ああ。あれがタタリガミの本体でしたか」
     ほっと溜め息を吐く実季の目の前で、サイキックエナジーが枯れ、本来の大きさに戻ったタタリガミの体は、ぼろぼろと崩れおちてゆく。
    「今の一瞬が撮れていれば、ダークネスが実在するいい証拠になるわけですが」
     役所のほうをちらと見たならば、職員のひとりを庇うように立ちながら、こちらへと手を振っている鴉の姿。

     タタリガミと学校は似ていると、樹斉はしみじみ呟いた。どちらも、七不思議を内在する存在だという点で。
     が……だとしたら。
    「また学校を襲うタタリガミが現れるのかなー?」
     そんなふうに緋色は思うから、彼女は被災した人々のところへ行っては呼びかける、を何度もくり返す。
    「もしまた都市伝説を見つけたら、連絡してね!」

     その呼びかけが、あるいは事件を伝える広報が、どれだけ人々を動かしたかは判らない。
     けれども、人々の情報伝達を縛める『バベルの鎖』が少しでも緩んだであろうことはきっと、この時点で灼滅者たちの誰もが確信していたに違いない。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年3月29日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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