決戦巨大七不思議~巨大タタリガミのタタリ

    作者:彩乃鳩


    『さて……始めましょうか。ラジオウェーブの脚本通りに』
     小さな女の子の姿をしたタタリガミ。
     タタリ・ナナは血塗れな本を片手に、都市の中心部交差路に降り立つ。
    『ああ……大きく大きく大きくなれ……大きくなって別れなさい」
     それは目を疑うような光景だった。
     小柄な少女のタタリガミが急速に巨大化していく。それだけでも異様だが、さらに自分とそっくりな巨大な姿をした都市伝説が六体分離する。
    『私達の出番は、もっと後のはずだったのに……』
    『灼滅者達のおかげで、予定が狂ったわ』
    『まさかソウルボードの拠点が陥落してしまうなんて』
    『いつも、あの人達は私達の邪魔をするのね』
    『恐怖を、人の恐怖を最大化しないと』
    『人間の恐怖が極限に高まった時、人は真の力を取り戻すでしょう』
     歌うように呟く、自分とそっくりの都市伝説達を眺め。
     タタリ・ナナは指示を出す。
    『これより、都市の制圧を開始します。目標は、全ての人間に都市伝説の恐怖を与える事。作戦時の人間の殺害は可能な限り避けてくださいね……私達の目的はあくまでも恐怖を演出することなのですから』
     六体の都市伝説が頷き、散らばっていく。
     それを見届けると、タタリガミたるタタリ・ナナも空を仰いでゆっくりと歩き出した。
    『人に犠牲を出さなければ、灼滅者さん達も見逃しては……くれないでしょうね。正直、我々に彼らと戦う理由は特に無いのですけれども』

    「民間活動の評決の結果『ソウルボードを利用した民間活動を試みる』事が決定し、その準備を始めたのですが、その前に『ラジオウェーブ配下のタタリガミ』による大規模襲撃が発生してしまいました」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が説明を始める。
    「灼滅者の活躍で、電波塔というソウルボード内の拠点を失ったラジオウェーブは、その失地を回復する為に、切り札の一つを切ってきたようです。最高ランクの都市伝説を吸収して収集した、タタリガミの精鋭達を投入して、再びソウルボードに拠点を生み出そうとしているようです」
     その方法は『多数の人口を抱える地方都市』を、巨大化した7体の都市伝説で襲撃、住人全てに恐怖を与え、都市伝説を強制的に認識させるというものだ。
    「このような強引で目立つ方法を取るという事は、それだけ、ラジオウェーブ側に余裕がなくなっているという事かもしれません。皆さんには、襲撃されている都市に向かい、タタリガミと都市伝説の撃破をお願いします」
     また、敵の目的が『多数の一般人に影響を与える事で、ソウルボードに拠点を作る』事である事から、この敵の作戦行動を観察する事で、『ソウルボードを利用した民間活動』を行うヒントを得る事もできるかもしれない。
    「今回は本体であるタタリガミと、タタリガミが分離した6体の都市伝説が敵となります」
     タタリガミも都市伝説も7mサイズに巨大化している。
     タタリガミの目的は、人間を恐怖させる事で、殺す事では無い。もっとも建造物の破壊などは行うが。
    「巨大都市伝説の戦闘能力は、通常の都市伝説程度なので、灼滅者3名でも対抗が可能ですが。巨大タタリガミは強敵なので、全員が揃って戦わなければ危険です」
     都市伝説たちは、都市の別々の場所で事件を起こしている為、各個撃破が可能だ。
     タタリガミ達の目的が『バベルの鎖』への攻撃であるのが理由なのか、或いは、ラジオウェーブの伝播が関係するのか、理由は不明だが、都市内では電波障害が発生しておらず、ケータイなどで連絡を取り合う事ができる。
    「さらにタタリガミを撃破すれば、他の6体の都市伝説も消滅します」
     タタリガミだけを撃破しても良いが、『民間活動』として、多くの一般人に灼滅者の雄姿を知らしめる為には、多くの都市伝説を撃破してから、タタリガミを撃破するのも良いかもしれない。
    「また、皆さんに相手をしてもらうタタリガミのタタリ・ナナは以前にも何度か交戦したことがある相手です。アリス・ドール(絶刀・d32721)さんの予想通り、彼女も動き出したようですね」
     巨大な少女の姿をした都市伝説六体と、タタリガミたるタタリ・ナナ。
     彼女達は人間の殺害は可能な限り避けて、街を破壊して人々に恐怖を演出しようとしている。ただし、その過程で一般人の犠牲がでる可能性も充分にある。
    「ラジオウェーブは、他のダークネス組織と明らかに違う性質をもっています。その違い何なのか? それが、わからなければ、ラジオウェーブを真の意味で止める事はできないのかもしれません。ただ、みなさんの探索と勝利により、ラジオウェーブを追い詰めているのも事実です。敵の切り札である、精鋭のタタリガミを撃破し、ラジオウェーブを追い込んでいきましょう」


    参加者
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    神凪・燐(伊邪那美・d06868)
    莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)
    魅咲・狭霧(高校生神薙使い・d23911)
    四刻・悠花(棒術師・d24781)
    アリス・ドール(絶刀・d32721)
    御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)
    アルルーナ・テンタクル(中学生七不思議使い・d33299)

    ■リプレイ


    「さて始めやしょうか」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は、破壊音や人の逃げてくる流れから都市伝説の位置を推定して、現場に急ぐ。
    「四人で動くのは、ブレイズゲートでの探索の感覚になるっすね」
    「ギィさん、突っ走り過ぎないでくださいね」
     長い付き合いの友人を心配しつつ、神凪・燐(伊邪那美・d06868)は絶えず方位磁石と携帯端末を併用して位置情報を把握するようにする。事前に地理情報も把握済みだ。
    「タタリガミも、随分雑な戦いしか出来んくなってんね……癒しを齎す都市伝説を生み出す彼らを失うことが私達灼滅者にどう影響するのか、わからんけど」
     莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)の眼には、現在進行形で破壊されつつある街が広がっている。人々は逃げ惑い、あちこちから悲鳴が聞こえてくる。ほどなくして、さして労せず騒ぎの元凶の一つが見えてくる。
    「……儚き光と願いを胸に……闇に裁きの鉄槌を……」
     常に無表情のアリス・ドール(絶刀・d32721)が、標的へと一気に距離を詰める。スカートをたなびかせ、小さく「……斬り裂く」と呟くと黒死斬を巨大な都市伝説に一閃した。
    『やっぱり、来ましたね……灼滅者の皆さん』
     少女の姿をした都市伝説。
     タタリ・ナナと同じ姿ながら、尋常ではない大きさに膨らんだ敵は灼滅者達をぼんやりと見下ろす。
    「へえ、今回の主犯はアリスさんと因縁のある相手っすか。こういうの、『宿縁邂逅』って言うんでやしたっけ? しかしどれもこれも同じ姿とは、よっぽど自己愛が強いのか、七人ミサキ系の都市伝説でも喰らったか……まあいいっす。手駒を全部潰してから、タタリ・ナナとかいうのも確実に灼滅するだけっすよ」
     ギィは巨大な相手の視線をものともせず。
     むしろ被害をこれ以上拡大させないように戦艦斬りでまず注意を引いて、レーヴァテインで炎を付けていく。
    (「ラブフェロモンで警察にも市民の避難を要請しましたし……被害が少しでも抑えられればいいのですが」)
     周りには、まだ逃げ遅れた人々もいる。
     闇の手から一般社会を護って来た一族という出自から、燐は強い怒りを感じていた。クルセイドスラッシュを斬り込み、次々と思いを込めたサイキックを叩き込む。
    (「今は恐怖を拭い去るために……タタリ・ナナとの戦いを、終わらせるために」)
     プリセンスモードを発動させている想々は市民にそっと微笑し、安心させるように戦いに臨む。相手が市民を脅かす敵であると同時に、自分達が皆の生活を守る存在であることを知ってもらわねばならない。
     それも今回の大事な任務だった。


    「莫原さんから連絡がありました。また一体、都市伝説を撃破したそうです」
     あらかじめ連絡先を交換していた魅咲・狭霧(高校生神薙使い・d23911)が、仲間達に告げる。今回、灼滅者達は二つの組に分かれており別々の方向から、都市伝説達に対応していっていた。
    「それは、私達も負けてられませんね」
    「ああ、我が剣の冴えを見せてやろう」
     アルルーナ・テンタクル(中学生七不思議使い・d33299)と御伽・百々(人造百鬼夜行・d33264)が、真っ向から巨大な都市伝説と対する。アルルーナが断罪転輪斬で正確な斬撃を浴びせ、百々がその影から飛び出すように雲耀剣を見舞う。
    『痛い……ですね』
     傷を負った都市伝説は、苦しそうに身じろぎ。
     その巨大な拳を、灼滅者達にふるわんとした。サイズ差からして、虫を叩きつけるような動作である。
    「卒業前にやり残したこと、ひとつありましたね」
     シールドバッシュで敵の気を引いていた四刻・悠花(棒術師・d24781)は、さらりと敵の拳をかわしのけ。動き回られると面倒なので、スターゲイザーをカウンターで入れて機動力を奪いにかかった。
    「本人と都市伝説を合わせて『七人のタタリ・ナナ』ですか。昔、似たような名前のアニメが放送されていた覚えがあるのですが」
     味方を庇える位置をキープし、狭霧は神霊剣を発動。敵の霊魂と霊的防護だけを直接破壊する。タタリガミにそっくりな外見の都市伝説の姿が、ぼんやりと薄くなった。
    「今がチャンスですね」
     好機を見出したアルルーナが、フォースブレイクで追撃する。
     敵を殴りつけると同時に魔力を流し込み、都市伝説を体内から爆破。巨体が爆発に呑み込まれて膝をつく。
    「速攻あるのみ」
     鎧武者姿がアルティメットモードもあって映える。
     百々のデスサイズが息つく間もなく振り降ろされた。「死」の力を宿した断罪の刃が、都市伝説の片足を斬りおとす。
    「これまでも人に恐怖を植え付けるために様々な都市伝説を生み出してきた彼女が出てきたのですから、わたしもそれに応えないとです」
     悠花が放つは、紅蓮のオーラを纏った打撃。
     巨大な都市伝説は生命力と魔力を根こそぎ奪いとられ……跡形もなく消滅する。二班に分かれた灼滅者達は、順調に敵を減らしていっていた。


    「みんながんばれ」
     メインで戦う仲間達をちらりと見やってから、菜々野菜野・菜々(七言のナナ・d37737)は割り込みヴォイスで一般人達に避難呼びかけていた。都市伝説たちや、タタリガミの事、その対応のため走り回っている灼滅者達のことなど説明しつつ誘導する。
    (「これも民活かな」)
     ナナが七人いて、ナナメートルで、七だらけの今回。
     ほんの少しだけ菜々はハイテンションだった。彼女と同じようにサポートするメンバーも懸命に動いている。ラブフェロモンを使った神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)は、メインで戦っている仲間達の要請に即時対応し、敵から遠い場所へと避難活動を行う。
    「あ、あれは何なんだ! 君達は一体!?」
    「仲間が巨人を鎮めに走っています。時間をください!」
     年少、年寄には力を貸し、真摯な対応心掛け、潔く頭下げ。
     質問には避難活動の妨げにならない範囲で出来る限り誠実に対応。返答できない時は名刺を渡し、後で必ず答えると約束する。
    「あれは人の心が噂話を通して実体化したもの。でも、皆さんが信じてくれるなら、その想いが俺達の力になります」
    「だ、だが、どこに行けば……!」
    「安心してください。僕らが絶対にこの土地を守ります。だから今は避難を、安全な場所へ案内します!」
     パニックになっている者に、三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)は接触テレパスを使用して直接語りかけることで落ち着かせる。
    「信じられなくてもいい、ただ今は僕たちを信じてください。武蔵坂学園の学生一同、これ以上の被害はなんとしてでも止めてみせます」
    「あ、ああ……分かった」
     サポートの面々の尽力によって、確実に避難と広報活動は成果をあげる。
    「こ、こんな超常現象が本当に現実だというのか?」
     突然の事態に、一般人の中にはこちらの言葉を信じない者も勿論いたが。
     煌燥・燈(ハローアンドグッバイ・d33378)が、怪力無双で邪魔な車を持ちあげてどかすと、大口を開けて皆が黙ってしまった。
    「ほら、嘘じゃないだろう。俺が道を開くから、そこから逃げてくれ」
     燈は逃走経路の確保とともに、怪我をした人々の手当を適宜行っていった。
     紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)も瓦礫や飛火を払いのけ、怪我した者に包帯を巻く。
    (「語り部が表舞台に出てくるとは、意外だね。果たして彼女の真意は如何なるものやら」)
     ふと、謡が見上げた先には遠目からも目立つ都市伝説が浮かんでいる。
     どうやら、ちょうど仲間達が攻撃を仕掛けているところのようだった。
    「随分と趣向が異なるけれど、やはり首魁の意向には逆らえぬのかな。最期の噺はより変り種で来ると思っていたがね。巨大化は使い古された噂と思うけれど」
     人々への恐怖は抗うに値する理由。
     それを知って去らぬなら、此度終演となろう。タタリ・ナナの都市伝説がまた一つ、仲間達の集中砲火を受けて沈んでいった。


    「……もう……ナナの遊び相手をするのも……人を傷つける噺も……ここで終わりだよ……」
     アリスは決然として、タタリ・ナナを睨む。
     都市伝説ではない、本物のタタリガミ。二手に分かれていた灼滅者達は、街の中心で合流を果たしていた。
    『六体の都市伝説は、全てやられてしまいましたか』
     タタリ・ナナはゆっくりと頭を振る。
     都市伝説と同じ少女の姿。しかし、そのプレッシャーは桁違いだ。
    「ちはっす。毎度おなじみ灼滅者っすよ。そのサイズじゃなければ口説きたかったんすけどねぇ。いや残念。申し訳ないっすけど、ひとつ灼滅されてくださいな」
    『元気が良い人がいますね』
     先陣をきったのはギィだ。
     戦艦斬りで戦いのゴングを鳴らす。
    「さあ、アリスさん、行きやしょう! 決着を付ける時っす!」
     その言葉を皮切りに。
     アリスのみならず全員が動く。
    「タタリ・ナナよ。長らく暗躍してきたようだが、貴様の物語もここで終いだ!」
     百々の雲耀剣が高らかに舞う。
     既に当初のクラッシャーからジャマーとしてポジションをチェンジしており、相手の武器を少しでも封じに掛かった。
    「タタリ・ナナとは面識はありませんが……七不思議使いとして放っておくわけにはいきませんね!」
     アルルーナはスターゲイザーで踏み込んだ。
     流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りが炸裂。タタリガミの巨体が、その衝撃によって揺れる。周囲の空気を巻き込んで大きく震えた。
    (「MAD六六六の一員からラジオウェーブの配下ですか? タタリ・ナナさん本人とは初めて会いますけど、最初で最後にしたいものです」)
     タタリガミの巨大な足が味方を踏み潰そうとするのを、狭霧は盾となってしっかりと庇う。そのままクルセイドスラッシュで突っ込んでお返しをした。間髪いれず、燐も同じ技で続く。
    「闇で暗躍する者に、容赦はしません」
    『灼滅者の皆さんは……相変わらずですね』
    「ナナ、貴方との鬼ごっこもこれでおしまい」
     想々は味方前衛から順にイエローサインを施していく。
     前衛が終われば中衛、次には後衛だ。彼女は今回、基本的に回復に専念することを己の役割をしていた。
    「闇を恐れる心は必要だと思います。でも、それを無理やり刷り込むのは間違ってます!」
    『……!』
     悠花はタタリガミの巨体にぎりぎりまで接近。
     思い切りシールドを展開して殴りつける。ここで悔いを残さないように、全力でタタリ・ナナの相手をするという意志が感じられるかのようなサイキックだった。
    「……ナナ……あなたのお噺は……アリスが全て……斬り裂く……」
    『決着のときですね、アリスさん』
     アリスは破壊された建物や外灯を足場にして飛び回る。
     タタリ・ナナは血塗れの本を開き、赤い雷を撒き散らすが、その僅かな隙間を縫うように進み。タタリガミの巨体を駆け上がり、渾身のサイキック斬りが深々と決まる。巨大タタリガミが攻めれば、灼滅者達も負けじと拮抗し、戦いはどこまでも激化する。


    「ここが、勝負所や!」
    「合わせようぞ」
     時折飛び出す関西弁とともに、アルルーナはグラインドファイアの炎をたぎらせる。そこに百々は呼吸をぴったりと合わせて、殲術執刀法で連携した。抜群のダブルアタックがバッドステータスを積み上げ、巨大タタリガミは行動を制限されていく。
    「その守りを崩します」
     燐の光刃放出が飛び出す。
     巨大になったことで強固になった防御を、撃ち出された光の刃が砕きにかかる。一撃一撃が呼び水になり、それはついには穴を穿つことに繋がる。
    『皆さん……さすがですね』
     タタリ・ナナは、血が目立つ本をまた開く。
     すると、今度は空中から大岩が生まれて雨霰のごく降ってきた。悠花は瞬時に皆の壁となって耐えた。
    (「誰も倒れてほしくないですから……守ります」)
     先に戦った都市伝説につぐ、タタリガミとの連戦。
     灼滅者達の疲労も大きく重なる。だが、決して闘志は失わない。
    「わたし達は負けません」
     狭霧がレッドストライクで雪崩れ込む。
     その体は何度も味方を庇ってきたために傷だらけだったが、その反面活力に満ちているかのようだった。
    「燃えてもらうっすよ」
     ギィの黒き炎が嵐を形作る。
     タタリガミが本のページを開き何度幻影を作り出しても、そのたびに炎を操り消し炭にしていった。最前線で叩いて叩いて叩きつくす。
    「回復は任せて」
    「……ありがとう……そそ」
     想々のラビリンスアーマーを受けて、アリスは攻撃に専念する。
     速さに緩急のフェイントを織り交ぜ、変幻自在に動き連携を重視したサイキック。斬撃に斬撃を重ねて、勝利への道を切り開く。
    『ふふ、お二人は仲が良いんですね……ちょっと羨ましいです』
     タタリ・ナナはすっと目を細める。
     お世辞とも本音ともつかぬ口調だった。血塗れの本のページがまためくれて、巨大な剣が出現。一人でに剣の舞を躍り、そこかしこを真っ二つにする。
    「派手にやってくれますね……でも」
     吹き荒ぶ剣風のなか、アルルーナは気づいていた。
     相手の動きが明らかに、鈍くなっていっていることを。ここにきて、今まで積み重ねてきた足枷が効いてきていた。対応して攻撃をフォースブレイクに切り替える。
    「こちらも手は緩めない」
     破壊され尽くした街並みを走り。
     慎重に百々が斬影刃を当てにいった。影の先端を鋭い刃に変え、敵を守りごと斬り裂きにかかった。
    「私はまだ多少の余裕があります。壁役は任せてください」
     ここに来て、燐が前に出る。
     タタリ・ナナの攻撃をことごとく止めては他の者をフリーにする。その間に悠花と狭霧はそれぞれ別方向から、十字砲火を加えた。
    「やれることをやるだけです」
    「覚悟してもらいます、最後の七人のタタリ・ナナ」
     悠花は魔力を込めた棒術で、相手を翻弄する。
     狭霧が今までの中で一番の力を振り絞って、特大のサイキックをぶつけた。
    『ああ……ああ……なんて綺麗な空。こんな色に似合う物語をもう少し作りたかった』
    「――そこ」
     タタリガミが宙を仰ぐ。
     勝機を感じ取った想々は、回復ではなく攻撃を選択。影縛りを目一杯のばし、敵の巨体を一気に絡め取った。
    「それじゃアリスさん、とどめ役はお任せするっすよ! しっかり本懐を果たしてくださいな!」
     ギィが叫び、ギルティクロスでお膳立てをする。
     仲間達に背を押されて、アリスはその身を矢として射ち放った。
    「……さようなら……タタリ・ナナ……大嫌いで……大好きだった子……」
    『さようなら……アリス・ドール……勇敢なる灼滅者……』
     最初からタタリ・ナナへの最後の一撃は自分の手でと心に決めていた。
     猫の如くしなやかに動きに、狼の如く鋭い一刀。全ては幾度もイメージしていた通り。過不足なく身体は反応する。巨大タタリガミは、タタリ・ナナは、何もかもを受け入れるようにアリスを包み込み。
     淡い光となって。
     印象深い微笑みを残しながら消滅した。


    「タタリ・ナナ……その名、覚えておこう」
     百々は蒐集しておいたタタリ・ナナの都市伝説を確認して頷く。
     都市伝説もタタリガミも消え。残ったのは破壊の爪痕が残った街に、灼滅者達が避難させたことで何とか難を逃れた人々。
    「さあ、綺麗に後片付けをしてから帰りましょう」
    「やることは、いっぱいや」
     狭霧や想々が早速動き出す。
     まずは市民に丁寧に事情説明。サポートメンバーにも手伝ってもらい、灼滅者とダークネス、学園の存在を詳細に書いた冊子配布。また、学園や個人の連絡先を伝え、何か不思議・不気味な事に遭遇した際連絡できるようにする。
     巨大タタリガミに襲われた街は、まだまだ眠れぬ夜を過ごしそうだった。

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年3月29日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 1
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