●決戦巨大七不思議~祟りの影が記す標
東京都稲城市、稲城駅前、時刻は深夜過ぎ。
駅前交差点の車通りは殆ど無く、その場は静けさに包まれている。
……と、そんな駅前交差点のど真ん中に現れる……一つの影。
「……全く、ソウルボードの拠点が陥落するだなんて……何たる事でしょう」
深い溜息と共に、肩を竦める影。
何処か芝居がかった、大きな動静だが……その目に宿る光は無い。
ただ、周りにその声を聞く人もおらず、まるで独り言を呟くが如く。
「本当、このままではいけません。このままでは、ラジオウェーブ様の御目的、果たすことが出来ません!」
「そんな事があって良いのでしょうか? いや、良い訳がありません。そんな事、私がさせません! そうです、ソウルボードの全ては、ラジオウェーブ様の為にあるのですから!」
そう言うと、その影は一気に肥大化……7m程に巨大化する。
そして、そこから幾つもの影が次々と分離。
……六つの影と、本体の影となると共に。
「さぁ、ラジオウェーブ様の為に、町に恐怖を与えるのです。人を捕らえ、じわりと喰うも良いでしょう……ほら、楽しみましょう」
くすりと笑う巨大な影に、六つの影は頷き、次々と町の中へ散り始めた。
「皆、集まってくれた様だな。それじゃ、説明を始めるぜ!」
と、神崎・ヤマトは、集まった灼滅者達へ。
「みんなの民間活動の評決の結果『ソウルボードを利用した民間活動を試みる』というのが決定し、その準備を始めたんだが……その前に『ラジオウェーブ配下のタタリガミ』による、大規模な襲撃事件が発生してしまったんだ」
「皆の活躍から、電波塔というソウルボード内の拠点を失ってしまったラジオウェーブは、その失地を回復する為に、切り札の一つをここで切った様なんだ」
「それは、最高ランクの都市伝説を吸収し、蒐集したタタリガミの精鋭をここで投入し、再びソウルボードに拠点を産み出そう……としている様なんだ」
「その方法だが……『多数の人口を抱える地方都市』を、巨大化した七体の都市伝説で襲撃し、住人全てへ恐怖を与え、都市伝説を強制的に認識させる、という物らしい」
「この様な強引で目立つ方法を採るとは、それだけラジオウェーブ側にも余裕が無くなり始めた……という事かもしれないな」
「という訳で、皆にはこの襲撃されている都市に向かい、タタリガミと都市伝説の撃破を頼みたい。さっきも言った通り、敵の目的は『多数の一般人に影響を与えることで、ソウルボードに拠点を作る』だから、この敵の作戦行動を監視する事により『ソウルボードを利用した民間活動』を行うヒントを得る事も出来るかもしれないしな」
と、そこまで言うとヤマトは。
「今回、相手にする事になるのは、本体であるタタリガミと、彼から分離した六体の都市伝説になる。どうやらタタリガミも、都市伝説達も、全部7m程の巨大化したサイズになっている様だ」
「彼らの目的は人間を恐怖させる事であり、殺す事では無い様だ。恐怖させる為には建物の破壊などは厭わないが、殺す事は目的としていない、という事の様だ」
「ちなみに巨大都市伝説の戦闘能力は、巨大化していると言えども通常の都市伝説と余り変わりは無い様で、3人位で対等の相手は出来るだろう」
「しかし、巨大化したタタリガミは比にならない程強力だ。これを倒すには、皆の力を合わせなければならないだろう」
「ちなみに、都市伝説達は、それぞれが別々の場所で事件を起こしている様なので、これらを個々に倒す事は難しい事では無いだろう」
と言いつつ、東京都は稲城市の地図をその場に広げる。
そこまで広大ではない地域に、巨大な都市伝説が暴れるとなると……市民の方達の逃げ場は殆ど無さそうである。
更にヤマトは。
「このタタリガミ達の目的は、『バベルの鎖』への攻撃とはハッキリとは解らない。ラジオウェーブの伝搬が関係しているのかもしれないしな」
「ただ、都市内においては、電波障害は発生していない為、携帯電話とかで連絡を取り合う事は出来るだろう」
「又、タタリガミを撃破すれば、他六体の都市伝説も消滅する様だ。当然、タタリガミだけを撃破する、という事も考えられるが、『民間活動』として、多くの一般人に灼滅者の勇姿を知らしめるという意味では、多くの都市伝説を撃破してからタタリガミを倒す、というのも考えられるだろう」
「ちなみにこのタタリガミは、何処か仰々しく芝居がかった動きをする様だ。元々は演劇者だったりするのかもしれん。そして彼によって産み出された都市伝説達は、ここに昔在った長沼城の武士の姿形をしている様で、刀や農具を武器として手にしている模様だ」
と、そこまで言うと、ヤマトは。
「今回の首謀者であるラジオウェーブ。他のダークネス組織とは明らかに違う性質を持っている様だ。その違いは何かは正直解らないが……これを知る事が出来た時こそ、ラジオウェーブを止める時なのかもしれない」
「何にせよ、皆の力に掛かっているんだ。宜しく頼むぜ!」
と、元気付ける様に微笑むのであった。
参加者 | |
---|---|
浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839) |
最上川・耕平(若き昇竜・d00987) |
神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262) |
備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663) |
三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115) |
神之遊・水海(うなぎパイ・d25147) |
九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536) |
驚堂院・どら子(コンビニ大学卒っ・d38620) |
●漆黒の祟りに
東京都稲城市の稲木駅前に、深夜に現れし一つの影。
ラジオウエーブ配下のタタリガミが動きし、大規模襲撃事件……巨大化した都市伝説にて、住民へと恐怖を与えようという者達。
……恐怖を与え、己が利にしようとする、彼らの動きは、不遜で……恐ろしい。
「都市伝説の総攻撃、か。なんだか、今迄組織立った動きがなかった敵なだけに、なんだか不思議な感じがするよね」
と備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)のぼやきに、最上川・耕平(若き昇竜・d00987)も。
「そうだね。それ程までに追い詰められた状態、と言えるのかもしれない……窮鼠猫を噛む、とかも言うしね」
「鼠、か……鼠じゃ、恐怖を与えられる事は難しいだろうけど、にしても恐怖を与えるだけ、ね。ソウルボードに恐怖を流したいのかな? なら、僕達が助けた人の感情は流れるのかな?」
軽く首を傾げる鎗輔に、三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)が。
「都市伝説を間近に視る事でソウルボードに与える影響。それがどんな風に起こるか解れば、僕たちの民間活動にも何か方針が見えてくるかもしれないね?」
と言うと、神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)が。
「そうだな。私達の活動を知ってもらう事、そして、ダークネスを倒す事をしている事を改めて理解して貰う必要はありそうだ。だからと言って、一般人を危険に遭わせる様な事をさせる訳にはいかないだろう」
何処か自信に溢れた表情で、真っ直ぐに言葉を紡ぐと、浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)も。
「そうだな。色々と考えたい事はあるが、今は後回しだ。例え化け物の力を宿していても、私達は人間であらねばならないんだ。だから人を守って行く。そこを見失ったら私達は本当の化け物と同類になって仕舞う」
「バケモノ、か……」
空を見上げながらの摩耶の一言……だが、その横から驚堂院・どら子(コンビニ大学卒っ・d38620)と神之遊・水海(うなぎパイ・d25147)が。
「何であろうと、都市伝説を倒して一般人を助けて元凶のタタリガミをしばき倒さないと!」
「そうだねっ、ソウルボードをラジオウェーブの好きにはさせないよ!」
と、その瞬間……遠くの方から、何かの破壊音が聞こえてくる。
視線を向けると、その大きな体躯の影を持った、落ち武者、農兵の如くに手には鋤や鍬。
それを見た九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536)が。
「良し、んじゃ二手に分かれて都市伝説を倒して行くとするか。杏子は俺達に同行してくれ。クリスと流希は、梗香達の方に同行し、避難を頼む」
と、それに頷く仲間達。
そして、灼滅者達はいざ、と街中へと散っていった。
●街に蔓延る影
そして、二手に分かれた灼滅者達は、市内を駆け抜ける。
深夜の刻故、余り多くの一般人は出歩いては居ない……が、暴れ大きな音を鳴らし、又、建物等を墓石ながら動く彼らに気づき、様子を見に外へと出てくる人達も居る。
そして……現れた人達へ、攻撃を嗾けるような動きをする都市伝説。
『キャァ……っ、え?』
と……死を覚悟した一般人……その間に割り込むようにして、灼滅者達が入り込む。
「ここは僕が抑えとくから、早く逃げて! 大丈夫だよ!」
と耕平が力強く声を掛けると、そんな一般人達の手を引いて杏子が。
「ここのみんなはあたしに任せてね!」
と声を上げて、一般人達を其処から少し離れた所へと避難させていく。
そして、ある程度肉眼で闘っている事が見える位置まで避難させる中、渚緒はプラチナチケットで警察関係者を装い、耕平はスタイリッシュモードで一般人を感動させていく。
そして、ある程度避難させた所で、対する都市伝説への攻撃を開始。
目前の敵は、ここ、稲城にほど近い長沼城の農民武士の姿形が巨大化しており、鋤をえいっ、と言う感じで振り落してくる。
勿論、真っ正面からその一撃を食らえば、かなりダメージを喰らうであろう事は間違い無い。
しかし、その攻撃を渚緒のビハインド、カルラが確りとカバーリングし、減った体力は耕平のウイングキャット、ピオニーがリングが光る、ですぐに回復。
そして、敵の攻撃をかいくぐった後に、耕平がドラゴンパワー、九十九が殲術執刀法による一撃、そして水海は。
「ええい、どっせぇい!!」
と重い拳の十字架戦闘術で殴り掛かり、しっかりとしたダメージを叩き上げると、最後に渚緒が鬼神変による攻撃。
……流石に、タタリガミ程に強く無い故、それら攻撃が一巡した程で、かなり都市伝説は疲弊する。
ただ、そんな都市伝説との闘いを一般市民に見せて、自分達灼滅者が、都市伝説という脅威と闘っているという事を明白にしながら、戦い続ける。
……そして、都市伝説一体を倒した所で、ハンズフリーイヤホンマイクを経由し、摩耶に。
「取りあえず、都市伝説一体討伐完了しました。そっちはどうですか?」
と言うと、イヤホンマイクから聞こえてきたのは、鎗輔達の班の戦闘の声。
「っ……! させん!」
と、鋭い摩耶の言葉と共に、目の前の鍬を持った都市伝説に対し、黒死斬の一閃を叩き込むと、同時に鎗輔がグラインドファイア。
又、梗香が援護射撃の至近距離の零距離格闘を叩きつけると、霊犬セディが斬魔刀の一閃。
どら子は最後尾から。
「ちょっと待ってチョンマゲー!」
等と口走りながら、都市伝説から受けた攻撃を的確にラビリンスアーマーで回復していく。
……こちらの強さもそこまでではなく、程なくこちらの都市伝説も倒れていく。
そして、都市伝説を倒しつつも、市民の方達へのアピールはしっかりと行い、民間活動の面も押出す。
勿論、都市伝説を倒した後には、次なる都市伝説を探しに、街中を駆けていく。
見つけた一般人はクリスと流希に避難させる様に指示し、安全を確保。
そして都市伝説を一体、また一体……と、確実に探して叩きつぶして行く灼滅者達。
……そして、約一時間程を駆けて、都市伝説を倒し、残るは……タタリガミ。
巨躯で暴れるタタリガミの居場所は、ある程度遠くからも知る事が出来るので……避難はさせつつも、タタリガミとの戦闘を避けて、都市伝説を灼滅していく。
そして、唯一残ったタタリガミへ、二班相互に連絡を取り合い……一気に包囲網を築いていく。
逃げ道を断った上で、戦闘を仕掛ける……が、タタリガミは。
『ほぅ……中々効率的に仕掛けて来られるのですねぇ。唯単純に力尽くで闘おう、という事ではないのですかぁ……驚き、驚きですねぇ』
と、余裕綽々と言った雰囲気で、灼滅者にクスリと笑う。
が、灼滅者達はその笑みを受ける事無く。
「皆への恐怖、ここで断ち切らせて貰うよ」
と耕平の宣言と共に、抗雷撃を撃ち放つ。
同時に九十九もDCPキャノンを放ち、鎗輔は龍骨斬り。
前衛クラッシャー陣は最初から、全力攻撃でタタリガミを削ろうとするが……タタリガミの身のこなしは素早く、ひょい、ひょいとその攻撃を回避。
「流石素早くて当たりづらいか……ならば」
と、後衛、スナイパーポジションから狙い澄ました援護射撃で足止め効果を確りと付与すると、どら子は水海へ癒しの矢で狙アップを付与。
「感謝だよ!」
と嬉しげな声を上げつつ、狙アップ効果と共にシールドバッシュで敵を惹きつける。
そして、ある程度の足止め効果を付与為たところで、摩耶は黒死斬で斬りかかり、カルラは霊障波、鎗輔の霊犬は六文銭射撃で攻撃。
……少しずつ、バッドステータスが積み重なり、多少なりとも当たり易くなる。
そして、次の刻。
どら子が耕平に癒しの矢の狙アップを付与すると、耕平は至近距離から龍骨斬りで叩きつける。
更に、九十九の斬影刃に、鎗輔のグラインドファイア……真っ正面からの命中はしなかったものの、確実なダメージを付与。
勿論、スナイパーの梗香はバスタービームでプレッシャーを付与為たりし、敵を足止めして動きを制限し、攻撃を更に当たりやすく。
そして当たりやすくなった敵へ、残る仲間達で猛攻。
……そしてタタリガミをバッドステータスを積み重ねつつ、体力を少しずつ削り続けて……十分程。
『はぁ、はぁ……ふ、フフ……中々、ですねぇ……』
明らかに疲弊してきているタタリガミに、どら子はずびしっ、と指を差しながら。
「タタリガミ、貴様らの主、ソウルボードを支配しようとしている様だな。何を企んでいるんだ? バベルの鎖を解くと、何が起きると言うんですか!」
と問いかけると、タタリガミは。
『ほほぅ……バベルの鎖の効果が消えたら何が起こるか、ですかぁ? ……ふふふ、可能性は幾つかあるでしょうねぇ。でも、どうなったとしても、今よりはマシな事になるでしょうねぇ」
かなりのダメージを受け、キツイ状況にもかかわらず……タタリガミは余裕を崩す事は無い。
更に摩耶も。
「バベルの鎖の効果が切れる、と……貴方はバベルの鎖の切断方法を知って居るのですか?」
と問うと。
「無力な人間の知ですよ。それこそ、バベルの鎖を引きちぎる力なのです。知は力ですからね!」
と、笑いながら、今迄よりも素早く、多段のレイピア攻撃を仕掛けてくるタタリガミ。
その攻撃をカバーリングするセディは……その攻撃に、臥す。
……しかし、それで屈する訳には行かない。
追い詰めているのは、確か……だからこそ。
「七不思議への一角、ここに砕け散ると良い!」
とタタリガミの至近距離に接近すると、渾身の龍骨斬りを横薙ぎに一閃。
その一撃に、タタリガミが声の無い、壮絶な表情。
そして、水海が。
「悪巧みはここまでなの! 成敗してやるわ!!」
と、十字架戦闘術にて、タタリガミの懐に拳を突き立て、貫き……タタリガミの影は、蒸発する様に消え失せていった。
●気味悪き刻
「……ふぅ」
呼吸を整え、武器を納める耕平。
無事に勝利を収めたことへの安堵に加え、多くの都市伝説と戦った事も有り、疲労感が多い。
ただ……そんな灼滅者達の勝利を遠目ながらも見ていた一般市民達からは……パチパチと拍手の賛辞が送られる。
「みんな、灼滅者のみんな、格好良かったって言ってるよ……みんな、お疲れ様」
とインカム経由でクリスからも賛辞が送られると、にっ、と笑った水海は、市民達の所に掛けていく。
そして。
「みんな、無事でよかった! みんな、私達の事は、人に伝わりにくいけれど、出来れば今日の出来事、忘れないで欲しいな!」
とメッセージを残しつつ、しゅたっ、と其の場から身を隠す。
それも、どこかのヒーローみたいだ、等と言う声が上がるが。
「ええ、ヒーローみたいですねぇ……でも、これは現実なんですよねえ……でも、怖がらないで下さい……私達は、何年もあんなのを相手にしているプロですからねぇ……」
と流希の言葉。
……そんな言葉に驚く一般人達だが、逆に心強い、との声も。
そして、市民の方々とも別れての帰路。
その帰り道すがら。
「灼滅者に待っているいる未来は闇堕ちと滅びかもしれない。だが、それでも……私は最後まで人間であり続けたい。その為に、抗い続ける」
ぐっと拳を握りしめる梗香、あのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年3月29日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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