決戦巨大七不思議~出現! 驚異の七大サメ!

    作者:西灰三


    「クックック、遂に俺様の都市伝説が世界を恐怖のドン底に陥れる時が来たのだ! その時こそ我らが悲願の叶う時! 暴れよ! 我が下僕達!」
     何かビルの上で偉そうなサメ頭(一応タタリガミです)が誰も聞いていないのに高らかに台詞語ってる。ぶっちゃけ世の中に溢れすぎててギャグになりつつあるけれども。だが実際にはギャグで終わらないような事態が起ころうとしていた。
    「う、うおおおお!」
     タタリガミはその体までサメと化し、そして巨大化。その体から6体のいろいろなサメが現れて街に放たれる。そして各々の性質を活かしつつ、人々に恐怖を与えようと動き始める。


    「民間活動の投票の結果はもうみんな見たかな? 『ソウルボードを利用した民間活動を試みる』事に決まったんだけど、ちょっとその前にやらなきゃいけない事が出てきたんだ」
     有明・クロエ(高校生エクスブレイン・dn0027)の言葉に水藤・光也(闇払い・dn0098)が問う。
    「やらなければいけない事……都市伝説やタタリガミの関係でしょうか」
    「うん、ちょっと前にソウルボードにあった電波塔を破壊したよね? でタタリガミのリーダーのラジオウェーブはそれをやり直すために切り札を切ってきたみたい」
    「切り札?」
    「簡単に言っちゃうと精鋭だね。もう一回電波塔を立てるためにその戦力で都市に襲撃して恐怖を与えて都市伝説を強制的に認識させるつもり、みたい」
    「随分と荒っぽいやり方のようですが」
    「もう後が無いのかも知れないね。それはともかく皆にはそのタタリガミと都市伝説の撃破を頼みたいんだ」
     うまくやれば今後の民間活動の布石を打てたり、必要な情報も得られるかも知れない。なにせ敵の目的が『多数の一般人に影響を与える事で、ソウルボードに拠点を作る』ことであるから。
    「皆に行ってほしい場所は埼玉県深谷市。……ごめん、ネギの産地として有名だね。あと工場とかも多いみたい。ここの人達を怖がらせるために暴れるみたい」
     殺すことが目的ではないとは言え建造物の破壊や、見せしめの殺害なども起こりうる。パニックで被害が増える事もあるだろう。そしてそんな事を起こそうとしている都市伝説は。
    「サメだよ。タタリガミ本体と、呼び出された都市伝説が6体」
     うん、知ってた。
    「ゴールデンシャーク、フルメタルシャーク、腐りかけのシャーク、赤くて角の生えたシャーク、ファントムシャーク、お菓子なシャーク。これが都市伝説で、タタリガミ本体はワイヤーフレームシャークだよ」
     このタタリガミ頭おかしい。
    「都市伝説のサメは大きいだけで……えっと7mくらいかな。それ以外は普通の都市伝説と強さは変わらないよ。だから灼滅者3人で充分戦えるよ。それそれ別の所で事件を起こしてるから各個撃破もしやすいんじゃないかな。タタリガミの方は強力だから全員で戦わないと辛いと思うよ。タタリガミを倒せば都市伝説は全部消滅するよ」
     そうそうとクロエは情報を付け足す。
    「今回は『バベルの鎖』への攻撃のせいかは分からないけど携帯電話が使えるよ。連絡は取りやすいんじゃないかな。あと沢山の人に灼滅者の事を知ってもらう『民間活動』のいい機会かも知れないね」
     クロエは資料をしまって灼滅者達を見る。
    「……ラジオウェーブって他のダークネス組織と違ってなんか変なんだ。何がそう思わせているのか分からないと本当の意味で止めることが出来ないのかも知れない。この戦いでそういった事が得られるかも知れないね。でも、まずはきちんとこの事件を解決してきてね。それじゃ行ってらっしゃい!」


    参加者
    泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)
    リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)
    咬山・千尋(夜を征く者・d07814)
    東雲・悠(龍魂天志・d10024)
    セレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)
    灰慈・バール(慈雨と嵐の物語・d26901)
    ファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)
    陽乃下・鳳花(流れ者・d33801)

    ■リプレイ

    ●シャーク・ウォッチング
    「ちっ、もうパニックになり始めているな」
     道を走りながら咬山・千尋(夜を征く者・d07814)が道行く人々のざわめきを感じ取りながら呟いた。
    「でもまだ混乱は広がりきっていないみたい。まだ見ていない人も多いのかも」
     リリアナ・エイジスタ(オーロラカーテン・d07305)が共に駆けながら返す。騒ぎの中心に進む最中、箒にまたがったセレス・ホークウィンド(白楽天・d25000)が空中から降りてくる。
    「今進んでいる道の先で騒ぎがあるようだ」
    「ふむ、今なら道路も空いてるな。タクシー!」
     東雲・悠(龍魂天志・d10024)が手を上げてタクシーを呼び、現場へと急ぐ。

     まるで返り血を浴びたような赤い肌の鮫が公園の空中を悠々と泳いでいる。周りの人間はあまりに現実感が無いのかスマートフォンなどを向けてその様子を記録している。サメの方もそれをわかっているのだろう。人の注目が集まってから暴れる気だ。そして程なくして突然サメが地面を大きく叩きつける。
    「きゃあああ!」
    「うわあああ!」
     地面を抉るような一撃、発生した風圧は周りの人々を打ち、ここに来て周りに自身が危険な存在へと知らしめる。そして今の衝撃で身がすくんで動けなくなった者から犠牲者を探す。
    「ひっ……」
     サメの目にかかったのはその場にへたりこんだ母子、母親は子供を守ろうとしているのかギュッと抱きしめている。その様子を見てサメはニヤリと笑ったように口を歪め、そして大きく口を開く。
    「そこまでにしときな」
     その大口の中に紅い光の刃が叩き込まれる。母子がはっと振り返ればマントを翻した千尋がナイフを投げた後のような姿で立っていた。
    「二人はこっちへ。警察の人に安全なところへ案内してもらって」
     悠がへたりこんだ二人の手を引いて戦場から引き剥がす。
    「あ、ありがとうございます。あの、あなた方は……」
    「俺はハルカ。あのサメをなんとかしにきたんだ」
     それだけ伝えると彼は振り返り、既に戦い初めているリリアナとセレスに加勢する。
    「う、あんま相手したくないんだけどっ」
    「下衆であるのは同意しよう。早く倒してしまおう」
     そして灼滅者達の長い戦いは始まった。

    ●フルメタルシャーク
     七瀬・麗治(悪魔騎士・d19825)はバイクで街を走る。同時に道の状況も確認しながら本隊のサポートを行う。
    「あれ、か」
     金属製の体を光らせる巨体を見つけて即座に本隊に連絡する。同時に効率の良いルートも伝えて早く来れるように立ち振る舞う。
    「面倒なことは任せるか」
     麗治はそう言うとサメの近くにいる一般人の避難誘導へと向かう。

    「はた迷惑な……いやサメパニックとかどこぞのB級映画じゃないんだからさ」
     陽乃下・鳳花(流れ者・d33801)はうんざりするように呟いた。
    「……いやまあ暴風を伴ったりしてないだけマシ……?」
     とにかく最初から被害を増やそうとしているのではなく、どちらかと言えば演劇的な振る舞いをしているのでマシな方と言えばそうなのかもしれない。おそらくそうでなければ被害は大きくなっていただろう。
    「よーし、サメ殴っちゃうぞー!」
     ファム・フィーノ(太陽の爪・d26999)がぶんぶんとトーテムポールを振り回す。やはり本場の血が騒ぐらしい。本場ってアメリカなんだ。
    「え、ドイツじゃないの」
     ゲルマンシャークのぬいぐるみを懐に入れていた泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)が問う。正直ご当地のことはよく分かりません。
    「おっと鮫がいた! 情報通りだな」
     灰慈・バール(慈雨と嵐の物語・d26901)が曲がり角の先を見て叫んだ。B班の灼滅者達は一斉に加速し、接敵する。既に辺りには何かが爆発したような跡があるが、大分人は減っている。避難活動が功を奏しているのだろう。
    「さてと、何をしてくるかな?」
    「どうせミサイルとかでしょ」
    「にゃ」
     鳳花が猫と共に星流にうんざりするように返すと、ほら撃ってきた。
    「おお当たったな」
    「嬉しくない」
    「打ちカエすよー!」
     バールは大剣を片手に狩りを始め、ファムは来た弾を弾き返す。彼女は振り返ると残っている一般人達に声をかける。
    「ココは任せて! セイギのミカタ、灼滅者のアタシ達に!」

    ●ロット・シャーク
     色付きの毒ガスを撒き散らし、道行く人々を逃げ惑わせる腐敗したサメ。その混乱を収めつつ避難誘導をしているのは久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)。既にサメ相手には本隊が向かっている、すれ違いざまに千尋から事後を頼まれた彼女は避難先で一般人の心を感じ取る。受け取ったのは怯えと恐れ、それはタタリガミが望んでいる感情そのものである。
     ――大丈夫。
     先程まで率先してサメと彼らとの間に入って動いていた彼女だ、その言葉を耳にした近くの子供が彼女を見遣る。開かれた杏子の口から発せられるのは歌声、ありふれて歌い尽くされて、それでも廃れない応援歌。
     微笑みと共に彼女は周りにも歌うように促す。
    「あたし達は武蔵坂学園、闇と戦う者達。みんなの、恐怖に負けない心が、あたし達の力になる。だから、この歌を知ってたら、一緒に歌って欲しい。戦うみんなに届くように」
     と。

    「歌?」
     セレスが槍をサメの体から引き抜いて呟いた。傷口から吹き出す毒ガスを身を翻して避けて間合いを取り直す。
    「ああ、これは応援歌だな」
     同じくサメの背中から槍を引き抜いて飛び降りてきた悠が返す。なるほどこれは負けられない。先程まで嫌悪の色を薄く浮かべていたリリアナの顔が引き締まる。
    「応援してくれているみんなを守ってみせる!さあ、ボクが相手だよっ」
     アルティメットモードを発動してリリアナは盾を力強く叩きつける。そんな気合の入った仲間達と共に剣を振るいながら千尋は笑みを浮かべた。

    ●ファントムシャーク
    「今起きている事件について、心配する必要はありません。僕らが絶対にこの土地を守ります」
     周りに亡霊らしき存在を吐き出していた幽霊のようなサメから一般人を引き離していた三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)は後をカルラに任せて、逃れた彼らを落ち着かせる。何せ彼らにとっては何が起こったのか未だ判然としないのだ。せいぜいが自らの命を脅かせる怪物が現れた、と言う程度だ。
    「だから今は、僕たちを信じてください。武蔵坂学園の学生一同、これ以上の被害はなんとしてでも止めてみせます」
     それは渚緒だけならず、この戦いに参加している灼滅者達の決意表明であった。

    「これで僕たちのことは伝わったかな」
     学生証のレプリカをしまって星流は亡霊兵を吐き出し続ける幽霊状のサメに向き直す。
    「今度はオカルト系かあ……」
    「アタシ達がいる、もうダイジョブ! とうっ!」
     鳳花は目を細めながらも影を操って敵の体を斬りつける。サイキックは問題なく通じるようだ。ファムも一般人に呼びかけてから、トーテムポールで棒高跳びの要領で飛び上がり、高空から蹴りつける。
    「こいつからはフカヒレは取れそうにないな……」
     相手の弱点を的確に切りつけながらバールは呟いた。少なくとも彼らに疲労の色は見えない。余裕のある戦いぶりをしていれば一般人達も恐れることは減ってくるだろう。

    ●ゴールデンシャーク
    「また目立ちますね……」
     水藤・光也(闇払い・dn0098)は警察と協力しながら一般人の避難誘導にあたっていた。事前の連絡の効果があったのか、最初は訝しげだった警察関係者もサメの姿を見て迅速に動いている。また他の地点での情報も彼らから聞いて、本隊の2班にそれぞれ連絡を行う。
     メディアにも連絡が行っているのか大分避難は進んでいるようだ。
    「あと少し、と言ったところでしょうか」
     少しでも場を持たせようと、サメの近くで避難誘導を再開する。

    「大きいし、光るし……相手も必死だね」
     何故か殴ると金属音のする金色のサメを相手取ってリリアナは呟いた。こちらは先程までの2体と違って嫌悪する点が無いので戦いやすそうだ。
    「現実から噂……伝説が生まれるかその逆か、あるいは両方か。……都市伝説を生み出す力が人間等の生物に向かった結果がダークネスなのかもしれないな」
     セレスは戦いの中で相手の存在について考える。ただ、そうはいっても百戦錬磨の灼滅者である、太刀筋は鈍っていない。
    「鮫の都市伝説か。ある意味、海への恐怖の象徴みたいなもんだよね。有名な映画にもなったし。……あんまりそんな事考えてなさそうだけど」
     千尋の紅い光刃が鮫肌を貫く。硬さ的には普通の都市伝説とさして変わりがない。それは今までの戦いで分かっていたことだが。
    「サメと陸上でやり合うとは思わなかったな。まな板の鯉ならぬまな板のサメだってことを教えてやるぜ!」
     悠は大きく飛び上がりそのまま槍をサメの鼻先に突き立てる。即座に槍に炎を纏わせて尻尾の方へ駆ければサメの体は真っ二つになって燃え尽きる。
    「よっしゃ! サメの3枚卸、一丁あがり、ってな!」
     悠はさっと飛び降りるとくるりと槍を回した。

    ●お菓子なシャーク
     少女が飴玉の無機質な目を向けられている。傍目にはファンシーであろうそれが悪意と殺意を持って襲ってくるのは、かなりの恐怖であろう。その顎も牙もたやすく自販機を噛み砕けるものだ、少女の体など造作もないだろう。それが彼女を捉えようとした時、一人の影が立ちはだかる。
    「早く逃げな! あっちに警察がいる!」
     少女は頭だけ下げると慌ててその場から逃げ出してその場を離れる。それと同時に今まで動けていなかった周りの人間も離れ始める。そのうちの一人が去る前に何者かを問う。
    「どこにでもいる、正義のヒーローさ!」
     淳・周(赤き暴風・d05550)はサメと向き合ったままにそう答えた。

     本隊が来ると同時に、彼女はサメの相手を彼らに任せて、避難誘導へと回る。場を引き継いだ面々は相手の姿を見てそれぞれに思いを巡らせた。
    「深く考えたら負けな気がしてきた……」
    「気持ちは分かる」
     鳳花の言葉にバールはうなずいた。端的に言えばまともな敵の姿ではない。それでも一般人を殺めるには充分過ぎる力を持っているのが始末に負えない。手早く片付けようと二人は武器を手に敵に迫る。
    「いっくぞー!」
    「あ、僕も!」
     ファムと星流の二人はなんで綿菓子の身体に噛み付いているんですかねえ。そしてサメは予想外だったのか二人を振り払おうとしている、ダメージは無さそうだが嫌なものは嫌らしい。ある意味踊り食いだからか。
    「よし、二人にかまけて隙だらけだ。今のうちに片付けるぞ!」
    「こんな戦い方でいいのかな……」
     疑問符が絶えない鳳花だが、バールの言う通り戦うべきだろう。なんとなく釈然とした気持ちを残したままお菓子なシャークを撃破する彼女であった。

    ●VSタタリガミ
    「……おかしい。悲鳴が全く聞こえんぞ」
     ワイヤーフレームのサメの姿を持つタタリガミがいぶかしげに体をうねらせる。そもそも周りの一般人もやけに少ない。
    「その答えは簡単だ。私達がいるからだ」
    「何奴!?」
     タタリガミの独り言に答えたのはセレス。彼らと共にA班がタタリガミの前へと現れる。
    「タタリガミの思い通りにさせるかっつーの!」
     武器を構えて悠がタタリガミを睨めつける。
    「ソウルボードにも入ってくんな!」
     シャドウハンターである彼にとってソウルボードは特別な価値のあるところなのだろう。加えてこの世界の成り立ちに大きく関わっているのは分かっている。簡単に踏み込まれる訳にはいかない。
    「灼滅者! おのれ、我らが野望を……!」
    「こんなことするほど必死なのは分かってるよ。かかってきなよ、バッチリ撃破してあげるから」
     リリアナが挑発するように指を動かす。そんな彼らがタタリガミと対峙していると反対側からB班も到着する。ほぼ同時のタイミングで現れたのは事前の情報のやり取りをきちんとしていたお陰だろう。
    「クッ、まだいるのか!」
    「これがタタリガミか」
     バールは相手の姿を見るとおもむろに一本指を立てて口を開く。
    「始める前に一つだけ」
    「なんだ」
    「マシな鮫を連れて来いよ!」
    「何故だ! 私が集めた最高のコレクションだぞ!?」
    「よくもまあこんな色んなサメを集めておいて……そーいう趣味なんだ……」
     鳳花は道中で戦って来た変なサメを思い出しつつため息を付いた。
    「あ、でもお菓子のは結構甘かったよ」
    「うんうん、オイシかった!」
    「どうだ! ちゃんと評価されてるだろう!」
    「食われてんじゃねえか!」
    「……ワイヤーフレームはちょっと格好いい、悔しいけど」
     タタリガミに対してお菓子なシャークの感想を述べる星流とファム、そして突っ込むバール。とりあえず千尋も意見だけは言うと剣を握る。
    「でも、手加減はしない」
    「フン、互いに相容れないのは既に知っている。行くぞ!」
     タタリガミの頭上に浮かんでいるCDが高速回転を始める。同時にその体から尖った刃が張り出し、灼滅者達を切りつけてくる。
    「くぅ、この程度でっ!」
     リリアナが迫ってくる格子で構成された刃を掴むように受け止める。そしてそのまま上に弾きあげて相手の体勢を崩す。
    「そこっ!」
     大きく上にそらされた敵の胴体に星流のマジックミサイルが突き刺さる。
    「手早く片付けるぞ。この程度の相手ならこれまでいくらでも戦ってきた」
     妖冷弾を放つセレスの声は至って冷静だ。この場にいる灼滅者はそれぞれが修羅場を潜ってきた者達だ。ただの強敵と言うだけで遅れを取るような者たちではない。
    「この我を舐めおって!」
    「その程度の相手なのさ」
     千尋が妖気を纏った剣でタタリガミをなで斬りにする。タタリガミは痛みに震えながらも反撃の体当たりを仕掛けるが、これは鳳花が受け止める。
    「させないよ」
     即座に猫が彼女を中心にリングを光らせて回復を行う。傷を完全に癒やすには足りないが、そこはメディックに移動したファムが癒やしの矢で補う。その間に体当たりの勢いを殺されたタタリガミに一斉に攻撃が集中する。
    「よっと」
     軽い調子で突き出された悠の矛先が深々と敵の体を貫く。見た目には空間にしか見えないが、確かに何かがある感触が柄を持つ腕に伝わってくる。
    「くそっ! こんな容易く我が……!」
    「俺達は人々の希望だ! 負けるかよ!!」
     超弩級の斬撃をバールはタタリガミに叩き込む。ザックリと突き刺さった切っ先を翻し、そのまま二撃目を放つ。
    「貴様の物語はここで終いだ!!」
     ぐらりと揺れる敵の体、最後に決着を付けるのはリリアナの空中殺法だ。
    「全力120%受けてみなよっ」
     タタリガミの頭上に飛び上がり、上に浮いていたCDごと頭を蹴り砕いた。

     タタリガミが消滅した後、灼滅者達は周りの状況を確認する。何せ今まで行ったことのないバベルの鎖の無い中での大規模な戦いだ。
    (「バベルの鎖……か」)
     そんな中、鳳花は少しばかり思いにふける。
    (「仮にバベルの鎖が文字通り私たち知的生命体とダークネスを繋ぐ鎖だとすれば、それを破壊することは……どうなんだろう?」)
    「――うん、分からないや!」
     答えが出ない事を受け入れると彼女はそう言って思考を止める。ふと、それを耳にしたバールが彼女に言う。
    「ここからは誰も知らない話になるんだろう、多分な」
     結末に何が待ち受けているのか、それを求める為に灼滅者達の戦いは続く。

    作者:西灰三 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年3月29日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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