●巨大タタリガミ灼滅、その後……。
「よう、皆! さっすがだな!
都市部に襲撃してきた巨大七不思議は一掃!
精鋭タタリガミたちも灼滅して、ラジオウェーブの電波塔再建も阻止できた!
この勝利で、ソウルボードの弱体化計画を阻止しつつ、灼滅者の存在を民間に知らせることも出来たはずだ。
ラジオウェーブ勢力の奴ら、ぜったい焦ってる頃だろうぜ!」
こちら武蔵坂学園空き教室。
大爆寺・ニトロ(大学生エクスブレイン・dn0028)は教卓にあぐらをかいて、歯を見せて笑っていた。
「さて、と。
そんな俺たちの快進撃はソウルボードにデカい影響を与えてるらしい。
具体的に言うとだな、小さいほころびが生じて、そこから力が漏れ出ようとしてるらしいんだ」
これは御鏡七ノ香たち数名の灼滅者の調査によって判明したことだ。
このほころびには巨大な『鎖』のようなものが現われ、力の流出を阻もうとしているらしいのだ。
「このまま何も無ければ、鎖の作用でほころびは修復されるだろう。
問題は『修復を認めるか』『修復を認めないか』だ」
要するにこういうことだ。
鎖を放置すればソウルボードが修復され、力の流出は止まるだろう。
流出した力はダークネスの強化や一般闇堕ちの誘発をまねくこと考えられているので、その元を絶つという意味で悪くない判断だ。
しかしその一方、ソウルボードのほころびは灼滅者の存在を周知させたりソウルボードを利用したりといった『民間活動』の成果ともとることができる。
「バベルの鎖は俺たちを社会から遠ざける壁みたいなもんだった。
それを壊してきたのも俺たちだし、守ってきたのも俺たちだと言っていい。
その上で、『どちらか』を選ぶタイミングがやってきたんだ。
勿論、どちらを選んでも俺は皆についていくぜ」
●都市伝説たちの妨害
と、話はここでは終わらない。
「どうやらソウルボードには邪魔者も入り込んでるらしいぜ。
負けを取り返そうとしてる都市伝説連中がソウルボードの力をかすめ取ろうとしていやがる。
鎖を放置するにしろ破壊するにしろ、まずはこいつをぶっ飛ばさねえとな!」
戦場はソウルボード内だ。
都市伝説は『鎖』の活動を邪魔すべく活動を起こしているので、これを撃破することになるだろう。
「このチームが担当することになる都市伝説は……うん……前に見たなコイツ」
スケッチを黒板に貼り付ける。
それはなんというか。
ニノミヤ像だった。
しかも10体いた。
赤青黄、緑ピンクときて更に五色。なにいろだろう。
「こいつらをぶっ飛ばすのが優先してくれ。まあこいつらだって、灼滅者が突っ込んでくれば戦闘に集中せざるを得ない筈だ。鎖のことは強制的に後回しになるってハナシさ。
……ああ、そうだ。言い忘れたんだが」
ニトロがずばんと黒板にもう一枚のスケッチを貼り付けた。
「都市伝説戦の後で対応する『鎖』な、破壊しようとすると攻撃してくるぞ」
参加者 | |
---|---|
アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684) |
彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131) |
風真・和弥(仇討刀・d03497) |
城・漣香(焔心リプルス・d03598) |
明鏡・止水(大学生シャドウハンター・d07017) |
白金・ジュン(魔法少女少年・d11361) |
エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318) |
御鏡・七ノ香(小学生エクソシスト・d38404) |
●ほころびくさりにのみやぞう
ソウルボード。夢、精神、深層のどこか。
現実のつづきであって、現実でないもの。
その正体を、実は彼らも知らぬもの。
そんな場所に、城・漣香(焔心リプルス・d03598)たちは降り立った。
勢いでずれそうになった赤縁眼鏡を中指で押さえると、前髪をさっとかき上げて背筋を伸ばす。
「バベルに綻びなんて起きるんだな。人を縛りつけてんのか、守ってんのか……」
「サイキックエナジーの塊って事なんだろうな」
耳から下げたかざりを揺らし、空を見上げる明鏡・止水(大学生シャドウハンター・d07017)。
いや、この場所に空など無い。すべてがすべてソウルボードだ。
「今更だが」
バンダナを締め直した風真・和弥(仇討刀・d03497)。こんこんと踵をついて、いつでも刀を抜けるように手を添える。
「ソウルボードやバベルの鎖ってのは一体何なんだろうな。自然発生したのか、それとも誰かが今の形にしたのか……」
「何分初めての事態ですから慎重に行きたい所ですけど」
既に変身を終えていた白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)が、ロッドをどこからともなく取り出してくるくると回し始める。
「この好機を逃さずに良い選択をしたいですね」
10色カラーのニノキン像が謎のジグザグ走行で鎖の元へ向かっている様がご想像いただけようか。
「どっかで見たことがあるような連中っすね」
アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)はカードをしゃっとやって瞬間変身。武具を纏うと、エネルギージェットで走り出す。
追って走り出す彩瑠・さくらえ(幾望桜・d02131)とエリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)。
「ぼやけてもはやニノミヤなのかどうかもよく分からないし、それでいいのかしら都市伝説」
「これがジェネレーションギャップかぁ」
語られなければ伝説たりえない。そんな滅び行くものの悲しさを感じたり感じなかったりしつつ、二人もカードを宙に投げた。
竪琴をなでたような音と共に青いドレスと槍を装備するエリノア。
小鼓を叩くような音と共に赤い和装に身を包むさくらえ。
彼らの接近に気づいたニノミヤスーパーバリエーションは一斉に方向転換。
本を両手で構えたまま、カッと顔を上げた。軽く一人だけタブレットPCを持っていたことに気づいて、『ああ歩きスマホのイメージが出ちゃったんだな』と軽く納得する一同である。さておき……。
「ニノミヤさん……いつかちゃんと皆に知ってもらいましょうね」
御鏡・七ノ香(小学生エクソシスト・d38404)もカードをぱらりと返して武装を展開。影の中から飛び出したようなビハインド幸四郎と共に、ニノミヤたちとの戦闘を開始した。
●いまはなきものたち
「慄け咎人(ニノミヤ)、今宵はお前が串刺しよ!」
槍に激しい冷気を纏わせ、エリノアはニノミヤの集団めがけて投擲した。
冷気の爆発がニノミヤを包む。否、包んで引き寄せ、激しく爆ぜた。
吹き飛ぶニノミヤたちの中で、真っ赤なニノミヤが十傑走りで突撃をしかけてくる。
「なんなのかしら。緊迫した状況なのにこう……」
「ね。なんだろうね」
手を翳すさくらえ。舞い散る花弁の幻影が腕にまとわりつきまとわりつき、大きく膨らんではじけたなら、異形の腕が現われる。
突っ込んできたニノミヤを、さくらえはその腕で押し止めた。
「雑な扱いに同情はすれど……キミら邪魔だから、ちゃちゃっとやられておくれね?」
爆発の中からアクロバットジャンプで飛び出してくる無数のニノミヤ。
花弁の幻影があまたの弾丸となり、反撃のために放たれた。
本でガードしながら飛び込んでくるニノミヤを、ビハインド泰流が霊力壁で押し止める。
「なんかもはやニノミヤという個性死んでないか。色は更に豊富なのに攻撃パターン減ってて……」
かなしみ。とか呟きながら腕に炎を纏わせる漣香。
立ち上る柱のような炎を、剣で払うかの如く振り回す。泰流の押さえていたニノミヤが周囲のニノミヤと一緒になってまとめて払われていく。
「カラフルって言うか、クレヨンとか、色鉛筆とか、ガチャガチャの消しゴムみたいだなぁ」
止水はジャッジメントレイを発動。吹き飛んだニノミヤに一発一発撃ち込んでいく。
更に幾度も攻撃を打ち込んでいくと、パープルニノミヤがぼろぼろと崩れていった。
ゴールドニノミヤがタブレットPCを振り上げ、くるくる回転しながら飛びかかってくる。
止水の放ったジャッジメントレイがタブレットとぶつかり粉砕。
ノーガードになった所へ、漣香が炎の拳を叩き込んだ。
あわれニノミヤは爆発四散。
アプリコーゼはとんだ破片をダイダロスベルトで払うと、しっぽをふりふりさせて別のニノミヤを誘った。
ジグザグ走行をしかけてくるブルーニノミヤ。
アプリコーゼのレイザースラストを一発かわす。しかし二発目を急速にカーブさせたアプリコーゼのダイダロスベルトが、ニノミヤの頭を打ち抜いた。
伝達した冷気がニノミヤの温度を奪い、表面を霜で覆っていく。
「石像の顔も三度まで。これで見納め、っす」
アプリコーゼは手刀で神薙刃を放つと、ニノミヤに背を向けた。
切断させ、なんでか爆発四散するブルーニノミヤであった。
「マジピュア・ウェイクアップ! ――希望の戦士ピュア・ホワイト、明るい明日を掴みます!」
一旦決め台詞をやりなおしておいたジュンは、アクロバットタックルを仕掛けてくるニノミヤを跳躍で回避。ブレイドサイクロンを放って周囲のニノミヤたちを一斉にはじき飛ばした。
「そこです!」
着地と同時にウロボロスブレイドを発射。ニノミヤの一体を貫き、爆発四散させる。
残る個体へ次々と発射していくジュンに混じって、七ノ香と幸四郎が霊障波とヴェノムゲイルを乱射しながら突入していく。
弾幕をくらったシルバーニノミヤが膝をついたその途端、七ノ香はレイザースラストでシルバーニノミヤを袈裟斬りにした。
またもニノミヤ爆発四散。
飛び散る破片を浴びながら、残るニノミヤたちが合同フライングキックを仕掛けてくる。
身構える七ノ香たち。
そこへ割り込む和弥。
「すまんな」
刀にてをかけ、激しく抜刀。
繰り出された斬撃は空を割き、三日月状のエネルギーとなってニノミヤたちを粉砕していく。
かろうじて残ったレインボーニノミヤが半壊しながらキックを繰り出してくるが……。
「お前たちはもう、語られてないんだ」
和弥の大きく踏み込んだ次なる斬撃によって、首が斬り飛ばされていった。
ゆっくりと倒れ、そして爆発四散するニノミヤ。
和弥は刀を納め……そしてゆっくりと『鎖』へと振り返った。
●鎖
とっくりと観察するさくらえ。
鎖はソウルボードから伸び、ほころびを封じ、残る先端は宙に浮いていた。
大蛇が何かを守るような、もしくは縛り付けるような、なんとも分からない外観をしている。
さくらえが攻撃しないうちはあちらも攻撃はしないようで、とりあえずふわふわがちゃがちゃとしているだけであった。
止水が覗き込むようにつま先立ちになる。
「あれが『ほころび』なんでしょうか」
「多分ね……」
何となくぼろぼろと風景が崩れているような箇所があり、その上を鎖が覆っている。
ほころびの向こうはかろうじて見えたが、同じソウルボードが続くだけに見えた。
それがどういうものなのか、ぱっと見た限りではよくわからない。
手を翳して、こう、なんていうのかぼわーっとなってるところに触れてみたが、それで何かが変わる様子は無かった。風景は相変わらずぼわーっとしているだけで、自身も特になんとも感じていない。
一瞬なんとなく『ソウルアクセスを使ったら何か変わるかな』と思いもしたが、眠った対象のソウルボードに侵入するESPの使いどころではなさそうだとも思った。
「僕は破壊した方がいいと思う。鎖を壊した未来が良いものかどうかなんてわからないけどそれでも動くべきは今だと思う。未来はいつだって不安定で見えないけれど、それでもまずは一歩踏み出さなくってはね」
さくらえの意見を聞いて、アプリコーゼは『っすね』と短い返事を返すだけだった。
武器を構え、いつ鎖が襲ってきてもいいように備えている。
時が来れば破壊するのみだ、という姿勢だった。
「鎖の破壊、どう思うっすか?」
腕組みをする和弥。
「まったく無関係な方に影響が出る可能性があって、バベルの鎖のせいでその対応も後手にまわるとなると破壊に全面的な賛同はしかねるな。それに都市伝説達も鎖の活動を邪魔しようとしていたし結果として同じ行動をするというのは不安を感じる」
「破壊に反対っすか?」
「いや、賛同しないだけだ。皆の決めたことなんだし、協力するさ」
「しかし、綻びから力が漏れ出るってどういうことなのかしらね」
暫く様子を見ていたエリノアが腕組みをして難しい顔をした。
「今のソウルボードはオルフェウスを吸収し損ねてから不完全で不安定な状態だったわよね。力が不足してて綻びからシャドウ以外も吸収し出すというのなら分かるけど、逆となるとその力はどこから来てるのかしらね?」
「言われてみれば……そうっすね」
イフリートが地脈の力を得ていたり、ご当地怪人がガイアパワーを得ていたりするように、シャドウもソウルボードになんやかんやしているかと思っていたが、言われてみるとソウルボードってなんだという話である。
謎はまだ深い。だがいずれ、その謎も解明されるだろう。
少なくとも、前に進んでいる限りは。
一方。漣香たちは鎖への直接接触を図っていた。
「このまま先に登っていっても、先端につくだけだよな」
宙に浮いてる先端部分(大蛇でいうと頭の部分?)をぼんやり眺める漣香。蛇に変身しなくて済んだなあとか考えていると、ジュンも鎖にぺしぺしと手を当てていた。
改心の光とか試してみたが、特に効果はみられないようだ。ダークネスや眷属や強化一般人にも効果が無かったりしたので、別に珍しい反応でもない。
「鎖は……」
と言って、七ノ香が鎖に触れていた。
触って何かが分かるということも無かったのだが、外観から先述したようにほころびから漏れ出すのを防いでいるような、守っているような、もしくは縛り付けているような感覚があった。鎖が語ったり意志表示的な何かを発している分けではないので、あくまで察するに留まるのだが……。
「バベルの鎖は人の真の力を縛って、サイキック使用者の優位を保とうとしている……そう考えています。ダークネスは漏れ出したエネルギーで強化されたとしても、自分たちの優位を手放したがるとは思えません」
武器を再び構えるジュンや漣香たち。
この鎖を断つことで、いかなる未来が訪れるのか。
よいこともわるいこともあるだろうが……しかし少なくとも、彼らの決めたことだ。
それが何より、重要なことだ。
一斉攻撃をうけた鎖はまるで大蛇のようにのたうち、激しい電撃を放った。
まるで台風のように風が、味方を庇おうとした泰流や幸四郎を吹き飛ばす。
だが退くことなどない。七ノ香はイエローサインと夜霧隠れを発動させてダメージをカバーしていく。
七ノ香の霧に紛れるように接近した漣香が鎖の頭を殴りつけ、アプリコーゼのマジックミサイルと神薙刃がざくざくと刺さっていく。
ひときわ巨大な光の矢を生み出し、叩き込むアプリコーゼ。
それにあわせ、止水はセイクリッドクロスを連続で叩き込んでいく。
武器封じをある程度つけてから、渾身のジャッジメントレイを発射。
光に混じって飛び込んだ和弥の紅蓮斬が、鎖の一部を激しく傷付けた。
ばきんという音とともに飛び、地面をバウンドする鎖。
起き上がろうとした鎖の穴を通すように刀を地にさし、押さえ緒込む和弥。
暴れて電撃を放つ鎖に、さくらえが両腕を広げるようにしてエリノアの前に立ち塞がる。エリノアにかかったのは衝撃でできたわずかな風だけだ。
髪を払い、飛び出すエリノア。流れに乗って同時に飛び出したジュンがロッドを、エリノアが槍をそれぞれ鎖に突き立て、至近距離でエネルギーを爆発させた。
ソウルボードを、白い光が覆ってゆく。
かくして、ソウルボードに現われた鎖のひとつが破壊された。
この選択が招く未来は、いかなるものであろうか。
よいこと、わるいこと。もしくはその両方。
けれど次なる決断もまた、彼らの手の中にあるのだろう。
もはや未来は、彼らの先にあるのだろう。
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年4月12日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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