●現状報告
「みんなの活躍で、都市部を襲撃した巨大七不思議を全て撃破する事ができたんだよ!」
千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)がこのように話し始めた。
この勝利により、ラジオウェーブの電波塔の再建を阻止した上、ラジオウェーブの切り札の一つと思われる『精鋭のタタリガミ』達も灼滅するという結果を得る事ができたのだ!
「それにね、ラジオウェーブの目的の一つだった『一般人に都市伝説を認識させ、ソウルボードを弱体化させる』という計画も、灼滅者の活躍を世の人たちに知らしめる『民間活動』として達成したんだよ!」
そして、今回の大規模な『民間活動』の成果は、ソウルボードに大きな影響を与えたようだ。
「ソウルボード内の力が集まった地点に小さな綻びが生じ、そこから力が漏れ出ようとしている事が、新沢・冬舞さん、文月・咲哉さん、御鏡・七ノ香さん、ラススヴィ・ビェールィさんらの調査によって確認されたんだ」
現在、この綻びの地点には、巨大な『鎖』のようなものが出現し、ソウルボードの綻びを拘束し、崩壊を綻びをつなぎ留め、力の流出を阻止しようとしていると言う。
「この『鎖』の正体は不明だけど、もしかしたら、この鎖こそ『バベルの鎖』なのかもしれないよ」
現状はこのようになっていると、太郎は説明した。
●依頼
このまま何事も無ければ、ソウルボードの綻びは、この『鎖』の作用によって修復される事だろう。
様々な調査から、闇堕ちはソウルボードからの力の影響で起きると考えられている。
「ソウルボードの力が溢れ出れば、その力を得たダークネス達が強化されたり、一般人の闇堕ちが誘発される可能性があるので、修復される事自体は悪い事ではないんだ」
しかし、このソウルボードの綻びが『これまでの民間活動の成果』であるとすれば、これを否定する事は、これまでの活動を否定する事になりかねない。
「この『鎖』によるソウルボードの修復を認めるべきか、或いは邪魔をするべきか……、どちらが正しいか現時点で断定する事はできないと思うよ」
だから、と。
太郎は集まった灼滅者たちの顔を見る。
「実際に『鎖』と対峙し、歴戦の灼滅者の感性や意志でもって、どうするべきかを決めてもらうのが、最も良い選択となるだろうね」
バベルの鎖を破壊するのか、或いは維持するのか、選択する必要があるということだろう。
「ただ、この『鎖』の扱いを決める前にするべきことがあるんだ」
ソウルボードの綻びが出来た地点では、今回の失敗を少しでも取り戻そうと、都市伝説が『鎖』の動きを邪魔しつつ、ソウルボードの力を掠め取ろうと動き出しているというのだ。
「みんなには、この姑息な都市伝説を撃破した上で、『鎖』への対応を選択するようにお願いするね」
都市伝説について、太郎から追加で情報がもたらされる。
「みんなに相手をしてもらうのは、走る人体模型10体だよ。骨系の模型が5体、クラッシャーとして殴る蹴るの攻撃をしてくるんだ。内臓むき出しモデルの模型が3体、スナイパーとして内臓を投げつけてくるよ。筋肉描写付きのマネキンモデル模型が2体、ディフェンダーとして盾になっているようだね」
灼滅者が攻撃を行うと、都市伝説は灼滅者の迎撃を優先する。
また、『鎖』は攻撃されない限りは反撃してこない。都市伝説と灼滅者の戦いには介入せず、ソウルボードの修復を行うだろう。
「ソウルボードとバベルの鎖の扱いをどうするか。難しい問題だよね。みんな良く考えて、戦いに挑んでね」
そう言って、太郎は締めくくった。
参加者 | |
---|---|
千布里・采(夜藍空・d00110) |
シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461) |
リーファ・エア(夢追い人・d07755) |
咬山・千尋(夜を征く者・d07814) |
アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193) |
刃渡・刀(魔剣・d25866) |
加持・陽司(暖かな陽射しを胸に抱いて・d36254) |
オリヴィア・ローゼンタール(蹴撃のクルースニク・d37448) |
●人体模型ご一行様
ギリギリと硬い音を立てながら人体模型たちが鎖に迫っていた。
骨系、筋肉描写付き、内臓むき出し、全ての人体模型が鎖の動きを邪魔するように走っている。
灼滅者たちは、それを見てすぐさま戦いに入った。
ふわりとスカートの裾を揺らし、シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)は、前線へ躍り出る。
「まじゅは邪魔者を片づけりゅとしゅるかの」
そう言って、周辺にヴァンパイアの魔力を宿した霧を展開させた。
続けて、仲間たちが一斉に攻撃を叩き込んでいく。
千布里・采(夜藍空・d00110)は骨系の模型を狙いオーラキャノンを放った。
「そうやね。鎖も気になるけど、目の前の敵からおさえよか」
言いつつ、霊犬をスナイパーの位置へ送り出し、攻撃を命じる。
ウイングキャットのキャリバーと共にディフェンダーの位置についたのはリーファ・エア(夢追い人・d07755)だ。
縛霊手を構え、一体の骨系模型の懐に飛びこんでいく。
「動かないでくださいね」
身を引いて逃げるそぶりを見せた模型と距離を詰め、思い切り殴りつけた。
同時に網状の霊力を放射し、骨系模型を縛り付けた。
攻撃を受けた模型たちがはっきりと灼滅者を認識し始める。
「テキ、ダ!」
「テキテキテキ!」
「キキキ、ヤッツケル!」
鎖へ向かっていた都市伝説たちが、隊列を整え向かってきた。
骨系の模型が5体、前に出てカラカラ骨を鳴らし威嚇のポーズを取っている。
筋肉描写付きのマネキンモデル模型は2体、他の模型を守るように大きく手を広げた。
内臓むき出しモデル3体は、それぞれ内臓を手に取り投げるタイミングを計っているようだ。
それを見て、退く者などいなかった。
咬山・千尋(夜を征く者・d07814)はロケットハンマーを振り上げ、思い切り地面を叩いた。
「自由にさせるかよ!」
大震撃の衝撃波が敵の前衛に襲いかかり、模型たちがたたらを踏む。
その隙に最前列へ躍り出たアトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)は声を張り上げた。
「学園の仲間のためにも、あいつらの未来のためにも、お前らの企みは阻止させてもらう!」
戦神降臨。アトシュの魂が燃え上がる。これは絶対不敗の暗示だ。
口元に笑みを浮かべ、敵を睨み付ける。
両手に二刀を構えた刃渡・刀(魔剣・d25866)の背後には、二刀を構えたビハインドの村正・千鳥が控えていた。更に影を纏い、一歩踏み出す。
千鳥が霊撃を放ち、刀が上段に構えを取った。
「参ります」
言って、地面を蹴り走る骨系の模型を斬りつける。
動きの止まった模型にオリヴィア・ローゼンタール(蹴撃のクルースニク・d37448)が走った。
四肢に紅い稲妻を纏わせ、螺穿槍を繰り出す。
「鎖の前に、まずは模型です」
力強い正拳が敵の躯体を打ち砕いた。
一体の模型が砕かれたところで、骨系の模型がシルフィーゼに襲い掛かってくる。
「シシシ、シネェ」
「キツネユリ、行って」
その間に加持・陽司(暖かな陽射しを胸に抱いて・d36254)がライドキャリバーのキツネユリを滑り込ませた。
キツネユリがシルフィーゼを庇い、ダメージを肩代わりする。
その間に陽司は翼の如く全方位にダイダロスベルトの帯を放出した。
前衛の敵をまとめて絡め取り、捕縛する。
敵味方入り乱れ、戦いは続いた。
●模型たちとの攻防
内臓むき出しモデルの模型が、自身の体から内臓を手に取り投げつけてきた。
盾役の仲間たちが庇い合い、傷を最小限に抑える。
すぐに陽司が防護符を飛ばした。
「みんな、大丈夫か? くそ、前衛の仲間をいっぺんに回復できたらいいけど」
「平気です。私も回復の手は持っていますから」
リーファはキャリバーを呼び、自身も加わって前衛の仲間たちを回復する。
傷口の塞がりを確認し、刀が立ち上がった。
「ありがとうございます。これで傷は塞がりました」
視線は真っ直ぐ敵に向け、再び武器を構える。
シルフィーゼも再び跳んで重い斬撃を振り下ろした。
「それぞれは弱いのじゃが、数がのぅ」
敵を砕く感触が手から伝わる。
采が小さく頷いた。
「そやねぇ。手数が多いのは多少厄介やわ」
指輪を掲げ、石化をもたらす呪いを敵に向ける。
続けて千尋もグラインドファイアを放った。
「じゃあ、順番に崩して行くだけだろ」
炎を纏った蹴りで残っている模型を蹴り上げる。
ルフィーゼと采は肩をすくめ、次の攻撃に備えた。数が多いと言葉にはしたが、それぞれそこまで深刻に捉えていない。一体ずつ、セオリー通りに片付けていけば、決して難しい相手ではない。
「順に、砕けばいいんだな?」
アトシュが飛び込む。
無敵斬艦刀を振り上げ、骨系の模型を庇う筋肉描写付きのマネキンモデルを、脳天から打ち砕いた。
「コココ、コロセ」
「コロセ」
徐々に数の減る模型たちも、対抗するように攻撃を繰り出してくる。
跳んでくる内臓を受け、蹴りを避け、灼滅者たちは走った。
オリヴィアがエアシューズを煌かせ、一体の模型に飛び蹴りを繰り出す。
「あと少しで、後衛の敵に届きます」
オリヴィアのスターゲイザーが筋肉描写付きの身体を貫き、消し去った。
最後の足掻きを見せる模型たちに、他の仲間が飛び掛り打ち倒した。
「これで全部ですね」
リーファが辺りを見回す。
「そうみたいだね」
陽司は頷き仲間たちを見た。
灼滅者たちもそれぞれ周辺を確認し、都市伝説の消滅を確認する。
「と言う事は、鎖だな」
千尋がソウルボードに繋がった鎖を見た。
攻撃の意思を示さない限り、ソウルボードの修復を行うようだ。
「あれは……ソウルボードをソウルボードの形になるように整えているのでしょうか」
鎖の様子を観察していたリーファが首を傾げた。
さて、鎖を見る仲間たちを千尋が見る。
「ここまできた以上、戦いの主導権はあたし達にある。あたしは、これまでの闘いや、民間活動が無駄じゃなかったと信じたい」
そう言って、アレを壊すのか確認を取った。
綻びの中を覗いていたオリヴィアが立ち上がる。どうも、中を見通すことはできないようだ。
同様に、綻びを覗いていた刀が言った。
「綻びの奥がどうなっているのかは、見通せませんでしたね」
「はい、けれど、民間活動の結果として起こった綻びを、修復させるわけにはいきません。鎖がこの流れをせき止めるつもりならば、蹴り砕くのみです」
オリヴィアは力強く言う。
皆が頷いた。
ともあれ、それに変わりはない。
仲間たちは武器を手に取り、鎖の様子を見ながら足を踏み出した。
●鎖について1
攻撃の意思を示した灼滅者に、鎖も反応を返してきた。
鎖の攻撃を避けながら、采は鎖に触れてみる。
「意識がないんやろね」
接触テレパスを用いてみたが、何も情報を得ることは無かった。
アトシュは鎖に語りかける。
「これからの時代、あんたはきっと、いらないんだと思う。……ありがとうな、俺たちを守っててくれて」
だが、何も返答は無かった。
オリヴィアも接触テレパスを使い鎖に言葉を伝えてみる。
「上下に揺れてください」
ためしに言ってみたが、何の反応も無かった。
采も自分たちが灼滅者だということを名乗ってみたが、やはり返事は無い。
「攻撃を返してきはるんは、どうしてやろね?」
鎖と会話や意思疎通は出来ないようだ。
「意識はない、意思疎通はできひん。せやったら、ソウルアクセスも無駄やろねえ」
元より、眠っている人に触れその人の精神世界に侵入するという能力では、効果は見込めないだろうが。それでも、何か変化があれば面白いとも思っていたが、どうもこの方法では情報を引き出すことはできないようだ。
オリヴィアもその結論に頷く。
もし意思があるのなら、目的は何か。誰に作られたのか、聞いてみたかったのだが。
「しかし、何か悪意を感じりゅのう?」
シルフィーゼが小首を傾げた。
「そうですね。ソウルボードを護る為に戦っているのでは無いように感じますが」
刀も、何となくそう感じた。
2人は鎖に攻撃を仕掛けながら、鎖がソウルボードに対して否定的だという印象を持つ。
陽司はレーヴァテインを鎖にぶつけた。
「この鎖が自分達にも情報統制の影響を及ぼしてないって保証はない」
そして。
「これがあったら、いつまで経っても一般の人達は世界の真実に気付けない」
だから、鎖は壊す。
しかし鎖はいつ、誰が、どんな目的で創造したのだろう?
何か手がかりが無いか見てみたが、外見の特徴はないようだ。
鎖を探りながら戦う仲間たちの様子を見て、リーファは思う。
(「このソウルボードの動きが、人の意思全体の結果だというなら、バベルの鎖は明らかに別個の意思……」)
バベルの鎖が善意によるものなのか、それともタタリガミの言うとおり人を縛り付けるものなのか、これで分かるだろうか?
「まあ、やってみれば分かる事ですね。どんな結果になろうとも、やってみるしかないって事で」
そう言いながら、縛霊撃を繰り出す。
鎖がうねり、反撃してきた。
盾役が前に出て仲間を庇う。
仲間たちが傷を回復する姿を見ながら千尋は思った。
(「バベルの鎖……真実を覆い隠していた、忌ま忌ましい力。その鎖が取り払われたとき、どんな世界が見えるんだろう?」)
「必ず暴き出してみせる。この世界の真実を。鎖を作り出したやつの思惑を!」
そう言って、雲耀剣を叩き込む。
鎖は完全に修復の手を止め、灼滅者たちへと向かってきた。
●鎖について2
しなりながら攻撃してくる鎖を見て、リーファは思う。
ソウルボードの入り口は人の夢。そして人の意思……夢を見る力はより良い明日へと向かう為の原動力。夢があるから人が発展してきたとするなら、それを縛ろうとするバベルの鎖は人の進化を拒もうとしているのだろうか?
「確かに、この鎖。言葉は悪いですが、逃げ出した奴隷を取り戻そうとしている……ような嫌な気配すら感じる気がします」
他の仲間と同様、そのような直感があった。
黒死斬を放ちながらアトシュは考える。
(「鎖……ねぇ」)
もしや、それを壊した種族がそれに使われてるエナジーで強化される、と言うのなら、自分たちが壊すべきだと思う。
「ま、あいつらの未来のためにも、俺たちの持ってる情報を広げるべきだ」
鎖にダメージを与える感触が手に残った。
「なら……きっと、壊すべき、なんだろうな」
鎖は当初の勢いが無くなり、撃破まであと一息と言った感じだ。
仲間の傷の具合を見ながら、陽司はイカロスウイングを使い鎖に攻撃を仕掛けた。
「誰だって、目の前に本当があるのに、それに気付けないのはイヤじゃんな」
連戦だとしても、傷の具合は軽微。
自分も攻撃に加わることができている。
「こいつを壊して、晴れ晴れしくTVデビューでもしてやるさ!」
そう言って動き回る鎖を捕縛した。
それを聞いていたシルフィーゼがぽんと手をうつ。
「テレビデビューとな! 楽しそうじゃのぅ」
そして、炎を纏い鎖の下から蹴り上げた。
くすりと采が笑う。
「何にせよ、これで仕舞いやね」
最後にオーラキャノンで貫くと、鎖が勢いを失い砕けた。
灼滅者たちが、力尽きた鎖を凝視する。
「消滅するか。これから、どうなるか、だよな」
千尋が言う通り、鎖が消滅した。
すると、目に見えて異変が起きた。
「見てください、綻びからソウルボードの一部が!」
刀が指をさす。
綻びからソウルボードの一部が崩れたのだ。
数メートルほどの欠片がいくつか崩れるのを見る。更にぱらぱらと小さな欠片が崩れた。
「あっ、崩れた欠片が消えていきます」
オリヴィアがそれを指し示す。
綻びから崩れたソウルボードの欠片は、灼滅者の目の前でドライアイスが気化するように消失した。
「今のは、ソウルボードに還ったのとは違う感じやねえ」
じっとその様子を観察していた采が言う。
「そうです。むしろ、現実世界に消えていったように感じました」
オリヴィアが頷いた。
他の仲間たちも、おおむね同じ感想を持ったようだ。
崩落はすぐにとまった。
どうやら、それ以上は崩れないようだ。
「これからは……人類はあんたの庇護なしでも、やっていけるようにしていくさ。……あいつらなら、それがきっとできる」
ふと、アトシュが消えた鎖があった場所を振り返る。
ともあれ、今回の事件は終わったのだと灼滅者たちは感じた。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年4月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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