ゴワゴワにゃんこでも、キミは愛せるか!?

    作者:芦原クロ

     とある地下駐車場。
     車があまり入って来ない、その駐車場には、猫がたくさん集まっているという、猫好きにはたまらない情報が流れていた。
    「猫ちゃーん、どこかなー?」
     一般男性が駐車場を歩き回り、猫を探していると、愛らしい猫の鳴き声が後ろから聞こえた。
     男性が振り向いた瞬間、たくさんの猫たちが一斉に飛びかかって来る。
    「うわー、ハハハ、可愛いなぁ。毛並みも……うん? なんだ、かたい……ゴワゴワしてるぞ!?」
    『ゴワゴワだけど愛してー!』
    『モフモフじゃないけど構ってー!』
     かたい毛並みの猫たちが人語を喋り、男性をゴワゴワの海に沈めてゆく。
    「うう……なんて居心地が悪いんだ……」
     男性は悲しげに呟き、気絶した。

    「モフモフにゃんこがいるならゴワゴワにゃんこも……と思ったら、本当にいた!」
     ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(夢途・d36355)は様子を見ていたが、一般男性が気絶したのを確認し、救助に向かう。
     気絶した男性は目を覚まさず、都市伝説をこのまま放っておけば、ずっと目覚めないままだと理解する、ロードゼンヘンド。
    『毛並みがゴワゴワしてる猫は可愛くないって、ひどいと思うの!』
    『ゴワゴワしてても、猫だもん! 猫好きならゴワゴワしてても愛してくれるよね?』
     ロードゼンヘンドの足元に群がり、必死に訴えかける、猫たち。
    「これは、猫好きが試されている!? 確かに、モフモフしている猫しか好きじゃなかったら、真の猫好きとは言えないね。真の猫好きは、いるかな?」
     連れて来た灼滅者たちを、ロードゼンヘンドは見回しながら尋ねた。


    参加者
    エミリオ・カリベ(星空と本の魔法使い・d04722)
    朝永・詩音(満月の申し子・d21523)
    ミーア・アルバーティ(猫メイドシスターズ・d35455)
    シャオ・フィルナート(女装は恥ずかしいが役に立つ・d36107)
    唯手・聖香(ミルトスの唄人・d36167)
    寺内・美月(小学生人狼・d38710)
     

    ■リプレイ


    (「ゴワゴワにゃんこは皆からあまり可愛がられていない印象だけど、僕はどんな猫でも好きだよ」)
     優しい眼差しを猫たちに向ける、朝永・詩音(満月の申し子・d21523)。
    「猫と関わったことが、ないので。何をすればいいのでしょうか?」
    「猫用おやつや猫じゃらし等で、かまってあげようか」
     たくさんの猫たちを見て戸惑う寺内・美月(小学生人狼・d38710)に、唯手・聖香(ミルトスの唄人・d36167)が、持って来たササミやカニかまなどを分ける。
    「まず気絶している方を隅に運んでから、にゃんこ達と目いっぱい遊びますのです!」
    「とりあえず避難させて、予定どおりこの子たちと遊んであげようか?」
     協力しながら、一般人を駐車場の隅へ運ぶ、ミーア・アルバーティ(猫メイドシスターズ・d35455)とエミリオ・カリベ(星空と本の魔法使い・d04722)。
    「毛並みで選ぶなんてひどい奴だな! 人だと髪質で選んでいるのとおんなじだぞ! 好き嫌いはいけないんだぜ」
     運ばれてゆく一般人に向け、ロードゼンヘンド・クロイツナヘッシュ(夢途・d36355)が言葉を投げる。
    「確かに、もふもふは、スキだけど……毛質なんて関係無いの……どんな毛質でも、かわいいし……タイセツなの……」
    『ほんと? じゃあ構ってくれる?』
    『ゴワゴワでも良いの?』
     シャオ・フィルナート(女装は恥ずかしいが役に立つ・d36107)の言葉を聞いた猫たちが、わらわらと集まって来た。


    『ゴワゴワだけど、愛してー!』
    『モフモフしてないけど、構ってー!』
    「おーおー愛してやるとも! 構ってやるとも!! 首のとこ、ごろごろしてあげよう!」
     ロードゼンヘンドは嘘偽りの無い笑顔で、猫たちを撫でて構い始める。
    「また猫だ! やったぜ! ということで今回はおもちゃにしてみたぞ。おもちゃのネズミはラジコン型で、自分も楽しめる。幸せ!」
     早速、ネズミを足元の近くで操作すると、猫たちは夢中で追いかけ、その姿に心を和ませる、ロードゼンヘンド。
    「天使が! 沢山! いる! 天国かよ、ここ……」
     猫を天使と称し、ロードゼンヘンドは心底、幸せそうだ。
    「おお、本当にゴワゴワした猫だね。ゴワゴワでも、猫には変わりないんだから、沢山可愛がってあげないといけないよね。とりあえず僕達と遊んでみないかな?」
    『遊ぶー!』
     詩音は猫を一度撫でて、そのかたい毛並みに驚くが、嫌がったりはしない。
     猫たちは詩音が嫌がっていないと察して、元気良く駆け寄って来る。
    「それ、猫じゃらしだよ、自由に遊んでくれな」
     詩音が猫じゃらしを動かすと、集まった猫たちは猫じゃらしを前足で叩いたり、捕まえようとする。
    「猫じゃらしで遊んでいる様子を写真に撮ってみよう」
     猫たちの反応を楽しみつつ、詩音はデジタルカメラでベストショットを狙って撮影。
    「あとでその写真分けてくれ!」
     すかさず反応する、ロードゼンヘンド。
    「お前やんちゃだなぁ、これ気に入ったのか?」
    『うん! 面白いー!』
     聖香も猫じゃらしで猫たちを構い、一際激しくじゃれてくる猫には、思わず笑みが零れる。
    「たとえ毛並がゴワゴワでも、こんなに可愛いのに。猫って確か耳の裏を撫でてやるといいんだったか?」
     瞳を輝かせ、猫を優しく撫でながら呟く、聖香。
    「はーい、こちらですよー。煮干しやカリカリにジャーキー、ミルクにチーズにキャットフードもありますよー」
     シートを敷いて声を掛け、集まって来る猫たちにおやつを振る舞う、ミーア。
    「これはまさにハーレムなのですにゃん! 食べる姿がにゃんとも愛らしいのです」
     たくさんの猫たちに囲まれながら、ミーアはスマホを操作して写真を撮っている。
    「わ、本当にごわごわ……」
     猫の頭をそっと撫でて、少し驚くエミリオ。
    『やっぱりゴワゴワは嫌い?』
    「ん? ううん? 別にごわごわしてたって全然気にならないよ? おいでー?」
     悲し気な声で訊いて来る猫に対し、エミリオは正直に答えてから、猫を呼ぶ。
     呼ばれると、猫は嬉しそうに駆け寄った。
    「よーしよし、良い子だね? それじゃブラッシングをしてあげるから膝の上に……ぁ、順番でだよ?」
     いつの間にか、ずらりと揃った猫たちを見て、エミリオは言葉を付け足す。
    「僕も向こうのお家……実家で猫を飼ってるんだけど、あの子も君たちみたいにおしゃべりすることが出来たら良かったのに」
     基本的に無表情のエミリオが、ほんの少しだけ微笑んでいる。
     毛の流れにそって、絶妙な力加減でブラッシングをおこなう、エミリオ。
    『気持ちいいにゃー』
    「ふふ、僕、ブラッシングは結構得意なんだ。うちの子も、これをやってあげるとゴロゴロ喉を鳴らしながら寝ちゃうんだよ」
     エミリオが優しい声音で言ってくれるから、なおさらリラックス出来るのだろう。
     猫はエミリオの膝の上で、気持ち良さそうに眠り、満足したのか消えてゆく。
    「手際が良いな」
    「ふふ、ミーア先輩や聖香先輩もやってみる?」
     感心の声を上げる聖香や、ミーアにも声を掛ける、エミリオ。
    「柔らかい毛とはまた違った、固めのセーターのような感触なのです。これはこれで、暖かくて眠くなりますね」
     ブラシを借り、早速ブラッシングを始めたミーアが、うとうとしそうになる。
     聖香はブラシを持参しており、エミリオからブラッシングのコツなどを教わりつつ、ブラシをかけ、猫たちを満足させていった。
    「よし……遊ぼっか」
     シャオは猫たちに声を掛け、猫に変身。
     驚いた猫たちだが、猫になったシャオがフレンドリーに接してくれた為、すぐに打ち解ける。
     猫たちと、追いかけっこを楽しむ、シャオ。
     ロードゼンヘンドの足の上を通過しようとすると、ロードゼンヘンドに抱えあげられた。
    「む、この毛並みは誰か猫変身しているな?」
     ゴワゴワでは無いことを、あっさりと見破る、ロードゼンヘンド。
     猫好きのロードゼンヘンドはどちらも変わらずに接し、ゴワゴワの猫たちも、猫変身中のシャオも、まとめて遊んでやる。
    「フィルナート様が猫に。そういった遊び方も有るのですね」
     紐を使って猫をじゃれさせていた美月が、参考になるというように小さく頷く。
    「猫変身なら私も使えるので、試してみます」
     美月も猫に変身し、ゴワゴワの猫たちの中へ入って行った。


    「わ……? ……シャオ先輩? って? わ、わわ? じゅ、順番? 順番だから?」
     追い駆けて来る猫たちと共に、猫変身中のシャオがエミリオの肩に、ひょいっと身軽に飛び乗る。
     猫たちはエミリオに飛びつく形でシャオを追い駆け、あたふたしていたエミリオは、あっという間にゴワゴワの猫たちに埋もれた。
    「おお、ゴワゴワにゃんこの群れだ」
    「シャオ様も美月様も可愛らしいです!」
     詩音とミーアの周りをシャオがぐるぐると走り回ると、猫たちも美月も同じように走り回る。
     遊んで満足した猫は1匹、もう1匹と、どんどん消えてゆく。
    「お腹空いていないか? 良かったらこれ、食べてみてよ」
     自分の元に集まった猫たちに、魚を振る舞う、詩音。
     お腹いっぱい食べた猫は満足し、また1匹と消えていった。
    「美月も猫達におやつをあげてみるか?」
     聖香が話し掛けると、美月は変身を解き、いくつか聖香から譲って貰う。
     おやつを持ったまま動かない美月に、聖香があげかたなどを説明し、美月はその通りに猫たちに食べさせる。
    『美味しいにゃー! ありがとー!』
     嬉しそうな声でお礼を言われ、美月は慣れない手つきだが優しく、猫の頭を撫でる。
    「髭のそばや尻尾の付け根など、こんにゃ感じで優しくなでると、にゃんこ好みなのです、わんだほーです」
     ミーアもフレンドリーに、美月に話しかけ、撫で方を伝えた。
    「あと、こちらのおもちゃ、とても食いつきがよかったのです。よかったら使ってくださいです」
     聖香と美月に猫用のおもちゃを手渡し、使い方も丁寧に説明する、ミーア。
    「お菓子、いっぱい……作ってきたの。みんなで、食べよ……? 皆用に……紅茶やジュースも、持って来たの。唯手さんは、なに飲む……?」
     猫変身を解いたシャオが、猫型のアイシングクッキーや、猫柄ドーナツ、肉球フィナンシェなど、猫系のお菓子を取り出し、シートの上に座る。
    「じゃあ、紅茶を戴こうかな。好きなんだ」
     聖香が答え、紅茶を貰って香りを楽しみ、飲み始める。
    『パーティだー』
    『いいなー』
     まだ残っていた猫たちが興味津々な様子で、シャオを見つめる。
    「ちなみに俺のはいちごみるく、です。飲んでみる……? 甘いよ……」
    『飲むー! ……お、美味しい!』
     猫たちにシャオが問うと、元気良く答えた数匹の猫がイチゴミルクを一舐めし、感激して消えた。
    「シャオ様の紅茶をお相伴にあずかりながら、少しだけ、のんびりいたしましょうか」
     シートの上にミーアも座り、飲み物やお菓子を味わう。
    『僕たちゴワゴワしてるのに遊んでもらえて、嬉しいなー』
    「ゴワゴワしていても、愛らしい動物は結構いると思うのですにゃん! 野生動物は見た目が愛らしくても結構ゴワゴワですし!」
     ミーアは猫を撫でながら、熱く語る。
    「男は度胸、女は愛嬌、にゃんこも愛嬌です! だから大丈夫です! 適当ですが! 十分愛らしいので自信を持ってくださいませ」
    『ありがとー!』
     ミーアに励まされた猫は礼を言い、消えてゆく。
    「肉球スタンプができるように、食べられるインク持ってきたぞ。あ、別に、肉球スタンプ、欲しいってわけじゃないから!」
     ロードゼンヘンドがインクと称したイチゴジャムのようなものを、猫の前に置く。
    『肉球スタンプ欲しいの? あげるー!』
     明るい調子で猫がジャムに前足をくっつけ、ロードゼンヘンドが用意した紙にペタペタと肉球の痕をいくつも残す。
    「……持って帰らないとは言ってなぁい!!」
     ロードゼンヘンドは紙を大事そうにしまい、前足についたジャムを舐めている猫の姿に、心から和む。
    「くし、持って来たの……。毛質に合ったの選んで来たから、安心してね。梳かしてみてもいい……?」
     残り数匹まで減った猫たちに、シャオが尋ねると、猫たちは快く承諾した。
     丁寧に優しく、ゴワゴワの毛にクシを通して撫でるように梳く、シャオ。
     ブラッシングでもクシでも、ゴワゴワの毛は直らないが、猫たちは気持ち良さそうだ。
    「寺内さんも、やってみる……?」
     シャオが美月にクシを渡し、美月はゴワゴワを梳かす努力をしている。
    「ふぁ……えへへ、落ち着いたら眠くなってきちゃった……」
     うとうとし始めたシャオの近くに居た猫も、眠たげに丸まり、消えた。
     たくさん居た猫はたった1匹だけになり、最後に残ったその猫は、どの猫よりもかたそうな毛並みだ。
     その猫が本体だと、灼滅者たちは直ぐに察し、戦闘態勢に入る。
    「眠いけど……がんばろー……」
     断罪の剣から破邪の白光を放ち、強烈な斬撃を放つ、シャオ。
    「足引っ張らないように頑張るよ」
     連携した聖香は、回復の必要は無いと把握し、攻撃に移る。
    「余り苦しませないよう、一気に行きますね!」
     ビハインドのマーヤと共にダメージを与えようと、ミーアは炎を宿した武器で敵を叩きつける。
    「殴るのは気が引けるから……flechas de luz」
     唱圧縮された魔法の矢を飛ばす、エミリオ。
    「あーまた終わってしまうようだ……残念」
     終わってしまうのが残念でならないと、ロードゼンヘンドが悔しげに呟くが、戦闘は戦闘と割り切り、真面目に攻撃体勢に入る。
     素早く死角に回り込み、斬撃を浴びせる、ロードゼンヘンド。
    「この世から去って貰おう。どうか、安らかに眠れます様に……」
     詩音は鍛えぬいた超硬度の拳で、敵を撃ち抜き、最後に美月が、まっすぐに素早く重い斬撃を振り下ろした。
    『楽しかったにゃー、ゆっくり眠れるー! ありがとうー!』
     灼滅者たちに礼を言い、都市伝説は完全に消滅した。


    「楽しい時間を、ありがとうね」
     都市伝説が消えた場所に向けて、礼を言う、シャオ。
    「また遊ぼうな!」
     片手を大きく振ったのちに、ロードゼンヘンドはキャットタワーや猫用ベッドなどを、スマホで検索している。
    「もっと色んなことをしてあげたかったんだけど……喜んでもらえた、かな?」
     都市伝説の最期の言葉を思い出し、首をかしげる、エミリオ。
    「幸せそうにお礼を言ってましたので、満足したと思いますです!」
     ミーアが力強く、主張する。
    「皆様、有難うございます。なんとか解決しましたね」
     仲間たちに礼を言う、美月。
    「猫にも色々と種類や個性があるものなんだね、見かけだけで判断したらいけないと実感したよ」
     詩音は勉強になったというように、1人頷く。
    「一般人が目覚める前に、帰ろうか」
     聖香が声を掛け、灼滅者たちは後片づけをしてから、猫について語り合いながら帰路についた。

    作者:芦原クロ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年4月25日
    難度:普通
    参加:7人
    結果:成功!
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