うずめ様の予知~目覚めた力は仄かに


     焦燥した足音がコンクリートを蹴りつける。
     昼間でも陽射しの恩恵を受けず夜には途切れ途切れの灯りが照らす路地裏を、まるで猟犬に追い込まれた獲物のように駆けるのは、人混みのなかに目をやればすぐ見つかりそうな、外見も雰囲気も身体能力も特筆する点はない、どこにでもいるごく普通の少女だ。
     弾む息は乱れ時に鋭く吐き出しながら、追い迫る害意から逃れようと、ただそれだけのために。
     だがすぐに追い付かれ、足音の代わりに悲鳴が地面を打った。
     薄暗い路地裏を塞ぐように蒼い巨躯の異形に囲まれた少女は、理不尽な暴力からかろうじて頭を両腕でかばいながら、ただひたすら、この状況がかすかでも好転するように願う。
     何で。何で? 何が……何で!?
     彼女はありふれた存在だ。しいて違うところを挙げれば、人の体重とか物の重さとかをほぼ誤差なくぴったり当てることができるくらいで。
     それがESPという能力だと知らない彼女は、自身が決して『普通の人間』から外れていないと信じているし、大成功も大失敗もしないありふれた人生を過ごしてきたし、これからもそうだと信じているし、こんな目に遭うことなんか想像したこともない。
     闇堕ちもできない腰抜けが、と吐き捨てる声に、何故かすっと言葉が頭に入ってきた。
     ヤミオチって何だろう。あれかな、出オチとかそんな感じの。
     ああ、でもそれを知ることはもうできない。
     吐き捨てた声の主が、苛立ちを隠しもせず彼女を睨んでいることは、顔をあげて見なくても容易に想像できた。
     あの蒼いのはきっとものすごく重い。そうだな、重さは……。
    「とっとと正体をあらわしやがれ!」
     怒声を号令に蒼い異形たちが一斉に巨腕を振り上げ、その思考は断ち切られた。


     資料を前に幾分か苦々しげな表情を浮かべ、衛・日向(探究するエクスブレイン・dn0188)は集まった灼滅者たちを見回した。
    「行方が分からなくなっていた、刺青羅刹の『うずめ様』の動きが判明した。うずめ様は、九形・皆無(黒炎夜叉・d25213)先輩やレイ・アステネス(大学生シャドウハンター・d03162)先輩が危惧していたように、爵位級ヴァンパイアの勢力に加わっていたようで……今回は、うずめ様の予知を元にデモノイドロードが灼滅者を襲う事件なんだ」
    「灼滅者?」
     灼滅者たちはうずめ様の名前に眉をひそめ、次いで出てきた単語に目を見開く。
     エクスブレインの手がそうじゃないとひらひら揺れ、資料を指した。
    「デモノイドたちに路地裏に追い込まれて、そこで襲われることになる灼滅者は、武蔵坂の灼滅者じゃないし、闇堕ちした一般人でも、ヴァンパイアの闇堕ちによって灼滅者になった血族でもない。突然灼滅者になった一般人なんだ。このデモノイドの動きについては、咬山・千尋(夜を征く者・d07814)先輩や七瀬・麗治(悪魔騎士・d19825)先輩が警戒していてくれたのも、事件を察知できた理由のひとつになっているんだけど……」
     突然灼滅者になった一般人は戦闘力がほとんどなく、デモノイドたちに追い立てられ命の危機に追い込まれている。
     デモノイドの目的は、この灼滅者を闇堕ちさせることだと思われるが、その理由はよく分かっていない。
    「戦闘力がないというのは妙だな」
    「ああ。だけど、みんなと同じように物理的な攻撃を受けてもダメージを負わないみたい。理由は分からないけど、灼滅者がデモノイドに追い詰められている状況を見逃すことはできないからさ。すぐに救出に向かってほしい」
     言って、敵に関する資料を差し出した。
    「敵はデモノイドロードが1体と、デモノイドが5体。デモノイドロードはそこそこ強くて、デモノイドは……そうだな、1対1だとちょっと勝てないけど2対1なら充分勝てるくらいだ。特別強かったりとか特殊な能力があるわけじゃないけど数が多いから、戦ったことがある相手だからって油断しないで、しっかり作戦を立てて臨んでくれ」
     なるほどもっともだと首肯し、ふとひとつの疑問が浮かぶ。
    「その狙われている灼滅者は何かできないのか?」
    「救出対象の灼滅者は、まあ一応ESPが使えるんだけど……」
    「ESP? それは、どんな?」
    「直接見たものの重さを当てることができる。カメラ越しとか写真や映像とかはダメだけど」
    「……何に活かせばいいんだろうな」
     武蔵坂学園の灼滅者たちにとって、その情報を有益に活かすことはないだろう。
     とりあえず、支援が望めないことだけは確かだ。
    「戦力としてまったくあてにならないけど、デモノイドの目的は灼滅者の殺害じゃないから、武蔵坂の灼滅者が救出に来ればそっちとの戦闘を優先するので、戦闘終了後に救出することができる。とりあえず、戦いに巻き込まれないように退避してもらえば充分だと思う。隙をついて狙うとかってこともないから、退避した灼滅者に護衛をつける必要はないよ」
     それは助かる。
     資料をまとめながら、日向がふむと唸る。
    「うずめ様の行方が掴めたのはいいんだけど、あの予知は厄介だな。デモノイドたちがなぜ灼滅者を追い詰めようとしているのか、それが判ればうずめ様の予知の内容を知る手掛かりになるかもしれない」
     つ、っと表を撫で、それから小さく声をあげる。
    「そうそう。救出した灼滅者は戦う力がなさそうだし、事情を話して保護して連れてきてほしいんだ。そのままにしておくとまた襲われるかもしれないしさ。それに不思議なのは、灼滅者になった理由も経緯も分からないことなんだよな」
     何が原因でこんなことになってるんだろうな。
     眉をひそめて、エクスブレインは武蔵坂学園の灼滅者たちを見つめた。


    参加者
    影道・惡人(シャドウアクト・d00898)
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)
    聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)
    居木・久良(ロケットハート・d18214)
    神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)

    ■リプレイ


     狭い路地に少女の足音が反響する。
    「……っあ!」
     追い縋る害意に恐怖を感じ、気を取られた瞬間足がもつれて姿勢を崩す。
     転ぶ痛みと、その後に続くであろう暴力に覚悟して目を閉じたその時、ぐっと腕を掴まれ引っ張られた。
    「っ! ……!?」
     予想外の感覚に声を上げ目を開ける。見覚えのあるシルエット……普通の、人間の、その姿が。
     状況を理解できない彼女を槌屋・透流(ミョルニール・d06177)は背に庇い、新たな灼滅者へと届くはずだった凶撃を居木・久良(ロケットハート・d18214)が受け止める。
    「私達はあなたを助けるためにここに来ました」
     柔らかく微笑む丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)の言葉を理解するのに時間がかかった。本当に何も知らないのだろう。
    「(今までにいない感じの灼滅者ですか……。気になるところですが、彼女を闇堕ちさせるわけにはいきません)」
     弱者を追い立てる愉悦に駆られた蒼い魔獣はなおも少女に襲いかかろうとし、制止する指揮者の指示よりも早く強大な一撃が叩きつけられる。
     攻撃を阻害されたたらを踏む敵の間に、少女とさほど歳の変わらない幾人かが割って入った。
    「待て待て。パーティーはこれからだろ?」
     携えた深紅の大剣へ付けられた『暴君』の名に相応しい笑みを浮かべた聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)に、蒼い魔獣の指揮者……デモノイドロードは鬱陶しげに息を吐いた。
    「事情は貴女を狙ったこの蒼い怪物を倒した後に説明するね」
     守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)の笑顔にも少女は動揺し、自分を助けてくれる存在であることだけは理解する。
    「助けて……くれるの?」
    「そうだ」
     吼え猛るデモノイドの声に圧されぬよう割り込みヴォイスを使って、峰・清香(大学生ファイアブラッド・d01705)が応えた。
    「私たちはこいつらの敵でこいつらに襲われている人を助けている。他の場所にこいつらの仲間がうろついているかもしれないから近くの物陰に隠れてくれ」
     言いながら安全そうな場所を示す彼女の言葉に神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)は少女へ頷き、
    「流れ弾が飛んでくるので、隠れててください」
    「えっ」
    「全弾受け止めるつもりですが、それでも飛んできたら避けてくださいね」
     少女は未知のESPと物理的な攻撃が無効のほかは特別な能力を何も持っていない。飛んでくる攻撃を避けろと言われても無理な話である。
    「ここは俺達が引き受けるから後ろの方に下がって隠れていて」
     言って、久良が左腕に付けた腕輪に触れ、無事に帰るからと気持ちを込める。
     庇われるようにして少女が隠れるその間もデモノイドとロードは灼滅者を狙い隙を窺っていたが、牽制されて動きが取れない。
    「武蔵坂学園の灼滅者ってのは随分と鼻が利くようだな、ええ?」
    「デモノイドロードのお手本のようなやつがさわいでいたのでな。一人をいじめるのは好きだが真っ向勝負は怖気づくという実にデモノイドロードらしいやつが」
     悪態に清香が挑発で返すと不愉快そうな舌打ちをし、デモノイドロードは配下へ攻撃の指示を出す。
    「(ソウルボードが現実へと零れ落ちて。時同じくして現れた今回の事件の様な人々。年齢も上から下まで、様々な特異ESPの発露、わたしの探求心にとっても響くけれど)」
     ダークネスが闇を強要し、人々の命を脅かすのは、ダークネスと戦い始めた原点。
    「抗うよ、力の限り!」
    「彼女を害するなら私達が相手です!」
    「ああ、そうかい! ならお前らから先にぶっ殺してやるよ!」
     結衣奈と愛里の決意に、害意を殺気に変えその対象を少女から変えたデモノイドたちに、影道・惡人(シャドウアクト・d00898)がガトリングガンを向ける。
    「おぅヤローども、殺っちまえ」
    「パーティーに乗り遅れんなよ!」
     次いだ凛凛虎の咆哮に物音が立った。恐らく少女が怯えたか驚いたのだろう。
     あとでフォローしないとなあ……と、幾人かはそんな風に思いつつ。
    「狩ったり狩られたりしようか」
    「Das Adlerauge!!」
     清香が手にしたスレイヤーカードを解放し、続いた佐祐理の背に鷲の翼が現れる。
     灼滅者たちは、ダークネスからとも違う視線を感じながら、それぞれに得物を構えた。


     ぐっと強く踏み込み、杭に隙間なく刻まれた人々の怒りと共に叩き込まれた清香の一撃がデモノイドを穿った。
     新たな獲物の攻撃に軋むような怒声を吐いて、蒼魔は反撃を放とうと掲げた腕をぎぢりと刃に変化させながら跳躍し、
    「オラオラッ」
    「!」
     ガガガガッ!!
     突如撃ち込まれた弾丸に貫かれのたうちまわる異形を一瞥し、射手は仲間の位置と動きを見取りながら少女の隠れる場所へと視線を投げた。
    「(良い能力じゃねーか)」
     戦闘のロジック極めりゃ足取り1つであらゆる行動が読めるぜ。重さってなぁあらゆる万物の理に通じてんのさ。
     惜しむらくは、彼女に戦う能力も技術もないことだろう。せめて自分で身を守ることでもできれば使い物になるのだろうが。
     今は無駄な思考を切り上げ、惡人は次の目標を狙う。
    「(何が起きてるんだろうな……まあ、今はできる事をやるだけか)」
     考えても答えは出ないと疑問を払い、透流はふっと息を吸う。
    「……ぶち抜く」
     宣言めいた言葉と共に放ったダイダロスベルトの奔流に敵が絡め取られ、絶命するのも気にせずデモノイドロードが腕を前へ掲げる。
     肉が蠢き現れた砲口から放たれる毒光。
    「いけない……っう!」
     とっさに前へ飛び出した佐祐理が攻撃をじかに食らい冒された毒に顔をしかめた。
    「佐祐理さん!」
     久良が弾丸をファニングで叩き込むがかわされ、治癒のために結衣奈はWOKシールドを展開しようとし、しかし彼女を蝕む深さに気づくと清めの風を招き癒す。
     能力が強化された特別な個体ではないはずだ。であれば。
    「ジャマーですね……」
     そのポジションの敵を優先目標とする愛里が疾らせたダイダロスベルトをデモノイドロードは受け流そうと構えるが、狙撃手の狙いは正確だった。
     蒼躯を貫かれ悪態を吐く敵に、久良は目をすがめる。
    「(最初はただ助けられなかったから。楽しくなかったから)」
     笑っていようって思ったのも、誰かを助けたいって思ったのも。そうすることを諦めないって思ったのも。
     気がついたらここまで来ていて、ここから先何処に行くかはわからないけど。
    「笑ってたいって思うよ」
     大切なものと一緒に。
    「そのために命懸けだ!」
     ぐっと太刀を握りしめる彼に、惡人が落ち着けと制する。
    「感情は戦闘の前と後にだけありゃいんだ、今は欠片もいらねぇ」
     ガトリングガンの弾を叩き込みながらぶっきらぼうに言うその言葉も間違いではないのだろう。
     目的は同じく、倒し、救うために。

     目覚めたばかりの灼滅者であれば数を揃えても苦戦しただろうが、彼らは幾たびもダークネスと得物を交えてきた歴戦の強者。
     雑魚と侮るには油断ならないものの、デモノイドをすべて倒すのに時間はかからなかった。
    「テメェらは幾ら進化しても進歩しねぇ。だから駄目なんだ」
     凛凛虎が叩き込む拳をギリギリのところでかわし、自らを癒しながらデモノイドロードはぎりと歯を軋らせた。
     当初こそ余裕を見せていたが、決して軽くはない傷を負っている。
    「チッ……貧乏クジを引いたぜ。あのクソッタレをぶっ倒すだけの簡単な仕事だと思ったのによ」
    「あなた達の思い通りになると思わないで下さい!」
     吐き捨てた台詞ごと討ち伏せようと愛里が瑞緑の槍に力を込め、弧を描き振るわれたその切っ先から放たれた氷柱は、彼女の意志と同じくまっすぐに敵へと放たれる。
    「やねこいことを!」
     苛立たしげに振るって氷柱を弾き飛ばした腕を蠢かせ、強酸性の液体を吐き出す。
     身軽に透流がかわしたその時酸弾のかすめた帽子ははらと落ち、路地裏を流れた風に彼女の金の髪が揺れ、落ちた帽子を見つめた瞳に怒りが滾った。
    「ぶっ壊す!」
    「おおお!?」
     解体ナイフを構えて襲いかかる灼滅者の斬撃を避けきれず、異形の身をめった切りに刻まれる。
     ぐらと姿勢を崩したデモノイドロードの耳を打つ、清香の美しい歌声が意識をさらっていき。
    「これで内なるダークネスもスッキリってな……あ? まぁデトックスの話さ」
     適当なそぶりでうそぶきながら、敵の懐に飛び込んだ惡人がダークネスの身体に傷を深く穿つ。
     がふっ、と血を吐き出し、ぎらりと灼滅者を睨みつけた。
    「どうせ同じ穴のムジナだろうが!」
     勝機はないと悟ったデモノイドロードが、己の腕を長大な刃に変え捨て鉢に飛びかかる。
     だが、その視界を遮ったのは力強く羽ばたく翼。
    「私のダークネスとしての正体は、人を魅了させるというサイレン。その力を信じます!」
     身を呈して攻撃を受け止めた佐祐理の影から久良が躍り出る。
    「真っ直ぐに未来を切り開くための希望になりたいんだ!」
     鉈のように分厚い刀身に籠められた、真っ直ぐ進む決意の如く真一文字に刀を振り抜き、
    「わたしの全力全開の一撃で切り拓くよ、未来を!」
     結衣奈が強く踏み込んで跳躍し、渾身の力を込めてマテリアルロッドを叩きつけ、ありったけの魔力を流し込む。
     ど、おっ!
     打擲の衝撃と内からの爆発に耐えきれず、デモノイドロードは声を上げる間もなくその姿を失う。
     だが、まだ敵がどこかに潜んでいるかもしれない。注意深く周囲を警戒して透流が視線を巡らせると、物陰からそおっと顔を出してこちらを見ている少女と目が合った。


    「怖がらせてすみません。怪我をしていませんか?」
     問いながら愛里が少女の状態を確かめる。隠れている間に少しぶつけたりした程度で、大丈夫なようだ。
    「んじゃ後ぁ任せたぜ」
     背を向けた惡人に、えっと皆の視線が集まる。
    「じゃな」
     ちらと少女を見て短く告げ去ろうとするその背へ、無力な灼滅者は何度か口を開けたり閉じたりして、
    「あ……ありがとう、ございました……!」
     ようやくそれだけを絞り出す。
     粗暴な態度に善く思われないであろうと、半ば意図的に振る舞うシャイダーな彼へと。
     隠した素顔にどんな表情が浮かんでいたかは分からないが、それでも少女の声に忌避は決して含まれていなかった。
    「えーと、俺は凛凛虎。名前は?」
     問うと少女は少し迷い、それから名乗る。この時代逆に珍しいくらいありふれた名前だった。
     結衣奈が学園の情報を纏めたパンフレットを渡しつつ、事情を説明する。
    「ただ私達灼滅者と貴女との違いがあって。サイキックの破壊の力が出現していないこと、だね」
    「…………?」
    「その辺りの解明と身の安全の為、学園へ来てもらえるかな?」
    「危害を加えないと約束しよう」
     清香も彼女に頷いて見せるが、唐突に来いと言われてもすぐには決断できない。
    「武蔵坂学園は私達のような力を持った人が集まっているところなんです。またあのような相手から襲われたとしても、あなたのことを守ることができます」
    「君を守るためにも学園に来て欲しい。そうすれば君が得た力についてもわかるから」
     誠実に告げる愛里と久良に続いて、佐祐理が背中の翼をゆったりと動かして見せ、
    「灼滅の力を得るために、私のような異形となった方もいますけど、決して驚かないでくださいね~」
     武蔵坂学園はさっきのような怪物と戦える方々がいますので、安全は保証できますよ~。と微笑むが、少女は迷っているようだった。
    「帰って詳しい話を聞かせてやるさ」
     透流に帽子をかぶせてやりながら凛凛虎が言い、
    「助けてやったんだ。見返りとして、俺を殺せるぐらいの良い女にはなってくれよ」
     いっそ凶相とさえ呼べる表情で少女へ告げた彼に、その言葉の意味をなんとか理解しようと懸命に考え、
    「え……と、じゃあ、……わ、私が殺す前に、殺されないでくださいね」
     かろうじて応える。多分少女の中では、悩殺とか恋に落とすとか、そういう意味に受け取ったのかもしれないが。
    「重さを量る能力についても聞きたいのですけど……」
     断ってから愛里があらかじめ重さを調べておいた小物を出して見せ、重さを訊いてみる。
     少女は数瞬それを見つめるとある数字を口にし、それは確かに正確だった。
    「……あ。よければ体重を調べるとかも」
    「それは遠慮しておきます!」
     彼女からの提案は特に女性陣が強く辞退した。
     ともあれ、一度学園に戻ろうと各々にその場から離れる。
    「重さがわかるのって色々出来そうで楽しそうだね」
     笑顔で明るく言う久良に、少女は少し迷い、
    「……私も、何か役に立てるのかな」
     ほつりと小さく口にした言葉に、灼滅者たちは彼女を見つめる。
     誰もが最初から強い力と揺らがぬ意志を持っていたわけではない。或いは今も。それでも前を向いて進んできた。
    「もちろん」
     笑って、新たな灼滅者へと手を差し伸べた。

    作者:鈴木リョウジ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年5月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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