●都内某所
トレーニングジムが乱立している地域があった。
この辺りでは、道を歩けばボディビルダーに遭遇すると言われていたため、それ以外の人間がこの場所を訪れると、筋肉ムキムキになるまで家に帰してもらえないと言われていた。
そして、その噂から生まれたのが、今回の都市伝説である。
「おっ、キレてる。キレてるねえ」
被害者の写真を眺めつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を説明し始めた。
今回、倒すべき相手は、筋骨隆々の都市伝説。
もう体から頭の中まで筋肉、筋肉、ムッキムキだ。
そのため、考えるよりも先に体が動く。
とりあえず、殴ってから考えるタイプ。
しかも、都市伝説は貧弱な人間を見かけると、鍛えずにはいられない。
おそらく、お前達が行く頃には、何人かの草食ボーイ達が都市伝説に捕まって、鍛え上げられている最中だ。
既に身も心もボロボロ。
自分の身に降りかかった不幸を受け入れる事が出来ず、魂が抜けた表情を浮かべている。
その上、都市伝説はそんな彼らを盾代わりにして、攻撃を仕掛けてくる。
どうやら、これもトレーニングの一環らしい。
このどこがトレーニングなのか、よく分からないが、脳味噌まで筋肉化しているせいで、完璧に頭のネジが緩んでしまっているのだろう。
マトモに相手をしていても時間の無駄だから、ちゃちゃっと倒してしまってくれ。
参加者 | |
---|---|
巽・空(白き龍・d00219) |
比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646) |
御柱・烈也(無駄に萌える熱血ヒーロー・d02322) |
ヴォルフガング・シュナイザー(Ewigkeit・d02890) |
水無瀬・楸(黒の片翼・d05569) |
西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504) |
広井・ヒロト(高二の歌うバイク乗り・d09350) |
東野・昌(新米技術者・d10273) |
●筋骨隆々
「……ムキムキマッチョ? そんなのより女の子の方が可愛いし、見てても楽しいよなぁ。はぁ……、目に優しくもない脳筋(都市伝説の事)には、とっとと退場願うか」
げんなりとした表情を浮かべ、水無瀬・楸(黒の片翼・d05569)が溜息を漏らして、都市伝説の確認された場所にむかう。
都市伝説が確認されたのは、トレーニングジムが乱立している地域。
そのせいか、独特な筋肉臭が辺りに漂っていた。
おそらく、気のせいだが……。
「ムキムキ……か。いや、鍛えるのは悪くない。逞しいのもいいが……。ボディビルの筋肉は正直、気持ちが悪い。都市伝説がそれだったら、もう細切れにするしかない」
思わず想像してしまい、西院鬼・織久(西院鬼一門・d08504)が激しく首を横に振る。
だが、ヤマトの話を聞いた限りでは、ビルダー体型である可能性が高かった。
その事を考えるだけで、細切り、細切れ、ミンチにしたいと言う衝動に駆られるが、グッと我慢。
おそらく、感情が爆発するのも時間の問題だが、その頃までには必ず都市伝説が現れるはずだ。
「それにしても、貧弱な人間を見ると、鍛えずにはいられないって、迷惑極まりないぜ。人間、限度ってもんがあるんだよ。それだけは守りつつ、体は鍛えなくっちゃな」
やれやれと首を振りながら、比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646)が口を開く。
それだけ、肉体を酷使する者が多く、筋肉さえつけば良いと言う考えが多く、都市伝説もその影響を受けてしまったのだろう。
それからしばらく歩いたところの空き地で、都市伝説と一般人達を発見した。
都市伝説は一般人達を捕まえてトレーニングをしており、必要以上にプレッシャーをかけて彼らを追い詰めているようである。
そのため、一般人の中には弱音を吐く者もいたが、そんな時には鉄拳制裁。
余計に事が考えられないようにするため、さらに過酷なトレーニングを課せていた。
「あれはトレーニングと言うよりも拷問ですね。早く助けないと死人が出てしまいます」
すぐさまライドキャリバーに飛び乗り、東野・昌(新米技術者・d10273)が険しい表情を浮かべる。
それに気づいた都市伝説が『お前達もトレーニングがしたいのか。ならば来い。鍛えなおしてやる!』と言ってニカッと笑う。
「動くための体じゃない。人として間違ってる」
それを見た織久が激しく怒りを爆発させ、都市伝説めがけてティアーズリッパーを叩き込む。
だが、都市伝説は全身の筋肉を隆起させ、『ははは、元気が一番』と言って攻撃を受け止める。
「うわっ……、見るからに暑苦しいじゃねえか。ここは血気盛んな仲間達に頼らせてもらうぜ。俺以外の全員……突撃!」
色々な意味で身の危険を感じ、広井・ヒロト(高二の歌うバイク乗り・d09350)が後ろに下がっていく。
「はははははは、遠慮しておきます。本音を言えば関わりたくありませんし、とりあえず、シュヴール。よろしくお願いしますよ」
乾いた笑いを響かせながら、ヴォルフガング・シュナイザー(Ewigkeit・d02890)が霊犬のシュヴールに視線を送る。
しかし、シュヴールはヴォルフガングの遥か後方。
どうやら、生理的に受け付けないらしい。
それでも命令と言う事で渋々前に出てきたが、あまり乗り気ではない様子。
「まずは一曲だ、かるく盛り上がってくれよな!」
その場の空気をガラリと帰る勢いで、梨依音がディーヴァズメロディを使う。
次の瞬間、都市伝説がまわりにいた一般人を嗾け、『いますぐ、そいつらを捕まえろ!』と命令をする。
「肉体的だけでなく、精神的にも辛い戦いになりそうですね……。うぅ……、怖いですけど、草食さん達を助けないと!」
自分自身に言い聞かせ、巽・空(白き龍・d00219)が王者の風を使う。
その気迫に圧倒され、まわりにいた男達がたじろいだ。
だが、都市伝説は彼らの首根っこを掴むと、盾代わりにして襲いかかってきた。
「何かで守らなきゃいけない筋肉なんて怖くないです! 来いよ、筋肉! 盾なんて捨てて掛かってこいの心意気ですっ! ……少し言い過ぎましたか……って本当にきたああぁ!?」
青ざめた表情を浮かべ、空が慌てた様子で走り出す。
自分で挑発しておいて何だが、都市伝説は無駄に怖い。
全身だけでなく、顔まで筋骨隆々。
そんなモノがアップで迫ってくるのだから、恐怖以外のナニモノでもない。
脳裏に過るのは、後悔と何か。
「無駄に鍛えるマッチョは、萌えないゴミ出すしかねぇ!!」
指をポキポキと鳴らした後、御柱・烈也(無駄に萌える熱血ヒーロー・d02322)が一般人を踏み台にして飛び上がる。
それに気づいた都市伝説が一般人を盾代わりにしようとしたが、烈也はそれを先読みして背後に回り、すかさず強烈な一撃を叩き込む。
「やるじゃないか、小僧……」
そう言って笑った都市伝説の表情からは、先程までの余裕が消えていた。
●都市伝説
「この様な方と私は絶対に相容れない存在ですね」
都市伝説に冷たい視線を送り、ヴォルフガングが少しずつ間合いを取っていく。
この様子では、脳味噌まで筋肉化しているのだろう。
荒々しく息を吐きながら、全身の筋肉を隆起させている。
「とっとと逃げろ!」
まわりにいた一般人に対して、楸がパニックテレパスを使う。
しかし、一般人達は今まで強制的にトレーニングをさせられていたせいで動けない。
それよりも今は眠りたい気持ちの方が勝っているため、危機感があるにもかかわらずその場から動こうとしなかった。
「はははっ! これぞ、俺のカリスマ性が成せる業! 悔しかったら、俺を黙らせてみろ!」
高笑いを響かせながら、都市伝説が一般人達の肩を抱く。
それは単なる思い込みであるのだが、一般人達も否定するだけの余裕がない。
「ふん……、そうやって貧弱なのを盾にしないと闘えないなんて、見掛け倒しの筋肉だな? 男なら、素手で来い!素手で!!」
都市伝説を挑発しながら、烈也が都市伝説に攻撃を仕掛けた。
だが、都市伝説は全身の筋肉を隆起させ、烈也の攻撃を受け止めると、ハンマーのように強烈な一撃を叩き込む。
これには烈也も膝をつくほどのダメージを受けたが、都市伝説に悟られるようにするため顔には出さなかった。
「お前の~筋肉は~全部嘘さ~♪ ヒョロヒョロの~陰に隠れてビクビクしてる~♪ 見かけ~倒しの~マーッチョマーン♪」
都市伝説に聞こえるように大声を上げ、ヒロトがディーヴァズメロディーを使う。
その途端、都市伝説が、大激怒!
「何だと!? もう一度、言ってみろ!」
顔面の筋肉まで隆起させ、都市伝説が睨みを利かす。
それに気づいたヒロトがライドキャリバーのバイクに飛び乗り、都市伝説と距離を保つようにして逃げていく。
「さってと、都市伝説とセッションだ」
小さい体を武器にして距離を縮め、梨依音が都市伝説の懐に潜り込み、そのまま地獄投げ。
その一撃を食らって都市伝説が壁に激突したが、何食わぬ顔で起き上がり、トレーニングをし始めた。
「そんなに肉体に自信があるなら自分の銃と勝負しますか」
都市伝説を迎え撃ちようにして、昌がバレットストームを撃ち込んだ。
それに合わせて空が閃光百裂拳を放ったが、都市伝説に睨まれたため、逃げるようにして飛び退いた。
やっぱり、怖い。むちゃくちゃ怖い。
ある意味、夢に出るレベル。
それ以前に顔まで筋肉質な都市伝説の顔が脳裏に焼き付き、だんだん頭が痛くなってきた。
●筋肉質
「……たくっ! 視覚の暴力だ。目が腐るわ。……てな訳でとっとと消えろ」
八つ当たり気味に吐き捨て、楸が都市伝説に黒死斬を叩き込む。
それでも、都市伝説は怯む事無く、『効かぬわっ!』と叫んで、反撃を仕掛けてきた。
だが、その言葉とは裏腹に都市伝説は、全身血まみれ。
とても、無傷だとは言えない状況であった。
それでも、効かないと言っているのは、おそらく……強がっているのだろう。
「お前の! 勇気を! みーせてーやーれー♪ 織久! 織久! お前はつーよーいー♪」
バイクに乗ったまま都市伝説のまわりをクルクル回り、ヒロトが織久を応援しつつ機銃掃射で牽制をする。
それと同時に都市伝説が弾を弾くようにして拳を放ったが、その甲斐もなく全弾命中。
その間に距離を縮めてきた織久が放ったデスサイズを喰らい、パックリと切り裂かれた胸元から噴水の如く大量の血を撒き散らす。
「身体ばかり鍛え過ぎたせいで、無駄が多すぎますね」
素早い身のこなしで攻撃を避け、ヴォルフガングが紅蓮撃を叩き込む。
次の瞬間、都市伝説の体が炎に包まれたが、『こんなものは効かぬゥ! 効かぬううううううううう!』と叫んで殴りかかってきた。
おそらく、痛みを感じる前に行動しているためだろう。
普通ならば、倒れていてもおかしくないほどの傷を受けているのだから……。
「オラオラオラオラオラオラ! 貧弱! 貧弱!」
都市伝説を迎え撃ち、烈也が鋼鉄拳を炸裂させた。
その一撃を食らって都市伝説が派手に吹っ飛び、『ば、馬鹿なァー!』と叫んで跡形もなく消滅した。
「YOU WIN」
それを見た一般人がポツリ。
目が虚ろなせいか、無意味に怖い。
何となく、次の挑戦者が現れそうな勢いである。
「はあ……、何だかいつも以上に疲れた気が……」
グッタリとした表情を浮かべ、空がその場に座り込む。
目を閉じれば、都市伝説。
人型のものを見れば、出来の悪い合成写真の如く、都市伝説の顔と重なった。
ある意味、都市伝説の置き土産。
気にしなければいいのだが、気になってしまうのだから、仕方がない。
「ひょっとして、強制的に悪夢を魅せられた気分って、こんなんかなぁ。まぁ、あいつ等よりはマシだろうけどさぁ。癒しが欲しい……この際、女の子じゃなくて犬猫でもイイから居ないかなぁ」
どこか遠くを見つめるようにして、楸が一般人達に視線を送る。
一般人達はようやく悪夢から解放され、その場に座り込んだまま動かない。
この様子では休む事無くトレーニングを続けさせられていたのだろう。
「このまま放置したら死にそうなので、病院に連れて行きますね」
一般人達に肩を貸しつつ、昌が彼らを病院に連れていく。
おそらく、大した事はないと思うが、一般人達は『ありがとう』、『この恩は必ず』と言って、昌に対して感謝の気持ちを示すのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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