タタリガミの最期~僕は違うはず

    作者:聖山葵

    「進学して新しい学校になじめず、あいつは孤独に負けて僕に身体を奪われ、消えた」
     寂しい終わり方だったかも知れないと独り言ちたソレはだけどと続け、頭を振る。
    「違う。僕はあいつとは違うんだ」
     こんなところで終わりはしない、その為にここにたどり着いたのだからと自分に言い聞かせるようにして手にした手帳を握りしめる。
    「そう、たどり着けたんだ。この曰く付きの廃墟に」
     瓦礫と埃に埋もれた薄気味悪い建物ではあるが、このタタリガミにとって七不思議のあるそこはまさにホームグラウンド。
    「大丈夫、ここまでこれたならきっと上手くいく。今は雌伏の時なん――」
     なんだと続けるつもりだったであろうソレは、次の瞬間飛び込むようにして床を転がる。埃が舞った、だが、そんなことはどうでも良かった。空中に浮いた鎖が今までタタリガミの立っていた場所を貫いたのだから。
    「う、嘘だろ?! い、いや、まだだ! ここは僕の領域ッ!」
     驚愕に顔を引きつらせはしたもののすぐさまタタリガミは反撃に転じる。手帳にペンを走らせながら怪談を読み上げれば、実体化した怪談が空中に浮いていて、どこにも繋がっていない鎖に斬りかかり。
    「バラバラになっちゃえよ! 僕は! そう、僕はこんなところで終わ」
     己を狙った鎖を睨み付け喚いたソレの言葉がふいに途絶えた。
    「あ……れ?」
     ゆっくりと視線を自分の腹部に向けたタタリガミ、そこからは血塗れの鎖が生えていて。
    「な」
     視線を戻せば都市伝説に襲わせたはずの鎖がもうそこにはなかった。
    「なんだよ、これ。こんな、こんなことが――」
     あるはず無いと続けるより早く、鎖の先端がブレて増えた。まるで翼のように広がった鎖は獲物を包み込むようにして捕らえると、そのまま命を奪ったのだった。

    「聞いているかも知れないが、ソウルボードで活動していた都市伝説の撃破に概ね成功したそうだ」
     ラジオウェーブの勢力はソウルボードの電波塔を失い、切り札だったであろう巨大七不思議を撃破され、最後の望みをかけたと思われる今回の作戦も阻止され、壊滅状態といって良いだろう。
    「残念ながらラジオウェーブの行方は掴めていないのだがね、勢力として大きな事件を起こす力はおそらく残っていないだろう」
     そしてラジオウェーブ配下のタタリガミ残党も、自分1人の拠点に引きこもって守りを固めているだけだったのだが。
    「そのタタリガミ達がどうやら襲撃される様なのだよ」
     と襲撃されるタタリガミをたまたま探していた情報提供者の妃・柚真(混沌使い・d33620)を傍らに座本・はるひ(大学生エクスブレイン・dn0088)は君達の前で手を組み、続ける。
    「落ち目のダークネス組織が他のダークネス組織に潰されるのは良くあることでね。ただし、今回はその『よくあること』とは少し様相が違う」
     タタリガミを襲う襲撃者がダークネスではなく突如現れた巨大な鎖であるという点において。
    「件の鎖は間違いなくソルウボードで都市伝説が攻撃していた『鎖』と同質のものだろう」
     全長7m程度と少し短めな分、今回の鎖は動きが早く、多彩なサイキックを使用して攻撃を行なってくるとのことのこと。
    「ソウルボードを守っていた鎖よりも高い戦闘力を持つと見ていい」
     予知ではまさにそれを証明するかのように鎖はタタリガミを終始圧倒し撃破する。
    「そして、撃破後には何処へともなく消失してしまう。まぁ、経緯を鑑みれば、ソウルボードへの攻撃に対する報復と見るのが妥当なところだろうがね」
     ただし、あの鎖が『好きな場所に出現できる』としたら。
    「脅威となるのは間違いない。くわえて言うなら、多くの灼滅者もまた『鎖の破壊』を行っている。鎖が次に君達を標的に定めても私は驚かない」
     故に今回の君達は呼ばれる事となったのだろう。
    「君達には現場に向かい、脅威となる前に鎖の撃破を行なうか、或いは、なんらかの情報を持ち帰ってほしい」
     これまでの事件から考えると鎖と会話する事は不可能であろうが、何か感じるモノがあるかも知れず、新しい情報を手に入れる事が出来る可能性はあるとはるひは言う。
    「接触はタタリガミが引きこもろうとした廃墟となる」
     時間帯は夕方で、夕日の光が差し込む為に明かりを持ち込む必要はない。
    「自身を安心させる為か、ブツブツ呟いているところへ鎖が襲撃をかけてくるようでね」
     戦闘になればタタリガミは七不思議使いの、鎖はダイダロスベルトやバベルブレイカー、妖の槍にウロボロスブレイドのサイキックに似た攻撃を使って応戦するだろうとははるひの弁。
    「迎撃することを視野に入れていたのか、廃墟のタタリガミが居る部屋に出入り口はドアのない戸口と壁に空いた大穴の二つ。窓もあるものの人が通り抜けられるサイズではなくてね」
     おそらく穴の方は脱出用なのだろう。
    「君達と鎖が交戦すればタタリガミは逃亡を図ると思うのでね、君達には大穴側から足を踏み入れる事を推奨しておこう」
     この場合、タタリガミは鎖と君達に挟み撃ちされた状態となるのだとか。
    「鎖だけにさえ倒される所に君達まで現れればタタリガミにとって生存は絶望的だろう」
     もっとも、タタリガミの逃亡を許せば一般人にとって脅威となる危険な都市伝説を生み出す可能性がある。
    「タタリガミを倒したあと、鎖をどうするのかという問題もある」
     考えることも多いだろうが、手に入れた情報が今後をさゆうするかもしれない。よろしく頼むよとはるひは君達に頭を下げるのだった。


    参加者
    古海・真琴(占術魔少女・d00740)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    妃・柚真(混沌使い・d33620)
     

    ■リプレイ

    ●廃墟の中を回り込み
    「鎖を破壊したらESPのみ使える灼滅者が誕生して、今度は鎖も現世に出現ですか」
     床に落ちて割れた天井の欠片の横を歩きつつ、富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)はポツリと呟いた。
    「タタリガミと鎖……というか。ラジオウェーブと鎖を作った存在は何か世界の根幹に関わる感じがするけど……」
     まあいいやと自身の独言を流し竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)も目的の場所を目指し廃墟を行く。進めば先に何かあるだろうしと続けた言はある意味で正しい。もたらされた情報通りであるなら、タタリガミが鎖の襲撃を受けている場面に遭遇するはずであり。
    「ソウルボードでは『鎖』を壊さず見逃したっすからね。今度は粉々に砕いてやるっすよ」
     とはギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)の弁。
    (「今回はタタリガミに、鎖が相手ですか」)
     どちらも一筋縄では行かない強敵と思ったのか、どことなく緊張した様子の妃・柚真(混沌使い・d33620)は不意に手を引かれ。
    「柚真、大丈夫っす。柚真には傷一つつけさせやせん」
     そのまま柚真を抱き寄せたギィが唇を落として言う。恋人同士、二人だけの空間が形成され。
    「竹尾君、離して貰えますか? 急用が出来ましたので」
    「落ち着いてよ」
     何か黒いモノを帯びた良太を後ろから登が羽交い締めにして制止する光景があったとか無かったとか。光あるところに影が差す様にカップルがいちゃつくところにはRBの影が差すのかもしれない。
    「と、冗談はこれぐらいにしまして」
    「冗談なの? 割と本気だった様な気がするけど」
     約二名がコントめいたやりとりをしつつも他の面々と共に埃っぽい廃墟を進めば、壁に空いた穴が見え始め。
    「殲具解放」
     ギィがスレイヤーカードの封印を解く。
    「ペンタクルス」
     確認する様にウィングキャットに声をかけた古海・真琴(占術魔少女・d00740)も最後尾に近い位置でいつでも飛び出せる様身構える。先に参加し、鎖と接触した時のことはここまでの道すがら仲間達に伝えてあった。故にここからすべきは、戦うこと。
    「う、嘘だろ?! い、いや、まだだ! ここは僕の領域ッ!」
    「ちはっす。毎度おなじみ灼滅者っすよ。早速っすけど死んでもらえやせんか?」
     穴の向こうから驚きの声が聞こえた直後、前方にいたギィが声をかけつつ穴をくぐり。
    「は? 灼滅者?!」
     穴の向こうからタタリガミらしき人物の声が再び聞こえた時、真琴はもふもフレイムを駆って穴へと駆け出していた。

    ●挟みうたれて
    「生かしておいても、都市伝説をばらまくだけ。それならここで死に絶えてもらうっす」
     そんなギィの言い分に、驚きから立ち直ったタタリガミが勝手なことをと激昂する姿を真琴の目は映す。視界に標的は入った。後は助走の勢いを借りて飛び、流星の煌めきと重力を宿した片足で蹴りつけるつもりだった、だが。
    「おや、自分達に気をとられてていいんすか? ほうら、『鎖』が」
    「な?! ぐうっ」
     ギィの指摘に振り返ったタタリガミの脇腹を凄まじい早さで伸びた鎖が貫く。そう、タタリガミを狙うのは灼滅者達だけではない。
    「ぐ、あ……何でだよ、このタイミングで何で灼滅者ま」
     ついでに言うならばタタリガミに攻撃をしかけようとした灼滅者も真琴だけではなかった。
    「蝋燭の炎よ、花となり敵を焼き尽くしなさい」
     赤い炎の花を柚真が飛ばすと同時にギィが無敵斬艦刀『剥守割砕』で斬りかかっていたのだ。灼滅者達に気をとられ、鎖に一撃貰った直後に自身を襲う連係攻撃。
    「こん、な……ちくしょぉぉおっ!」
     痛みに顔を歪めつつも手帳にペンを走らせ書き出した怪談を読み上げれば実体化したソレは刃を構えギィへと飛びかかる。
    「おっと」
    「ぎゃあっ、げふっ」
     盾にした無敵斬艦刀の腹に怪談の刃が叩き付けられ、攻撃の手を止められつつもダメージを免れたギィとは違い、炎の花がぶち当たったタタリガミは仰け反りながら悲鳴をあげ、そこに真琴の跳び蹴りが突き刺さる。
    「すいませんね。恨みはありませんが一般人にはあなたも脅威ですので」
     もうこの時点で殆ど一方的にタタリガミが攻撃される流れではあったが、灼滅者達に容赦する理由もなかった。
    「残念だけど逃げられないよ。ところで、あの鎖って何?」
    「ぐうぅ、そんなこと何でお前に答えなくちゃなんないんだよ!」
     良太と示し合わせる様に動きつつ登が穴の前に立ち塞がって問えば、傷口を押さえ炎を纏った良太の蹴りを転がって避けながらタタリガミが吼える。まぁ、明確に敵対した上最後の希望であったろう退路まで断ってくれた相手の問いなのだ、この反応も仕方なく。
    「くそっ、ええい、そこを退けッ! 僕は! こん」
     突撃してきたライドキャリバーのダルマ仮面を紙一重でかわし、肉球でパンチしてくるペンタクルスを払いのけたタタリガミの動きが言葉と共に止まる。
    「あ……れ?」
     ゆっくりとタタリガミが視線を下げれば捻りがくわえられた鎖が鳩尾の辺りから生えており。
    「鎖の存在を忘れていたようですね」
     単独でもタタリガミを圧倒し、屠る力がある鎖だ。灼滅者達まで敵となれば、タタリガミが灼滅されるのは元より時間の問題だっただろう。
    「どう……して、僕はこん」
     灼滅者達が追撃を加える必要もない。だが、逃亡を警戒していた灼滅者にとって手を止める理由にもならない。タタリガミの手から手帳が落ち、埃を舞あげたソレもすぐさま主の後を追う。
    「それじゃ、ここから本命の『鎖』戦っす」
     概ねの予想通りあっさり片づいたタタリガミの死にはもう目もくれずギィは浮かぶ鎖へ目をやり構え直す。
    「そっちも逃すわけには行かないんだよね」
     何しに来たかの分からない以上、登も黙って見過ごすつもりはなかった。鍛え抜かれた拳が叩き付けられ、吹き飛んだ鎖が空中で減速しつつ向きを変えた。灼滅者達を敵と認識したのだろう。
    (「……意思疎通は不可能。ですが、これは」)
     正対して真琴は困惑する。鎖に悪意を感じられなかったのだ。強いて言うなら眼前の鎖から受ける印象は何者かが使役する道具の様なモノであり。
    「役目が違うからかそれとも」
    「いずれにしても、やることは一つっすよ」
     もともと鎖は破壊する方針であったし、もう鎖は灼滅者達を敵と認識しているのだ。それに使役される道具の様な印象が正しいなら言葉を投げかけて何らかの答えが返ってくる可能性は低く。
    「すいませんね。恨みはありませんが――」
     謝罪を口にした時、良太は既に鎖を掴み高く持ち上げていた。
    「一般人にはあなたも脅威ですので」
     叩き付けられれば、生じた爆発に鎖が再び吹っ飛ぶ。
    「中君、助かりましたよ」
     タタリガミの攻撃すら介入しない場合あっさりとかわしていた鎖が掴みかかる良太の手を避けられなかった理由は、別方向からほぼ同時にしかけたビハインドである中君の一撃。
    「バベルの鎖が緩んでいる、とすると、予知……というか、今まで何度かあった嫌な予感を感じる能力が鈍くなっているはずですから」
     見たまんま鎖と言う形状の敵を前に推測を口にして特に攻撃かわすときに気を付けないとと真琴は警戒を露わにする。ダークネスや灼滅者の持つソレは実体化してないし目にも見えないと明確な違いがある訳だが。
    「まぁ、それが正しいかどうかはわからないけど、油断して良い相手じゃないよね」
     一ダークネスを圧倒するだけの力を持つ存在は登の視界の中で鎖の先端をブレさせた。

    ●鎖
    「ダルマ仮面っ」
     灼滅者達の知るサイキックで言うならばイカロスウイングに相当するのであろう攻撃を鎖が放つ。翼の様に広がった鎖へ真っ先に反応を示したのは、仲間達の盾たる立ち位置にいたライドキャリバー。
    「相手の数が多いと見て取るや即座に範囲攻撃ですか」
     剣に刻まれた「祝福の言葉」を風に変え良太が解放すれば風は鎖に傷つけられた仲間達を癒やしてゆく。
    「痛いね、やっぱり」
     単体でタタリガミを屠りうるだけの力を持つ者の一撃は威力に劣る範囲攻撃でも登に顔をしかめさせ攻撃よりも味方の回復を選ばせるには充分だった。
    「範囲攻撃であれなら、かすり傷じゃ収まらなくなる可能性も、考えて無茶しすぎないように……と言っても無理か……」
     後方から敵味方の攻防を見た真琴には楽観視出来る様な材料が無く。
    「っ」
     うねる様に今も柚真の射出した帯から回避行動を取った鎖は、次の瞬間、端を出現した逆十字に引き裂かれた。
    「敵対した以上は倒すか退くかしかないっすよ。それと、柚真ナイスアシストっす」
    「はい、ですが次は当てますね」
     ちらりと柚真が視線を向けた先で宙を泳ぐ鎖は健在であり。
    「いきますよ、ペンタクルス」
    「にゃあ」
     主の声に一声鳴いたウィングキャットがオーラを拳に集中させた真琴と共に仕掛けるところだった。
    「はあああっ!」
     肉迫してからの凄まじい拳の乱打と別方向から放たれる猫魔法。流石に連係しての同時攻撃を両方はさばけず、鎖がひたすら殴りつけられた所に中君が霊障波を放つ。明らかに避けられないタイミングであり。
    「っ」
     だからこそ避けようともせず身体を高速で振り回し始める鎖を視界に収めたギィは仰け反る様にして身体を傾けた。
    「また範囲攻撃、今度はブレイドサイクロンか」
     加速のついた鎖本体が唸りを上げ、灼滅者達に襲いかかる。荒れ狂う鎖が埃を巻き上げ、中君を強かに打ち据える。殴打の形になったのは振り回されているのが鎖であるからか。
    「中君」
    「っ、ディフェンダーなら、まだ、大丈夫の……筈」
     自身もディフェンダーの登はダルマの手指先に癒しの力を集めて撃ち出し。怯まず突撃していったダルマ仮面のぶちかましで振り回されていた鎖の動きが止まる。
    「今です」
     狙い澄ましたかの様に蝋燭の炎から火の花を柚真は飛ばした。この時、別の方向からは炎を宿した無敵斬艦刀がまさに振り下ろされるところであり、避けきれなかった鎖は炎に包まれる。
    「次はこれです。どんどん命中精度を高めていきますよ!」
     帯の先端を鎖に向け、柚真が射出に備える中。
    「にゃっ」
     ウィングキャットの肉球パンチが鎖を襲い。
    「このまま攻めましょう」
     殺人注射器を片手に地を蹴る真琴の声に他の灼滅者が声ではなく鎖への攻撃と言う形で応えた。炎を纏った蹴撃に鎖のパーツ同士が擦れて悲鳴をあげ、それでも同じ場所へ留まろうとしたところに中君が霊撃を叩き込む。
    「連係をもう少し重視していればもっと攻撃も当たっていたかも知れませんね」
     タタリガミを単体で圧倒する相手だ、手を出さなければそのまま帰ってくれた相手かも知れなくとも倒すつもりで挑むなら。
    「それでもダメージは蓄積してるはずだよね」
     ダルマ仮面が機銃を掃射する姿を視界に収めつつ登がバイオレンスギターをかき鳴らせば、立ち上がる力をもたらす響きが廃墟の中に満ち。
    「逆十字を、その身に刻み込みなさい!」
     攻防は続く。柚真の出現させたモノに引き裂かれ、動きの止まった鎖を緋色のオーラを帯びた無敵斬艦刀が襲い。
    「ペンタクルス」
     ウィングキャットの名を呼びながら放出したオーラに鎖は呑まれ。
    「にゃあっ」
     薄れ始めたオーラの中、微かに見えた鎖の影へとペンタクルスは肉球パンチを放つ。
    「あ」
     直後にピシリと言う音を立て鎖にヒビが走り。
    「終わったみたいっすね」
     ヒビが広がり砕け始めた鎖は消滅し始める。唐突に見えて攻防の合間に蓄積したダメージで限界を迎えたとすれば妥当な結果であったのか。こうして、戦いは灼滅者達の勝利で幕を閉じ。

    ●消えた後の場所で
    「鎖……何に対する悪意。何故、現世に」
     ブツブツ呟きつつ良太は鎖の欠片が消えた場所に視線をやる。今回は悪意とやらは感じなかった訳だが。
    「ますます訳がわからなくなった様な……」
    「考えることが増えたのは事実かも知れませんね。いずれにしても、鎖を壊した人間の1人として、最期まで見届けますよ」
     ただタタリガミを屠りに来た鎖を破壊しただけ、故に鎖と相まみえることはまたあるだろうと思ったのか、登に応じた良太は独言し。
    「調べてみましたが、特に何もありませんね」
    「見たところ、ダークネスが灼滅された時と同じ様な感じでしたが……」
     しゃがみ込んでいた柚真が残念そうな表情で漏らせば、倒された鎖の欠片が消えゆく姿を観察していた真琴もポツリと零す。
    「何にしても、やれることはやったよね。鎖は破壊出来たし」
     依頼されたのは鎖を撃破するか情報を持ち帰ること。灼滅者達は果たすべき事は果たしたのだ。
    「そんじゃ、そろそろ撤収するっすよ、柚真」
    「はい」
     もはや埃っぽいだけの廃墟でしかないそこに長居は無用とばかりにかけられた声へ柚真が答え。
    「僕はこの世からサイキックは無くなった方が良いと考えています。人間の本来の力がESPだとしたら、サイキックは何の力なんでしょう?」
     帰路につくべく歩き出した仲間達の最後尾、一人立ち止まっていた良太は返る答え無き問いを視線と共に投げ。
    「良太、そろそろ帰るよ?」
    「あ、はい」
     登に呼ばれて踵を返すのだった。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年5月9日
    難度:普通
    参加:5人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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