タタリガミの最期~鎖縛のココロエ

    作者:ねこあじ


     じゃら……り。
     上方から微かに聞こえた。息を潜めるような『鎖の音』。
     咄嗟にタタリガミ・夜音が飛び退けば、立っていた場所に振り下ろされた鎖が地を穿った。
     振り向き様に、しなる鎖の余波を鞭剣でいなす。
    「……そう、こんな場所にまで来るのね」
     紫の着物、日本人形のような姿をした夜音が呟く。無表情ともいえる硬質な顔立ち――日本人形の方がまだ表情があるというもの。
     夜音の傍らにからくり人形が出現し、矢を放った。
     鎖が矢を弾く――その動きの最中、左へと回りこんだ夜音の鞭剣が弧を描き、鎖に傷をつける。
     耳を劈く金属音。火花が散った鋭い攻防の刹那に、夜音は鎖の真下を駆け抜けた。
     走りやすいブーツが着物の裾を捌く。
     鎖の長さは約七メートル。
     叩き潰すが如く、鎖はタタリガミの胴を打った。
    「……くっ」
     この、間合いの長さ。そして長大にも関わらず、遠心を無視した鎖の戻り。
     逃げるには難しく、故に、書物を持った夜音は保有する複数の都市伝説を出現させた。
    「隙は作るもの、と。
     ちょーどぉでもいいのだけれど、アタシ、ふわっふわと地に足つかないヤツって嫌いなのよね。……っ」
     宙に浮く鎖は夜音の言葉を気にすることなく黒き波動を放ち、攻撃を続ける。

     タタリガミと鎖の戦い。
     結果――敗れたのはタタリガミ。
     鎖の圧倒的な強さを前に、抵抗もむなしく夜音は殺されるのだった。


     教室に入った灼滅者たちを遥神・鳴歌(高校生エクスブレイン・dn0221)が出迎える。
    「ソウルボードで、鎖の邪魔をすべく活動していた都市伝説の撃破、そして出現していた鎖はほぼ撃破の方向になったわね」
     この時は、先がどの道を行くのか分からなかったが、事件解決としては概ね成功だろうと鳴歌は言った。
    「ラジオウェーブの勢力は、ソウルボードの電波塔を失って、切り札だったかもしれない巨大七不思議を撃破され、最後の望みをかけたと思われる先日の作戦も阻止されて、壊滅状態といっても良いでしょうね。
     ラジオウェーブの行方は掴めていないけれど、勢力として大きな事件を起こす力は残っていないはずよ」
     やることやること、自陣の戦力を削られ続けたラジオウェーブの勢力。
    「ラジオウェーブ配下のタタリガミ残党も、自分一人の拠点に引きこもって守りを固めてたわ。
     けれど、そのタタリガミたちが襲撃される――そんな予知がきたの」
     落ち目のダークネス組織が、他のダークネス組織に潰されるのは、よくあることだった。
     だが、今回は少し様相が違っていた。
     タタリガミを襲うもの――それは『突如現れた巨大な鎖』だった。
     水晶玉に手を添える鳴歌。
    「この鎖、間違いなくソウルボード内で皆さんがみた『鎖』と同質のもの……全長七メートル程度と少し短めだけれど、動きが早く、多彩なサイキックを使用して攻撃してくるわ」
     ソウルボードにいた鎖よりも、戦闘力は間違いなく上、と鳴歌は言った。
    「それを証明するように、鎖はタタリガミを終始圧倒して撃破する。その後は、何処へともなく消失してしまうわ」
    「それは……」
     何だかぞっとした灼滅者の一人が呟き、更に、誰かが言葉を続けた。
    「ソウルボードへの攻撃に対する報復とみなすのが、妥当、か?」
    「けど、あの鎖が『好きな場所に出現できる』としたら、やばいよね」
     脅威だ。
     そして『鎖の破壊』を灼滅者たちは行った。タタリガミの次は、『灼滅者』が標的となる可能性が高い。
    「そこで、皆さんには、現場に向かって、こちらの脅威となる前に鎖の撃破を行うか、あるいは、何らかの情報を持ち帰ってほしいの」
    「戦いながら情報を探れるかな……」
    『戦闘特化』ともいえる鎖を相手に、それは難しいだろう。鳴歌は言葉を探る。
    「鎖は、戦闘中は撤退することはできないみたい。それと、今回は、皆さんとの戦闘は望んでいないみたい。
     タタリガミが逃走するか灼滅された後に、灼滅者が撤退すれば、鎖も撤退するはずよ」
     ソウルボードでの事件の情報から考えて、鎖との会話などは行えないが、何かしら感じるものがあるかもしれない――当然、攻撃を仕掛ければ怒涛の如く攻撃は返される。
    「皆さんが到着するのは、タタリガミと鎖が戦闘をしている最中ね」
     タタリガミは拠点を廃神社としていた。そこで襲撃されている。
     タタリガミ、鎖、ともに攻撃を得意とし、タタリガミは、七不思議使いとウロボロスブレイドに準じたサイキックを使う。
     鎖は、ガンナイフと咎人の大鎌に準じたサイキック、そしてマテリアルロッドの轟雷のようなサイキックを使うようだ。
    「灼滅者と鎖の戦闘が始まれば、タタリガミは逃走する可能性が高いわ。
     それを阻止するためには、タタリガミが鎖に撃破されるのを待つか、先に鎖と共にタタリガミを攻撃することになるわね」
     タタリガミを逃がせば、後々危険な都市伝説を生み出すだろうし、鎖を撤退の方へと導けば後々厄介事の可能性もある。既に厄介ではあるが。
    「両方倒してしまった方が良いのは確実。
     どのようにしていくか、それは皆さんにお任せすることになるけれど、どうか気を付けて」
     そう言って鳴歌は灼滅者たちを送り出した。


    参加者
    新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)
    黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    咬山・千尋(夜を征く者・d07814)
    エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)
    葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)
    七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)
    ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)

    ■リプレイ


     朽ちゆく神社にて、形状の似た双方が幾度となく高い音を空に刻んだ。
     だがいずれも勝るのは重厚な鎖の音。タタリガミの武器を叩き、体を打つ。
     灼滅者達は木立のなかに身を屈め、呼吸を浅く保ち気配を消す。
     到着した時、既にタタリガミ・夜音は無言で抗っていて何とか突破口を開こうとしていた。
    (「あの鎖が何者か、見極めたいですね」)
     小さく絞られた新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)の声は、戦いの音にかき消された。
     彼が見るに、鎖の根元は無い。
     戦いを観察する。
     以前のソウルボードから生えていた鎖とは違い、上下無く前後無く左右無く、伸び伸びと苛烈に攻撃を繰りだしている。
     基点はころころと変化していた。先端がタタリガミを攻撃したかと思えば、鎖の真中の環が基点となり、逆側の先端が追撃に動く。
    (「ラジオウェーブが埋め込んだ断片……」)
     先日の『予兆』と目前の状況を考えるルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)。
    (「もしもこの襲撃を含めた一連のタタリガミの動きが、私たちに鎖という存在を認識させる為のものなら……襲われているタタリガミには悪いが、まあ利用させて貰うさ」)
     その時、雷を纏った鎖が稲妻を放ち、轟音が響き渡った。
    「ぐっ!」
     弾き飛ばされた夜音は地面を転がりながら、なんとか膝をつく体勢まで持ち直す。流血が蒸発し、赤黒く煤けた姿。
    「ここですね!」
     七波の声と同時に、動く灼滅者達。
    「ももの旦那さまの護衛、お願いね?」
     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)がウイングキャットのリアンの頭を撫でれば、リアンは了解とばかりにぼわっとした尻尾を一振りして飛んでいく。
    「何――」
     タタリガミが目を瞠る。
    「変なのに襲われてるな?」
     鎖の動きが見通せる位置に立った七瀬・悠里(トゥマーンクルィーサ・d23155)は、魔力を宿した霧を前衛へと展開しながら夜音へ声をかけた。
     鎖にも目を向けるが、鎖は灼滅者に構うことなく、タタリガミを捉えようと動いていた。
    「何なのよ、このクソ鎖、襲撃してくるなん……てッ」
     思わずといったように応じた夜音が、次の瞬間鋭く語尾を吐き捨てた。
     死角から斬り上げられ、振り向く。
     最短に彼我の距離を詰めたのは、タタリガミへの殺戮経路を辿った黒鐘・蓮司(グリムリーパー・d02213)だった。
    「……アンタらも散々やらかしてきたっしょ。
     そういや因果応報なんて言葉がありましたっけね。……まぁ、そういうモンだと思って下さいよ」
    「クソ鎖とクソ灼滅者」
     血吐き罵るタタリガミに向かって、咬山・千尋(夜を征く者・d07814)の振ったロケットハンマーが瞬間的に噴射し加速する。
     下段からの強烈な一撃で敵を叩き上げた。同時に、
    「悪いけど、ここで灼滅させて貰う」
     言ったエアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)の剣帯が弧を描き、夜音の死角から斬撃を繰り出す。
     強烈な殴りつけと斬撃を受けた敵の体が、半ば空に浮いた瞬間、堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)のworld of colorが貫いた。
     朱那の体内から噴出させた炎が、突き出る穂先から空へ散る。
    「卑怯は百も承知、ケド恨みっこナシな」
     彼女の言葉に、日本人形のようなタタリガミの顔が歪む。柄を掴むも、やがて力が抜けずるりと地に倒れた。
     たわんでいた鎖がジャッ、と音を立てて、垂直に浮く。
     構えたまま、対峙する灼滅者達。
     今のところ、悪意は感じない、とルフィアは判断する。
     今この場にいる灼滅者達に対しては関心がないようだ。――エアンはそう感じた。
     そもそも、殺意や関心などという『意思』自体があるのだろうか?
     表現の幅としてありはすれど、対峙する鎖からは、『無機質な』というものが付随する。
     鎖自体に意思があるのか、鎖が誰かの意思なのか。可能性としては、後者だということを百花は感じ取った。
     手足みたいな『もの』なのだろう。或いは……。
     ソウルボードの綻びを拘束し繋ぎ留める、タタリガミを消す。
     修理する、掃除する、ヒトが暮らす日常のなかで、さも当たり前に使う道具と同じ『もの』。
    『鎖』は、誰かの或いは何かの道具であり、手段なのかもしれないと灼滅者達は感じた――。
     感じ取れるものがあるかもしれない。と、鎖に触れてみようと手を伸ばす灼滅者。
     それはある意味、必ず砕けると知っている薄氷の上での歩みであった。
     鎖に対し敵対行動をせずに呼びかけるでもなく、いつでも攻撃できるようにという状態で手を伸ばせば、当然、鎖は動く。
    「くるよ!」
     千尋が声をあげた。


     鎖を注視していた灼滅者達の動きは速かった。
     鎖へ攻撃を放ち、または戦闘態勢を整える。
     重力を宿した蹴りを見舞った朱那が急いで飛び退いた。
     じゃりりりッ!!
     一気に自身を巻き上げ渦巻き状となった鎖は禍々しい黒き波動を前衛へと放った。灼滅者の体を蝕む黒と重厚な圧。
     ダークネスを易々と倒した相手だ。苛烈な波動を見た百花は、ギターの弦に立てるようにしていた指先を繊細なものへと変えた。
    「回復します」
     旋律は敵を攻撃したものから変化し、仲間に立ち上がる力をもたらすものへ。
     初手に放った冷気のつらら、そのために変換したProof of 7.D.C[code:Li]の冷寒な妖気を纏ったまま駆けるルフィアの影が、アンモナイトのように渦巻いたままの鎖を絡めとる。
     環から環へ入りこんで縛りつける影を払うように、鎖は音を立て、ピンと伸びた。
    「大地の力を受けよ」
     大地に眠る有形無形の畏れを纏った七波が、雪峰を振るう。
     張った鎖を新雪のように真白な穂先で一閃した。巡る柄めがけて、たわむ鎖が払おうとするそこへ、
    「叩き斬る」
     軽く跳躍し振り被った蓮司の一刀。早く重い斬撃。真下に振り下ろした刀で鎖を瞬間的に抑え、足場にして飛び退く。
     だが鎖も蓮司を捉えた。獲物を狙う蛇の如く、先端が一気に加速し蓮司の胴を貫こうとした刹那、千尋のVampirismが鎖を捉え鈍い金属音が響いた。微かにぶれた鎖の軌道、だが精度は高い。
    「……ッ、あたしが相手になるよ!」
     そのまま割り込んだ千尋の左肩を抉る。
     重く鋭く通過していく鎖はいっそ熱い。体は悲鳴をあげたが、痛みを払うが如くそして敵の速度を利用し、千尋は右に持つ鋏で鎖を斬りつけた。
     彼女の吸血衝動が具現化した鋏は、鎖へ狂気をもたらす錆を発生させる。
     リアンの尻尾のリングが光り、千尋を中心に癒しを広げていった。
     鎖の動きは速い。故に灼滅者は仲間との連携により鎖の動きを抑える。
     三手分、身を護る力を与えた悠里は戻ったストールを軽く一巻きしたのち、指輪を使い、己の中に眠るダークネスと一時的に同化する。
     石化をもたらす呪いが鎖にかかり一拍もなく、朱那の横一文字に振った無敵斬艦刀が鎖をひっかけ、鎖自身がとる形状を乱した。
     振り回せば鎖が絡みつき、朱那が無敵斬艦刀を振り被れば巻き付く鎖が威力を軽減させようと動く。
    「メッチャ重たいなあ!」
     抵抗からの負荷によるもの。
     笑んだ朱那が巻き付いた鎖そのままに超弩級の一撃で振り下ろす。刀に張った鎖は軋む歪な音で、浅くない傷が入ったことを示した。
     ヒュッ! と空を切る音が聞こえ、咄嗟にクロスグレイブを掲げたエアンは、鎖の動きによる余波を打ち払った。
     衝撃を感じる腕を引き、エアンが即座に構えた。
     聖歌と共に十字架先端の銃口が開き、業を凍結する光の砲弾を放つ。
    「これは、少し長期戦になりそうだ」
     エアンが呟くのと同時、向こうで悠里も駆けながら感じ取る。
     立ち位置の布陣は最適だろう。加えて、
    (「連携は厚いくらいなんだけどな」)
     戦闘特化の『鎖』は、灼滅者側の体力を削り取る幅が大きい。そして自身の修復や能力を上げる術は無いのだ。
     敵の攻撃力を落とす行動阻害がもう一手、あるいはもう一層分の厚みがあればよかったかもしれない。
    「……ってことで、こちらで殺りましょうか」
     蓮司が敵火力を削ぐ方向へ、攻撃を切り替えた。


     抜刀したルフィアが鋭く薙げば、その刃から冴え冴えとした月の如き衝撃が、半月状に広く放たれた。
    (「サイキックハーツ、ソウルボードを縛る鎖、解放されたソウルボードと新たな――灼滅者。
     ピースは揃っている、後はどう組立てるか」)
     一つ、一つ、露わになっていくもの。そして成る事象。
     進まねば分からぬこともある――ルフィアはそんな風に考えた。
    「凍てつく穂先よ」
     七波の言葉とともに雪峰の妖気が冷気のつららへと変換され、鎖に向かって一射。
     長柄を順手から逆手に、再度順手と巡らせれば、冷気のつららが次々と撃ちだされていく。
     対角からエアンの剣帯+Dindrane+が鎖を穿つ。
     揺らぐ鎖はそのまま七波に向かってマウントを取ろうとするが、ふいに千尋へと鋭く伸びた。
     そこへ割り込むのは悠里。やや千尋へ集中しすぎる鎖の攻撃を捌こうと、動きを注視していた。
     鎖は悠里の細めの胴を囲うように動き、鞭打つが如く、幾度となく自身を叩きこむ。
    「ッ」
     頭を打たれ、悠里の金髪が赤黒く染まっていく。
    「悪いね、助かったよ!」
     言った千尋がVampirismを鎖に突き立てた。彼女のレザージャケットをよく見れば、絶えず血が流れ落ちていくのが分かる。声を張ってはいるが、顔色は悪い――否、蒐執鋏を繰り出したことで少しはよくなったか――。
    「無理するんじゃねぇぞ!」
     悠里の言葉に、百花が頷いた。
    「そうです、倒れちゃだめですよ」
     そうはさせない、と、帯を伸ばした百花が千尋の全身を覆い癒し、身体の強化に励む。
     リアンもリングを光らせながら、前衛の回復に専念していた。その毛並みも、庇いに入るほどに乱れ荒れていく。
     仲間の攻撃に便乗して、転がり出るように鎖の間合いから離脱した悠里は、赤きオーラの逆十字を出現させ敵を攻撃する。
    「次、あたし!」
     朱那の体内から噴出した炎が、燃える太陽と輝く月を象る長槍に巻きあがった。
     猛る炎の斬撃を、逆十字の対角から袈裟懸ける。
     二手、三手と攻撃を続け、鎖の動きが鈍くなってきたことに気付いた灼滅者達は、畳みかけるように更に攻勢へと出た。
     どんな苛烈な敵も、回復手段がなければ、瓦解は一瞬で起こる。
     鎖の攻撃を回避し、鎖が自身を攻撃すること、更に二手。
    「……悪意の塊か。少なくとも友好的な感じはしませんね、『アンタ』からは」
     バスターライフルを構えた蓮司がスコープ越しに鎖を捉え言った。
    『鎖』の先にあるもの――。ある意味で、繋ぐ、そんな感じがした。
    「まるで、都合の悪いモンを抑え付けて隠そうとしてる様な。……俺だけじゃねぇみたいっすからね。そう思ってるのは」
     銃口から光が発射され、鎖を撃ち抜けば環が一つ砕けかける。
     その時既に接敵したエアンが踏みこみとともに体を落とし、鎖の真下に入っていた。
     間近にくれば、ビシビシビシッと鎖半分に亀裂が入っていくのが分かる。
     バベルブレイカーの杭がドリルの如く高速回転し、彼は鎖を穿った。
     新たな亀裂が走る稲妻のように入っていき、鎖は静止した――エアンが二歩退いた刹那、じゃららららっと音を立てて地面に落ちる。
    「倒せた――みたいだね」
     息を吐きだしたのちにエアンが呟いた。
     屈み、硬質な鎖に指が触れた瞬間、鎖は消失する。
    『灼滅』なのか、それとも『還った』のか。灼滅者達はふと考えた。


    「えあんさん、お疲れさま」
     エアンへと駆け寄った百花が言った。添うように立ち、彼を見上げる。
    「怪我はない?」
    「大丈夫だよ」
     と、安心させたように微笑むエアンはふと虚空を見上げた。
    (「これでまた進展があるんだろうか」)
     安堵の表情を浮かべる百花と腕を組む。
     選び取った道はどんな未来へと続くのだろう。
     鎖を破壊し、その先を見るために覚悟し戦う灼滅者――朱那は鎖の消えた場所を調べる。
     灼滅されたタタリガミは消えていて、ルフィアが廃神社の中を覗けば、彼女が持ち込んだのであろう私物。
     灼滅者達は中に入り、それぞれ調べていった。
    「……鎖も灼滅って言っていいのか、謎だな」
     携帯ラジオの周波数をチェックしながら呟く悠里。
     蓮司は伝承をまとめた本をぱらぱらと捲る。
    「さて、学園に帰ったら皆の持ち帰った情報をチェックしないと」
     厚い手当てを受けた千尋が廃神社の階段で体を休ませながら、言う。
     頷く七波。
    「得られた情報を持ち帰りましょう……おそらくあの鎖の次の狙いは僕たちでしょうから」
     その言葉に、灼滅者達は最近のことへと思いを馳せた。
     選び取る道、縁、連鎖していく先にあるものは――。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年5月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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