爽やかな五月晴れの埼玉県秩父市。
ここでは、珍しい露地栽培のいちご狩りが楽しめる。
昨今はハウス栽培のいちごが支流ではあるが、苺は初夏の季語で本来は今の時期の果物。
青空の下で食べるいちごは、ハウス栽培とはまた違う美味しさであることは間違いない。
だが、難点があった。
「この通り、この一帯は山が近い。ということは招かれざるものがやってくるということで」
いちご畑の畝に立つアンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153)が山を仰ぎ見れば、時折激しい銃撃音が鳴り響く。
「この音、山の方で狩りでもしてる音……にしてはちょっと数が多いね」
咄嗟に耳を塞いだ千曲・花近(信州信濃の花唄い・dn0217)をはじめ、集まった灼滅者も、アンカーと同じように山を見る。
「この音の主は猟友会ではなく、バスターピッグによるものらしい」
アンカーが調査したところによれば、路地モノのいちごが色づき始めた5月頭から毎日のように甘く美味しい苺を貪りに来るバスターピッグたち。農家の皆さんも懸命に撃退作戦を試みるも、効果は全くなかったようだ。
「人的被害は今のところないみたいだけど、ハウス物が終わり今が路地モノいちごの旬。農家の皆さんのため、いちごを楽しみにしている人のため、ここは一肌脱ぐ場所かなって思ったんだよ」
と、集まった仲間を振り返り、アンカーが指差したのは、新緑の向こうの砂地。
「山側のあの部分はいちごが植えられていない。あの箇所を有効活用して迎撃できないかなと思うんだけど、どうだろう」
と仲間に問いかけた。
バスターピッグの攻撃方法は、担いでいるバスターライフルからの攻撃。
「それともう一つ。突進して私達の守りに風穴を開け、そこから畑に入ってくる可能性も大いにありそうだ」
そう考察し、あぁそうだと手を合わせた。
「討伐が成功したら。だけど、農家の皆さんが私達の為にいちご畑を開放してくれるそうだよ」
とアンカーが足元を見れば、深緑の葉の影から赤くかわいらしいいちごが、ひょっこりと顔を覗かせていた。
参加者 | |
---|---|
アリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814) |
アンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153) |
穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981) |
赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996) |
高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857) |
菜々野菜野・菜々(七言のナナ・d37737) |
榎・未知(浅紅色の詩・d37844) |
チセ・ネニュファール(星彩睡蓮・d38509) |
●
イチゴの苗が植えられていない個所に向けて畦道を行く灼滅者は、すでにいちご狩り用の籠を手渡されていた。
足元では葉の隙間から白く可憐な花や赤く染まるいちごがひょっこりと顔を覗かせている。
ここだけ見るとかなり和やかな風景。初夏の心地よい風がいちごの葉を揺らす。
しかしこの風景のBGMは山から響くけたたましい銃声であった。
「……バスターピッグって、絶滅してなかったのね」
銃声音を聞きながらアリス・バークリー(ホワイトウィッシュ・d00814)が呟いた。
ひっそりこっそり山にいた個体なのだろうか。
「私も豚さんたちとすごい久しぶりに戦う気がする感じ」
その豚が農家が手塩にかけたいちごを食い荒そうというのなら――。
「苺守るために頑張って殲滅するよ!」
と気合十分。
「初夏のいちご畑……善いものだね。ここには人の営みがある」
と、イチゴ畑を振り返り目を細めるのは穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981)。
世界も命運を決める戦いも間近ではあったが、人の営みを守るのも同じくらい大切なことだと考える。
一行の一番後ろを行くチセ・ネニュファール(星彩睡蓮・d38509)も、イチゴ畑を眺めながら、
「畑を荒らすのは猪……だけではないのですね。眷属もお腹が空くのかしら?」
とまだ着ぬ敵に思いをはせる。
畔を歩き、砂地に降りた灼滅者一行。
豚が山から下りてくる前に。とアンカー・バールフリット(シュテルンリープハーバー・d01153)は砂地にしゃがむと、近くにあった木の棒で砂に図を描き始めた。
長方形の三分の一のところで線を引き。狭い方にバツ印を10個書き加える。
「豚が山から降りてくる。それを僕と緋色君が板挟みにする」
バツ印を挟むように丸をふたつ。
元気いっぱい手を上げた赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)。
「はいはーい、一緒に頑張ろうねホモノオウさん」
「ホモノオウ違うからなー。恋愛対象は女子でーす」
ホ……? と顔を見合わせた仲間たちを置いてけぼりにして、極めてにこやかに対応するアンカーは再び砂地に棒を走らせる。バツ10個の正面に丸を書いて。
「で、花近君は全力で豚からの攻撃を受けとめる贄ね」
「贄っ!?」
苗字をいじられた八つ当たりがここに来たのか。千曲・花近(信濃の花唄い・dn0217)は損な指名をされて思わず声を上げた。
「頑張れ花近さん!」
「花近くん、君ならできる!」
榎・未知(浅紅色の詩・d37844)と高沢・麦(とちのきゆるヒーロー・d20857)が花近の両肩をぽんぽんしてくれる。
「いちご死守作戦はいけに……千曲さんの頑張りにかかってるよきっと!」
緋色もすかざす入る応援が、有難嬉しくない……。だが、男なら任されたことは最後までやり遂げるものさ。やぁってやるぜ!
と気合を入れる男をよそに、説明を続けるアンカー。
「で、彼の後ろにアリス君と海君が控えてもらって阻害系攻撃を」
「わかったわ」
「この後ろには行かせないさ、絶対にね」
アリスと海は気合十分に返事を返す。
なんか気合がスルーされた気がする花近の肩をぽんぽん叩いたのは、明莉と了。
「榎に頼まれて手伝いに来たよ」
「三人いればなんとかなるなる」
二人の頼もしいさに泣きそうになる花近はさておいて。
「さらにその後ろの麦君と大和君はいちご畑と後ろの人たちの守りを」
「おう! 俺を超えて先には行かさないぜ!」
麦も拳でトンと胸を叩いて気合十分。
「頼もしいね。ここまでが第一陣。第二陣、ナナノナノナノ君とフラウネニュファール、最後列の菜々君と未知くんは狙撃と回復を担ってほしい」
「わかりました、頑張ります」
シンフォニーブルーの長い髪を耳に掛けながらチセが頷くと、彼女に倣ったように菜々野菜野・菜々(七言のナナ・d37737)とナノナノのナナノナノナノもこくこく頷く。
「いちごを守る、すごく頑張る」
「よっし、目標は完全勝利! 大和も頑張ろうな!」
未知はビハインドの大和と気合を入れ、また、呼音もその作戦をうんうんと聞いていた。
「んじゃ、後ろの方の守りを手伝うね」
古代の陣形から最終的には現代的な縦深防御陣に落ち着いた。
「ナウいヤングはイマドキ陣形だよね☆」
立案のアンカー、発する言葉も古ければウインクバチコーンも古いが。
「これであとは奴さんらが来るのを待つばかり――」
説明を終えて立ち上がり、服の砂をパンパンと叩く音と同じタイミングで、怒濤の発砲音が響き渡る。
「来た!」
立ち会った麦が見たものは、濛々と砂埃を巻き上げこちらへ駆けてくる豚の群れ。
アリスは得物を構え敵軍を見据える。
「前に眷属と戦ったのはいつだったかしら? 多分、屍王の迷宮でのアンデッド戦以来と思うんだけど」
いまいちやる気にはなれないけど、ダークネスの後始末も大事なお勤めである。
「ひとつ、殲滅しましょう」
その言葉を合図に、灼滅者は次々と得物を構えた。
●
バスターピッグたちは陣形を整えた灼滅者たちを見据えると、ライフルの銃口を彼等に向けた。
そしてけたたましく鳴いた半数は、次々に豚の色をした魔法光線を放つ。全ての灼滅者が標的だ。
その攻撃を回避できる者は回避するし、そうでない者の肩代わりは花近が引き受ける。
豚色の光をかいくぐり、近の髪を揺らしたアリスが妖艶に笑んで豚の集団を指差すと、
「私ハジメテなの。優しくしてね。でも、私は容赦しないけど」
集団の足元が急速に凍ってゆく。季節は初夏なのにそこだけ極寒。
地面に接触したくなくてブヒブヒと跳ねまわる集団の中の一番手前の個体に向けて槍の穂を突き立てた緋色は、集団のあちら側に控えていたアンカーを指差した。
「ぶたさんたち! いちごよりあっちにいるマグロの方がきっとおいしいよ! 最高級品だし!」
「何ッ!? 私を売るとは緋色君、どういうつもりなのかッ!」
猛抗議の甲斐なく、緋色に先導された豚の銃口はアンカーに向く。これ一斉攻撃来たら絶対無理ゲ。
だけどその攻撃を全て庇ったのは花近。
「……ここ、たおれとく、ところ?」
豚色の光が消えると同時に砂地に転んだ。
まぁ、まだ余裕はありそうだったが、ここは叫んでおくところだろう。
「頑張れー超がんばれー!」
声援は贈るが助けに行かない麦。
「花近君がやられた! メディィィィィック!」
アンカーに呼ばれた未知が青ざめる。
「は、花近さーーん!!」
――演技をしながら帯を操り、守りを固めた相手は海だった。だって、まだ大丈夫そうだったから。
守りを固められた海は、おや? という表情を見せたが、この恩恵は心強い。霊撃を放った大和に続く。
今更眷族如きに遅れを取るとも思えないが、この美しいいちご畑を一瞬でも穢させはしない。
「腹を満たすなら、怒りで満たせ!」
愛用の魔導書を開き手をかざすと、豚の大群の身体に現れたのは原罪の紋章。
その紋章に精神を侵された豚たちは先ほどに比べて比にもならないほどに鳴き始め、暴れまわる。
「いちご王国栃木のヒーロー参上っ! 農家さんのためにもここは絶対通せないぜッ」
五穀豊穣系ヒーローはいちごの名産地栃木出身。ここはなんとしてもいちごを守らねばならないッ!
びしっと決めポーズを決めた麦は一番傷の深い豚目掛けて影の触手を伸ばし、捕らえた。
続いたアンカーは花近の屍を超えて、いちごに一番近い個体に向け無敵斬艦刀を振りかざす。
「豚をぶった切るッ!」
親父ギャクが炸裂すると同時に豚たちが急に凍えあがる。まだ刀を振りかざしたままだというのにだ。
あまりのアレさに刀を振り下ろす前に別のサイキックが発動してしまったのだ。
「驚愕の攻撃方法、さすがすぎる」
気がするだけよ。とぽつり菜々が呟き魔導書を開くと、逆巻く炎がナナノナノナノのたつまきに合わせて飛び、豚を焼く。
燃やされ飛び出してきた一体を目掛けてチセが蝋燭の火を吹けば、連なる炎の花は豚を押し戻した。
そういえば倒れたままの人がいる気がする……。と、了と呼音そして明莉はその倒れたままの人を回復。その人は起き上がると、
「……悲しみの、小諸馬子唄ビーム!」
と一番ダメージ食ってそうな奴に悲しみビームを放った。
豚たちは熱いんだか寒いんだかムカついてるんだかで大パニック。戦いは、熾烈を極める――。
はずもなく。
確実な作戦と陣形を組んだことや役割が明確にされていたこと、サポートも守りに付いたこともあり、討伐は順調に進んでいった。
仲間を失いけたたましく吠えた豚は縦横無尽にライフルをぶっ放した。
第一陣への攻撃は全て花近が、第二陣への攻撃は麦と大和が防ぎきり。
お返しとばかりにロッドを振るった花近。叩かれた豚は空を飛ぶ。
「晩御飯はポークソテー、デザートはいちご……じゃなかった。大和、アレ倒しちゃって!」
腰の帯を伸ばして回復を施す未知の代わり、大和の霊障波は豚を焼き豚に変え、灰にした。
均整も連携もない豚たちは砂地を暴れまわり、ついに一匹、目標に向かって突っ込んでくる。
「農家さんたちが手塩にかけて育てたいちごの為、通すわけには行かないんだよ!」
明莉と呼音と了に回復を施された麦は突進してくる豚をドンと掴んで、一気に砂地に叩きつけた。
「二条大麦ダイナミィィック!!」
名乗りと同時に激しい爆音が轟き、豚は爆破四散、木っ端微塵だ。
「数が多くて、雑魚でも大変だったけど……」
もう終わりは見えている。アリスが放った白き光条は、豚を丸々一匹消し去った。
「美しいものを守る為に、散ってもらう!」
向かってきた豚を迎え撃った海は、その顔面に激しい乱打を打ち込み。止めの一発はダメ押しの殴打。
場外に押し出された豚が無残に散ったが、休む間はない。
向かってくる豚に気が付いた菜々は、隣に浮いていたナナノナノナノを咄嗟に掴んでぶん投げた。
「ナノォー……!」
ぽぷよんと豚に当たった瞬間、しゃぼん玉を発射するナナノナノナノ。怯んだ豚は動きを止めた。その周りに咲くのは紫陽花の花。
「毒紫陽花咲いた。いちごのために、ここで消えてね」
紫陽花が散ったその時が、豚の最期。
慣れない戦い方に内心はあたふたしていたチセだったが、案外何とかなるもので。
「いちごって真っ赤でつやつやして、とっても美味しそうだから眷属が狙ってしまう気持ちがちょっと、わかる気がするの」
けれども私達もそのいちごの為に戦う。
「そう、これはいちご戦争なのです」
足元の影を一番近い所の豚まで伸ばし、
「ぱっくん、いきます」
豚を闇で包めば断末魔の叫びの後、豚の姿は消えている。
「あと二匹! 一体ずつねホモ……アンカーさん」
何か返す言葉を探し苦々しい表情を見せる彼をよそに、マテリアルロッドを大きく振りかぶった緋色。アンカーも遅れじとロッドを構え。
「さよならぶたさん!」
「豚の叩きた衛生上避けた方がいいんだけどなっ!」
緋色とアンカーに撃たれた豚二匹は、敷地外まで飛ばされ四散した。
あとに残るは巻きあがる砂埃。
だが背後のいちご畑は、無傷であった。
●
「ええと、これで片付いたかしら? 歯応えがなさ過ぎね」
服に付いた砂埃を払い落して、ふぅっと息をついたアリス。
「ま、いっか。イチゴ狩りに移りましょう。花近さん、手伝って」
と、一番砂っぽい人をご指名して、踵を返した。
「アリスちゃんはここで食べるの? お土産?」
「旦那と息子のために新鮮なイチゴを籠いっぱい摘んで帰るわ」
「お土産にするんだねー」
「余ったらジャムにするわ。一緒にたしなむロシアンティーには、セイロンの軽いのがいいかな」
と、手ごろないちごを見つけゆっくりしゃがみこんだ。
「苺食べ放題だー!」
いちご畑に進み入った緋色は、足元の鈴なりのいちごに頬を染める。
「あ、でも苺食べるだけじゃなくて私はいちごジャムも作りたい!」
ならばたくさんのいちごが必要だ! 緋色はいい色のいちごを選び取って摘んでいく。
「いちご!」
麦はひとつ、真っ赤ないちごを優しく積むと、いちご畑防衛の成功を祝うように天高く掲げた。そしてパクりと頬張る。
口いっぱいに人が流三位は、栃木の名を関したあの品種。
「今やいちご品種戦国時代! 他所のいちごも研究しなきゃな」
といちご畑を奔走する。
可能ならば農家さんにもお話を聞きに行く心つもりだ。
これも、ご当地ヒーローの研鑽である。
「あまぁー! おいしーい!」
頬張ったいちごの口いっぱいに広がる甘さに、思わず声が漏れ出た未知。
「ほら、大和も食べてみなよ」
足元の赤いいちごを摘んで、大和にあーんしてあげる。
と、遠くに見知った姿を見つけてその人の元へ。
「あかりん部長はやっぱりここか」
未知が声を掛けたのは甘味が得意ではない明莉。
腕には籠を下げて比較的酸味の強い品種の列にいた。
「すっぱい系の苺が食べたくてねー。手に持った感じでわかんの、あ、これ甘いヤツって」
としゃがみ込む明莉は、いちごにそっと手を添えて何やら感じ取る。
「手触りで分かんの? すげーなあかりん部長。さては『エスパー』か」
手に味蕾が付いてるなんて言う能力も便利だな。と笑う未知の手のひらには、いちごが乗せられた。
「ほい、これは甘いやつ」
進められて口に入れれば、ふんわり甘味が口いっぱいに広がる。
「本当にすげー甘い! 練乳要らずだな」
感嘆の声を上げる未知に、でしょ? と笑んだ明莉自身も、酸味特化系のいちごを口に入れ。
「この白いのをこう、並べてだな」
と籠の中、赤の中に白い品種の苺をてててと置いていけば、籠の中は苺のアートカード。
「白でウサギっぽく仕上げて」
積めた苺の中に一粒、すっぱい苺を忍ばせて。
「これ、このままお土産に出来るかな?」
と、立ち上がった明莉。籠の中はいちごでいっぱい。
「大丈夫だと思うぞ。いっぱいお土産貰ってクラブで苺パーティしようぜ! そのままでも美味しいけど苺スイーツ作るのも良いかも!」
「苺パーティいいね。苺スパや苺ピザ。スイーツだけでなく軽食も苺づくしでな♪」
仲間たちの美味しそうな顔を思い浮かべるだけで、幸せな気分になる未知と明莉であった。
畑の持ち主にバスターピッグ討伐の報告と、いちご狩りのお礼をしてきたアンカーと菜々も、遅ればせながら旬のいちごを堪能する。
いちごの鮮やかなピンクにふとあの子を思い出したアンカー、お土産用にと真っ赤ないちごを摘み始めた。
畔をゆっくりと進んでいた海は、いちごを頬張っている花近に声を掛ける。
「花近くん、こうして学校の外で会うのは修学旅行以来だね」
「そうだね、結構前の。だよね?」
「沖縄の海といい、初夏のいちご畑といい、キミは美しいものに縁があるようだ……」
と目を細めた海。対していちごを頬張ってるその人は言葉の意味を租借するのに手いっぱいだ。
「ナノお疲れさま イチゴあげるよ。甘くて美味しい」
菜々は、いちごを摘んではナナノナノナノの口に入れ、いちごを摘んではナナノナノナノの口に入れ、いちごを摘んではナナノナノナノの口に入れ……。
ナナノナノナノの頬袋はパンパンである。それでももっきゅもっきゅ食べてる様子は。
「なんかたのしい」
次は菜々が食べさせてもらう番。
ナナノナノナノは、いちごを摘んでは菜々の口に入れ、いちごを摘んでは菜々の口に入れ、いちごを摘んでは菜々の口に入れ……。
口の中の甘さにも、ふわふわとがんばる健気なナナノナノナノの姿にも癒されほんわか。
「ありがとうナノ」
チセも籠の中に真っ赤ないちごを入れつつも、手ごろなものを自然のままでいただいていた。
「白くてかわいい花から、真っ赤な果実が出来るのってなんだか不思議ね」
と、指先で白い花にもごあいさつ。
すると心なしか花が小さく揺れた気がして、思わずチセは顔を綻ばせる。
籠の中のいちごはお土産にして、ジャムを作るつもりだ。
了は畑の脇のパラソルの中で、大勢対大勢での運動会後だからとのんびりまったりいちごを堪能。
「運動の後の甘いものはいいよね」
呼音はしばらくいちご畑でイチゴを堪能していたが、畑の外に野良ネコを見つけてすっかり友達になっていた。
海は畔に座り、いちご畑と仲間たちを眺めはじめる。
風景、風の感触、いちごの匂いと味、人々の笑い声。
まさに平和な時間。
これを尊び、感じ、記憶に刻みつけ、ふと思った。
これが自分の世界、戦いを終えて帰る場所なのだと。
すべての戦いが終わった後にも――。
願いは五月の爽やかな空に溶けていった。
作者:朝比奈万理 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年5月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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