●
「タタリガミとの戦いは完全勝利となりました。この勝利で、タタリガミ勢力は壊滅状態となった筈です」
五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)が説明を始める。
「このタタリガミの壊滅が原因かは分かりませんが、ソウルボードの動きを注視していた、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)さんや、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)さんから重要な情報がもたらされました」
ソウルボードに異変の兆候があり、それに呼応するように、民間活動によって武蔵坂学園を支持してくれるようになった一般人達が、次々と意識不明で倒れ、病院に搬送される事件が起こったのだ。
「彼らは、病院で検査しても原因不明のまま、意識が戻らない状態となっています。更に、本来ならば大ニュースになる筈の、集団意識不明事件が、情報操作をするまでも無く、一般に広まらない不自然な状況なのです」
これは、明らかにダークネス事件。その原因は、彼らのソウルボードの内部にある。
「残念ながら、現時点では、これ以上の情報はありません。皆さんには、病院に向かい、意識不明となった人にソウルアクセスを行って、原因の究明に向かって欲しいのです。ソウルアクセスした先には、今回の異変の原因が待ち構えているでしょう。その敵を撃破する事ができれば、彼らはきっと目を覚ます事が出来る筈です」
意識を失った人々を救うため。
灼滅者達は、ソウルボードに足を踏み入れる。
直後、近づいてきたのは猛烈な殺気を秘めた存在であった。
「うん? 灼滅者か。面倒な奴らが来たな」
勝てるはずがない。
瞬時に敗北を思わせるほどのプレッシャーの塊。その出で立ちは白銀の鎧を纏った騎士のよう。禍々しい気配を放つ赤い瞳が輝き、口元は邪悪に歪んでいた。そして、最も目を引くのは右腕であり、腕それ自体を巨大な槍として変形させている。
「まったく、お前達と関わった一般人達のせいでいらぬ手間をかけさせられたと思ったら。その元凶共の登場か」
……デモノイドロード。
誰かが口元で呟く。
「我が名はロード・ニオブ。デモノイドが覇権を握るために、お前達には退場してもらう」
問答は無用。
デモノイドロードは槍を回転させて襲い掛かってくる。こちらも即時武器を構えて応戦。刃と刃が交わり、鋭いサイキックを撃ち合う中。
灼滅者達は妙な声を耳にした。
『灼滅者さん達、がんばって!』
『私達が応援しています』
『灼滅者に助けられた皆が、勝利を願っているんです』
『その想いを送ります!』
灼滅者達は顔を見合わせる。
確かに聞こえた。聞き覚えのある声もあった。民間活動で助けた人々の声だ。これもサイキックハーツの力なのか。心に活力が漲ってくる。どちらにせよ、この応援があれば戦える。たとえ、どんな強敵であろうとも。
――さあ、反撃の時間だ。
参加者 | |
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卜部・泰孝(大正浪漫・d03626) |
皇・銀静(陰月・d03673) |
焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172) |
北逆世・折花(暴君・d07375) |
アデーレ・クライバー(地下の住人・d16871) |
神之遊・水海(うなぎパイ・d25147) |
榎本・彗樹(野菜生活・d32627) |
神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654) |
●
(「呼び掛けることによってどれくらいの力が得られるかは分からない。俺の呼び掛けが弱くても強くてもいい。兎に角、元凶を撃退して一般人を昏睡状態から解放させなければな」)
ソウルボードの中。
榎本・彗樹(野菜生活・d32627)は、静かに呼びかける。自分達に思いを預けてくれる一般人達へと。
「皆を昏睡状態にさせた元凶をこの世界からご退場願うには皆の協力が必要だ……皆、力を貸してくれ」
その言葉を引き金として。
どこからともなく、声援が届く。
『灼滅者の皆さん、頑張って!』
『私達がついています!』
『負けないで!』
力強い声。
それが灼滅者達に力を与える。彗樹のズタズタラッシュが普段では考えられない威力を叩き出した。
「へへっ。こうやって届いてる、伝わってくるってうれしいな」
機銃掃射を行うライドキャリバーに騎乗して、焔月・勇真(フレイムエッジ・d04172)はクルセイドスラッシュで攻め込む。皆の思いの力が伝わってくる。剣に通常以上の力が溢れてくる。デモノイドロードの槍に競り負けることもない。
「直接抗えない皆さんの代わりに私達が戦います」
サングラスを外したアデーレ・クライバー(地下の住人・d16871)の左半身の青痣から寄生体が発現する。元々己の力は人の世では許されない物とする気質の為、声援を受けて戦うという事に戸惑いを感じつつも。
嬉しく思う気持ちは確かにある。
螺穿槍が唸り上げ、重く鋭い手応えを得る。ロード・ニオブは忌々しげに舌打ちした。
「小癪な、その程度で俺に勝てるとでも思ったか!」
「負けないよ、ダークネス」
巨大な槍の一撃を、神之遊・水海(うなぎパイ・d25147)はしっかりと堪えて受け止める。ディフェンダーとしてダメージコントロールを背負う身としては、これからも何度も強力なサイキックをシャットアウトせねばならない。
「那須殲術病院にいたジルコニアは、剣を使うレアメタルナンバーだったけれど。キミは槍を獲物としているみたいだね」
相手を見やりつつ、北逆世・折花(暴君・d07375)は回復に専念。
攻撃を受けた仲間に、祭霊光と清めの風を使い分けて戦線を維持する。補給を一手に引き受ける生命線だ。
「よう騎士気取り。お前らにとって僕らやエスパーらはお前達の次代なんでしょう? ならばお前等は静かに礎として散るがいい」
「吼えるなっ。貴様らこそ我が槍の錆としてくれる!」
皇・銀静(陰月・d03673)は、レイザースラストで自己強化をする。
相手の槍からは死地の臭いが漂う。ならば敢えてその間合いに飛び込んで、火力を叩き込む好機をはかる。
「その槍、氷漬けで飾り立てよう」
卜部・泰孝(大正浪漫・d03626)が選んだのは黙示録砲。
十字架先端の銃口が開き、敵の業を凍結する光の砲弾を放つ。凍えるような冷気が、ソウルボードの空気をひりつかせた。
「……決め手に、欠ける……ならば、まずは布石を打つ……」
神無日・隅也(鉄仮面の技巧派・d37654)は、黒死斬で切り込む。
狙いすまして精確に敵の急所を抉り、ダークネスを足止めする。今回の戦いは特殊な事情から短期決戦を目指している。足が止まった方が負けだ。
『灼滅者さん、ファイト!』
「応援感謝。……さて、やるか」
未だ途切れることのない力強い声に応えるように。
彗樹はスターゲイザーを振るう。流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、敵の機動力をいつもの何倍もの速度で奪いとる。
「沈め、灼滅者!」
「仲間に手出しはさせない」
灼滅者達による予想外の反撃に、ロード・ニオブは眼光を光らせて必殺の槍を突き出す。勇真は臆することなく、盾役として味方を守り抜き攻撃の要が役割に専念できるように努める。
「焔月殿の献身、無駄にはせず」
泰孝は仲間とは別方向から攻撃を仕掛けた。ギリギリのところでダークネスは、こちらのサイキックを回避するがそれも計算のうち。味方の攻撃が当たりやすいように、包囲の中へと追い込むごとく立ち回り――四面楚歌を作り出す。
「どっせい!」
「っ! 誘い込まれたか!」
「……追撃をかける……」
脳筋格闘少女たる水海は力強い掛け声とともに、グラインドファイアで闘志を燃やす。隅也も同じ技で呼吸を合わせて、ロード・ニオブを狙い撃つ。その足技は烈火の勢い。ダークネスへと、炎を纏った二人の激しい蹴りがクリーンヒットした。勇真、泰孝から続く見事な連携の成果だ。
「我々が……次に覇権を握るデモノイドの、邪魔をするな!」
「こんな所で夢見ている中で覇権とか中々笑えますね。唯の使い走りでしかないでしょうに」
「使い走りだと! このロード・ニオブが!?」
「何の「手間」だか知りませんが……その手間も無為に終わるでしょう」
連撃を喰らったロード・ニオブの鎧に亀裂が入る。
戦いつつ、銀静は冷徹に反応やその動きから肉体の状態および心理等をも分析する。
「デモノイドが覇権を握る、ということは。プラチナ率いるデモノイドロード勢力は、爵位級勢力を離れたのか」
折花はぽつりと呟いてから、キュアを仲間に施す。
気になることも多いが、まずは戦闘だ。誰一人として戦闘不能にはさせない。
「覇権を握る……アモンが作り出した後発種族も偉くなったものですね」
アデーレは閃光百裂拳を見舞う。
胸の内に呼応するように、デモノイド寄生体が疼いた気がした。
(「とは言え、私も利用してるこの力が強力なのは知ってます。ニオブとやらにも身を持って思い知ってもらいましょうか」)
●
「如何なる難敵あろうとも、我等は引かず。彼の強敵、打ち破るは貴殿らの声援と我等の力。故に借りたい、貴殿らの心の力を」
「こいつらは強い。僕らだけでは勝つ事は不可能でしょう。だが……お前達の心が……魂の応援がここでは力になる。この脅威を払いたいならば……力を貸してください」
「皆さんの声援が私達の力になります。どうかご助力願います」
泰孝が。
銀静が。
アデーレが。
想いを届ける。通じた願いは、更なる力を生む。
『灼滅者さん、この力を使って下さい!』
泰孝のチェーンソー斬りが大打撃を与え、ダークネスに付与した氷が大加増する。次いで銀静が戦艦斬りで多大なプレッシャーをかけることに成功。アデーレはフォースブレイクで突撃、ロード・ニオブは内側から大爆発して大きく後退する。
「ぐぐ、灼滅者ごときに……この俺が押されているだと」
「……知り合って、幾許とない、俺たちに、全幅の信頼、大変、感謝したい……」
相手は恐るべき力と持つダークネス。
それと互角、いやそれ以上に灼滅者達は渡り合うことができている。隅也も確実に相手に命中させるために助力を貰い、レイザースラストを射出。呻くロード・ニオブに追いうちをかける。
「ロードを舐めるな!」
ダークネスは槍を強く握り、この状況を打破せんと猛攻に移る。
勇真と水海は壁役としてその前に立ち塞がり、禍々しい槍を通すまいと皆の盾となって耐えのける。
(「何度だってオレたちは止めてみせるさ! オレたちをこうやって応援してくれる人たちがいるんだからな……そう言った事もあった。けどこうして今応援があるのは、すごく心強い」)
ぎゅっと握り確かめ。
勇真はサーヴァントと共に、相手を押し返す。キャリバー突撃のすれ違いざま、斬影刃でカウンターを入れる。
(「戦闘不能になっても構わないからアタッカーを護りきるよ」)
最悪犠牲になることも厭わない。
覚悟を決めた水海は庇い合いながら、相手から目をそらさずに迎撃を繰り返す。
「クリスタライズがある以上、槍だけとも思えない。ソウルボードを守る為にも油断せずに挑むとしよう」
折花は回復とキュアによるケアで、とても手が足りない。決して相手を侮らず。未知の危機に備える。どのような状況でも、決してニオブ打倒を諦めない。
「……ご退場願おうか」
「退場するのは貴様らだ、灼滅者!」
彗樹のチェーンソー斬りと、ロード・ニオブの槍とが激突する。
激しく火花が散り、どちらも競り負けまいと何度も押し合いへし合う。ここが天王山。戦いは勝負所に来ていた。
「騎士なる外見、内面は品性下劣。斯様な者が覇権の一翼担えるとはとても思えぬな」
「何を! 抜かせ!?」
泰孝が挑発をし、一時的に敵の注意を引きつける。
その隙に他の面々は回復等を行い、態勢を整えた。
「ここは一時我慢だな」
「力を溜めるよ」
彗樹や水海はラビリンスアーマーで仲間を癒す。
「……白銀の騎士……吐きそうだ。僕も騎士の如く在りたかった。もうそんな気にはなれない。だからこいつは……余計に苛立たせてくれる」
銀静は抗雷撃を撃ち込み。
味方に庇われた後に、またクラッシャーの火力を間断なく叩き込む。
「お前を今滅ぼす事が出来ないなら、その心を砕く」
そのサイキックは鋭さを増していき。
対して敵の動きは、確実に鈍くなっていると銀静は確信していた。
(「攻撃の命中率が全体的に、安定してきましたね」)
アデーレは優先順位を、破壊力の向上よりも追撃の方に切り替える。
出来るだけ効率よく立ち回ることを心掛けた。
「その強化、削らせてもらう」
「……撃ち抜く……」
勇真は神霊剣で敵のエンチャントをブレイクすると、レーヴァテインの炎で斬りつける。隅也はティアーズリッパーにホーミングバレットで攻め立てた。強敵に対して一歩も引かずに、勝利の糸を懸命に手繰り寄せる。
「どこまでもデモノイドの邪魔をするつもりか!」
ロード・ニオブの槍が紅蓮の如く変化する。
炎のようなオーラが揺れて、全てを蹂躙せんと死の旋風が轟く。灼滅者達は一気に体力を削り取られる。
「注意をしていたけれど、ここまでとはね」
それでも折花が折れることはない。
前もって覚悟はしていたのだ。仲間の助力も得て、臆することなく回復役としての仕事を全うする。
そして、時は来た。
「後一押し、攻め切るには力が必要。精神巣食う悪逆非道の徒、討ち果たすべく共に押し切ろうぞ」
最後の一手。
ぎりぎりの体力ながらも、泰孝は攻めを選択。応援の力を得て、最大限の力を放出。一斉攻撃の合図を仲間達に送る。
「今です! 卜部さん、皇さんにパワーを!」
水海は自身も攻撃しつつ、応援して呼びかけて威力増幅を狙う。
少しでも力になることを信じて。
「また、この力か! 小癪な!!」
「教えてやる。お前は遥かに格下の僕らに負けるんです。そして……終わった後……お前はきっと「ほっとする」助かって良かったと無様にな……きひ……きひひっ……!」
防御態勢をとるロード・ニオブに。
銀静はここぞとばかりに、一気に攻勢をかける。攻めて攻めて攻め立てた。
「さて、仕上げだ」
彗樹がジャマ―として相手に重ねてきたバッドステータスが功を奏し、相手の守りも鉄壁ではなくなっている。その隙を、灼滅者達は突いていった。
「どうか声を届けて欲しい。こいつがどんなに強くとも、キミたちの声援があれば、ボクたちは必ず勝利できる」
回復役だった折花も、この正念場には拳を振るう。
願いによって増幅された鋼鉄拳に砕けぬものはない。
「オレ達は勝つ、倒れてる人のためにも、応援してくれるみんなのためにも。その思い、力を貸してくれ!」
勇真の剣が力強く一閃する。
常識では考えられぬほどの怒涛の剣戟が、ダークネスの槍を圧し折り。そのまま深々と標的の腹部まで到達する。
『灼滅者さん、勝って!』
勝利を願う声が聞こえる。
それが揺るぎのない力に変わる。
「……その信頼こそ、彼らに抗う力………その力を以て、俺たちと共に、戦おう………!」
無表情な隅也は、不器用ながらも感謝の念を込めて。
その気持ちを伝えるように。
戦う。
「ニオブ、これで終わりです」
「!」
左腕に槍を取り込んで、巨大な鷲の爪状の刃を生成。
アデーレ特大のDMWセイバーが羽状の寄生体を散らし、ロード・ニオブへと肉薄。不可避の破壊の塊が直撃し、ダークネスは大きく吹き飛ばされ。その全身をずたずたに両断された。
●
「……デモノイドは、何をしようとしている……?」
「覇権をとる……そして、貴様らは絶対に殺す……いいか絶対にだ!」
隅也の問いに、憎悪の眼差しを向け。
ロード・ニオブの身体は光となって消滅した。
(「デモノイドはソウルボードを手に入れようとしたのでしょうか? そして、一般人の意志に邪魔をされた?」)
銀静は残された痕跡を調べつつ、僅かに首を傾げる。
他の皆は帰還の準備を初め。水海は宙を見上げて大きく息を吸った。ソウルボードのどこまでも自分の声が響き渡るように。
「みんなの応援のおかげで勝てたよ! ありがとうだよー!」
作者:彩乃鳩 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年5月28日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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