【民間活動】精神防衛戦~巣くうものと救うもの

    作者:泰月

    ●集団意識不明事件
    「タタリガミの残党と鎖の戦いの介入、お疲れ様」
     灼滅者達に労いの言葉をかけた夏月・柊子(大学生エクスブレイン・dn0090)は、先の戦いで予知にかかったタタリガミが全滅したと続けた。
     これで、タタリガミ勢力も壊滅状態になった筈だ。もし生き残りがいても、組織的な動きは起こせないだろう。
    「その影響かは判らないのだけれど、新たな事件が起きているわ」
     ソウルボードの動きを注視していた白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)や、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)から、重要な情報が届いたと柊子は告げる。
    「ソウルボードに異変の兆候があり、それに呼応するように、民間活動によって武蔵坂学園を支持してくれるようになった一般人達が、次々と意識不明で倒れているの」
     搬送先の病院でいくら検査しても原因不明のまま、謎の意識不明が続いている。
     ――集団意識不明事件。
    「本来なら、そんな大ニュースになっている筈の状況が、情報操作をするまでも無く一般に広まっていないと言う不自然な状況よ」
     原因が彼らのソウルボードにある事と、ダークネスが絡んでいるであろう事は、間違いないだろう。
     だが、現時点ではこれ以上の情報が得られていない。
    「原因を究明する為に、皆には病院に向かって貰って、意識不明となった人にソウルアクセスを行って貰う事になるわ」
     ソウルボードには、今回の異変の原因が待ち構えているだろう。それが何者にせよ、撃破出来れば倒れた人々の意識も戻る筈だ。

    ●戦士の銃の漢
    (「深海生物の時の人だったか――ツッコミ求めた一人のような気がする」)
     記憶を探り胸中で呟く紫月の横で、天摩がソウルアクセスを発動する。
    「……特に見た目でどう、と言う事はなさそうですね」
     何事もなく辿り着いた特徴のないソウルボードをリーファが見回す。
    (「ここの何処かに――なんて都合良くいかないか」)
    「ん? 何か聞こえるね」
     予兆に見えた堕ちし友の姿をつい探してしまう黒斗の横で、理央が何か重たい音が近づいて来るのに気づく。
     ドドッ! ドドドドッ!
    「後ろだ!」
     透流が振り向いた直後、ドンッと地を蹴って巨体が跳んだ。
    「──やはり来たか、武蔵坂学園の戦士達よ!」
     灼滅者達を跳び越えドスンッと着地した半人半牛の巨体が、聞き覚えのある苦み走った声でダンディに告げる。
    「無言で背中から撃つのは、俺の戦士の魂に反する! 故に敢えて名乗ろう。俺の名はバントラインスペシャルマン!」
    「……お前も出て来てたのか」
     巨大な拳銃頭を見やり、渡里が呻くように呟く。
    「俺はこのソウルボードに用がある。お前達は守りに来たのだろう?」
     灼滅者達の驚きを知ってか知らずか、バントラインスペシャルマンは厳かに告げる。
    「目的の異なる戦士と戦士が出会ったのだ。戦って勝ち取るしかあるまい――さあ、武器を構えろ。決闘だ!」
     その言葉に応える様に、和弥がゴンッと拳を打ち合わせた。
     そのルーティンの意味は知らずとも、込められた応戦の意志を感じ取り。バントラインスペシャルマンの頭の撃鉄が、カチリと鳴った。

     ガキンッ!
     敵の背後に回り込んだ灼滅者達の攻撃が、牛足の蹄に阻まれる。
    「いくぞ! カウボーイランディング!」
     そのままロデオの様に荒れ狂い跳び跳ねる蹄が、前衛の灼滅者達を蹴散らした。
    「バントラインスペシャル・ラピッド・ファイア!」
     ドガガガガガガガッ!
     間を置かず、バントラインスペシャルマンの頭部から数え切れぬ銃火が迸る。
     重なった銃声が機関砲の様に響く程の早撃ち。弾丸の嵐が、先ほど蹴散らした数人の後ろの灼滅者達を撃ち抜いた。
    「そこだ!」
     早撃ちが止んだのを逃さず、灼滅者達が反撃に出る。
     ――だが。
    「12万回以上倒された分割存在とは違うぞ!」
     バントラインスペシャルマンは、幾つかを射撃で相殺し、あるいは振り回した投げ縄に絡め取って阻んでみせた。灼滅者達の攻撃が、思うように届かない。
    「ついにグローバルジャスティス様が目覚められ、サイキックハーツに至った今、俺の魂は世界征服を前に、かつて無いほど昂っている!」
     聞き捨てならない事を、さらりと告げてくるバントラインスペシャルマン。
     だが、僅か1分の攻防で、灼滅者達は力の差を思い知らされていた。
     手も足も出ないわけではないが――勝てる気はしない。

    『だ、大丈夫ですよ! きっと皆さんなら勝てます』
     その時、ソウルボードに声が響いた。

    『あんな巨大な海の化け物も倒してくれたじゃないですか! 銃は強そうだけど、きっと勝てます。皆さんの事を知った多くの人も、勝利を願ってるんですよ』
     灼滅者達を応援するその声は、ソウルアクセスした女性のものだ。
    「なんだ、この……不意打ちだ」
     透流がどこか落ち着かない様子で、黒い帽子の位置を直す。
    「皆にも聞こえてたっすね?」
     確認する天摩の口元に、笑みが浮かぶ。
    「うん。確かに届きました」
     返す和弥が握る拳に、力が籠る。
     届いた想いが力に変わる。
    (「……仇じゃなく英雄になれってか?」)
     いつか飲み込んだ言葉を思い出し、紫月もゆらりと立ち上がる。
    「もしかして、これサイキックハーツの力なんですかね?」
    「さあ? だけど、これなら――戦える!」
     リーファの思いつきに首を傾げつつ、理央も拳を固めて身構える。
    「ま、良く考えたら、こいつはご当地怪人の首魁ってわけじゃないしな」
     渡里の胸中からも、迷いは消えていた。
    「だな。こんな所で負けてられられないぜ」
     黒斗の手から伸びる光が、煌々と輝きを強くする。
     届いた人々の願いを、想いと力を受け取った灼滅者の魂が勝つか、バントラインスペシャルマンの戦士の魂が勝つか。
     ソウルボードでの戦いは、佳境へと突入する。


    参加者
    無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)
    刻野・渡里(殺人鬼・d02814)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    リーファ・エア(夢追い人・d07755)
    天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)
    獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)
    若桜・和弥(山桜花・d31076)
    茶倉・紫月(影縫い・d35017)

    ■リプレイ

    ●仕切り直し
    「首魁がサイキックハーツに至ったから、その為に誰のものでもないソウルボードを奪いに来たって訳ですか」
     巨大な十字架の銃口を向けて、リーファ・エア(夢追い人・d07755)がバントラインスペシャルマン問いかける。
    「だったらどうする? 俺達が戦うしかない事に変わりはないだろう!」
     リーファのウイングキャット・キャリバーの猫魔法を後ろに跳んで避けながら、バントラインスペシャルマンは言い放ち頭の銃口を向けた。
    「まあ、そうですね。此処の人達のお陰で、私達が間に合った訳ですから。ここは大人しく帰って貰いますよ」
     バントラインスペシャルマンとリーファの銃口が、同時に弾を放つ。
     銃弾を凍らせた光の砲弾が、バントラインスペシャルマンに撃ち込まれた。
    「お前達――何だそれは」
    (「巨大化七不思議の時ツッコミ求めたのって、本当に少しだけの関わりだと思ってたのに。覚えていてくれたんだな……」)
     撃ち負け訝しむバントラインスペシャルマンの声には答えず、茶倉・紫月(影縫い・d35017)は胸中で呟く。
    (「俺は英雄って柄じゃあないんだが……憶えていてくれたって事って、嬉しいものなんだな」)
     紫月の意思を受けてカタチを持った影が伸びていく。その口の端に浮かんでいた小さな笑みは、普段の彼を良く知る者でなければ判らなかっただろう。
    「見えているぞ!」
     ガゥンッ!
    「何っ!?」
     迎撃に放った弾丸ごと、バントラインスペシャルマンが紫月の影に飲み込まれた。
     その姿が完全に影に覆われると同時に、天宮・黒斗(黒の残滓・d10986)と槌屋・透流(ミョルニール・d06177)が飛び出した。
    (「昔は一般人って、どこか苦手だった。それでも守ってきて……今は守られてる。なんだか嬉しいもんだ」)
     その感情を噛み締めるように胸中で呟く黒斗の手から、強い光が生じる。
     想いと信頼を受け取った。ならば。
    「応えないとな! 守らないとな!」
     薄れゆく影の真横を、黒斗が駆け抜けた。すれ違いざまに、手に纏った光刃で猛牛の足に斬りつけながら。
    「判らない事も多いが、貴様を狩ればいいんだろう?」
    (「身体が軽い……あの時に近い感覚だ」)
     巨大な十字架を手に敵の周りを駆け回りながら、透流は嘗て闇堕ちを選んだ瞬間に似たモノを感じていた。あれほどの力はないが、代わりに不安もない。
    「ぶっ壊す」
     牛を狩る獣の様に一気に飛び掛かり、十字架を叩きつける。
     ミシリと言う手応えが透流に伝わるが――バントラインスペシャルマンの巨体は、踏み留まった。
    「俺はそんなに、脆くないぞ?」
    「ちっ」
     距離を取る透流に、バントラインスペシャルマンは頭の照準をぴたりと合わせる。
     ガゥンッ!
     放たれた銃弾を、飛び出した若桜・和弥(山桜花・d31076)が遮った。
    (「見返りを求めているつもりはなかったのだけれど。何だかんだ言って応援されるとやる気が出るんだから、我ながら現金なものだ」)
     後ろで無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)が弓を番えるのを音で察して、和弥は撃たれた傷もそのままに前に出る。
     狂気をもたらす錆を纏った鋏が、バントラインスペシャルマンの足を斬り裂いた。
    「頑丈でも倒すよ。勝てるって信じて貰えてるなら、それに応える。でなきゃ、今まで戦ってきた意味が無いもんね」
     構えた弓から癒しの力を持つ矢を和弥へ放ちながら、理央もバントラインスペシャルマンに告げる。
     ソウルボードの空気が、変わっていた。
    「さっきまでとはまるで別人だ! それでこそ俺も遠慮なく本気で戦える!」
    「オレもずっと本気のアンタと戦いたかったんすよ」
     灼滅者達の急なパワーアップに驚くバントラインスペシャルマンに、獅子鳳・天摩(幻夜の銃声・d25098)がその背後から返す。
    「オレも銃使いの端くれ。銃に戦士としての誇りや魂を宿して戦ってきた。戦士として尋常に勝負っすよ!」
    「勝負は常に望む所だ!」
     死角から伸びる両穂の短槍の刃が届く直前、天摩の腕に縄が巻き付いた。
    「ぬんっ!」
     バントラインスペシャルマンが縄を引くと、天摩の身体がぐんっと引っ張られる。
     だが、天摩は投げられながら、輝きを放つ短槍の穂を敵に向けていた。鋭く冷たい氷がバントラインスペシャルマンに突き刺さる。
    「貴方達を護るために、俺達は力を尽くす。力を貸してくれ」
     視線だけで霊犬・サフィアに浄霊眼を向ける様に伝えつつ、刻野・渡里(殺人鬼・d02814)がソウルボードの主へ呼びかける。
    (「――!」)
     次の瞬間、渡里は自身の予想を超える速度で敵の死角に飛び込む。
     内心の驚きを隠して振るった鋼糸は、音もなくバントラインスペシャルマンの猛牛の足を斬り裂いた。

    ●時限の力
     ソウルボードを、半透明の魚が泳ぐ。
     ガガガンッ!
     頭上から突進する魚の幽霊の群れを、バントラインスペシャルマンは頭部からの連射で全て撃ち落としてみせた。
    「この状態でも押し切れないか。やはり力押しは、得意そうだな」
     奇譚で呼び出した七不思議を撃ち落とされても顔色を変えず、紫月が呟く。
    「悪い効果を増やして貰えたら、搦め手もやり易いんだがな」
     そう言いながら、渡里はバントラインスペシャルマンの傷をなぞる様に鋼の糸で斬りつける。
     ソウルボードの主から届く力は、灼滅者達のレベルを引き上げている。
     そういう類のものが、ダークネスに影響を及ぼすのは考え難い。ましてそれが時限式である以上、無駄撃ちの可能性は避けるべきだ。
    「私達でぶっ壊せば済むこと!」
     ジグザグに変形したナイフを手に、透流が駆ける。
     小柄な体躯を活かして牛の足の間を滑り抜けながらナイフを振るい、その足に複雑な傷を刻み込んでいく。
    「シェリフズプライド!」
     バントラインスペシャルマンの胸元と牛の腰の星が輝き、傷を癒していく。
    「お前達がこれほどに強いとはな。ひとつ詫びよう。恥も外聞も誇りも捨てて、後ろから撃ってでも勝ちに行くべき相手だった! シェリフ・ロープスロー!」
     バントラインスペシャルマンが頭上で回して投げ放った縄が、キャリバーに絡みついて締め上げる。
    「後ろから撃たない潔さは良いと思うぜ」
     ピンと張った縄を蹴って、黒斗が跳躍した。
    「けど、それはそれ。ここで負けるわけにはいかない。絶対に倒してみせる」
     光の刃を纏った黒斗の手が一閃、バントラインスペシャルマンの足を斬り裂いた。
    「戦士であろうとするスタンスは嫌いではないわ。でもね」
     距離を取る黒斗と入れ替わりに、和弥がバントラインスペシャルマンに迫る。
    (「自分も同じ穴の狢だと思う。どうこう言える立場でもないわ」)
     それでも、だ。
    「手前の都合の為に、暴力で他者を屈服させる事を疑問に思わない者に、負ける訳にはいかないのだ」
     身を低くして和弥は振るった鋏が、バントラインスペシャルマンの足を斬り裂いた。
    「負けるわけにはいかないのは、俺も同じ! バントラインショット!」
     ガガガンッ!
     バントラインスペシャルマンの頭から、立て続けに銃火が迸る。
     ほとんどズレもなく同じ軌道で放たれた銃弾は、僅かな射線を縫って後方で弓を構える理央を撃ち抜いた。
     この数分、回復に専念していれば回復の要と見抜かれても仕方がない。理央はすぐに癒しの矢を己に放ち、仲間には無言で頷き攻撃をと伝える。
     この互角以上の戦い、続けられる時間は限られている。
    「もう4分過ぎたっすよ」
     攻防の中で過ぎた時間を声に出しながら、天摩は短槍を腰に戻し、やや長い銃身を持つ銃に持ち替えた。
    「撃ち合いなら望む所――」
    「オレもほんとはガンマンとして勝負したかったけど、役割を果たし全員で勝利を掴む。それがオレの戦士の誇りっす」
     バントラインスペシャルマンの言葉を遮って飛び出した天摩は、手にした銃――だったもののグリップを叩きつけた。
    「気にするな。俺も銃しか使わんわけではないからな! シェリフ・ロープスロー!」
     流し込まれた魔力が体の内で爆ぜる衝撃をものともせず、バントラインスペシャルマンが放った縄が天摩に絡みついた。
    「カウボーイランディング!」
     間髪入れず、血塗れの猛牛の足を振り上げた。
    「させません!」
     蹄が振り下ろされる前に、チェーンソーを手にリーファが飛び出す。
    (「これで……5回目!」)
     蹴り飛ばされる直前に斬りつけ、その回数を数える。
    「サフィア、止めろ」
     渡里の指示で六文銭を放つサフィアが猛牛に踏み潰され、リングを光らせようとしたキャリバーも蹴散らされ、それでも止まらぬ蹄が灼滅者達も蹴散らしていく。
    「立て直すよ!」
     理央の掲げた断罪輪から放たれた光が前衛の頭上に広がり、天魔を宿す法陣がソウルボードの空に描かれる。
     法陣から光が降り注ぐのとは対照的に、紫月の影が血塗れのバントラインスペシャルマンを飲み込んだ。

    ●限界を更に超えて
    「バントラインスペシャル・ラピッドファイア!」
     機関銃の様な連射が、灼滅者達に放たれる。
     だが、今の灼滅者には数え切れぬ程の弾丸も見極められていた。尤も、見える事と避けられる事は別の話だ。
    「まだ耐えられそうです?」
    「……次は難しいかな」
     リーファの問いに、和弥が返す。仲間を庇い続け2人とも傷だらけだが、仲間を護る壁はもう2人を残すのみ。
    「このまま負けるわけには行きません。最後の一撃、これで終わらせましょう」
    「畳みかけるなら、ここだな」
     リーファの提案に、渡里が同意を示す。異論は誰からも上がらない。
     これが全員で動ける最後の瞬間ならば、ここで全力を出さずにいつ使う。
    「だから皆さん、あと少しだけ力を下さい。皆さんの想いに応える為のその力を」
     リーファの構えた十字架から、強く冷たい光が膨れ上がる。
     大きさも速さも増した光の砲弾が、迎撃の暇も与えずバントラインスペシャルマンの業を凍らせた。
    「香織さん――だったよね」
     病室のプレートにあった名前を思い出し、和弥は口にした。
    (「万人の為にって思ってたけど、さっき判った。赤の他人の為に頑張れるほど良い子じゃないわ私」)
     胸中で呟いて、銃と拳を固く握る。
    「あとで近所の美味しい店とか教えて貰えるかしら。ヒーローと一市民だとかの他人行儀な関係じゃなくて、もっと近くに感じさせて。友達の為なら、絶対――誰にも負けないから」
     踏み込む足に、力が籠る。一足で間合いを詰めた和弥が零距離で叩き込んだ強烈な打撃が、バントラインスペシャルマンに宿る力の大半を吹き飛ばした。
    「そうだな。俺も今、眠り続けている貴方達、俺達に力を貸してくれる貴方が、傍観者と思わない……俺は仲間だと思っている」
     呼びかけた渡里の手から、光の輪が放たれる。
     輝きを増した光輪が、風を切る音を置き去りにしてバントラインスペシャルマンを斬り裂いた。
    「まだ力が上がるだと!?」
     成長限界を超えてなお限界を超えた灼滅者達の攻勢に、バントラインスペシャルマンが焦りを覚える。
     ガキンッ!
     続く波状攻撃を止めようと照準を合わせたバントラインスペシャルマンの頭部が、紫月の漆黒の剣によって弾かれた。
    「余り慣れてないけれどさ。少しでも憶えていてくれて、きっと大丈夫だって信じてくれる人がいるなら、それに応えるのが信じられた側の役目ってもんだろ」
     決意を口に、紫月が漆黒の剣を構え直す。
     今までは、人目を避けていたから判らなかった。だが、今は自分達を知った人の思いを知る事が出来た――故に生まれた言葉。
    「信じられていると信じたからこそ、本領以上に力を出すことが出来るんだよ。だから、ぶっ倒れろご当地野郎」
     時計の針の様な剣身が非物質に変わる。紫月が手にした形無き刃が、バントラインスペシャルマンに真っ直ぐに振り下ろされた。
    「戦ってるのはボク等だけじゃないって事さ」
     回復に徹していても、攻撃の準備は忘れていない。
     一点、前に出た理央の足元に熾る、摩擦の炎。
    「このソウルボードの人、今までの活動でボク等を応援してくれる人達も一緒に戦ってくれるんだ!」
     拳で戦う拘りも今は捨てて、炎を纏った理央の足が、バントラインスペシャルマンを蹴り上げる。
    「信じていてくれ。それが、力になる。ここは、そういう所だ」
     巨大な十字架を構えて、透流も呼び掛ける。
    「それに……応援してくれる人がいるとなれば、力が湧いてくるものなんだ。……その先は、私達の役割だ。この悪夢、ぶち抜いてみせる!」
    「ぬぉおぉぉっ!」
     十字架を抱えて透流が飛び出すと同時に、バントラインスペシャルマンも駆け出す。
     激突の直前、透流は跳んだ。ぐるんと回った勢いを乗せた十字架を、横から猛牛に叩きつけた。
    「オレ達を信じて。キミも見たことあるっしょ。オレ達は今まで、どんな絶望的に強大な敵も打ち破ってきた。護るべき人達を護ってきた」
     飄々とした口調の中にいつもない色を含ませ、天摩が跳躍する。
    「ここはキミのソウルボード。キミが信じてくれれば、オレ達は負けない。オレ達は強いんすよ」
     黒い灰と煙の様なオーラを纏った天摩の拳が、硝煙を纏った弾丸の様に連続で叩き込まれる。
    「私達を信じてくれてありがとうな」
     仲間達に届く力に礼を述べる黒斗の手から、煌々と輝きが伸びる。
    「人々は絶対に守ってみせる。勝ってみせる。同じ想いの元に、皆で一緒に、アイツを倒そうぜ」
     一気に間合いを詰めて光刃で斬り裂いた黒斗は、それでも止まらず光刃を放ちバントラインスペシャルマンの胸の星を撃ち抜いた。
    「この場は俺の負けか……」
     ふらりふらりと、牛の足がよろける。
    「どういう事かさっぱりだが、見事と言うより他ないな! お前達とは、いずれ現実の世界で決着をつけたいものだ!」
     膝をついたバントラインスペシャルマンが己の敗北を認める。
    「今は死なんとは言え、俺もご当地怪人の1人。これだけは言わせて貰おう――グローバルジャスティス様に栄光あれ!」
     その言葉を最後に、戦士の銃の姿はソウルボードから消えた。
     ダークネスの気配がなくなった事を確認し、灼滅者達も現実の世界へと戻っていく。
     そして――。
    「初めまして和弥です」
     灼滅者達が見守る中、眠り続けていた女性は目を覚ました。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年5月28日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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