【民間活動】精神防衛戦~鏡の中の闇

    作者:幾夜緋琉

    ●【民間活動】精神防衛戦~鏡の中の闇
    「皆、集まってくれたか? それじゃ、説明させて貰うな」
     神崎・ヤマトは、灼滅者を一望すると共に、早速。
    「先ず、先日のタタリガミとの戦い、お疲れ様だった。皆のお陰で、完全勝利、つまり、タタリガミ勢力はほぼ壊滅状態になった様だ」
    「しかし……だ。このタタリガミの壊滅が原因なのかは分からないが、ソウルボードの動きを注視していた白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)と、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)の二人から、重要な情報がもたらされたんだ」
    「その情報は、『ソウルボードに異変の兆候あり』。それに呼応する様に、民間活動によって、武蔵坂学園を支持してくれるようになった一般人達が、次々と意識不明で倒れ、病院に搬送される事件が起きているんだ。それに彼らは、病院で検査したものの原因不明……意識が戻らない状態が続いている、といった具合の様なんだ」
    「それに加え、本来ならば大ニュースになる筈の集団意識不明事件なのに、情報操作をするまでも無く、一般に広まらないという不自然な状況を起こしている。これは明らかにダークネス事件だろう。その原因が、彼らのソウルボードの内部にあるのは間違い無い」
    「だが……現時点ではこれ以上の情報が無い。申し訳無いが、皆には病院へと向かい、意識不明になった人へソウルアクセスを行い、原因の究明に向かって欲しいんだ」
    「ソウルアクセスした先には、今回の異変の原因が待ち構えているはずだ。その敵を撃破する事が出来れば、彼らはきっと目を覚ますことが出来るはず……申し訳無いが、宜しく頼む」
     と、ヤマトは頭を下げた。

     そして灼滅者達は、一般人の入院している病院へと到着。
     理由不明の中、集団で意識を失いし彼らは、まるで寝て居るかの様にも見える。
    「……さて、と……この人の夢へのソウルアクセスで宜しいでしょうか?」
     とアイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)が、一人の一般人の枕元に立つ。
     落ち着いた呼吸を繰り返している彼女……何か、このまま時間が経てば、不意に目を覚ましそうな気がしなくもない。
     でも、長い間意識不明の状態が続いているのは確かな訳で。
    「そうだね! ソウルボードにどんな敵が居るのかな?」
     とカーリー・エルミール (元気歌姫・d34266)の言葉に浦波・梗香 (フクロウの目を持つ女・d00839)とエルカ・エーネ (らふれしあ・d17366)も。
    「そうだな……敵の陣容は不明、との事。現存する全勢力がそれぞれの思惑で動いている様な話だったか……」
    「そうだね。今の所、何かヒントがある訳でも無いから、絞りにくいって言うのが正直な所だね。私もソウルボードが舞台なら、真っ先にシャドウかな、とは思うのだけど……はいってみない事には解らないし」
     そう、外から見た限りには何がいるのか迄は解らない。
    「それじゃみなさん、準備はいいですか? ……侵入しますね」
     とアイスバーンの言葉に、灼滅者達はソウルアクセスで侵入していく。

     ……そして、ソウルボードの中に立つ。
     平原の様な、夜明けの自然……周りを見渡し、何もない。
    「……ここは……?」
     ぽつり梗香が呟くも……どこかで視たような、それでいて微妙に違うような……そんな光景。
     ここで昼寝をしたら、気持ちよさそう……と内心アイスバーンは思いつつも、そのソウルボードの上を歩き始める。
     と……程なく、灼滅者の後方から近づく気配。
    「……」
     静かに近づいてきたのは……女性。
     勿論、普通の女性ではない。手足に赤いものを生やし、呪符のようなもので身体を覆う女性……。
     その気配に気がつき、振り返るエルカが。
    「……白薔薇の君……ノーライフキングの勢力は、壊滅した筈では!?」
     既に壊滅したはずの、ノーライフキング勢力の一人『白薔薇の君』。
     しかし、そんな灼滅者達の言葉に対し、何処か儚げな声音で。
    「……見逃して、くれませんか?」
     と。
     突然の救いを請う言葉に、驚くカーリー。
    「見逃して、って……どういう事?」
     と言うと、それに白薔薇の君は。
    「古来より、永遠に生きる事を望む人間は多いのです。その望みを持つ者に、永遠を与え、アンリ様の配下とするのが私達の目的……それとも、あなた達は、一般人の自由な意思を、否定するのでしょうか?」
     問いかける白薔薇の君。
     一瞬の戸惑い……しかし、すぐに首を振って。
    「本当に彼女が永遠を求めてる筈が無いよ! あなたを倒せば、きっと彼女も目を覚ます筈!」
    「そうですね……」
     カーリーに頷き、構えるエルカ。
     すると、白薔薇の君は。
    「そうですか……では、仕方ありません。サイキックハーツに至ったアンリ様の為に……」
     こちらも構え、そして……その手足からの一閃を嗾ける。
     鋭い一撃は、斬れ味も鋭い。
     ……ギリギリの所で、その一撃を躱すアイスバーン。
    「これでも喰らえ!」
     その隙を縫って、カーリーがデスサイズの一閃を叩き込むと、連続してエルカの黒死斬と、彼女のウイングキャット『プリムラ』が、猫魔法で連携。
     一方、アイスバーンは鏖殺領域をその場に展開し、梗香はバスタービーム、そして霊犬のセディが斬魔刀。
     ……それら攻撃を、白薔薇の君は身を余り動かす事も無く、躱していく。
     と……その瞬間。
    『皆さん……灼滅者の皆さん……お願いします、助けて……! 私だけではありません、灼滅者の皆さんに助けられた多くの仲間が、皆さんの勝利を願っているのです……!』
     突如聞こえてきた声は、女性の物。
     勿論、白薔薇の君のものではないのは自明。
     ……その言葉を聞いた灼滅者は。
    「みんな……声、聞こえましたか?」
     とアイスバーンの言葉に、梗香、カーリー、エルカらも。
    「ああ……これも、サイキックハートの力、だろうか」
    「何にせよ、この応援があるのなら、負ける訳にはいかないね!!」
    「そうだね。強敵であろうと……絶対に!」
     覚悟と共に、ケルベロス達は……白薔薇の君へ真っ正面から対峙するのであった。


    参加者
    浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    夢前・柚澄(淡歌する儚さ消える恋心・d06835)
    アイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)
    阿久沢・木菟(良心を取り戻せし者・d12081)
    エルカ・エーネ(らふれしあ・d17366)
    月姫・舞(炊事場の主・d20689)
    カーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)

    ■リプレイ

    ●白き薔薇の刃
     正面に立つ『白薔薇の君』。
     彼女の発した言葉は、一般人の自由意志を否定するのか、という言葉。
     ……そして、その言葉の後に、灼滅者に聞こえてきた……救いを求める言葉。
     二つの言葉を聞いた灼滅者達8人は。
    「折角、ボク達の存在が周知されてきているんです。このまま終わらせる訳にはいかないよね。意識不明に陥る被害者が沢山いる今の状態を、早く解決しないと……」
    「ああ。ここで俺達があいつに倒されれば、この救いの声を無駄にしてしまう事になる。それだけは……絶対に避けないとな」
     と夢前・柚澄(淡歌する儚さ消える恋心・d06835)に頷くファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)。
     更にエルカ・エーネ(らふれしあ・d17366)が。
    「何が起きてるのかとか、何が起きるのかとか……そういうの、いつも通りわかんないけども、やれることしなきゃね」
     と言うと、それに浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)は頷き。
    「そうだな。今背負っているのは、ただの声援じゃない。この声を送ってくれている人の、その心と魂を預かっているんだ。絶対に負けられないし、それに士気も高まっている。もう、負ける気はしない」
    「うん。まぁ応援だなんて慣れないけどね……でも、きっと助けるよ。私たちが負けたらどうなるかもわからない。それなら放っておけないしね!」
     そして、改めて正面の白薔薇の君を見据える。
     ……と、その顔に阿久沢・木菟(良心を取り戻せし者・d12081)が。
    「……む? 何だか、見た事がある気がする美人でござるね。もしかして何処かで遭った事無いでござる? 百回越える位、変な洋館の地下室で。ほら、運命感じちゃうでござるし、戦いなんて止めてどっかでお茶しないでござるか?」
     そんな木菟の言葉に対し、当然白薔薇の君は何を言っているのか、という表情。
     美しい顔立ちの中に浮かぶ……冷笑。
     それにアイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)が。
    「えっと……阿久沢さん、覚えている訳ないでしょう? 下手に声を掛けると、優先的に倒されちゃいますよ?」
     ……そう言う間に、白薔薇の君は、白く凍りし薔薇を舞わせ、前衛陣へ攻撃。
     その攻撃を、果敢に立ちはだかる梗香の霊犬、セディと、木菟。
     一撃だけでも、かなりのダメージなのは間違い無い。
    「きっつ! あんま耐えられんでござるぞこれ! 早めにヨロ!」
     と大きな声で、その威力を伝える。
     そして、月姫・舞(炊事場の主・d20689)とカーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)が。
    「では……貴方を退け、皆さんを救います」
    「うん。みんな、頑張ろう!」
     そして舞が、白薔薇の君に向けて。
    「力を貸してください……ウツロギ団長!」
     との言葉を口にしながら、黒死斬の一閃を叩きつける。
     しかし白薔薇の君は、冷たい微笑みを浮かべて、躱す。
     ……やはり、かなりの強敵なのは間違い無い。
     そして梗香は、聞こえていた声に向けて。
    「大丈夫、貴方の声、確かに聞こえたよ。貴方は助けられたと言ってくれたけど、今、私達が対峙している相手は……はっきり言って強力だ。だが約束する。必ず勝利すると。必ずや、貴方を護り抜くと。そして、必ずやこの世界を、私達人間の手に取り戻すと!」
     救いを求める声に、呼びかけ返す。
     その声に応じる様に、不思議な感覚……身体は何処か、軽くなる。
     そして、柚澄が。
    「ファルケさん、頑張って下さい!」
     とファルケに呼びかけつつ、自己へ予言者の瞳の狙アップを付与。
     並行して梗香は高速演算モードを使い自己強化の一方、エルカが。
    「力を貸してくれるなら、私たちだって頑張って見せちゃうよ! だからちゃんと見ていて!」
     と反応すると、こちらもまた、身体に何か力が満ちていき、そして黒死斬の足止め効果を付与する。
     そして、ジャマーのカーリーがヴァンパイアミストを展開し、前衛陣に壊アップを付与。
     木菟が叫びながら、更に前列にイエローサインを付与すると、同時にプリムラが肉球パンチで攻撃。
     一方のセディは自分へ浄霊眼のキュア。
     そして……クラッシャーのファルケ、アイスバーンが。
    「行きますよ? その、あそこの悪い方を倒しちゃいましょう」
    「ああ!」
     と短く声を掛け合い、アイスバーンは子羊の影業、ジンギスカンを作り出す。
     そしてファルケが接近してのご当地ダイナミックを叩きつけると、アイスバーンは。
    「ジンギスカンさん……えと、悪い夢は全部食べちゃってください」
     と指示を与えて、ジンギスカンを嗾ける形の黒死斬で、足止め効果を多重に付与。
     多数の足止め効果に、動きは大幅に鈍る白薔薇の君だが……。
    『仕方ありませんね……』
     とても残念、という口ぶりながら、灼滅者に対する攻撃の手は緩むことはない。
     続く薔薇の蔦を振り回し、至近に居た木菟へ更なる一閃。
     己に壊アップの効果も伴う一撃は……かなり痛い。
     即時柚澄が、受けた傷をエンジェリックボイスを掛けてダメージを回復する。
     回復され、再度構える木菟……。
    「応援、感謝。今、この場では自分が主役だと思え! 君たちの力が勝負の行く末を決めるんだ! 最後の力全て出し尽くして、俺たちに力を貸してくれッ!」
     と強い口調で声を上げ、イエローサインで大きく自己回復。
     そして、梗香がスターゲイザーで更なる足止めを付与する一方、エルカが斬影刃で服破り効果。
     更に、仲間達の付与した多くのバッドステータスへ、舞が。
    「エンドレス……ノット!」
     と、ズタズタラッシュで、その服を八つ裂きにして服破り付与。
    『っ……』
     僅かに唇を噛みしめた白薔薇の君。
     そんな白薔薇の君の動静を鋭く察知したアイスバーンが。
    「えっと、確実に効いている様ですね……あの、大丈夫です? 阿久沢さん……回復は無理なのでファイトっです」
     と、微妙な応援をしつつ、彼女自身も、救いを求める声に対し。
    「んと、今迄はバレないように戦っていたので、ちょっとだけ新鮮ですね? 声の方……名前はわかりませんが、一緒に戦って頂けると嬉しいかな? って」
     その言葉の返事とばかりに、彼女の影業、ジンギスカンさんが僅かに瞬く。
    「えっと、ジンギスカンさんが強くなった? ジンギスカンさん、もっと頑張って下さい」
     と、指示を与え、白薔薇の君に向けて、槍のような物を持っての特攻攻撃。
     その肩口に一閃し、数歩後退。
     更にファルケがレイザースラストで更に追い込む攻撃を続け、そしてセディ、プリムラも六文銭射撃と、猫魔法。
     そして、カーリーがデスサイズを一閃し、薔薇の蔓一つを一刀両断。
     次の刻……流石に体力が削れすぎた様で、白薔薇の君は白薔薇を舞踊らせ、自分へ纏わせる。
     大幅に体力が回復した白薔薇の君は、またも……くすり、と笑う。
    「ふむ……その微笑みは美しいでござるな」
     と木菟の言葉に対し、一瞥もしない白薔薇の君。
    「……でござるよねー」
     と肩を竦めながらも、やっと自己回復せずに攻撃出来る、という事で。
    「何にせよ、この美人さんを放置する訳にはいかないでござるよ。申し訳無いでござるが……覚悟して貰うでござる!」
     と近接からのスターゲイザーを放つと、それに連携する形でアイスバーンのジンギスカンさんが、レイザースラスト。
     又、舞は。
    「必ずこの人は私達が退け貴方たちを助けます! ですから、力を貸してください!」
     と声に答え……己が強化効果を受けた上で。
    「邪悪を極めんとした男の業(わざ)と業(ごう)を見なさい……血河飛翔っ、濡れ燕!」
     と舞がティアーズリッパーで蔦を斬る。
     一方、柚澄は。
    「ファルケさん、もう少しです……頑張って下さい!」
     と、激励の言葉を掛けつつ、防護符を放つ。
    「サンキュ!」
     と言いつつ、こんどはファルケがディーヴァズメロディ。
     ……独特なメロディを奏で、白薔薇の君へ催眠効果を付与するが……抵抗する。
    「えっと、残念……でも、わたしの攻撃は、はずしませんよ?」
     アイスバーンのジンギスカンが、またも黒死斬による足止め効果、更に連携した木菟が、狙い澄ましたスターゲイザー。
     足止め効果により、回避力を大幅に下げられた所に、更に服破り効果でダメージを格上げ。
     それらバッドステータスから来る大ダメージを、白薔薇を纏い回復しながら、氷の薔薇で攻撃を繰り返す白薔薇の君。
     ……幾度となく、灼滅者へ。
    『残念ですね……あなた達は、一般人の自由意志を否定するとは……』
     と呼びかけるも、それに。
    「さっきの言葉が聞こえなかったの? 貴方達のやっている事は、的外れなんだよ!」
     とカーリーがびしっと指摘しながら、デスサイズで撃ち砕く。
     ……そして、段々と応援の声が聞こえなく鳴りつつある頃。
     対峙する白薔薇の君も……かなりボロボロで。
    「そろそろ決め時かな? よし……」
     とファルケは小さく頷き。
    「歌エネルギー、チャージ完了。魂の歌を聞かせて伝わらないなら、直接叩き込んで響かせるのみっ。受け取れっ、これが俺の必殺! サウンドフォースブレイクだっ!」
     と声に呼びかけながら、全力のフォースブレイクの一撃を叩き込む。
     そして、舞も。
    「ガイオウガの影よ! 行きなさい!」
     と、斬影刃の一閃を放つと……その一閃は白薔薇の君を一刀両断。
    『……!!』
     声にならぬ絶叫と共に……白薔薇の君は撃ち砕かれ、消えて行った。

    ●夢の影の後に
     ……そして、白薔薇の君を倒した灼滅者。
     ソウルボードを後にし、入院している彼女の傍らに揃うと……。
    「ふ、これが本当の歌の力ってやつかな?」
     とクールに決めてみせるファルケだが……まぁその歌声は……。
    「ん、そ、そうだね……」
     カーリーが苦笑しているが、それの真意に気付く事も無く。
     ともあれ、目の前で寝て居るかの様な彼女。
     先ほどの救いの声が、彼女から発せられたのかは分からないが……。
    「……何にしても、この戦いは……歴史の大きな転換点になるだろうな。我々人間が、ダークネスの支配を打倒する、その第一歩として……」
     梗香の言葉に、舞がこくりと頷き。
    「そうですね……これから、どうなるのかは分かりませんが……でも、もう止める事は出来ません。私達の動き一つ一つで、事態は大きく変わるのでしょう……」
    「そうだな……」
     静かに梗香は頷き……そして、一般人が意識を取り戻す事を願いつつ、灼滅者達は、其の場を後にした。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年5月28日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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